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第四章

ゴブリンは変装します2

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『パーティーグッズだ』

「パ……」

 飛び出してきた言葉の予想外さにドゥゼアは驚いた。
 しかしオゴンはいたって真面目な顔をして獣人の手を1つ取った。

『俺たち獣人には一定の時期になると毛が生え替わるような氏族がいる。量はかなり出るのだが一部を除いては特に使えるものではない。だから普段は燃やして処理してしまうのだけれど利用できないかと考えた連中がいるんだ』

 獣人の中でも犬族などは毛が抜けて新しくまた生えるのであるが毎年生え替わるので抜けた毛はただ邪魔なだけなのである。
 集めて燃やしたところですぐに燃え尽きてしまうので燃料ともならない。

 しかしただ抜けて、ただ燃やしてはもったいないと思った人がいた。

『そこで生まれたのが獣人なりきりセットだ』

 よく見ると獣人の手や頭は中が空洞になっている。

『抜けた本物の毛を使って他の獣人の見た目になりきれるというちょっとしたオモチャみたいなものだ』

『今はこんなものまであるのか』

 オゴンが獣人なりきりセットを手にはめてみる。
 オゴンは白獅子族であるのだが買ってきた獣人なりきりセットは犬族のものではめてみると確かに犬族の手に見える。

『毛は本物だし、意外と質もいい。手や頭だけならこれを身につけていればバレないだろう』

「なるほどな」

 ドゥゼアも獣人なりきりセットの頭を手に取って被ってみる。
 視界は結構狭い。

 毛で覆われているせいなのか中は思いの外温かい。
 重たくもなく軽くもないが長時間被っていると首は痛くなりそうだ。

 ただ鏡で見てみるとフードの下に覗く姿は犬族の獣人には見える。
 パッと見ただけで偽物だと見抜くのは大変そうだ。

 それに偽物だとバレても獣人なりきりセットを被っているのだと堂々と言ってしまえばそれ以上素顔を見せろと言われることもないという二段構えになる。
 さらに本物の毛を使っていることの利点はニオイも誤魔化せてしまうというところにある。

 毛は綺麗に洗っているが染み付いている獣人のニオイ全ては取りきれない。
 ゴブリンの体臭も覆い隠してくれるのだ。

『それに手も良いやつなんだぞ。指が動くようになっている。動かないやつもあるからな』

 そう言われて手の方も身につけてみる。
 自由自在とはいかないが掴んだり摘んだりといったレベルのことは出来そう。

『子供でも良いし小犬族という氏族もいる。体格的なところも誤魔化すことはできる』

 作り物であることには間違いないのでフード着用で基本的顔をしっかり晒さないようにしなければいけないが、町中にいても魔物だとバレない程度に隠したり言い訳をすることができる。

『じゃ、じゃあドゥゼアさんたちも一緒に行くんですか?』

 獅子族の元に向かうと聞いて少し顔が暗かったカジア。
 ドゥゼアたちとはもうお別れなのかと思ったのにまだ一緒だと聞いて嬉しそうにしている。

「……まあやるだけやってみるか」

 かなりリスキーな橋を渡ることになるがカジアのことは心配だ。
 この潜入だって獣人の国ならではのものになる。

 バレたら多少暴れて逃げればいい。

『ちなみにカラータイプもいくつかあるぞ』

「俺は黒にしよう」

「じゃあ私も」

『白もあるのだぞ?』

 黒白茶色など色々あるけれど1番分かりにくいのは黒色になる。
 なのでドゥゼアは黒を手に取る。

 レビスもそれにならって黒いものをチョイスした。
 白獅子族で白にもこだわりがあるオゴンは白を選んでほしそうであったが潜入するのに明るいカラーは不向きである。

「黒でいい」

『そ、そうか……』

「カジアも着けておけ」

『僕も?』

 カジアが顔を晒して歩いていても周りはなんとも思わないが、狙っている連中にとっては違う。
 あまり顔を出していない方がいいかもしれない。

 ならばカジアも獣人なりきりセットで顔ぐらい隠しておけば少しは相手の目もあざむける可能性がある。

『じゃあ僕も黒っぽいので』

 どうせならみんな似たような色で合わせておいた方が周りと浮かなくていい。
 カジアも黒を選んだことでオゴンは少しだけシュンとしていたのであった。
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