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第四章
ゴブリンは変装します1
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クレディアの尋問の結果分かったこともあるけれど分からなくなったこともある。
まず猫族は王位を狙っている。
反乱などの方法ではなく体調のすぐれない獣王を取り込む形で王位や権力を奪おうとしている。
邪魔になりそうなカジアを捜していて、暗殺まで企てていた。
一方でブラッケーのことは知らないという。
正確にはブラッケーは猫族とは違う。
けれどヒョウ族も大きな枠で見ると猫族の獣人の仲間である。
なのに猫族がカジアの存在を認識していない。
つまりブラッケーは猫族とは別に動いていたと考えられる。
猫族とはまた違う何かの命令で動いている。
それがブラッケー単体での話なのか、ヒョウ族全体での話なのか、あるいは猫族の中でも分裂しているのか。
何も分からない。
『ひとまずカジイラに会ってみないとな』
何にしても今回の出来事は王位というところが大きく関わっている。
カジイラの体調不良や次の王の話が知らない間にカジアを巻き込んでいるのだ。
しかしカジイラの話も所詮は噂。
実際のところどうなのか確かねばならない。
『そうだな……今回の件は俺も看過できない』
完全に意気消沈しているオゴンであるがただ裏切られてやられっぱなしなのも性に合わない。
このまま何も知らずに全てを忘れていくことも選択肢としてあるのだろうがオゴンはそうできる人ではなかった。
カジアのことを守るということも今のオゴンに残された最後のプライドでもあった。
『手紙を出して迎えに来てもらうつもりだったがもはや誰が信頼できるか分からない。直接中央に向かおう』
敵がどこに潜んでいて、どこから情報が漏れるか分からない。
それなら秘密裏に出発してしまい、直接訪ねた方が相手に隙を与えないかもしれないとオゴンは思った。
しかし大きな問題がある。
『主君……他のものもどうするのだ』
バレた時にオゴンだけでカジアを守り切ることはできない。
それにカジイラと話すのにもカジオという存在はいてもらいたい。
だがドゥゼアたちは魔物である。
堂々と一緒に歩いていくことなどできないのだ。
少し離れてついていくこともできなくはないが簡単なことではない。
『考えがある』
ーーーーー
オゴンが買い物に行って戻ってきた。
そしてみんなが同じ部屋に集められた。
『ワーウルフは顔さえ出さねば大丈夫だろう』
要するに周りにバレなければドゥゼアたちが同行できるということになる。
ワーウルフであるユリディカは一度町への潜入をしたように顔や手などを細かくチェックされない限りはバレるリスクは非常に低いと言えた。
『ただ腰が曲がっているので年寄りということにして話さなければいい』
「もー! 何で毎回お年寄りなの!」
『なんて言っているんだ?』
「気にするな。年寄り扱いを嘆いているだけだ」
今はカジオを出してはいない。
なのでドゥゼアが紙に字を書いてオゴンの疑問に答える。
『そ、そうか……そしてリザードマンだがそのままでも問題ないだろう』
「えっ?」
『我々にも蜥蜴族という氏族があるのだがその容姿はリザードマンとほとんど変わらん。蜥蜴族の連中は分かるらしいが俺たちの目から見て違いを見つけ出すことはできない』
獣人にも色々な見た目の人がいる。
人の姿に近いものもいれば魔物にも近いような姿のものもいる。
蜥蜴族というのはリザードマンにも非常に似通った姿をしている氏族である。
本人たちによるとリザードマンとは違うと主張するのであるが他の氏族からしてみると違いは分かりにくい。
『特に君は白い姿をしている。白蜥蜴族とか言っておけばバレはしない』
オゴン自身白蜥蜴族なんてものがいるのか知らない。
しかし知らないからと言っていないとは限らず、そこを突っ込む獣人はいない。
今や多岐にわたる獣人に知らない氏族があったとしてもおかしくはないのだから。
突然変異の白いリザードマンのオルケはバレにくいリザードマンであることに加えて白いという普通と違う特徴を持っている。
多少注目は浴びるかもしれないが堂々と町中を歩いていたら蜥蜴族ではなく魔物のリザードマンではないかと思う人はいない。
獣人であるという顔をして歩けば意外と注目すらされないかもしれない。
『問題はお前たちだ』
ユリディカとオルケはまだごまかしようがあるからいい。
しかしドゥゼアたちはどこからどう見ても魔物である。
顔をしっかり見られなくても肌の一部を見られただけでもゴブリンだとバレる可能性がある。
町に潜入はしたけれど正直運が良かった。
背も低いので顔を見られにくかったのも功を奏したのである。
だがオゴンやカジアと行動を共にするならばバレるリスクは大きくなる。
ドゥゼアはともかくレビスはかなり危うい。
『そこでこれだ』
オゴンは町に出て買ってきたものを紙袋からテーブルの上にざっと出した。
「…………何だこれは?」
見たところ獣人、それも獣系の獣人の手や頭のようなものであった。
手に取ってみると思いの外軽くて、毛の手触りは良くて本物っぽかった。
「これは何だ?」
紙に書いて何を買ってきたのか質問する。
まず猫族は王位を狙っている。
反乱などの方法ではなく体調のすぐれない獣王を取り込む形で王位や権力を奪おうとしている。
邪魔になりそうなカジアを捜していて、暗殺まで企てていた。
一方でブラッケーのことは知らないという。
正確にはブラッケーは猫族とは違う。
けれどヒョウ族も大きな枠で見ると猫族の獣人の仲間である。
なのに猫族がカジアの存在を認識していない。
つまりブラッケーは猫族とは別に動いていたと考えられる。
猫族とはまた違う何かの命令で動いている。
それがブラッケー単体での話なのか、ヒョウ族全体での話なのか、あるいは猫族の中でも分裂しているのか。
何も分からない。
『ひとまずカジイラに会ってみないとな』
何にしても今回の出来事は王位というところが大きく関わっている。
カジイラの体調不良や次の王の話が知らない間にカジアを巻き込んでいるのだ。
しかしカジイラの話も所詮は噂。
実際のところどうなのか確かねばならない。
『そうだな……今回の件は俺も看過できない』
完全に意気消沈しているオゴンであるがただ裏切られてやられっぱなしなのも性に合わない。
このまま何も知らずに全てを忘れていくことも選択肢としてあるのだろうがオゴンはそうできる人ではなかった。
カジアのことを守るということも今のオゴンに残された最後のプライドでもあった。
『手紙を出して迎えに来てもらうつもりだったがもはや誰が信頼できるか分からない。直接中央に向かおう』
敵がどこに潜んでいて、どこから情報が漏れるか分からない。
それなら秘密裏に出発してしまい、直接訪ねた方が相手に隙を与えないかもしれないとオゴンは思った。
しかし大きな問題がある。
『主君……他のものもどうするのだ』
バレた時にオゴンだけでカジアを守り切ることはできない。
それにカジイラと話すのにもカジオという存在はいてもらいたい。
だがドゥゼアたちは魔物である。
堂々と一緒に歩いていくことなどできないのだ。
少し離れてついていくこともできなくはないが簡単なことではない。
『考えがある』
ーーーーー
オゴンが買い物に行って戻ってきた。
そしてみんなが同じ部屋に集められた。
『ワーウルフは顔さえ出さねば大丈夫だろう』
要するに周りにバレなければドゥゼアたちが同行できるということになる。
ワーウルフであるユリディカは一度町への潜入をしたように顔や手などを細かくチェックされない限りはバレるリスクは非常に低いと言えた。
『ただ腰が曲がっているので年寄りということにして話さなければいい』
「もー! 何で毎回お年寄りなの!」
『なんて言っているんだ?』
「気にするな。年寄り扱いを嘆いているだけだ」
今はカジオを出してはいない。
なのでドゥゼアが紙に字を書いてオゴンの疑問に答える。
『そ、そうか……そしてリザードマンだがそのままでも問題ないだろう』
「えっ?」
『我々にも蜥蜴族という氏族があるのだがその容姿はリザードマンとほとんど変わらん。蜥蜴族の連中は分かるらしいが俺たちの目から見て違いを見つけ出すことはできない』
獣人にも色々な見た目の人がいる。
人の姿に近いものもいれば魔物にも近いような姿のものもいる。
蜥蜴族というのはリザードマンにも非常に似通った姿をしている氏族である。
本人たちによるとリザードマンとは違うと主張するのであるが他の氏族からしてみると違いは分かりにくい。
『特に君は白い姿をしている。白蜥蜴族とか言っておけばバレはしない』
オゴン自身白蜥蜴族なんてものがいるのか知らない。
しかし知らないからと言っていないとは限らず、そこを突っ込む獣人はいない。
今や多岐にわたる獣人に知らない氏族があったとしてもおかしくはないのだから。
突然変異の白いリザードマンのオルケはバレにくいリザードマンであることに加えて白いという普通と違う特徴を持っている。
多少注目は浴びるかもしれないが堂々と町中を歩いていたら蜥蜴族ではなく魔物のリザードマンではないかと思う人はいない。
獣人であるという顔をして歩けば意外と注目すらされないかもしれない。
『問題はお前たちだ』
ユリディカとオルケはまだごまかしようがあるからいい。
しかしドゥゼアたちはどこからどう見ても魔物である。
顔をしっかり見られなくても肌の一部を見られただけでもゴブリンだとバレる可能性がある。
町に潜入はしたけれど正直運が良かった。
背も低いので顔を見られにくかったのも功を奏したのである。
だがオゴンやカジアと行動を共にするならばバレるリスクは大きくなる。
ドゥゼアはともかくレビスはかなり危うい。
『そこでこれだ』
オゴンは町に出て買ってきたものを紙袋からテーブルの上にざっと出した。
「…………何だこれは?」
見たところ獣人、それも獣系の獣人の手や頭のようなものであった。
手に取ってみると思いの外軽くて、毛の手触りは良くて本物っぽかった。
「これは何だ?」
紙に書いて何を買ってきたのか質問する。
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