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第四章

ゴブリンはオウムに質問します2

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 白い鳥の目がドゥゼアのことを見据える。
 敵意は感じないが上から下まで観察するような視線に居心地の悪さを感じる。

「焼き肉? ……ああ、焼いた肉のことか」

「うむ! 焼いた肉があれほど美味いとはな! ただ焼いた肉は焼いた肉にすぎない。わざわざ肉を焼きたいなぁなんて言うのも煩わしいから肉を焼いて食べるという行為を焼き肉と名付けたのだ!」

「そ、そうか」

 ややテンション高めの白い鳥にドゥゼアは圧倒される。
 お前も肉食うんかというツッコミは心の中に留めておいた。

「そのゴブリンはドゥゼアだ」

「うむうむ、ドゥゼアか! このキバタンはドゥゼアに敬意を払おう!」

「あ、ありがとう」

 地面に降り立ったキバタンは大きく翼を広げた。
 声もデカくてかなり響く。

「ただ聞いたのだ」

「……何を?」

「ドゥゼアが肉を焼くともっと美味いとだ!」

 グイッと顔を寄せてくるキバタンの圧が強い。

「俺が肉を焼くと? 誰でもそんなに変わらないだろう」

「ホーホー、それが違うのだ」

 グイッとチユンも前に出てくる。
 モフっとしたボディも近づいてくると案外圧があるものである。

「何が違うんだよ?」

「それがわかれば苦労はない。だがドゥゼアが焼いてくれたものの方が美味いのだ!」

「ふーん?」

「古い友人が訪ねてきたからもてなすために仕方なく焼き肉をしたのだ。私としてはまだいいかなと思っていたのだがやはり大切な友のためにしょうがなくな」

 チラチラチユンのプライドが見えるけれどに焼き肉食いたかったんだろうなと思う。

「そこで致し方なく焼き肉をしたのだけどドゥゼアが焼いたものには敵わなくて、キバタンがドゥゼアのところに戻るというので秘訣を聞きに来たのだ!」

「秘訣……ったってもなぁ」

 何か特別なことをして肉を焼いていたのではない。
 違うと言われても目の前でゴブリンたちがどうしたのかも分からないので何が違うと指摘することもできない。

「それで……その……何というか…………ということで焼き肉してほしい!」

 残っていたプライドをチユンがかなぐり捨てた。

「……いいけど肉はお前らが取ってこいよ?」

「ホーホー! 任せろ!」

 別に肉を焼くのはいいけれどせっかく登ってきた山を降りて魔物を取ってくるのは嫌だ。
 チユンは嬉しそうに笑うとキバタンを連れて魔物を狩りに飛んでいく。

 非常に焼き肉を気に入ってくれたのはいいことであるが気に入りすぎである。
 キバタンが戻ってくるのを待つ間に焚き火はしていたので少し周辺を巡って木の枝を集めておく。

 その間にもチユンとキバタンは何往復もして小型の魔物を狩って集めてくれていた。

「んじゃ焼いていくか」

 チユンとキバタンはまだ獲物を集めてくるつもりらしいが積まれて山になってきている魔物たちを見ると先に焼き始めてしまってもいいだろう。
 木の枝に刺して焚き火の側の地面に立てて焼いていく。

「ホーホー、焼いておるな」

 チユンも学んでいる。
 近くで着地すると風が巻き起こって迷惑になることを。

 なのでチユンは少し離れたところに降りてそこからテトテトと歩いてきた。

「それでどう違うんだ。俺が焼いたのとゴブリンたちが焼いたやつ」

「説明は難しいのだが……ゴブリンたちが焼いたやつは硬い感じがするのだ。それにドゥゼアが焼いてくれたものはジューシーな感じがある」

「あー……なるほどな」

「何が分かったのか!?」

「まあとりあえず焼いてみるよ」

 顔を近づけて上から見下ろすようなキバタンの圧を感じるがドゥゼアはそれを気にしないようにしながら肉を焼く。

「……こんなもんかな」

 程よく焼けた肉を火から離す。
 そのままではアツアツすぎるので少しだけ離しておいて冷ます。

 チユンの口の端からよだれが垂れている。

「ほれ、いいぞ」

 肉を枝から外してチユンとキバタンの前に置く。

「それでは……失礼する!」

「これが焼き肉の本物……いただくぞ!」

 チユンとキバタンが同時に肉をパクリと口に入れる。

「ホーーーー!」

「むむむむ!」

 2羽の目がカッと見開かれる。

「美味い! 確かに違う!」

「だろう? やはり同じゴブリンが作ったとしてもドゥゼアがやったものは違うな!」

 やっぱりドゥゼアが焼いた肉は美味しい。

「なぜ違うのだろうか……?」

「むむ……賢い我々でも分からないな」

 チユンとキバタンは首をかしげる。
 焼き方に大きな違いもないのにどうしてこんなに差が出るのか不思議でならないのである。

「たふんそれはだな」

「なに!」

「秘訣を教えてくれるのか!」

 この鳥ども一々圧が強い。
 視界いっぱいが鳥になるほど近づかれたので手で離れろとジェスチャーする。

 聞こえてるのにわざわざ顔面を接近させる必要もない。

「肉の距離がまずいんだ」

「肉の距離だと?」

「むむむ?」

 おそらくゴブリンたちの肉は火に近すぎるのだとドゥゼアは推測した。
 早く焼こうとしたり適当な焼き方するとどうしても肉と火の距離は近くになってしまう。

 しかしそうすると中まで綺麗に焼ける前に表面ばかりが焼けてしまい、結果的にパサパサとした焼き上がりになってしまうのである。
 あえて秘訣というのならちゃんと火と肉の距離は空けてじっくりと焼いていくことが大切なのである。
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