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第四章
ゴブリンはゴブリンを連れて移動します5
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日を背にしていてシルエットしか見えない。
見えているのは丸い胴体と翼ぐらい。
「ホーホー、そう警戒することもない。何も取って食おうとなんて思わんからな」
ゆっくりと翼を羽ばたかせてそれが降りてきた。
頭から背中にかけて褐色、腹部は白くてものを顔周りは黒っぽい。
体の大きさの割につぶらな瞳をした鳥類系の魔物であった。
「何者だ?」
少なくとも殺気のようなものは感じず、敵対するような雰囲気はない。
ドゥゼアもそんな相手を挑発する必要はないと下手に出る。
「力はなさそうだが賢そうだな。ワシはロケットスパローのチユンだ」
剣を引いたドゥゼアを見てチユンは感心したように目を細めた。
「ロケットスパロー……だと?」
ドゥゼアは驚きで目を見開いた。
ロケットスパローならドゥゼアも知っている。
ただ目の前にいる巨大な鳥の姿のものはドゥゼアが知っているロケットスパローではない。
「ロケットスパローってのはこんな……小さいやつだろ?」
ドゥゼアは手で知っているロケットスパローの大きさを示す。
ドゥゼアの手でも持てるぐらいの小型の魔物が本来のロケットスパローというやつである。
基本的には無害な魔物であり、追い詰められた時に捨て身の突撃をしてくることからロケットと名付けられている。
ゴブリンでも時々石を投げて上手く当たれば倒して食べるようなこともある。
デカくたって高が知れているのに目の前にいるチユンは全く違う魔物だと言われた方が納得できる大きさをしている。
「ふふふっ、そうだろう。ワシは特別だからな」
驚くドゥゼアを見てチユンは嬉しそうにしている。
他の個体とは違っている特別な個体であることを誇りに思っている。
予想通りの驚きを見せてくれて喜んでいた。
特殊個体というものが時折生まれることがある。
本来の姿とは異なった特徴や能力を持っていたりする魔物で、その特殊さが故に多くの場合長生きはできない。
けれどそれを乗り越えて生き延びた個体は強力な魔物になるということも多い。
チユンもこうした特殊個体の魔物なのだとドゥゼアは理解した。
「それで何の用だ?」
取って食うわけでもないのにゴブリンの集団に知能の高い魔物が近づいてくる理由が分からない。
「ホーホー、良い匂いがしたものでな」
チユンが近づいてきたのは単なる好奇心からであった。
立ち上る焚き火の煙が見えた。
冒険者でもいるのかと警戒して飛んでいたけれどそこにいたのはゴブリンだった。
さらによく見ると肉を焼いて食べているではないか。
ゴブリンどころかほとんどの魔物はそんなことしない。
その時点でかなり興味を持った。
さらにはチユンは以前焼いた肉を食べたことがあった。
焚き火で肉を焼いている最中に魔物に襲撃されたためにそこらに捨て置かれたものだったのだが食べてみると意外と美味かった。
その時のことを思い出してもいた。
普段は虫なんかを食べているのだけどロケットスパローは雑食性なので何でも食べられる。
「……食べるか?」
「ホーホー、良いのか?」
「あんたが満足する分はないがな」
ドゥゼアはチユンに焼いた肉を分け与えてやる。
別にただの善意ではない。
恩を売っておいて損なことなどないから分け与えるのだ。
空を飛べる魔物というのは弱くとも周辺の情報に通じていることが多い。
生き残った特殊個体ならばここらの支配者的な存在でもおかしくはないので出来るだけ好意的に接しておくのだ。
といってもドゥゼアたちが食べようとしていた肉などチユンからすると一口サイズ。
「ホーホー、美味い! やはり焼いてみるのは悪くないな。まあこのワシでは火をつけられないのだけどな」
パクリと肉を食べたチユンはニッコリと笑う。
「賢いゴブリンよ、感謝する。このようなものを食べられるのならば翼ではなく手があっても良いかもしれないな」
「俺はドゥゼアだ」
「そうか感謝するぞ、ドゥゼア」
チユンはかなり穏やかな性格のようで助かったなとドゥゼアは肉を食べながら思う。
「それにしても……そちらのクモも美味そうだ、ジュルリ」
「ぎゃああああ、目をつけられたである! もう終わりであるー!」
ちゃっかりとドゥゼアの懐にいるバイジェルンのこともチユンは見ていた。
普段は虫食なのでその目線で見た時にバイジェルンは魅力的な食料に見えた。
「こいつは勘弁してもらえますか?」
流石にバイジェルンが食べられては困る。
どうしてもというのなら戦う必要もあるかもしれないと少し警戒をあらわにする。
「ホーホー、別に食わんから安心しなさい。焼いたお肉ももらったしな」
「だってよ」
「助かったである……」
「それにしてもなぜこのようなところをゴブリンがうろついている? ここらにゴブリンの巣はないはずだが」
チユンが首を傾げる。
そもそも周辺にいないはずのゴブリンがこんなところにいるから興味を持ったのである。
ゴブリンも強くはない魔物でそんなに遠くまで集団でも移動しない。
「……新しい巣を探しているんだ」
「ホーホー、なるほど」
「チユンがこの辺りのボスなのか?」
少しの期待を持ってチユンがボスが尋ねる。
チユンほど穏やかで知恵のある魔物が周辺において力を持っているならこの辺りに住むのもいいかもしれないと思った。
見えているのは丸い胴体と翼ぐらい。
「ホーホー、そう警戒することもない。何も取って食おうとなんて思わんからな」
ゆっくりと翼を羽ばたかせてそれが降りてきた。
頭から背中にかけて褐色、腹部は白くてものを顔周りは黒っぽい。
体の大きさの割につぶらな瞳をした鳥類系の魔物であった。
「何者だ?」
少なくとも殺気のようなものは感じず、敵対するような雰囲気はない。
ドゥゼアもそんな相手を挑発する必要はないと下手に出る。
「力はなさそうだが賢そうだな。ワシはロケットスパローのチユンだ」
剣を引いたドゥゼアを見てチユンは感心したように目を細めた。
「ロケットスパロー……だと?」
ドゥゼアは驚きで目を見開いた。
ロケットスパローならドゥゼアも知っている。
ただ目の前にいる巨大な鳥の姿のものはドゥゼアが知っているロケットスパローではない。
「ロケットスパローってのはこんな……小さいやつだろ?」
ドゥゼアは手で知っているロケットスパローの大きさを示す。
ドゥゼアの手でも持てるぐらいの小型の魔物が本来のロケットスパローというやつである。
基本的には無害な魔物であり、追い詰められた時に捨て身の突撃をしてくることからロケットと名付けられている。
ゴブリンでも時々石を投げて上手く当たれば倒して食べるようなこともある。
デカくたって高が知れているのに目の前にいるチユンは全く違う魔物だと言われた方が納得できる大きさをしている。
「ふふふっ、そうだろう。ワシは特別だからな」
驚くドゥゼアを見てチユンは嬉しそうにしている。
他の個体とは違っている特別な個体であることを誇りに思っている。
予想通りの驚きを見せてくれて喜んでいた。
特殊個体というものが時折生まれることがある。
本来の姿とは異なった特徴や能力を持っていたりする魔物で、その特殊さが故に多くの場合長生きはできない。
けれどそれを乗り越えて生き延びた個体は強力な魔物になるということも多い。
チユンもこうした特殊個体の魔物なのだとドゥゼアは理解した。
「それで何の用だ?」
取って食うわけでもないのにゴブリンの集団に知能の高い魔物が近づいてくる理由が分からない。
「ホーホー、良い匂いがしたものでな」
チユンが近づいてきたのは単なる好奇心からであった。
立ち上る焚き火の煙が見えた。
冒険者でもいるのかと警戒して飛んでいたけれどそこにいたのはゴブリンだった。
さらによく見ると肉を焼いて食べているではないか。
ゴブリンどころかほとんどの魔物はそんなことしない。
その時点でかなり興味を持った。
さらにはチユンは以前焼いた肉を食べたことがあった。
焚き火で肉を焼いている最中に魔物に襲撃されたためにそこらに捨て置かれたものだったのだが食べてみると意外と美味かった。
その時のことを思い出してもいた。
普段は虫なんかを食べているのだけどロケットスパローは雑食性なので何でも食べられる。
「……食べるか?」
「ホーホー、良いのか?」
「あんたが満足する分はないがな」
ドゥゼアはチユンに焼いた肉を分け与えてやる。
別にただの善意ではない。
恩を売っておいて損なことなどないから分け与えるのだ。
空を飛べる魔物というのは弱くとも周辺の情報に通じていることが多い。
生き残った特殊個体ならばここらの支配者的な存在でもおかしくはないので出来るだけ好意的に接しておくのだ。
といってもドゥゼアたちが食べようとしていた肉などチユンからすると一口サイズ。
「ホーホー、美味い! やはり焼いてみるのは悪くないな。まあこのワシでは火をつけられないのだけどな」
パクリと肉を食べたチユンはニッコリと笑う。
「賢いゴブリンよ、感謝する。このようなものを食べられるのならば翼ではなく手があっても良いかもしれないな」
「俺はドゥゼアだ」
「そうか感謝するぞ、ドゥゼア」
チユンはかなり穏やかな性格のようで助かったなとドゥゼアは肉を食べながら思う。
「それにしても……そちらのクモも美味そうだ、ジュルリ」
「ぎゃああああ、目をつけられたである! もう終わりであるー!」
ちゃっかりとドゥゼアの懐にいるバイジェルンのこともチユンは見ていた。
普段は虫食なのでその目線で見た時にバイジェルンは魅力的な食料に見えた。
「こいつは勘弁してもらえますか?」
流石にバイジェルンが食べられては困る。
どうしてもというのなら戦う必要もあるかもしれないと少し警戒をあらわにする。
「ホーホー、別に食わんから安心しなさい。焼いたお肉ももらったしな」
「だってよ」
「助かったである……」
「それにしてもなぜこのようなところをゴブリンがうろついている? ここらにゴブリンの巣はないはずだが」
チユンが首を傾げる。
そもそも周辺にいないはずのゴブリンがこんなところにいるから興味を持ったのである。
ゴブリンも強くはない魔物でそんなに遠くまで集団でも移動しない。
「……新しい巣を探しているんだ」
「ホーホー、なるほど」
「チユンがこの辺りのボスなのか?」
少しの期待を持ってチユンがボスが尋ねる。
チユンほど穏やかで知恵のある魔物が周辺において力を持っているならこの辺りに住むのもいいかもしれないと思った。
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