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第四章

ゴブリンはゴブリンを連れて移動します3

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 少し休憩したドゥゼアたちはまたすぐに移動を始めた。

「ぱんぱかぱーん、バイジェルンであーる」

 移動しているとバイジェルンがドゥゼアの方に乗っかった。
 ドゥゼアたちの優秀な諜報員である。

「どうだった?」

「この辺りはオークだらけであーる。川の向こうも聞いてみたけど最近はオークばかりのようである。どうしてオークばかりになったのかは分からないである」

「そうか、ありがとう」
 
 ドゥゼアは懐からオークの干し肉を取り出すとバイジェルンにあげる。
 バイジェルンには周辺の魔物の調査をやってもらっていた。

 小型の魔物というのはウサギなどのような狩りをして倒す魔物を指している。
 意図する中に虫などの魔物はその中に含まれていないのだけど虫などまでに範囲を広げると虫はそこら中にいる。

 むしろ天敵となる小型の魔物もいないので虫にとっては住み良い環境とまで言える。
 もちろん小さいクモなんかもそうした虫の中に入る。

 バイジェルンはそこら辺にいるクモたちに周辺の状況を聞いて情報を集めてくれているのだ。
 バイジェルンによると周りにはやはりオークばかりがいるようである。

 川の向こうだと状況は違わないかと期待したけれど川の向こうも似たような感じのようだ。
 浅い川なのでオークならば渡るのも難しくない。

 川を挟んで状況が変わることはひとまずないみたいである。

「モグモグ……少し前まではオークなんていなかったらしいである。どうしてこんなふうに増えたであるかね?」

「まあ魔物の生態系が変わることは珍しくない」

 この広い世界では常に争いが起きている。
 ナワバリ争いだったり、あるいは生きるために狩りをすることもある。

 時には圧倒的強者の暇つぶしなこともあれば人間との衝突もある。
 戦いが当事者だけで終わればいいのだけどそうもいかないことが多い。

 ナワバリ争いなら負けた方は追い出されるし狩りから逃れるために遠く離れた地に行くこともある。
 強い魔物や人間の影響があれば生息域が変わることも珍しくなく、そうなるとその周りの魔物だって影響を受けて生活が大きく変わってしまうのである。

 オークも何かの影響を受けて本来いた生息域から逃げてきたのかもしれない。
 仕方のないことであるその良し悪しなど論ずることは出来ないものであることは仕方ない。

 何かがオークを追い出して、そしてそのオークに追い出されるような形で今はゴブリンたちが移動している。
 大きな自然の小さな一部である。

「とりあえずまたある程度移動したら頼むよ」

「承知したである」

 実際小型の魔物が周辺に繁殖しているかどうかを確かめるのは簡単なことではない。
 バイジェルンのクモ情報網は非常に優秀でとても助かっている。

「それにしてもドゥゼア殿は不思議なゴブリンであるな」

「あ?」

「悪く言っているのでないである。別に他のゴブリンなんか助ける必要もないのによく助けると感心しているである」

 一般的にバイジェルンの言うような考えの方が正しい。
 それなりに助け合うこともあるとはいっても魔物は魔物。

 わざわざ労力を割いて自分が所属もしていない群れのゴブリンを助ける必要なんてないのである。
 それなら別に助けなくてもいいと思うのは魔物として当然のことなのである。

 ただドゥゼアは普通のゴブリンとは違う。
 もういつのことだったかも分からないけれど一応ドゥゼアは元々人であった。

 かなり思考も魔物に染まってきてしまっているがどこかに人間っぽさがあるのは否めない。

「そうしたところも女王様に気に入られたのであるな~」

 だけど別に多少変な思考をしていても魔物は気にしない。
 むしろバイジェルンはそのことを面白いと思っている。

 押し付けられたような仕事であるが今は色々旅もできるし美味いものももらえる。
 さらには刺激的な経験も出来るのでいい役割を与えられたと満足している。

 ただの小さいクモではあり得ないようなことをしているのだ。

「夜になる前にもう一体ぐらいオーク狩っておきたいな」

「じゃあ探してくるである!」

 干し肉を食べ終わったバイジェルンは意気揚々とオークを探しに森の中に走っていってくれた。
 レビスやユリディカも能力として役立ってくれているが実際の貢献度合いでいったらバイジェルンが1番かもしれないなとドゥゼアはふっと笑ったのであった。
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