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第三章
ゴブリンは狩りをします5
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オークの解体も数を重ねると慣れてくるもので少し早くなった。
骨に引っかからないように肉を切り裂く。
自分たちの分を切り分けてもオークの肉はまだまだ余る。
本来なら必要な分を切り取ったらこの場を離れるのだが今回はさらにもうちょっとオーク肉を切り取る。
「ほらよ」
ドゥゼアはオーク肉をゴブリンに投げ渡す。
「イイ……ノカ?」
「ああ、だがまずはここから移動してからだ」
「ワカッタ」
これまでオークの解体途中に襲われたことは一度もないけれど警戒するに越したことはない。
お肉を大切そうに抱えたゴブリンと共にオークの死体から離れる。
もう口からダラダラとよだれを垂らして我慢の限界をゴブリンは迎えている。
「そろそろいいか」
十分な距離は離れた。
ドゥゼアがいいというとゴブリンはお肉にがっつき始めた。
普通のゴブリンならまず口にすることがないオークの肉。
ゴブリンはもうドゥゼアたちのことも見えていないようである。
ドゥゼアたちは結構多めに持ってきたオーク肉の半分を調理する。
今回はドゥゼアが薄めにお肉をスライスし、その間にみんなで焚き火や鉄板の準備をする。
焚き火に火をつけて鉄板が温かくなるまでの間に木の枝を適当に削って先を尖らせた。
「こんな感じで焼いていくんだ」
鉄板が温まったところでドゥゼアは木の棒で薄く切ったお肉を刺して鉄板に乗せる。
ある程度焼けたらまた木の棒で刺して裏返す。
「おお~」
ドゥゼアがやって見せるとみんな感心したように声を漏らす。
ステーキなんかはドゥゼアが焼いていたけれどちょっと時間がかかってしまう。
これならば各自で焼けるし各々好きな焼き加減、好きなペースで食べられる。
みんなもドゥゼアの真似をしてお肉を食べ始める。
オルケが一番うまくお肉をひっくり返し、レビスが続いて器用に焼いている。
ユリディカはおててが肉球なこともあって少し苦戦している。
それでもユリディカも割と賢い子であるので焼いていれば慣れてきていた。
「これ美味しいですね」
「私にはちょっとニオイがきついかな?」
さらに今回は少し工夫もしてみた。
たまたま木の上になっている果物を見つけた。
デザートにでもなればと思ってユリディカに木の上に登って取ってもらったのだけど果物の味は酸味が強くてデザートとしては不適であった。
そのまま食べるには厳しい果物であったがドゥゼアにかかれば果物もソースになる。
と言っても果物を絞った果汁に塩を混ぜてそれにお肉をつけて食べることにしたのである。
たまにはお肉の味を変えるのもいい。
果汁の酸味がお肉をさっぱりと食べさせてくれてオルケには評判が良かった。
爽やかな香りもするのだけどユリディカにとってはその強い香りが苦手なようである。
「これ好き」
「レビスはそっちがいいのか」
レビスが口にしているのは余った果汁を水に入れたものでお肉をつけるソースよりもこちらの果汁入り水の方がお気に召したようである。
ドゥゼアたちは焼肉パーティーを楽しんでいるがその横でお肉を半分残したゴブリンが焼いているお肉をジッと見ていた。
「食ってみるか?」
一度味を知ってしまうともう後には戻れないがオーク肉を食った時点でもう手遅れ。
ドゥゼアが木の棒に刺したお肉を差し出すとゴブリンは不用意にそれを受け取ってしまう。
アツアツのお肉なので当然手で持っていられない。
落とすわけにはいかないとお手玉でもするようにお肉を空中に放り投げてなんとか冷まし、程よい温度になったところで口に入れた。
「ウマ……イ」
生の時とはまた違う味わい。
生が好きか焼いたのが好きは完全にそれぞれの好みの差であるがどちらでもうまいものはうまい。
ちょいちょいドゥゼアが焼いた肉をゴブリンに与えてやるとなんでも言うことを聞きそうなぐらいにドゥゼアに対して目を輝かせていた。
「ここらにお前らの巣があるのか?」
そういえばバイジェルンも巣が近いと言っていたことを思い出した。
多少なりとも話せるということは少し知恵のある方のゴブリンである。
お肉をあげたのもただの慈善ではなくゴブリンの巣に案内してもらおうという算段あってのことだった。
いきなり押しかけるよりも巣の仲間の案内の下で向かった方が相手の警戒心も弱くなる。
「アル」
「ちょっと巣に行きたいんだけど案内してくれるか?」
「グガ、ワカッタ。デモ……」
ゴブリンはチラリとユリディカとオルケを見た。
レビスは明らかにゴブリンなのは良いとしてユリディカオルケは違う。
空腹に負けてこれまで気にしてこなかったけれど今一緒にいるのはゴブリンではとても勝てない相手であると気がついた。
今更感があるし襲われないので恐怖を感じていないがどんな関係なのかゴブリンは理解できていない。
「仲間だ」
「ナカマ……?」
なぜワーウルフとリザードマンが?と思わざるを得ないがお肉までくれた同胞のドゥゼアをゴブリンは一切疑うこともない。
ドゥゼアが仲間だと言うのなら仲間なのだろうとゴブリンはとりあえず理解した。
「仲間だ。だから一緒に行っても大丈夫」
「ムム……ワカッタ……」
骨に引っかからないように肉を切り裂く。
自分たちの分を切り分けてもオークの肉はまだまだ余る。
本来なら必要な分を切り取ったらこの場を離れるのだが今回はさらにもうちょっとオーク肉を切り取る。
「ほらよ」
ドゥゼアはオーク肉をゴブリンに投げ渡す。
「イイ……ノカ?」
「ああ、だがまずはここから移動してからだ」
「ワカッタ」
これまでオークの解体途中に襲われたことは一度もないけれど警戒するに越したことはない。
お肉を大切そうに抱えたゴブリンと共にオークの死体から離れる。
もう口からダラダラとよだれを垂らして我慢の限界をゴブリンは迎えている。
「そろそろいいか」
十分な距離は離れた。
ドゥゼアがいいというとゴブリンはお肉にがっつき始めた。
普通のゴブリンならまず口にすることがないオークの肉。
ゴブリンはもうドゥゼアたちのことも見えていないようである。
ドゥゼアたちは結構多めに持ってきたオーク肉の半分を調理する。
今回はドゥゼアが薄めにお肉をスライスし、その間にみんなで焚き火や鉄板の準備をする。
焚き火に火をつけて鉄板が温かくなるまでの間に木の枝を適当に削って先を尖らせた。
「こんな感じで焼いていくんだ」
鉄板が温まったところでドゥゼアは木の棒で薄く切ったお肉を刺して鉄板に乗せる。
ある程度焼けたらまた木の棒で刺して裏返す。
「おお~」
ドゥゼアがやって見せるとみんな感心したように声を漏らす。
ステーキなんかはドゥゼアが焼いていたけれどちょっと時間がかかってしまう。
これならば各自で焼けるし各々好きな焼き加減、好きなペースで食べられる。
みんなもドゥゼアの真似をしてお肉を食べ始める。
オルケが一番うまくお肉をひっくり返し、レビスが続いて器用に焼いている。
ユリディカはおててが肉球なこともあって少し苦戦している。
それでもユリディカも割と賢い子であるので焼いていれば慣れてきていた。
「これ美味しいですね」
「私にはちょっとニオイがきついかな?」
さらに今回は少し工夫もしてみた。
たまたま木の上になっている果物を見つけた。
デザートにでもなればと思ってユリディカに木の上に登って取ってもらったのだけど果物の味は酸味が強くてデザートとしては不適であった。
そのまま食べるには厳しい果物であったがドゥゼアにかかれば果物もソースになる。
と言っても果物を絞った果汁に塩を混ぜてそれにお肉をつけて食べることにしたのである。
たまにはお肉の味を変えるのもいい。
果汁の酸味がお肉をさっぱりと食べさせてくれてオルケには評判が良かった。
爽やかな香りもするのだけどユリディカにとってはその強い香りが苦手なようである。
「これ好き」
「レビスはそっちがいいのか」
レビスが口にしているのは余った果汁を水に入れたものでお肉をつけるソースよりもこちらの果汁入り水の方がお気に召したようである。
ドゥゼアたちは焼肉パーティーを楽しんでいるがその横でお肉を半分残したゴブリンが焼いているお肉をジッと見ていた。
「食ってみるか?」
一度味を知ってしまうともう後には戻れないがオーク肉を食った時点でもう手遅れ。
ドゥゼアが木の棒に刺したお肉を差し出すとゴブリンは不用意にそれを受け取ってしまう。
アツアツのお肉なので当然手で持っていられない。
落とすわけにはいかないとお手玉でもするようにお肉を空中に放り投げてなんとか冷まし、程よい温度になったところで口に入れた。
「ウマ……イ」
生の時とはまた違う味わい。
生が好きか焼いたのが好きは完全にそれぞれの好みの差であるがどちらでもうまいものはうまい。
ちょいちょいドゥゼアが焼いた肉をゴブリンに与えてやるとなんでも言うことを聞きそうなぐらいにドゥゼアに対して目を輝かせていた。
「ここらにお前らの巣があるのか?」
そういえばバイジェルンも巣が近いと言っていたことを思い出した。
多少なりとも話せるということは少し知恵のある方のゴブリンである。
お肉をあげたのもただの慈善ではなくゴブリンの巣に案内してもらおうという算段あってのことだった。
いきなり押しかけるよりも巣の仲間の案内の下で向かった方が相手の警戒心も弱くなる。
「アル」
「ちょっと巣に行きたいんだけど案内してくれるか?」
「グガ、ワカッタ。デモ……」
ゴブリンはチラリとユリディカとオルケを見た。
レビスは明らかにゴブリンなのは良いとしてユリディカオルケは違う。
空腹に負けてこれまで気にしてこなかったけれど今一緒にいるのはゴブリンではとても勝てない相手であると気がついた。
今更感があるし襲われないので恐怖を感じていないがどんな関係なのかゴブリンは理解できていない。
「仲間だ」
「ナカマ……?」
なぜワーウルフとリザードマンが?と思わざるを得ないがお肉までくれた同胞のドゥゼアをゴブリンは一切疑うこともない。
ドゥゼアが仲間だと言うのなら仲間なのだろうとゴブリンはとりあえず理解した。
「仲間だ。だから一緒に行っても大丈夫」
「ムム……ワカッタ……」
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