上 下
158 / 301
第三章

ゴブリンは狩りをします3

しおりを挟む
「オルケ出番だ!」

「お任せください!」

 考えていたのはオルケの魔法の活用であった。
 オルケは基本的に火を使うのだけど生前は火だけじゃなく色々な属性の基礎を修めていた。

 発展レベルの魔法は理論だけ学んだのみで使えないのだけど基礎的なものなら割と広く扱えた。
 焚き火の火をつけてもらうのはもちろんなのだけど他の属性も役立ちそうだと考えている。

「まずは水!」

「はい!」

 ドゥゼアはオルケの前にオーク肉を並べた。
 オルケがお肉に手を伸ばして意識を集中させる。

「ぬううぅ!」

 そしてお肉に魔力を集めるとお肉からジワーっと水が染み出してくる。
 ぽわりと宙に赤い肉の汁が浮かび上がる。

 ドゥゼアが考えていたのは肉の長期保存方法だった。
 煙でいぶしたりするもののそれでも結局長いこと持ちはしない。

 やはりもう少し長持ちさせたいのだけどのんびりと肉を干して干し肉にするような時間もないし、干し肉にするための大量に使える塩なんかもない。
 そこで二つの方法を考えた。

「食べていい?」

「ああ、いいぞ」
 
「ぱく……!」

「美味いか?」

「うん!」

「そうか」
 
 浮かび上がった肉の汁を眺めているユリディカ。
 ユリディカは生でのお肉も好きなので肉の汁も美味しいらしい。

 ドゥゼアが今オルケにやってもらおうとしているのは強制乾燥肉である。
 どうしても塩が自由に使えないのでのんびり乾燥させていると傷んでしまったりして上手く乾燥肉ならない。

 なので魔法で無理矢理水分を抜いてみようと思った。
 水が抜けて長持ちしてくれるならありがたい。

 乾燥しているなら持ち運びもしやすいし良いことが多い。
 オルケには3段階の水抜き肉を作ってもらった。

 とりあえず軽くの範囲で出来る水抜きからちょっと頑張ってもらったものまで3種類。
 
「半生……って感じだな」

 無理がなく軽く水を抜いてもらったものを指先で突いてみると柔らかさがある。
 表面的な水分は抜けたようであるがまだ中には水分が残っているようだ。

 もう少し薄めに切ってみればよかったかなと思ったのでもう少し小さくスライスするようにして水を抜きやすくしたものも軽く水を抜いてもらった。
 水を抜いたものをさらに半分に切って様子を見つつ、半分はさらに自然乾燥させてみることにもした。

「ふむ……ま、色々試してみるか」

 魔法で水抜いただけで上手くいくなんて考えてはいない。
 どこかにあるだろう効率の良いところを探していくことにしてのんびりとやっていく。

「次はちょっと期待している」

「やりますよ!」

 乾燥肉はまあ思いつきのようなもの。
 本命は次である。

「これぐらいならいけそうか?」

「任せてください」

 乾燥実験に使ったのとは別のお肉をオルケの前に置く。
 オルケはまたお肉に向かって手を伸ばして集中する。

「はああああっ!」

 今度はオルケの手から冷気が飛んでいく。
 
「おー」

 レビスが感心したように拍手を送る。
 オルケの魔法によってお肉は凍らされてしまった。

「ふふん!」

 どこか誇らしげなオルケ。
 魔法で役に立ったり褒められたりすると非常に嬉しそうにする。

 ドゥゼアがお肉を突いてみるとカチカチである。
 しっかり凍っている。

 これがドゥゼアのやりたかったことである。
 物を凍らせることによって長持ちさせる方法があると聞いたことがある。

 氷を作ってもらって冷やして運ぼうかとも思ったけれど氷と肉を持ち運ぶのは面倒だし場所を取るので直接凍らせてもらうことにした。
 オルケの魔力があれば溶けてきてもまた凍らせられるので凍った状態をキープすることもできる。

「乾燥と冷凍。何が良いかは様子見だな」

 とりあえず実験はここまでとする。

「ドゥゼアは色々考えるね」

「うんうん」

 様々なことを試してみるドゥゼアにユリディカとレビスはひどく感心している。
 たとえ1箇所に落ち着いたとしても狩りが成功にしなければお腹をすかしたままその日を終えることもある。

 それに比べてドゥゼアと一緒にいると空腹で悲しくなることはない。
 獲物を見つけては上手くみんなに指示を出して狩りも高い確率で成功させる。

 たまには失敗することもあるけどちゃんと前の狩りのものだったりを残していてご飯抜きとはならない。
 今もさらに食べ物の持ちを良くして食料事情の更なる改善を図ろうとしている。

 仲間を飢えさせない。
 これもまた優秀で賢いオスの証である。

「俺も食べるのは好きだからな」

 人よりもさらに娯楽のない魔物にあって性に乱れるのでなければ唯一の楽しみは食事ぐらいのもの。
 改善工夫できるのならやるだけやってみる。

「この辺り、肉……オークがいるならもう少しのんびり目に移動して実験をしてみてもいいかもな」

 それにオーク肉は美味い。
 オークなら倒せることもわかったし移動は続けるが少しペースを落としてオークを狩りつつ移動してもいいかもしれないと思った。

「さんせー!」

 ユリディカもオーク肉は気に入っていた。
 ステーキも美味しかったしもう少し食べていたいと思った。

 ということで次の日もオーク探しをすることにした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

働くおじさん異世界に逝く~プリンを武器に俺は戦う!薬草狩りで世界を制す~

山鳥うずら
ファンタジー
東京に勤務している普通のおっさんが異世界に転移した。そこは東京とはかけ離れた文明の世界。スキルやチートもないまま彼は異世界で足掻きます。少しずつ人々と繋がりを持ちながら、この無理ゲーな社会で一人の冒険者として生きる話。 少し大人の世界のなろうが読みたい方に楽しめるよう創りました。テンプレを生かしながら、なろう小説の深淵を見せたいと思います。 彼はどうやってハーレムを築くのか―― 底辺の冒険者として彼は老後のお金を貯められたのか―― ちょっとビターな異世界転移の物語。

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ
ファンタジー
今村大河(いまむらたいが)は中学3年生になった日に神から丁寧な説明とチート能力を貰う…事はなく勝手な神の個人的な事情に巻き込まれて異世界へと行く羽目になった。しかし転生されて早々に死にかけて、与えられたスキルによっても苦労させられるのであった。 なんでも出来るスキル(確定で出来るとは言ってない) *冒険者になるまでと本格的に冒険者活動を始めるまで、メインヒロインの登場などが結構後の方になります。それら含めて全体的にストーリーの進行速度がかなり遅いですがご了承ください。 *カクヨム、アルファポリスでも投降しております

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...