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第三章
ゴブリンはお宝奪取を目論みます3
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「ダンジョンにいて変なことはないか?」
「変なこと?」
「ああ、なんでもいい。
変なことがあったら言えよ」
「うん。
でも今は何でもないよ。
ドゥゼアと一緒にいれて嬉しいだけ」
ドゥゼアがこんなことを聞くのはユリディカの出自が関わっている。
ダンジョンの魔物であったユリディカはダンジョンから解放されて今ここにいる。
一応ここもダンジョンの中ではある。
ダンジョンがユリディカと共鳴することなんてないと思うけど万が一がある。
ユリディカに異常がありそうなら外で待っていてもらうことも考えておかねばならない。
今のところ何ともないというのならいいのだけど。
ユリディカはドゥゼアに密着するように歩き、尻尾をドゥゼアの腕に絡める。
道中一度アイアンテールウィーゼルに遭遇したけれど金属部分が一か所の弱いアイアンテールウィーゼルであったために何の問題もなく片付けた。
「終わった?」
「いや、まだかかりそうだ」
「そう」
ダンジョンから洞窟に戻ってくると頭を半分だけだけ出して水の精霊が出迎えてくれる。
冷めた夫婦のような淡白な会話であるがこうして姿を見せてくれるようになっただけ仲良くはなった。
「水もらっていくぞ」
「どうぞ」
一応水の精霊の許可をもらって水筒に水を汲む。
「気をつけて」
「おう、ありがとう」
煙でいぶしたイタチ肉が1つ減ってるな。
横目で焚き火のところを確認したドゥゼアはそう思った。
わざわざ気をつけてとまで言うから何かと思ったらそういうことかと笑顔を浮かべた。
急足でレビスたちのところに戻る。
今度もまたアイアンテールウィーゼルに出会ったけれどユリディカの強化も使ってサクサク倒す。
「戻ったぞ」
「お帰り」
「何か問題はなかったか?」
「一回だけアイアンテールウィーゼルが来た」
「大丈夫か?」
「問題なし」
戻ってくるとレビスが笑みを浮かべて出迎えてくれた。
最近少し感情も豊かになったような気がする。
一度アイアンテールウィーゼルの襲撃があったようだが特にケガもしていなさそうだ。
「ほら、水だ。
飲んで休んでも回復しとけ」
「ありがと」
「……あいつは何してるんだ?」
オルケは余った丸太の上にいた。
両手を広げて危なっかしくふらふらとしている。
「バランスの練習」
「あー、なるほどな」
1人だけ丸太に情けなくしがみついていたのが悔しかったらしい。
体の能力としてはバランスを取ることも出来るはずなのだからやれば慣れるかもしれないとオルケは丸太の上に立つ練習をしていた。
微笑ましい努力ではある。
「わ、たっ!」
ただ今のところその努力はまだ身を結んでいないようで手をバタバタとさせてオルケが丸太の上から落ちる。
「くぅん……」
それでも立てるようになっただけ成長はしている。
「オルケ」
「げっ!
み、見てた?」
「見てたさ。
少し立てるようになってたじゃないか」
ドゥゼアはオルケにも水筒を渡す。
出来なかったことよりも出来たことに目を向ける。
「ありがとう……」
褒められてオルケの尻尾が少しクルリと丸くなる。
「オルケはそうだな……もっと尻尾を使え」
「尻尾ですか?」
「そうだ。
ユリディカの尻尾と違ってリザードマンの尻尾はそれそのものが手足のようなものだ。
重さもある。
ただ尻尾を無視してもうまくバランスは取れるようにならない。
尻尾も活用してこそ上手くいくはずだ」
「尻尾……」
オルケは尻尾を動かして目の前に持ってくる。
リザードマンの体になったばかりの時は尻尾を動かすという感覚がうまく掴めなかった。
しかしこの体で過ごしているうちに何となく尻尾の感覚も掴めてきて動かせるようになってきた。
尻尾を活用するということはこれまで考えてこなかった。
確かに尻尾は強靭で強い。
パシパシと強めに地面を叩くと少し抉れるほどには威力も出る。
上手く扱えば尻尾で色々と持ち上げたり手のような器用さもある。
尻尾を扱えればもっと強くなれるかもしれない。
「ともかくケガはするなよ」
ドゥゼアはよく見てくれている。
褒めてくれるし心配してくれる。
これまでますオルケのことを気にかけてくれたのはフォダエぐらいだった。
ドゥゼアが何気なくかけてくれた言葉が嬉しくてまた意図せず尻尾の先が丸くなってしまう。
ドゥゼアたちはのんびりと体を休めてレビスの回復を待った。
そしてレビスが回復したところでまたアイテムを製作してもらう。
その間にもオルケはまた丸太チャレンジをしていた。
「ほ、本当にこれでいけるの?」
「まあやるだけやってみるさ」
そしてレビスにアイテムを作ってもらって、それをさらに加工して完成させた。
作ってもらったのは長い金属の棒。
その先端にロープをくくりつけている。
パッと見た感じ釣り竿みたいなものであるがそんなに用途としては違わない。
ロープの逆の端をドゥゼアは自分の体にくくりつけた。
そして金属の棒はユリディカに持ってもらう。
本当にこんなものでお宝を取ることができるのかとユリディカは不安そうである。
「文字通りお宝を釣り上げてやるのさ」
「変なこと?」
「ああ、なんでもいい。
変なことがあったら言えよ」
「うん。
でも今は何でもないよ。
ドゥゼアと一緒にいれて嬉しいだけ」
ドゥゼアがこんなことを聞くのはユリディカの出自が関わっている。
ダンジョンの魔物であったユリディカはダンジョンから解放されて今ここにいる。
一応ここもダンジョンの中ではある。
ダンジョンがユリディカと共鳴することなんてないと思うけど万が一がある。
ユリディカに異常がありそうなら外で待っていてもらうことも考えておかねばならない。
今のところ何ともないというのならいいのだけど。
ユリディカはドゥゼアに密着するように歩き、尻尾をドゥゼアの腕に絡める。
道中一度アイアンテールウィーゼルに遭遇したけれど金属部分が一か所の弱いアイアンテールウィーゼルであったために何の問題もなく片付けた。
「終わった?」
「いや、まだかかりそうだ」
「そう」
ダンジョンから洞窟に戻ってくると頭を半分だけだけ出して水の精霊が出迎えてくれる。
冷めた夫婦のような淡白な会話であるがこうして姿を見せてくれるようになっただけ仲良くはなった。
「水もらっていくぞ」
「どうぞ」
一応水の精霊の許可をもらって水筒に水を汲む。
「気をつけて」
「おう、ありがとう」
煙でいぶしたイタチ肉が1つ減ってるな。
横目で焚き火のところを確認したドゥゼアはそう思った。
わざわざ気をつけてとまで言うから何かと思ったらそういうことかと笑顔を浮かべた。
急足でレビスたちのところに戻る。
今度もまたアイアンテールウィーゼルに出会ったけれどユリディカの強化も使ってサクサク倒す。
「戻ったぞ」
「お帰り」
「何か問題はなかったか?」
「一回だけアイアンテールウィーゼルが来た」
「大丈夫か?」
「問題なし」
戻ってくるとレビスが笑みを浮かべて出迎えてくれた。
最近少し感情も豊かになったような気がする。
一度アイアンテールウィーゼルの襲撃があったようだが特にケガもしていなさそうだ。
「ほら、水だ。
飲んで休んでも回復しとけ」
「ありがと」
「……あいつは何してるんだ?」
オルケは余った丸太の上にいた。
両手を広げて危なっかしくふらふらとしている。
「バランスの練習」
「あー、なるほどな」
1人だけ丸太に情けなくしがみついていたのが悔しかったらしい。
体の能力としてはバランスを取ることも出来るはずなのだからやれば慣れるかもしれないとオルケは丸太の上に立つ練習をしていた。
微笑ましい努力ではある。
「わ、たっ!」
ただ今のところその努力はまだ身を結んでいないようで手をバタバタとさせてオルケが丸太の上から落ちる。
「くぅん……」
それでも立てるようになっただけ成長はしている。
「オルケ」
「げっ!
み、見てた?」
「見てたさ。
少し立てるようになってたじゃないか」
ドゥゼアはオルケにも水筒を渡す。
出来なかったことよりも出来たことに目を向ける。
「ありがとう……」
褒められてオルケの尻尾が少しクルリと丸くなる。
「オルケはそうだな……もっと尻尾を使え」
「尻尾ですか?」
「そうだ。
ユリディカの尻尾と違ってリザードマンの尻尾はそれそのものが手足のようなものだ。
重さもある。
ただ尻尾を無視してもうまくバランスは取れるようにならない。
尻尾も活用してこそ上手くいくはずだ」
「尻尾……」
オルケは尻尾を動かして目の前に持ってくる。
リザードマンの体になったばかりの時は尻尾を動かすという感覚がうまく掴めなかった。
しかしこの体で過ごしているうちに何となく尻尾の感覚も掴めてきて動かせるようになってきた。
尻尾を活用するということはこれまで考えてこなかった。
確かに尻尾は強靭で強い。
パシパシと強めに地面を叩くと少し抉れるほどには威力も出る。
上手く扱えば尻尾で色々と持ち上げたり手のような器用さもある。
尻尾を扱えればもっと強くなれるかもしれない。
「ともかくケガはするなよ」
ドゥゼアはよく見てくれている。
褒めてくれるし心配してくれる。
これまでますオルケのことを気にかけてくれたのはフォダエぐらいだった。
ドゥゼアが何気なくかけてくれた言葉が嬉しくてまた意図せず尻尾の先が丸くなってしまう。
ドゥゼアたちはのんびりと体を休めてレビスの回復を待った。
そしてレビスが回復したところでまたアイテムを製作してもらう。
その間にもオルケはまた丸太チャレンジをしていた。
「ほ、本当にこれでいけるの?」
「まあやるだけやってみるさ」
そしてレビスにアイテムを作ってもらって、それをさらに加工して完成させた。
作ってもらったのは長い金属の棒。
その先端にロープをくくりつけている。
パッと見た感じ釣り竿みたいなものであるがそんなに用途としては違わない。
ロープの逆の端をドゥゼアは自分の体にくくりつけた。
そして金属の棒はユリディカに持ってもらう。
本当にこんなものでお宝を取ることができるのかとユリディカは不安そうである。
「文字通りお宝を釣り上げてやるのさ」
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