100 / 301
第二章
ゴブリンはリッチに協力します1
しおりを挟む
オルケに見つかり、一応客人として扱ってもらい始めてから3日が経った。
屋敷の管理はオルケがやっているようで毎日順番に部屋を掃除していっている。
それでも一日中活動していられるスケルトンであるので暇な時間は多い。
特に夜中はすることがないようだったのだけど同じく寝ないピュアンが話に付き合ってくれるらしくてすこぶる機嫌はよかった。
「聞いてもいいか?」
「何でしょうか?」
「何で食べ物があるんだ?」
オルケは食事の世話なんかをしてくれる。
料理の腕は上手く温かいものが食べられて文句なんて何一つないのだけど疑問はあった。
どこから食べ物が出ているのか、である。
この屋敷にドゥゼアたち以外に生きているものはいない。
当然のことながらスケルトンは食事を取らなくても生きていけるので食べ物を必要としない。
ならなぜ食べ物があるのか。
「それはご主人様が買ってくるからです」
「……リッチだろ?」
リッチもアンデッドだ。
体の構造的にはスケルトンとほぼ同じく骨の魔物である。
不老不死、不眠不食で生きていく上で必要なものが極端に少ない。
食べ物を買ってくる理由などないのだ。
「食料品はいらないのですが事情もあるのです。
ご主人様は人に化けて時々町に必要なものを買いに行ったりもするのですがそうした行いが頻繁になるほど相手に違和感を持たせないような振る舞いが必要だと言っていました」
「それはそうだな」
「必要なものだけ買っていてはどうしても不自然に見えてしまう時があります。
なのでご主人様はカモフラージュとして色々と買い込んだりします」
「なるほどね」
「そうして買い物をしているのに食べるものを一切買わないというのもまた不自然に映ります。
だから時々たくさん食べ物を買い込んで生きている人のように偽装したりするのです」
「そうなのか」
思ってたよりちゃんとした理由があった。
確かにいかにも実験に使いそうな特殊なものばかり買っては注目を集めてしまう。
そこで日用品を買って紛れさせたり、食料品を買って一般人に溶け込むことで不用意な注目を避けているのだ。
「食べないんですけどね。
でももったいないので日持ちしそうなものは置いておいて、そうでないものもご主人様が魔法で凍らせて一応保存しています。
いつか食べる日が来るかもしれませんし、こんな風にお客様が来ることだってあるかもしれませんからね!」
食べる日も来ないし客が来ることもない。
そう思っていたのだけど食事を必要とする客が来てくれた。
オルケはカラカラと笑う。
味気ない日常に話し相手と料理の時間まで出来てとても嬉しかった。
自分じゃ食べないけれど他者のために料理を作って、それを美味いと言って食べてもらえるのは非常に楽しみである。
それに加えて命令すればスケルトンがカエルも狩って来てくれるので肉については新鮮なものも手に入る。
「それにしてもご主人様も遅い……」
「オルケ、帰ったぞー!」
ユリディカのおかわりを山盛りオルケが運んでいるとバンと激しくドアが開いた。
額に黒い宝石のようなものが埋め込まれたスケルトンが入ってきた。
「……ぎゃー!
我が家に見知らぬ魔物がいて、なんか食事してるぅー!」
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「なななな、なにこれ!」
「お客様です」
「いや、私知らないよー?」
リッチとのファーストコンタクトはどうなるのか心配であったが思いの外軽いものになってしまいそうだった。
「ちょっ……どういうことよ?」
ーーーーー
「ふぅーん、なるほろねー」
とりあえず最後の晩餐になるかもしれないから食事だけは腹に詰め込んで、そしてリッチとお話しさせてもらうことになった。
オルケが間に入ってくれたけれどリッチもすぐに攻撃してくるようなことはなく理性的だった。
むしろ食べ物を詰め込むのを待ってくれていたりドゥゼアの話を聞いてくれたりと寛大な方である。
ドゥゼアたちの正面に座ったリッチの名前はフォダエといい、ここに来た経緯を説明するとちゃんと最後まで聴いてくれた。
「な、何という愛……」
事情を聞いてオルケは感動していた。
涙の出ない体であるがもし人の体だったならむせび泣いていたかもしれない。
愛のためにコイチャを止めようとしているピュアン。
そしてピュアンのためにこんな危険な場所にも飛び込んできたドゥゼアたち。
なかなかな冒険物語だった。
「ご主人様~」
「でも意識も何もないのだろう?
ならばもう死んでるも同然じゃないか」
「なんてことを!」
サラッとひどいことを言ってのけるフォダエにオルケが激昂する。
「この愛が分からないのですか!」
「分からん。
愛なんてもの知る前にこうなったからな」
「んもー!
あんなに恋愛小説好きだったくせしてー!」
「なっ、それとこれとは話が別じゃないか!」
まあ何というか、意外と良いリッチそうというのが今のところのドゥゼアの感想であった。
ご主人様というからにはオルケにとってはフォダエは主人なはずなのに関係性的にはかなり打ち解けたような雰囲気がある。
2人は騒々しくやいのやいのと言い争う。
少なくともコイチャを返せと言って怒り出すことはなかったので安心した。
屋敷の管理はオルケがやっているようで毎日順番に部屋を掃除していっている。
それでも一日中活動していられるスケルトンであるので暇な時間は多い。
特に夜中はすることがないようだったのだけど同じく寝ないピュアンが話に付き合ってくれるらしくてすこぶる機嫌はよかった。
「聞いてもいいか?」
「何でしょうか?」
「何で食べ物があるんだ?」
オルケは食事の世話なんかをしてくれる。
料理の腕は上手く温かいものが食べられて文句なんて何一つないのだけど疑問はあった。
どこから食べ物が出ているのか、である。
この屋敷にドゥゼアたち以外に生きているものはいない。
当然のことながらスケルトンは食事を取らなくても生きていけるので食べ物を必要としない。
ならなぜ食べ物があるのか。
「それはご主人様が買ってくるからです」
「……リッチだろ?」
リッチもアンデッドだ。
体の構造的にはスケルトンとほぼ同じく骨の魔物である。
不老不死、不眠不食で生きていく上で必要なものが極端に少ない。
食べ物を買ってくる理由などないのだ。
「食料品はいらないのですが事情もあるのです。
ご主人様は人に化けて時々町に必要なものを買いに行ったりもするのですがそうした行いが頻繁になるほど相手に違和感を持たせないような振る舞いが必要だと言っていました」
「それはそうだな」
「必要なものだけ買っていてはどうしても不自然に見えてしまう時があります。
なのでご主人様はカモフラージュとして色々と買い込んだりします」
「なるほどね」
「そうして買い物をしているのに食べるものを一切買わないというのもまた不自然に映ります。
だから時々たくさん食べ物を買い込んで生きている人のように偽装したりするのです」
「そうなのか」
思ってたよりちゃんとした理由があった。
確かにいかにも実験に使いそうな特殊なものばかり買っては注目を集めてしまう。
そこで日用品を買って紛れさせたり、食料品を買って一般人に溶け込むことで不用意な注目を避けているのだ。
「食べないんですけどね。
でももったいないので日持ちしそうなものは置いておいて、そうでないものもご主人様が魔法で凍らせて一応保存しています。
いつか食べる日が来るかもしれませんし、こんな風にお客様が来ることだってあるかもしれませんからね!」
食べる日も来ないし客が来ることもない。
そう思っていたのだけど食事を必要とする客が来てくれた。
オルケはカラカラと笑う。
味気ない日常に話し相手と料理の時間まで出来てとても嬉しかった。
自分じゃ食べないけれど他者のために料理を作って、それを美味いと言って食べてもらえるのは非常に楽しみである。
それに加えて命令すればスケルトンがカエルも狩って来てくれるので肉については新鮮なものも手に入る。
「それにしてもご主人様も遅い……」
「オルケ、帰ったぞー!」
ユリディカのおかわりを山盛りオルケが運んでいるとバンと激しくドアが開いた。
額に黒い宝石のようなものが埋め込まれたスケルトンが入ってきた。
「……ぎゃー!
我が家に見知らぬ魔物がいて、なんか食事してるぅー!」
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「なななな、なにこれ!」
「お客様です」
「いや、私知らないよー?」
リッチとのファーストコンタクトはどうなるのか心配であったが思いの外軽いものになってしまいそうだった。
「ちょっ……どういうことよ?」
ーーーーー
「ふぅーん、なるほろねー」
とりあえず最後の晩餐になるかもしれないから食事だけは腹に詰め込んで、そしてリッチとお話しさせてもらうことになった。
オルケが間に入ってくれたけれどリッチもすぐに攻撃してくるようなことはなく理性的だった。
むしろ食べ物を詰め込むのを待ってくれていたりドゥゼアの話を聞いてくれたりと寛大な方である。
ドゥゼアたちの正面に座ったリッチの名前はフォダエといい、ここに来た経緯を説明するとちゃんと最後まで聴いてくれた。
「な、何という愛……」
事情を聞いてオルケは感動していた。
涙の出ない体であるがもし人の体だったならむせび泣いていたかもしれない。
愛のためにコイチャを止めようとしているピュアン。
そしてピュアンのためにこんな危険な場所にも飛び込んできたドゥゼアたち。
なかなかな冒険物語だった。
「ご主人様~」
「でも意識も何もないのだろう?
ならばもう死んでるも同然じゃないか」
「なんてことを!」
サラッとひどいことを言ってのけるフォダエにオルケが激昂する。
「この愛が分からないのですか!」
「分からん。
愛なんてもの知る前にこうなったからな」
「んもー!
あんなに恋愛小説好きだったくせしてー!」
「なっ、それとこれとは話が別じゃないか!」
まあ何というか、意外と良いリッチそうというのが今のところのドゥゼアの感想であった。
ご主人様というからにはオルケにとってはフォダエは主人なはずなのに関係性的にはかなり打ち解けたような雰囲気がある。
2人は騒々しくやいのやいのと言い争う。
少なくともコイチャを返せと言って怒り出すことはなかったので安心した。
8
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
国を建て直す前に自分を建て直したいんだが! ~何かが足りない異世界転生~
猫村慎之介
ファンタジー
オンラインゲームをプレイしながら寝落ちした佐藤綾人は
気が付くと全く知らない場所で
同じオンラインゲームプレイヤーであり親友である柳原雅也と共に目覚めた。
そこは剣と魔法が支配する幻想世界。
見た事もない生物や、文化が根付く国。
しかもオンラインゲームのスキルが何故か使用でき
身体能力は異常なまでに強化され
物理法則を無視した伝説級の武器や防具、道具が現れる。
だがそんな事は割とどうでも良かった。
何より異変が起きていたのは、自分自身。
二人は使っていたキャラクターのアバターデータまで引き継いでいたのだ。
一人は幼精。
一人は猫女。
何も分からないまま異世界に飛ばされ
性転換どころか種族まで転換されてしまった二人は
勢いで滅亡寸前の帝国の立て直しを依頼される。
引き受けたものの、帝国は予想以上に滅亡しそうだった。
「これ詰んでるかなぁ」
「詰んでるっしょ」
強力な力を得た代償に
大事なモノを失ってしまった転生者が織りなす
何かとままならないまま
チートで無茶苦茶する異世界転生ファンタジー開幕。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
異世界漂流者ハーレム奇譚 ─望んでるわけでもなく目指してるわけでもないのに増えていくのは仕様です─
虹音 雪娜
ファンタジー
単身赴任中の派遣SE、遊佐尚斗は、ある日目が覚めると森の中に。
直感と感覚で現実世界での人生が終わり異世界に転生したことを知ると、元々異世界ものと呼ばれるジャンルが好きだった尚斗は、それで知り得たことを元に異世界もの定番のチートがあること、若返りしていることが分かり、今度こそ悔いの無いようこの異世界で第二の人生を歩むことを決意。
転生した世界には、尚斗の他にも既に転生、転移、召喚されている人がおり、この世界では総じて『漂流者』と呼ばれていた。
流れ着いたばかりの尚斗は運良くこの世界の人達に受け入れられて、異世界もので憧れていた冒険者としてやっていくことを決める。
そこで3人の獣人の姫達─シータ、マール、アーネと出会い、冒険者パーティーを組む事になったが、何故か事を起こす度周りに異性が増えていき…。
本人の意志とは無関係で勝手にハーレムメンバーとして増えていく異性達(現在31.5人)とあれやこれやありながら冒険者として異世界を過ごしていく日常(稀にエッチとシリアス含む)を綴るお話です。
※横書きベースで書いているので、縦読みにするとおかしな部分もあるかと思いますがご容赦を。
※纏めて書いたものを話数分割しているので、違和感を覚える部分もあるかと思いますがご容赦を(一話4000〜6000文字程度)。
※基本的にのんびりまったり進行です(会話率6割程度)。
※小説家になろう様に同タイトルで投稿しています。
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!
果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。
次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった!
しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……?
「ちくしょう! 死んでたまるか!」
カイムは、殺されないために努力することを決める。
そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る!
これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。
本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています
他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります
異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました
ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。
会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。
タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる