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第二章

ゴブリンはカエルの商人に出会いました4

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「感謝するよ」

「ゲコ……是非ともアラクネの女王にはよろしくお伝えくださるとありがたいゲコ」

「機会があればな」

 ヘラヘラとしているゲコットを見るにアラクネと過去に何かがあったのかもしれない。
 その結果今の協力関係があると考えるとおかしな話でもない。

「それと最後に聞きたいことがある」
 
「なんだゲコ?」

「最近魔物に厳しくなった国……特にゴブリンに厳しい国はないか?」

「ゲコ?」

 不思議な質問をするものだとゲコットは首を傾げた。

「……元々魔物には人間は厳しいゲコ。
 施政者が変われば方針が全く異なってしまうこともあるゲコ」

 ゲコットだってのうのうと魔人商人を続けてきたわけじゃない。
 中には人間に討伐されかけたりすることも過去にはあった。

 これまで受け入れてくれていた国のトップが変わって急に取引を受けてくれなくなったこともある。
 地域レベルでもそんなこともあったり、領主などが受け入れてくれても冒険者が受け入れてくれないこともある。

 魔人商人も日々を必死で生きていた。
 魔物に厳しい国はないかと聞かれてもほとんどの国では魔物に厳しいと言わざるを得ない。

「いや……そういえば事件があったゲコ」

「事件?」

「少し昔のことゲコ。
 ここからだいぶ離れた国で俺とはまた別の魔人商人が活躍していたゲコ。

 商業ギルドにも所属して腕も良くて信頼も得ていた魔人商人だったゲコが……殺されてしまったゲコ」

 複雑な表情を浮かべるゲコット。
 直接見聞きした話ではなく又聞きのようなものであるが当時魔人商人の間では非常に重たい話題となった。

 とある国の往来の真ん中で魔人商人が惨殺された。
 都市の外で会ったわけでもなく、魔人商人が暴れていたのでもない。

 商談を終えて往来を歩いていた魔人商人に斬りかかり、有無を言わさず殺してしまった酷い事件があったのだ。
 魔人商人を保護している商業ギルドはひどく怒って抗議した。

 ともかく調べる時間が欲しいと国の方でもお願いしたのだけど結局時間をかけて調べても肩がぶつかったということすらない襲撃であった。
 商業ギルドに保護された魔人商人は一般市民と同じ権利を得ている。

 つまり魔人商人を殺すことはなんの罪もない一般人を殺したのと同じことなのである。
 商業ギルドは厳罰を望んだ。

 このままでは示しもつかない。
 さらには理由が分からない以上普通の商人たちだって危険に晒されてしまうかもしれない。

「結局その殺害犯は国から永久追放となったゲコ。
 重たい処分ではあるゲコが商人を理由もなく殺しておいてそれは軽いと非難もあったゲコ」

 自分の国から追い出されることは重たい罰となる。
 けれども結果的には一般市民を突然殺すヤバい人を世の中に放っただけではないかとゲコットは思う。

「後々聞くとどうにもその人は国では英雄と呼ばれる人だったらしいゲコ。
 そのためか国外追放という温情で済ませたらしいゲコ。

 さらに伝え聞いた噂によると殺害の原因はその魔人商人がホブゴブリンだったから、なんてことも聞いたゲコ」

「ホブゴブリンだったから殺しただと?」

「実際のことは何も知らないゲコ。
 でもそんな噂があるって話だゲコ」

「…………そうか」

「ゴブリンに厳しい国……少し調べてみるゲコ」

「助かるよ」

「是非とも良い関係を築ければゲコ」

 心がざわつくような妙な話を聞いた。
 ゲコットと別れてドゥゼアたちは旅を続ける。

 良い取引が出来たことには喜びあるけれどどことなく胸に引っかかるような思いがドゥゼアには残っていた。
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