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第二章
ゴブリンはアンデッドの所に向かいます1
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杖の名前はチクートというらしい。
今はもう杖じゃなくユリディカに合わせた鉤爪の形をしている。
形態が違うのでピュアンも少し教えるのに困惑を見せていたけれど徐々に分かってきた。
チクートはその形態だけでなく能力もある程度ユリディカのために合わせてくれているようである。
杖の時には一本の杖で自分で力をうまく使い分ける必要があった。
しかし鉤爪の形になったチクートは左右で持つ能力が違っていた。
右手に癒し、左手に強化。
非常に分かりやすく力を扱えるようになっていた。
「ぬぬん!」
ユリディカがチクートを身につけた左手をドゥゼアに向けて唸っている。
しかしドゥゼアには何の変化もない。
分かりやすいこととそれをちゃんと扱えることはまた別問題である。
ユリディカは魔力の扱いが下手くそだった。
そもそもワーウルフはそんなに知能の高い魔物でもなければ魔法を巧みに操るような魔物でもない。
ゴブリンに比べればマシではあるけれどあくまでもマシであるという程度の差しかない。
ユリディカも馬鹿とは言わないけれど賢いかと言われると少し肯定しにくい。
よく言えば前向きなのだけどぽんやりとした能天気な側面があることは否めない。
これまでも魔力をコントロールする必要がなかったのでユリディカは魔力を操るのが上手くない。
周りを強化するのにも魔力が必要なのである。
神から力を与えられてユリディカの魔力は増えた。
だけどその魔力を使って強化をするのは中々上手く出来なかった。
「なぁーん!
どーしてぇー!」
何の変化も起こせなくてユリディカが膝から崩れ落ちる。
ここ数日こんな調子である。
バイジェルンは情報収集に時間がかかっているのか中々と持ってこなくてユリディカはひたすら力を使えるように努力していた。
結果はよろしくないけどともかく頑張ってはいる。
古代遺跡で冒険者と戦った時には確かにレビスを強化していた。
けれど戦いの最中だったしチクートを身につけたばかりで昂ってもいた。
ピュアンに習いながら強化をしてみようとしたのだけど中々上手くいかず、その時の感覚を思い出してみようともしたけど思い出せなかった。
「うわーん、どうやったらいいのぉー!」
ドゥゼアが思うにユリディカは超が付くほどの感覚派。
理論を習うことも悪くはないのだけど己の感覚で掴まないことには前に進めないタイプなのだろう。
逆に感覚を一度掴んでしまえはユリディカはあっという間に扱えるはずだ。
そのキッカケが何になるのかは分からないのでドゥゼアにもどうしようもないけれど。
「遅いぞ!」
ただバイジェルンを待つ間ドゥゼアとレビスも遊んでいるのではない。
少しでも強くなるために努力はする。
ドゥゼアはレビスを指導していた。
レビスは知能的には高く、冷静さも持ち合わせているが能力的にはまだまだである。
けれど考えて動けることは強みであり、少しでも強くなっておけば考えて切り抜けられるような可能性が大きくなる。
ドゥゼアが最初に選んであげた槍をずっと使っているレビスに槍の使い方を叩き込む。
ただ考えることはレビスの弱点にもなりうる。
行動するのに考えてしまうとどうしても行動がワンテンポ遅れる。
いざという時は考えずとも体を動かせるような必要がある。
何度もレビスの体に動きを叩き込む。
意識しなくても動けるように。
いくつかとっさにできたら命を助ける動きというものを教える。
普通の戦いもレベルアップ出来るように組み手形式で繰り返し戦っている。
「まだ……まだ!」
その中でレビスは悔しさを感じていた。
ドゥゼアが強いのは当然のこと。
勝てないとは分かっている。
だけど悔しい。
ドゥゼアとレビスはほぼ同時期に生まれた。
同じ生存競争を生き抜いてきて、ずっと一緒にいて同じような経験もしてきているのにドゥゼアに敵わない。
もっとドゥゼアと肩を並べて歩んでいくには強くならねばならない。
「……良い目をしてるな」
レビスは冷静だ。
でも心のどこかに熱いものがある。
時には仲間を踏み越えて生き抜く強かさもある。
こんなゴブリンは珍しい。
レビスがドゥゼアにかかっていく。
少しずつだけど鋭さを増していくレビスにドゥゼアも喜びを感じている。
「あっ!」
突き出されたレビスの槍を弾いてドゥゼアが首にナイフを突きつける。
今度こそ行けると思ったのにとレビスが悔しそうな顔をした。
「今のは危なかったな。
……忘れるな。
俺たちは弱い。
だけど諦めるな、自分に限界を決めつけるな。
俺たちには可能性がある」
最低でもゴブリンにはホブゴブリンするという希望がある。
ホブゴブリンになったところでという話はあるけれどホブゴブリンからさらに進化を遂げる可能性もゴブリンにはあるらしい。
そして自分の限界を自分で決めてしまうとそこから成長することもできなくなる。
負けた悔しさを持てるレビスならきっとまだまだ成長できるとドゥゼアは信じている。
「出来ないよー!」
出来なくて悔しがっているユリディカも同様だ。
「お待たせしたであるー!」
お昼に干し肉をかじっているとバイジェルンがふと戻ってきた。
今はもう杖じゃなくユリディカに合わせた鉤爪の形をしている。
形態が違うのでピュアンも少し教えるのに困惑を見せていたけれど徐々に分かってきた。
チクートはその形態だけでなく能力もある程度ユリディカのために合わせてくれているようである。
杖の時には一本の杖で自分で力をうまく使い分ける必要があった。
しかし鉤爪の形になったチクートは左右で持つ能力が違っていた。
右手に癒し、左手に強化。
非常に分かりやすく力を扱えるようになっていた。
「ぬぬん!」
ユリディカがチクートを身につけた左手をドゥゼアに向けて唸っている。
しかしドゥゼアには何の変化もない。
分かりやすいこととそれをちゃんと扱えることはまた別問題である。
ユリディカは魔力の扱いが下手くそだった。
そもそもワーウルフはそんなに知能の高い魔物でもなければ魔法を巧みに操るような魔物でもない。
ゴブリンに比べればマシではあるけれどあくまでもマシであるという程度の差しかない。
ユリディカも馬鹿とは言わないけれど賢いかと言われると少し肯定しにくい。
よく言えば前向きなのだけどぽんやりとした能天気な側面があることは否めない。
これまでも魔力をコントロールする必要がなかったのでユリディカは魔力を操るのが上手くない。
周りを強化するのにも魔力が必要なのである。
神から力を与えられてユリディカの魔力は増えた。
だけどその魔力を使って強化をするのは中々上手く出来なかった。
「なぁーん!
どーしてぇー!」
何の変化も起こせなくてユリディカが膝から崩れ落ちる。
ここ数日こんな調子である。
バイジェルンは情報収集に時間がかかっているのか中々と持ってこなくてユリディカはひたすら力を使えるように努力していた。
結果はよろしくないけどともかく頑張ってはいる。
古代遺跡で冒険者と戦った時には確かにレビスを強化していた。
けれど戦いの最中だったしチクートを身につけたばかりで昂ってもいた。
ピュアンに習いながら強化をしてみようとしたのだけど中々上手くいかず、その時の感覚を思い出してみようともしたけど思い出せなかった。
「うわーん、どうやったらいいのぉー!」
ドゥゼアが思うにユリディカは超が付くほどの感覚派。
理論を習うことも悪くはないのだけど己の感覚で掴まないことには前に進めないタイプなのだろう。
逆に感覚を一度掴んでしまえはユリディカはあっという間に扱えるはずだ。
そのキッカケが何になるのかは分からないのでドゥゼアにもどうしようもないけれど。
「遅いぞ!」
ただバイジェルンを待つ間ドゥゼアとレビスも遊んでいるのではない。
少しでも強くなるために努力はする。
ドゥゼアはレビスを指導していた。
レビスは知能的には高く、冷静さも持ち合わせているが能力的にはまだまだである。
けれど考えて動けることは強みであり、少しでも強くなっておけば考えて切り抜けられるような可能性が大きくなる。
ドゥゼアが最初に選んであげた槍をずっと使っているレビスに槍の使い方を叩き込む。
ただ考えることはレビスの弱点にもなりうる。
行動するのに考えてしまうとどうしても行動がワンテンポ遅れる。
いざという時は考えずとも体を動かせるような必要がある。
何度もレビスの体に動きを叩き込む。
意識しなくても動けるように。
いくつかとっさにできたら命を助ける動きというものを教える。
普通の戦いもレベルアップ出来るように組み手形式で繰り返し戦っている。
「まだ……まだ!」
その中でレビスは悔しさを感じていた。
ドゥゼアが強いのは当然のこと。
勝てないとは分かっている。
だけど悔しい。
ドゥゼアとレビスはほぼ同時期に生まれた。
同じ生存競争を生き抜いてきて、ずっと一緒にいて同じような経験もしてきているのにドゥゼアに敵わない。
もっとドゥゼアと肩を並べて歩んでいくには強くならねばならない。
「……良い目をしてるな」
レビスは冷静だ。
でも心のどこかに熱いものがある。
時には仲間を踏み越えて生き抜く強かさもある。
こんなゴブリンは珍しい。
レビスがドゥゼアにかかっていく。
少しずつだけど鋭さを増していくレビスにドゥゼアも喜びを感じている。
「あっ!」
突き出されたレビスの槍を弾いてドゥゼアが首にナイフを突きつける。
今度こそ行けると思ったのにとレビスが悔しそうな顔をした。
「今のは危なかったな。
……忘れるな。
俺たちは弱い。
だけど諦めるな、自分に限界を決めつけるな。
俺たちには可能性がある」
最低でもゴブリンにはホブゴブリンするという希望がある。
ホブゴブリンになったところでという話はあるけれどホブゴブリンからさらに進化を遂げる可能性もゴブリンにはあるらしい。
そして自分の限界を自分で決めてしまうとそこから成長することもできなくなる。
負けた悔しさを持てるレビスならきっとまだまだ成長できるとドゥゼアは信じている。
「出来ないよー!」
出来なくて悔しがっているユリディカも同様だ。
「お待たせしたであるー!」
お昼に干し肉をかじっているとバイジェルンがふと戻ってきた。
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