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第二章

ゴブリンは古代遺跡を探索します6

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「ドゥゼア!」

 そうしている間にドゥゼアが壁に叩きつけられていた。
 像の剣をかわしきれずに盾で防いだけれど威力を殺し切れなくてぶっ飛ばされたのだ。

 持っていた盾も真ん中から半分になってしまっている。
 像がドゥゼアに迫る。

 背中を強くぶつけた衝撃でドゥゼアは動けない。

「押してダメ……なら引く!」

 ギリギリまで扉の謎にレビスは挑んだ。
 引くための取っ手もない扉。

 誰がどう考えても押して開けるように思える。
 けれどレビスは逆転の発想を持った。

 別に扉は押して開けるだけじゃない。
 引いて開けることもある。

 手を伸ばして扉を掴み、思い切り引っ張った。
 思いの外簡単に扉が動いて勢いをつけすぎたレビスは後ろに転がっていく。

 押しても少ししか開かなかった扉なのに引っ張るとすんなりと開いた。

「……な、なんだ?」

 像の剣がいきなり止まった。
 ドゥゼアの頭をかち割る直前のことで、もうダメだとドゥゼアも痛みに備えて覚悟をしていた。

 像が剣を納めて元の位置に戻っていく。

「ドゥゼア!」

「だだだ、大丈夫!?」

 レビスとユリディカがドゥゼアのところに駆け寄ってくる。

「あ、ああ……大丈夫だ」

 一撃でも喰らえば終わりだったので当たらないように必死にかわしていた。
 だからケガはない。

「何をしたんだ?」

「扉、引いたら開いた」

 なんてことはなかった。
 あの扉は引いて開ける扉であったのだ。

 押して開けるように見せかけているので誰しもそう思うが押して開けてしまうと罠が発動する。
 正しい開け方はほんの少しだけ押して開けて手を差し込み引いて開けるのが正しいやり方だった。

 正しく開ければ罠も止まるのである。
 まだまだ常識に囚われないレビスだから思いついた。

「助かったよ、レビス」

 大きく息を吐き出してレビスの頭を撫でる。
 今回はレビスに救われた。

「ごめんなさい……」

 対してユリディカは尻尾を下げてシュンとする。
 どの道罠を発動させてはしまっていただろうけどちゃんと調べる前に転んで突発的に罠を発動させてしまった。

「ユリディカ」

 ドゥゼアは指でこっちに来いと指示する。
 怒られるのかなと思いながらユリディカはドゥゼアの側による。

「もっとこっち来い」

「うぅ……むぎゅっ!」

 より近づいたユリディカの頭をドゥゼアが両手で挟むように鷲掴みにした。

「いいか、お前は失敗した」

「う、うん……」

「でも俺はそれを怒るつもりはない。

 どんなやつでもミスをする」

 怖くてやや下に視線を向けたままだったけどようやくドゥゼアの目を見たユリディカ。
 ドゥゼアは本当に怒っていない。

 いつものような強い意思を秘めた目。
 そしてユリディカを見つめるその目には優しさと感じられる。

「いいか、大事なのは次どうするかだ。

 もう目をつぶってフラフラニオイを嗅ぐのはやめるんだぞ?」

「うん!」

 パタパタとユリディカの尻尾が振られ始める。
 ドゥゼアの優しさが嬉しくて、まだ期待してくれていることがありがたくて。

 次こそは自分がドゥゼアの役に立ってみせる。
 そうユリディカは思った。

「ドゥ、ドゥゼア?」

 しかしドゥゼアはユリディカの頭を離さない。
 毛の感触やムニムニとした頭の感じが気持ちよくて少しムニムニとして弄ぶ。

 これぐらいの罰はあっていいだろう。
 当の本人は嬉しくて尻尾をグルングルン回しているけどドゥゼアとしてはちょっとした罰のつもりだった。

「むー!

 ドゥゼア助けたの私」

 側から見りゃいちゃついている。
 レビスが怒って間に割り込んでくる。

 そしてドゥゼアに頭を差し出す。

「そうだな。

 レビス、よくやってくれた」

「ふへへ……」

 なんやかんか危機は乗り越えた。
 危ないところだったけれど今回も無事助かったのであった。

「ほんとこの遺跡作ったやつ異常者なんじゃねえか?」
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