上 下
15 / 301
第一章

ゴブリンは初ダンジョンに入ります4

しおりを挟む
 動き出したミニゴーレムは体を左右に振るようにして走り出した。
 ただ動きはノロマ。

「よっ、ほっ!」

 テコテコと歩いてくるミニゴーレムをギリギリまで引きつける。
 ドゥゼアはミニゴーレムの胴体に手をついて飛び越える。

 そして遥かに遅く、ドゥゼアがいたところをミニゴーレムが殴りつける。

「倒れてろ!」

 後ろに回り込んだドゥゼアは体を押し付けるようにして体当たりしてミニゴーレムを押し倒す。
 バランスを崩したミニゴーレムは最も簡単に前に倒れる。

 背中の真ん中に紫色の宝石のようなものがある。
 アレが弱点であり破壊できればミニゴーレムを倒すことができる。

 ナイフで思い切り突けば破壊できるだろうかとジタバタと起きあがろうとしているミニゴーレムを眺めながら考える。

「ドゥ、ドゥゼアァ!」

「なんだ!

 ……レビス!」

 悲鳴のような声が聞こえてきて振り返る。
 レビスが襲われていた。

 箱の上側がパカっと開き、そこに牙が生えていてレビスに噛みつこうとしている。
 レビスはそれを槍でなんとか防いでいる。

「ミミックか!」

 端っこにチラッと書かれていた超がつくレアな魔物がミミックである。
 このダンジョンにも現れることがあるが目撃されたのは数例しかない。

 だからドゥゼアもミミックがいることは知っていたがいないだろうと警戒していなかった。
 一般的に宝箱のようなものをイメージするが宝が入っていそうな箱にも擬態することがある。

「待ってろ!」

 ドゥゼアは起き上がりかけているミニゴーレムを蹴り飛ばしてまた倒してレビスの方に向かう。
 横にした槍に噛みついているミミックに押さえつけられているレビスは必死の形相で耐えている。

「どけろ!」

 ドゥゼアはミミックを思い切り蹴飛ばす。
 思わぬ伏兵だったがレビスはよく反応してやられなかった。

 これは好機だ。
 ミミックは宝箱に擬態して近づいたものにいきなり襲いかかる狡猾な魔物だ。

 けれど何もなくミミックは生まれない。
 お宝あるところにミミックありなのである。

 つまりあのミミックもただの魔物ではなくお宝を持った魔物である可能性が非常に高いのである。

「うおおおおっ!」

 ゴロゴロと転がるミミックを追いかけてドゥゼアはナイフを振りかざす。
 残念ながらミミックの弱点までは把握していないのでナイフで刺しまくる。

 見た目には効いているのかも分からない。

「クッ!」

 ミミックが口を開けてドゥゼアに噛みつこうとした。
 とっさに口を手で押さえるがナイフがミミックに刺さったままになってしまった。

「ドゥゼア!」

 レビスが槍を構えて突撃する。

「いいぞ!」

 レビスの槍が押さえて開いていた口の中にスルッと入って突き刺さる。
 すると口を閉じようとする力が弱くなる。

 攻撃が効いている。

「レビス、もう一度だ!」

「うん!」

 レビスが槍を引き抜いてもう一度突き刺す。

「うおっ!」

 ミミックが嫌がって大きく後ろに飛び退いた。
 その隙に地面に落ちたナイフを回収する。

「レビス、後ろだ!」

「えっ?

 ぎゃあ!」

 いつの間にか立ち上がったミニゴーレムがレビスの後ろまで迫っていた。
 レビスは前に倒れるように飛んでミニゴーレムの攻撃をかわす。
 
 他の魔物ならやられていたが遅いミニゴーレムでよかった。

「チッ……めんどくせえな」

 すっかりミニゴーレムのことを忘れていた。

「ちょっとだけでいい、ミミックの相手出来るか?」

「まかせて」

 ドゥゼアは荷物を漁りながらミニゴーレムに向かう。

「転がってろ!」

 パワーはあるがバランスも悪い。
 しっかりと上を狙って押すように蹴ると後ろにミニゴーレムが転がる。

 ドゥゼアは荷物の中から毛皮を取り出して広げる。
 これはスモールホーンブルからドロップする毛皮である。

 物としては小さいし人間の大人用に加工しようと思ったら何枚かツギハギしなきゃならないのであまり人気もない。
 ゴブリンなら使えるかなと思うので取っておいたがここで使えないかと思った。

 広げた布をミニゴーレムに被せて、今度はスモールホーンブルのツノを取り出す。
 オデコに生えている小さいツノでこちらも利用価値がとても低い。

 削って装飾品にするぐらいの物だがそれを毛皮に突き立てて地面に刺す。
 もう1本ツノを取り出してまた毛皮を地面に固定する。

「しばらくそこにいやがれ!」

 打ち付けられた毛皮の下でジタバタと暴れるミニゴーレム。
 さらにナイフでツノを深く地面に刺す。

 時間稼ぎにしかならないがミニゴーレム程度の知能なら時間はかかるだろう。

「……もうちょい刺しとくか」

 コボルトの爪も取り出して毛皮を地面に固定する。

「よしっ、レビスは……上手くやってるな」

 心配していたがレビスはちゃんとミミックと戦っている。
 ミミックの体の表面にはいくつか穴が空いている。

 無理をしない範囲でレビスが突いて空けた穴だった。
 ミミックの方も中を刺されるのが嫌で大きく飛び掛かることができずにいた。

 よく見ればドゥゼアが刺したナイフの跡もあるし結構ボロボロになっている。
 もうちょっと押せば倒せる、そんな気がしてきた。

 今は完全にレビスの方に注意が向いている。
 ドゥゼアは体勢を低くしてミミックの後ろに回り込む。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~

暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。  しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。 もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...