上 下
10 / 301
第一章

ゴブリンはダンジョンを目指します1

しおりを挟む
 巣を持ち、集団で生きるゴブリンがそのどちらも失えば哀れと言わざるを得ない。
 それでなくとも最下層の魔物なのに家なき2匹のゴブリンでは最下層の中の最下層だ。

 それでもこれまで度重なるゴブ生で経験を積んできた。
 ドゥゼアとレビスはまず巣から離れることにした。

 巣周辺のゴブリンは探されているだろうし、巣がすでに潰されているので初心者冒険者でもゴブリンの残党と見れば積極的に襲いかかってくる。
 そのために獲物を見つけて狩りをしながら移動をしていた。

「ダンジョンに向かおう」

 木の根に囲まれた空間を見つけたのでそこでレビスと身を寄せて隠れる。
 今後どうするかを考えるがこれはかなり難しい問題であった。

 ゴブリンは弱い。
 だから取れる行動の幅が狭い。

 本来なら巣があってそこで力を蓄えておきたかったのだけどそれも出来なくなった。
 このまま狩りを続けて少しずつ力を蓄えていくつもりはあるがそれでは強くなるのにいつまでかかるか分からない。

 1つ手っ取り早い方法は装備を整えることだ。
 けれどこの方法には問題がある。

 ゴブリンがどうやって装備を整えるというのだ。
 手作りで盾ぐらいは作れてもそんなもの戦力強化の装備にはならない。

 普通の装備、もっと理想的なものは能力を上げたり不思議な力を持つ魔道具が手に入れば簡単なのだが手に入れるのが簡単ではない。
 普通の装備を狙うなら人を襲うのがいいがゴブリンが勝てる相手などまずいない。

 勝てる相手だったとしてもそんな相手の装備なんて高が知れている。
 つまり人を襲って装備を整えるのは現実的に無理な話。

 魔物として強くなるのにも人を喰らうのはいい方法なのだけどひとまずある程度強くならねばこの計画は実行できない。
 堅実な方法としてはどこかに拠点を定めてちまちまと狩りを繰り返して力を溜めることだがそれでは人を倒せるようになる前に寿命を迎える。

 拠点を探すのだってリスクがある。
 自分たちが弱いので魔物が弱いところに拠点を置きたいが良い場所は他の魔物が巣や縄張りにしている。

 さらにそうしたところは人に近く、見つかって倒されるリスクが大きい。
 では人里離れるとどうなるか。

 魔物が強いのである。
 ゴブリンでは到底太刀打ちできない魔物が支配している領域になる。

 そんなところ運良く場所があっても狩りができない。
 ならどうするのか。

 ずっと考えていたことがドゥゼアにはあった。
 ダンジョン攻略をしたらどうかと。

 ダンジョンとは不思議なものでその中には魔物が生み出されるのだけど同時に人に有益なアイテムも生み出されて置いておかれることがある。
 原理など誰も知らないのだけどそうしたアイテムを狙って多くの冒険者たちがダンジョンを攻略しに行く。

 中には魔道具なんかもダンジョンに落ちていることもごく稀にあり得ることでそれで英雄になった人や大金持ちになった人もいた。
 せめて何かの装備を手に入れることができれば今後生きるのが楽になる。

 魔物がダンジョン攻略するなど聞いたことがない話だけどしちゃいけないとも出来ないとも聞いたことがない。

「ドゥゼアが行くなら」

 レビスには今後どうやって生きるのか皆目見当もつかない。
 だからドゥゼアに考えがあるならそれに従う。

 ドゥゼアのためになるなら。
 ドゥゼアと共に生きられるならとレビスは考えていた。

 ーーーーー

 ダンジョンを探すと言ったがダンジョンの場所を知っているのでもない。
 そもそもここがどこであるのかも分かっていない。

 巣にはあれだけの道具があったのだから地図ぐらいあったかもしれないなと思う。
 こっそり有益なものがないか探してみれば良かったと今更ながら後悔する。

 悩んだ結果にドゥゼアは道など人が近いところを移動することにした。
 人の存在に警戒しながら町などを探す。

 規模の大きな町があればダンジョンがある可能性がある。
 町じゃなくても道中にある案内の看板なに書いてあることもあるので探してみる。

「あった!」

 二股に分かれた道に設置された案内板を見つけてドゥゼアは期待せずに確認してみた。
 この先に何の町があるのか書いていたがその一方に“ダンジョンの町グロヴァ”と書いてある。

 もちろん人の文字など読めないレビスは何があったのかと看板を見つめてみるがその意味は分からない。
 ダンジョンがあっても難易度とかどんなダンジョンなのか問題があるがひとまず一歩前進。

「やばい、隠れろ!」

 人が見えたのでドゥゼアはレビスを引っ張って道を外れた草の中に隠れる。

『聞いたか?

 ジヌーダのやつ大怪我したらしいぞ』

『へぇ、アイツダンジョンなんて余裕だ何で大口叩いてたのに?』

『調子乗ってたからな。

 それにしても最近出たワーウルフが意外と強いらしいけどな。

 強いというか上手く戦うらしい』

『俺たちん時にはそんなのいなかったのにな』

 笑いながら話している冒険者風の男たちがグロヴァの方から歩いてきた。
 ダンジョンについての話をしていてドゥゼアは耳をすまして話を盗み聞く。

 会話を聞いていて分かったのはダンジョンの名前がデアイで比較的初心者向けの低難易度ダンジョンらしいということだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

国を建て直す前に自分を建て直したいんだが! ~何かが足りない異世界転生~

猫村慎之介
ファンタジー
オンラインゲームをプレイしながら寝落ちした佐藤綾人は 気が付くと全く知らない場所で 同じオンラインゲームプレイヤーであり親友である柳原雅也と共に目覚めた。 そこは剣と魔法が支配する幻想世界。 見た事もない生物や、文化が根付く国。 しかもオンラインゲームのスキルが何故か使用でき 身体能力は異常なまでに強化され 物理法則を無視した伝説級の武器や防具、道具が現れる。 だがそんな事は割とどうでも良かった。 何より異変が起きていたのは、自分自身。 二人は使っていたキャラクターのアバターデータまで引き継いでいたのだ。 一人は幼精。 一人は猫女。 何も分からないまま異世界に飛ばされ 性転換どころか種族まで転換されてしまった二人は 勢いで滅亡寸前の帝国の立て直しを依頼される。 引き受けたものの、帝国は予想以上に滅亡しそうだった。 「これ詰んでるかなぁ」 「詰んでるっしょ」 強力な力を得た代償に 大事なモノを失ってしまった転生者が織りなす 何かとままならないまま チートで無茶苦茶する異世界転生ファンタジー開幕。

田舎で師匠にボコされ続けた結果、気づいたら世界最強になっていました

七星点灯
ファンタジー
俺は屋上から飛び降りた。いつからか始まった、凄惨たるイジメの被害者だったから。 天国でゆっくり休もう。そう思って飛び降りたのだが── 俺は赤子に転生した。そしてとあるお爺さんに拾われるのだった。 ──数年後 自由に動けるようになった俺に対して、お爺さんは『指導』を行うようになる。 それは過酷で、辛くて、もしかしたらイジメられていた頃の方が楽だったかもと思ってしまうくらい。 だけど、俺は強くなりたかった。 イジメられて、それに負けて自殺した自分を変えたかった。 だから死にたくなっても踏ん張った。 俺は次第に、拾ってくれたおじいさんのことを『師匠』と呼ぶようになり、厳しい指導にも喰らいつけるようになってゆく。 ドラゴンとの戦いや、クロコダイルとの戦いは日常茶飯事だった。 ──更に数年後 師匠は死んだ。寿命だった。 結局俺は、師匠が生きているうちに、師匠に勝つことができなかった。 師匠は最後に、こんな言葉を遺した。 「──外の世界には、ワシより強い奴がうじゃうじゃいる。どれ、ワシが居なくなっても、お前はまだまだ強くなれるぞ」 俺はまだ、強くなれる! 外の世界には、師匠よりも強い人がうじゃうじゃいる! ──俺はその言葉を聞いて、外の世界へ出る決意を固めた。 だけど、この時の俺は知らなかった。 まさか師匠が、『かつて最強と呼ばれた冒険者』だったなんて。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

気がついたら異世界に転生していた。

みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。 気がついたら異世界に転生していた。 普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・ 冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。 戦闘もありますが少しだけです。

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

処理中です...