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第七章

マンドラゴラ……ダイコン2

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「……夜滝ねぇ?」

 家族ならともかく他人同士の、しかも男女である。
 助手ではあるけれど同部屋とはいかず、夜滝と圭は隣ではあるものの別部屋が用意されていた。

 しかし夜滝は普通の顔をして圭の部屋についてきた。

「なんだい?」

「いや……夜滝ねぇの部屋は隣だよ?」

「ふっ、そんなこと分かっているよぅ」

「じゃあ……」

「家では半分一緒にいるようなものだしここでだけ別というのもおかしな話だと思わないかい?」

「うーん、まあそうかもしれない……かなぁ?」

 確かにいつも家にいる時は寝る前ぐらいまで夜滝の部屋の方にいることも多い。
 いつもそうなのだからここでもいいだろうと言われるとその通りかもしれない。

「どうせもう入っちゃったんだ。それとも女の子を追い出すのかい?」

「……分かったよ」

「それに……二人きりなんだ。いつもとは違う部屋でちょっとぐらいは……」

「ピピ、フィーネモイル!」

「あっ……」

 今なら邪魔も入らない。
 家だと慣れてしまって良い雰囲気を作りにくいけれどホテルという環境ならばと夜滝は考えた。

 二人きり、良いホテルと思っていたのだが夜滝は忘れていた。
 圭の胸元からフィーネがひょっこりと顔を覗かせたのである。

 フィーネはお留守番ではなくしっかりと連れてきていた。
 装備を身につけていては不自然なので身に見えない服の中の胴体に張り付くように変形して隠れていた。

 だからこちらもいつもと同じ。
 二人きりなのではなくフィーネもいるのである。

「くぅ……」

 チャンスじゃないかと思って少し焦ってしまった。

「まあ本格的に動くのは明日らしいからどこか食べに行こうか?」

 リゾートホテルの中にも良いレストランはあるし、周辺にも美味しいと話題のお店も色々とあった。
 ちょっとしゅんとする夜滝とデートではないが食事ぐらいは行ってもいいだろうと思った。

 ただしフィーネはついてくる。

「ふぅ……そうだねぇ」

 夜滝は近くのお店をスマホで調べる。
 どうせなら良いところで食べてやろうと思った。

 オシャレなレストランよりも焼肉がいいという夜滝の意見で高級焼肉に行くことになった。

「みんなは週末に来るんだっけ?」

「そうだねぇ」

 今回は仕事なので波瑠たちは一緒に来ていない。
 しかし波瑠たちも後に合流する予定だった。

 西に何かがあるかもしれないと言われていた。
 たまたま今いるところも普段住んでいるところから西に来たところであったので、ここで一つゲートでも攻略していこうと考えていた。

 リゾートホテルは申請しておけば個人利用でも安くなる。
 知り合いも利用できるので波瑠たちも後に合流する予定だった。

 何も問題なければ数日で一度帰る予定なので週末にそのまま残って攻略する計画を立てていた。
 良いリゾートホテルということでみんなも楽しみにしているらしい。

「ウマイウマイ!」

「よかったな」

 高級焼肉屋さんなので個室に通されて、フィーネもお高い和牛の焼き肉を楽しんだのだった。

 ーーーーー

「白衣より似合ってんじゃないか」

「そうですか?」

 次の日早速お仕事となった。
 リゾートホテルから出発してブレイキングゲートに向かうのだが圭たち研究者組はホテル待機である。

 何があるか分からないので初日は攻略チームだけが向かって正確な状況把握をしてから研究者組も乗り込むことになるからである。
 ただ初日でもモンスターを捕獲してくることになっていた。

 基本は倒したものを持ってくる予定なのだがうまくいけば生きたまま捕獲して連れてくる可能性もある。
 モンスターの解体を担当するかもしれない圭は万が一の時のために覚醒者装備を身につけていた。

 新徳はその姿を見て、感心したような顔をしていた。

「そうだな、お前さんは体を動かす方が似合いそうだ」

 ホテル待機といっても暇を持て余してはいない。
 研究者組は会議室に集まっていた。

「映像オーケーです」

 会議室のモニターには映像が映し出されている。
 それはゲートに向かった覚醒者たちの攻略の様子をリアルタイムで映しているものだった。

 画面越しでもモンスターの様子を見ていれば分かることもあるかもしれない。

「それでは9時30分、攻略を開始します。位置はゲートから南に1キロ。天候は晴天、気温二十二度……」

 映像の向こうで攻略状況を伝えてくれる。
 こうした環境も何かのヒントになる時もある。

「映画でも見てるみたいだな」

 新徳は映像を見ながらタンブラーに入れたコーヒーを飲んでいる。
 十人ほどの攻略チームはモンスターを探して移動を開始した。

 周りの状況は明るめの森で映像に暗さも感じない。
 相手のモンスターもそんなに強くないということで攻略チームもサクサク進んでモンスターを探す。

 モンスターがいそうな場所に目星をつけて痕跡に気を配りながら速いペースで森の中を見ていく。
 こうした動きは勉強になるなと圭は映像を眺める。

 程なくしてモンスターの痕跡を見つけた攻略チームが大きく移動し出す。

「10時の方向、モンスターの姿を見つけました!」

 報告と共に映像を映しているメインカメラがモンスターの方に振り向く。
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