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第七章
マンドラゴラ……ダイコン1
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西に出逢いあり。
そんな連絡をかなみから受けた。
また変なデートの誘いかと思ったけれどかなみが言っているのではなくかなみの祖母である静江からの伝言だった。
静江からの伝言ということは世界を守りたい神様からの伝言である。
西ってどこ。
出逢いって何との。
という疑問はあるけれどこの世界に介入して伝言を伝えるだけでも大変らしく詳細は神のみぞ知る。
だから西の方角は意識しつつもできることはなく、運に身を任せるしかなかった。
「チッ……はぁ……」
「なんだってこんなところに来てため息ついてるんだい?」
「こんなところだからだ」
バスを降りた圭と夜滝はとある町を訪れていた。
そこにあるのはRSIが経営しているリゾートホテルがあり、RSIの社員は保養所としてリゾートホテルを格安で利用することもできる。
ただ圭と夜滝が二人きりで急にリゾートホテルにやってきたのではない。
ため息をついたのは夜滝の同僚に当たる研究者の新徳であった。
他にもRSIの社員が何人かいて、普通の保養としての目的で訪れたのではないことは明確である。
圭たちがここを訪れたのは仕事のためであった。
「そんなこと言わないのよ」
「はぁ……お前は何にもないからいいんだ。こちらは仕事なんだよ」
仕事でない人もいる。
中年の女性に声をかけられて新徳はまたため息をついた。
その女性は新徳の奥さんであったのだ。
今回泊まることになった場所はRSI所有のリゾートホテルなので家族やその友人もお安くリゾートホテルを利用することができる。
仕事を兼ねながら家族サービスなんかもできる柔軟な考えの会社なのである。
オフシーズンであるということも理由にあるのだが新徳は一緒に家族も連れてきていた。
新徳が望んだというよりもバレてしまったから仕方なく連れてきたような感じである。
「そうね。あなた仕事してきてちょうだい。私はのんびりしてるから」
不満タラタラな新徳を気にする様子もなく新徳の奥さんは笑っている。
ひとまず圭たちはバスから降りた目の前にあるリゾートホテルに荷物を持って入る。
オフシーズンで利用客は多くないがオフシーズンだから安くなっているということを狙ってきている旅行客なんかもチラホラいた。
圭たちRSI関係者は丸々上層階の部屋を貸し切る形で宿泊できることになっていた。
「それでは会議を始めます」
部屋に荷物を置くと圭と夜滝はホテルにある会議室に向かった。
そこには新徳を始めとしてRSIの人たちが集まっている。
「今回ここを訪れたのは近くに発生したブレイキングゲートから発生した新種の植物型モンスターについて調査するためです」
会議室には大きなモニターもあり、ここに来た目的が簡潔に映し出されている。
リゾートホテルがある地域にブレイキングゲートが発生した。
元々ブレイキングゲートであったものではなく、普通のゲートだったのだが発見が遅れ、周りに有力な覚醒者ギルドもなく攻略がなされなかったためにブレイクを起こしてしまったのだ。
市街地近くに発生したものなら早急に攻略してゲートを閉じることが求められるのだが、人里離れたところでのブレイキングゲートなので優先度が低かった。
それに加えて近年では危険の少ない場所にあるゲートを残したまま利用することが増えていて、このブレイキングゲートも利用できないかと考えられた。
近くにホテルを持つRSIにもたまたま話が持ちかけられて調査を行うことになった。
発生しているのは植物系のモンスターで、最近薬や美容品、滋養強壮などの効果から植物系のモンスターの注目度は高い。
上手く利用できるのならRSIで管理してしまいたいと考え、夜滝や新徳を始めとした研究者も派遣されたのだ。
「生態調査やモンスターの利用法研究などこの場で出来る限りのことはお願いします」
当然のことながら圭と夜滝はモンスターを攻略するためにこちらにきているのではない。
ここに呼ばれたのも夜滝というよりは圭が目的なのであった。
利用法の研究とはすなわち可食かどうかも調べる。
以前にサハギンについて色々作った圭はRSIの中でも評価が高く、食堂の料理人たちからも来ないかと誘いが度々あるのだ。
覚醒者でありながらモンスター解体もできて料理もできる。
ということで、もしモンスターが食べられそうなら圭に試してほしいということなのである。
ゲート攻略チームの覚醒者たちがモンスターを倒して持ってきてくれることになっているので圭たちはホテルでのんびりとしながらモンスターを待てばいい。
「ということでよろしくお願いします」
今後の動きや注意点などを確認して会議は終了した。
「事前の調査ではモンスターの等級も高くないみたいだし危ないことはなさそうだな」
夜滝と部屋に戻る。
こんなふうに余裕がある時点で分かっていたけれどブレイクを起こしたゲートのモンスターもそんなに強いわけじゃない。
出張という面倒さはあるが良いホテルの良い部屋に泊まれるのだからちょっとプラスであるぐらいに思っておく。
そんな連絡をかなみから受けた。
また変なデートの誘いかと思ったけれどかなみが言っているのではなくかなみの祖母である静江からの伝言だった。
静江からの伝言ということは世界を守りたい神様からの伝言である。
西ってどこ。
出逢いって何との。
という疑問はあるけれどこの世界に介入して伝言を伝えるだけでも大変らしく詳細は神のみぞ知る。
だから西の方角は意識しつつもできることはなく、運に身を任せるしかなかった。
「チッ……はぁ……」
「なんだってこんなところに来てため息ついてるんだい?」
「こんなところだからだ」
バスを降りた圭と夜滝はとある町を訪れていた。
そこにあるのはRSIが経営しているリゾートホテルがあり、RSIの社員は保養所としてリゾートホテルを格安で利用することもできる。
ただ圭と夜滝が二人きりで急にリゾートホテルにやってきたのではない。
ため息をついたのは夜滝の同僚に当たる研究者の新徳であった。
他にもRSIの社員が何人かいて、普通の保養としての目的で訪れたのではないことは明確である。
圭たちがここを訪れたのは仕事のためであった。
「そんなこと言わないのよ」
「はぁ……お前は何にもないからいいんだ。こちらは仕事なんだよ」
仕事でない人もいる。
中年の女性に声をかけられて新徳はまたため息をついた。
その女性は新徳の奥さんであったのだ。
今回泊まることになった場所はRSI所有のリゾートホテルなので家族やその友人もお安くリゾートホテルを利用することができる。
仕事を兼ねながら家族サービスなんかもできる柔軟な考えの会社なのである。
オフシーズンであるということも理由にあるのだが新徳は一緒に家族も連れてきていた。
新徳が望んだというよりもバレてしまったから仕方なく連れてきたような感じである。
「そうね。あなた仕事してきてちょうだい。私はのんびりしてるから」
不満タラタラな新徳を気にする様子もなく新徳の奥さんは笑っている。
ひとまず圭たちはバスから降りた目の前にあるリゾートホテルに荷物を持って入る。
オフシーズンで利用客は多くないがオフシーズンだから安くなっているということを狙ってきている旅行客なんかもチラホラいた。
圭たちRSI関係者は丸々上層階の部屋を貸し切る形で宿泊できることになっていた。
「それでは会議を始めます」
部屋に荷物を置くと圭と夜滝はホテルにある会議室に向かった。
そこには新徳を始めとしてRSIの人たちが集まっている。
「今回ここを訪れたのは近くに発生したブレイキングゲートから発生した新種の植物型モンスターについて調査するためです」
会議室には大きなモニターもあり、ここに来た目的が簡潔に映し出されている。
リゾートホテルがある地域にブレイキングゲートが発生した。
元々ブレイキングゲートであったものではなく、普通のゲートだったのだが発見が遅れ、周りに有力な覚醒者ギルドもなく攻略がなされなかったためにブレイクを起こしてしまったのだ。
市街地近くに発生したものなら早急に攻略してゲートを閉じることが求められるのだが、人里離れたところでのブレイキングゲートなので優先度が低かった。
それに加えて近年では危険の少ない場所にあるゲートを残したまま利用することが増えていて、このブレイキングゲートも利用できないかと考えられた。
近くにホテルを持つRSIにもたまたま話が持ちかけられて調査を行うことになった。
発生しているのは植物系のモンスターで、最近薬や美容品、滋養強壮などの効果から植物系のモンスターの注目度は高い。
上手く利用できるのならRSIで管理してしまいたいと考え、夜滝や新徳を始めとした研究者も派遣されたのだ。
「生態調査やモンスターの利用法研究などこの場で出来る限りのことはお願いします」
当然のことながら圭と夜滝はモンスターを攻略するためにこちらにきているのではない。
ここに呼ばれたのも夜滝というよりは圭が目的なのであった。
利用法の研究とはすなわち可食かどうかも調べる。
以前にサハギンについて色々作った圭はRSIの中でも評価が高く、食堂の料理人たちからも来ないかと誘いが度々あるのだ。
覚醒者でありながらモンスター解体もできて料理もできる。
ということで、もしモンスターが食べられそうなら圭に試してほしいということなのである。
ゲート攻略チームの覚醒者たちがモンスターを倒して持ってきてくれることになっているので圭たちはホテルでのんびりとしながらモンスターを待てばいい。
「ということでよろしくお願いします」
今後の動きや注意点などを確認して会議は終了した。
「事前の調査ではモンスターの等級も高くないみたいだし危ないことはなさそうだな」
夜滝と部屋に戻る。
こんなふうに余裕がある時点で分かっていたけれどブレイクを起こしたゲートのモンスターもそんなに強いわけじゃない。
出張という面倒さはあるが良いホテルの良い部屋に泊まれるのだからちょっとプラスであるぐらいに思っておく。
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