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第七章
塔を登ろう3
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圭たちもみんなそれぞれ自分の役割の人の動きを見て何か吸収しようとする。
「調子はどうかしら?」
戦いを横目にかなみが今回お世話になっている覚醒者たちのところに近づいてきた。
生上杉かなみが近くに来て覚醒者たちもざわつく。
美人モデルのかなみの顔を見て顔を赤くしている覚醒者もいる。
全体に声をかけている風を装っているが誰に向けてのものなのかは圭たちにとってバレバレである。
移動中は大海ギルドの覚醒者も混じってだったのでかなみが圭のそばにいても目立たなかったが、今個別に話しかけると流石に周りにバレてしまう。
それを分かっているのでかなみも視線を向けるだけだった。
分かる人には分かってしまうだろうが、半ば芸能人的なかなみとその後ろでダブルホーンオーガと激しく戦う覚醒者たちが注意を逸らしてくれるのでかなみが視線を向けた相手に気づく人はいなかった。
「おっと」
ダブルホーンオーガの攻撃によって盾が圭たちの方に飛んできた。
かなみは盾のことを見もしないで腕を振ると盾が水に包まれて空中で止まった。
「みんな大丈夫?」
かなみがにっこり微笑む。
何人か落ちたなと圭は思った。
「すいません! 大丈夫ですか!」
「大丈夫よ。そっちに怪我はない?」
「こちらも大丈夫です!」
「怪我がないように気をつけてね」
「はい! ありがとうございます!」
かなみは水で包み込んだ盾を走ってきた覚醒者の方に飛ばした。
覚醒者は盾を受け取ると大きく頭を下げて戦いに戻っていった。
戦いにおいて不測の事態はしょうがない。
誰にも怪我がなかったのならそれでよく、かなみも怒ることはない。
見るといつの間にかダブルホーンオーガはボロボロになっている。
「凶暴化だ!」
ダブルホーンオーガが大きく吠えて目が赤く染まっていく。
凶暴化と言われる現象で理性を失う代わりに攻撃力が大幅に上昇する一種のスキルのようなものである。
「力の弱いものは下がれ!」
凶暴化によってダブルホーンオーガの攻撃力が上がったのでタンクの中で力の弱いものが後ろに下がる。
力が弱いということはおそらく筋力値が低いのだろう。
残ったタンクも一人ではなく複数人で攻撃を受け止めて防ぐ。
元々オーガなどは知性的ではなく大雑把な攻撃をするが凶暴化によってさらに攻撃が大ぶりになって隙も大きくなる。
ダメージディーラーであるアタッカーたちはこの隙をついて一斉に攻撃を叩き込む。
足を切り裂かれたダブルホーンオーガが前のめりに倒れて手すらつかないでツノが地面にめり込んだ。
「いけー!」
ここまで待機していた覚醒者が一気に前に出た。
大きな斧を倒れたダブルホーンオーガの首に目がけて振り下ろす。
ダブルホーンオーガの太い首が斧によって切断されてゴロゴロと赤い目をしたダブルホーンオーガの頭が地面を転がる。
チラリと真実の目で見たところ速度も体力も低くて筋力値が突出して高いタイプの覚醒者で完全にトドメの一撃用に待機していたようだ。
人数の少ないギルドだと運用が難しいけれど人数の多いギルドならば力の強い覚醒者をトドメ要員として抱えることもできるのだと感心する。
『ボスを倒せ!
ボス 1/1 クリア』
確認してみると試練はちゃんとクリアになっていた。
連れてこられた覚醒者たちから歓声が上がる。
ダブルホーンオーガが砕いた地面の石つぶてで怪我をしたなんて人はいたがほとんど大海ギルドに被害はなくボスモンスターの討伐は完了した。
「これが大きなギルドってものよ」
気づくと隣にかなみがいた。
限られた人数の小規模ギルドの戦い方とはまるで違う。
安全かつ確実にモンスターを追い詰めて倒し、戦いの後にはヒーラーによる治療まで手厚いサポートも完備している。
「すごいな」
「あなたが望むなら私の隣に立ってもいいのよ?」
「……興味はあるけど……」
「あるけど?」
「俺も男だから。用意された場所じゃなくて自分で自分の居場所ってやつを見つけてみたいと思うんだ」
「……そう。その時は私が隣にいてもいいかしら?」
「言うほど簡単にはいられる場所じゃないかもよ?」
「……そうね」
自分を厳しい目で見ている夜滝たちを見てかなみは笑った。
「でも何もしなくても手に入るなんてつまらないじゃない? 私は追いかけたい女なの」
「じゃあ俺は追いかけてもらえるように頑張らなきゃいけないかな?」
「もっとがんばってね」
最初はもう二度と会うこともない相手だと思っていたのにこんな風に会話することがあるなんて不思議なだなと圭は笑う。
「あなたたちもっと頑張りなさいよ……」
「な、なんですか?」
「あの男がうちのマスターに近づかないようにもっとメス出してけって言ってんの……」
一方でなんだか良い感じの圭とかなみを見て笹ヶ峰は怖い顔をして夜滝たちに絡んでいたのであった。
ーーーーー
「五階はシークレットクエストなかったの?」
「ああ……そういえばなかったな」
五階の攻略もトラブルなく予定よりも早めに終わった。
なんの問題もなかったけれど振り返ってみると疑問が一つあると波瑠は思った。
五階に関してシークレットクエストがなかったのである。
波瑠ではあるかどうか分からないけれど圭が何も言わなかったのでなかったのかなと気になっていたのだ。
「調子はどうかしら?」
戦いを横目にかなみが今回お世話になっている覚醒者たちのところに近づいてきた。
生上杉かなみが近くに来て覚醒者たちもざわつく。
美人モデルのかなみの顔を見て顔を赤くしている覚醒者もいる。
全体に声をかけている風を装っているが誰に向けてのものなのかは圭たちにとってバレバレである。
移動中は大海ギルドの覚醒者も混じってだったのでかなみが圭のそばにいても目立たなかったが、今個別に話しかけると流石に周りにバレてしまう。
それを分かっているのでかなみも視線を向けるだけだった。
分かる人には分かってしまうだろうが、半ば芸能人的なかなみとその後ろでダブルホーンオーガと激しく戦う覚醒者たちが注意を逸らしてくれるのでかなみが視線を向けた相手に気づく人はいなかった。
「おっと」
ダブルホーンオーガの攻撃によって盾が圭たちの方に飛んできた。
かなみは盾のことを見もしないで腕を振ると盾が水に包まれて空中で止まった。
「みんな大丈夫?」
かなみがにっこり微笑む。
何人か落ちたなと圭は思った。
「すいません! 大丈夫ですか!」
「大丈夫よ。そっちに怪我はない?」
「こちらも大丈夫です!」
「怪我がないように気をつけてね」
「はい! ありがとうございます!」
かなみは水で包み込んだ盾を走ってきた覚醒者の方に飛ばした。
覚醒者は盾を受け取ると大きく頭を下げて戦いに戻っていった。
戦いにおいて不測の事態はしょうがない。
誰にも怪我がなかったのならそれでよく、かなみも怒ることはない。
見るといつの間にかダブルホーンオーガはボロボロになっている。
「凶暴化だ!」
ダブルホーンオーガが大きく吠えて目が赤く染まっていく。
凶暴化と言われる現象で理性を失う代わりに攻撃力が大幅に上昇する一種のスキルのようなものである。
「力の弱いものは下がれ!」
凶暴化によってダブルホーンオーガの攻撃力が上がったのでタンクの中で力の弱いものが後ろに下がる。
力が弱いということはおそらく筋力値が低いのだろう。
残ったタンクも一人ではなく複数人で攻撃を受け止めて防ぐ。
元々オーガなどは知性的ではなく大雑把な攻撃をするが凶暴化によってさらに攻撃が大ぶりになって隙も大きくなる。
ダメージディーラーであるアタッカーたちはこの隙をついて一斉に攻撃を叩き込む。
足を切り裂かれたダブルホーンオーガが前のめりに倒れて手すらつかないでツノが地面にめり込んだ。
「いけー!」
ここまで待機していた覚醒者が一気に前に出た。
大きな斧を倒れたダブルホーンオーガの首に目がけて振り下ろす。
ダブルホーンオーガの太い首が斧によって切断されてゴロゴロと赤い目をしたダブルホーンオーガの頭が地面を転がる。
チラリと真実の目で見たところ速度も体力も低くて筋力値が突出して高いタイプの覚醒者で完全にトドメの一撃用に待機していたようだ。
人数の少ないギルドだと運用が難しいけれど人数の多いギルドならば力の強い覚醒者をトドメ要員として抱えることもできるのだと感心する。
『ボスを倒せ!
ボス 1/1 クリア』
確認してみると試練はちゃんとクリアになっていた。
連れてこられた覚醒者たちから歓声が上がる。
ダブルホーンオーガが砕いた地面の石つぶてで怪我をしたなんて人はいたがほとんど大海ギルドに被害はなくボスモンスターの討伐は完了した。
「これが大きなギルドってものよ」
気づくと隣にかなみがいた。
限られた人数の小規模ギルドの戦い方とはまるで違う。
安全かつ確実にモンスターを追い詰めて倒し、戦いの後にはヒーラーによる治療まで手厚いサポートも完備している。
「すごいな」
「あなたが望むなら私の隣に立ってもいいのよ?」
「……興味はあるけど……」
「あるけど?」
「俺も男だから。用意された場所じゃなくて自分で自分の居場所ってやつを見つけてみたいと思うんだ」
「……そう。その時は私が隣にいてもいいかしら?」
「言うほど簡単にはいられる場所じゃないかもよ?」
「……そうね」
自分を厳しい目で見ている夜滝たちを見てかなみは笑った。
「でも何もしなくても手に入るなんてつまらないじゃない? 私は追いかけたい女なの」
「じゃあ俺は追いかけてもらえるように頑張らなきゃいけないかな?」
「もっとがんばってね」
最初はもう二度と会うこともない相手だと思っていたのにこんな風に会話することがあるなんて不思議なだなと圭は笑う。
「あなたたちもっと頑張りなさいよ……」
「な、なんですか?」
「あの男がうちのマスターに近づかないようにもっとメス出してけって言ってんの……」
一方でなんだか良い感じの圭とかなみを見て笹ヶ峰は怖い顔をして夜滝たちに絡んでいたのであった。
ーーーーー
「五階はシークレットクエストなかったの?」
「ああ……そういえばなかったな」
五階の攻略もトラブルなく予定よりも早めに終わった。
なんの問題もなかったけれど振り返ってみると疑問が一つあると波瑠は思った。
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