上 下
264 / 366
第五章

倒して出るか、死んで終わるか4

しおりを挟む
 馬に乗ったモンスターも何体かいて次々と突撃してきていた。
 等級の高い覚醒者が前に出て攻撃を防ぐけれど押されてしまうようなタンクもいた。

「あのモンスターを優先的に倒せ!」

 馬の機動力と勢いを利用した攻撃力は脅威になる。
 先に倒すべきは馬に乗ったモンスターの方であると攻略隊は馬に乗ったモンスターを狙い始めた。

「舐めるなよ!」

 一度引いた馬に乗ったモンスターは再び勢いをつけて攻略隊に突っ込む。
 待ち受けるのは北条。

「さすがギルドマスター!」

 モンスターの剣と北条の剣がぶつかり合った。
 力で勝ったのは北条。

 力負けしたモンスターは大きく体のバランスを崩して馬から落ちる。

「馬をやれ!」

 北条が起き上がろうとしているモンスターの首を刎ね、他の覚醒者が馬を倒す。
 相手の戦い方が分かれば攻略隊も対応できる。

 取り囲むようにして機動力を奪って倒したり、魔法で馬の上から落としたりとやり方はいくらでもある。
 多少の苦戦はあったけれど乱戦になれば個々の実力が高い攻略隊の方が強かった。

「ケガ人の治療を頼む!」

「ポーションはあるか!」

 戦いが終わったけれど今回は無傷とはいかなかった。
 馬に乗ったモンスターの突撃で乱されたためにいくらか死傷者が出てしまった。

 慌ただしくケガ人の把握と治療が行われる。

「やはり城の中にドローンは飛ばせないな」

 そんな状況を横目に圭たちはサポートとして城の状況把握を手伝っていた。
 ドローンを飛ばして城の内部を調査しようと試みたのだけど城の敷地内に入るとドローンが制御不能になる。

 堀に落ちて回収不可能になってしまったドローンもあってこれ以上外部から調査するのは無理だと結論づけられた。
 明らかに城がこのゲートの中心である。

 複数の意見はあったけれどサポート部隊も含めて堀にかけられた跳ね橋を渡ることにした。
 跳ね橋が上げられてしまうと部隊が分断されてしまって危険があるからというのが理由だった。

 一方で戦力的に弱いサポート部隊が城に近づくことの危険性もあったけれどまとまっている方が安全だという結論になったのだ。

「なんだか空気重たいな……」

 跳ね橋を渡ったところから空気感が変わった。
 これまでもゲート特有の重たい感じの空気感があったのだが城に近づくとより空気が重たく感じられた。

 お城の前のスペースでドローンを起動させようとしたけれどとうとう起動すらしなくなった。

「ここからは精鋭部隊で突入する」

 城の内部は分からないけれど建物の中が広いとは思えない。
 攻略隊が一気に入っても身動きが取れなくなるだけになる。

 人数を絞って素早く攻略する方がリスクが少ない。
 北条を中心として高等級覚醒者を集めて城に挑むことになった。

「ボディカメラの作動に問題はありません」

 ドローンは動かないが記録用のカメラは動いたので精鋭部隊に取り付けた。
 お城の正面の門は開け放たれている。

 精鋭部隊が城の中に入っていく。

「みんなは大丈夫か?」

 こうなると圭たちに出来ることはない。
 相変わらず外は雨が降っていて天気は非常に悪い。

 圭は体が冷えたりしていないかと夜滝たちの方に視線を向けた。

「もうびしょびしょだけどまだ大丈夫かな」

「私はちょっと体冷えてきたかな」

「このまま雨晒しなのはちょっと辛いねぇ」

「僕も少し寒いですね」

 体力値の高いカレンは平気そうだけど夜滝たちは体が雨のせいで冷えつつあった。

「上手くいけばもうちょっとで攻略……」

『シークレットクエスト
 囚われた王女を解放せよ』

 北条が乗り込んだのでボスさえ倒せれば攻略されるはず。
 そう思っていたら急に圭の目の前に表示が現れた。

「どうしたんだい?」

 中途半端なところで言葉を切って周りを見回す圭をみんな不思議そうな顔で見ている。

「何も出てないのか?」

「何が出てんだよ?」

「……みんな、ちょっとこっちに」

 圭以外誰も表示を見ているような様子はない。
 夜滝たちにも表示が見えていないのだと圭はすぐに状況を把握した。

「シークレットクエストが現れた」

 みんなが圭に近づくと周りに聞こえないように声を抑えて表示が現れたことを説明する。
 人は多いけれど雨も降っているし近づいて声を抑えていれば周りに聞かれることはない。

「シークレットクエストだと?」

「ああ、急に目の前に現れたんだ」

「塔の中みたいに?」

「そんな感じ」

「どんなクエストなんだい?」

「囚われた王女を解放せよ、だって」

「何が何だか分かりませんね……」

 簡単な文言だけ書かれたクエストのみを与えられても何が何だか分からない。
 お城のではあるので王女がいるということは納得もできる。

 しかし囚われているとかどういうことなのか情報が少なすぎる。

「それに……どうしろっていうんだ」

 今圭たちは身動きが取れない。
 シークレットクエストが出たとしても他の人はそれを知らないし、サポートとして残っている以上勝手に城に入るわけにもいかない。

 クエストをやりに行けないのである。

「……何も無理にクリアすることはないから無視してもいんじゃね?」

「まあそうだけどさ」

 強制的にやらされるものでもない。
 危険が伴うのでやるやらないは圭たちの自由である。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...