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第五章
メスの思惑
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他の子を庇った薫も攻撃を受けて気を失っていた。
どれぐらい気を失っていたのか分からないけれど目を覚ましたらそこは知らない場所だった。
ジャングルのように鬱蒼と木が生えた場所で、ここがどこなのか薫には見当もつかなかった。
「う……くそっ……」
そして薫は太い蔦のようなもので大きな木に縛り付けられていた。
手首をぐるぐる巻きにされ吊り上げられるように拘束されていて、いくら力を入れてもツタはびくともしない。
一度冷静になって何が起きたのか思い出そうとする。
「そうか……急にモンスターが入ってきたんだ」
気を失う前にモンスターに襲われたことは覚えていた。
急に窓から飛び込んできたサルのような姿をしたモンスターが子供に襲い掛かろうとしたので薫は咄嗟に間に割り込んだ。
そうしたら殴りつけられて気を失った。
なぜこんなところにいるのか気を失っていたから分からないがモンスターが関わっていることは容易に推測できた。
「どうしよう……このままじゃ食べられるのかな」
薫は誘拐されたのは食事として食べるためだと考えた。
モンスターが人を食い荒らすことも珍しくはない。
薫が気絶したので安全に食べられる場所に連れてきたのだ。
「圭さん……」
ジワジワと胸に絶望感が広がるけれど薫もまだ諦めてはいない。
孤児院には圭たちがいた。
きっと探してくれているに違いないと思った。
まだ諦めるには早い。
「うっ……はぁ……」
どうにかツタから逃れようとするがクネクネと体が動くばかりでなんの変化もない。
「……こ、こいつが僕を」
何か使えそうなものがないか周りをキョロキョロと見ていたら木の上から一体のモンスターが降りてきた。
サルのような見た目をしたクオルカンティカートであるが薫が最後に見たものよりも大きい。
腰に布を巻いた大きなクオルカンティカートはゆっくりと薫に手を伸ばした。
「……な、なに!?」
殺される。
そう思ったのだが大きなクオルカンティカートは薫の上の服を両手で摘むとビリビリと引き裂いた。
上半身があらわになって薫は困惑する。
大きなクオルカンティカートは一歩薫から離れる。
気持ち悪い視線だと薫は思った。
舐め回すように薫の体を見てくる。
そして薫は気がついてしまった。
大きなクオルカンティカートの腰布の真ん中が急にもっこりとしてきたことに。
べろりと舌舐めずりをした大きなクオルカンティカートの考えていることが分かった。
「う……ウソでしょ?」
ニヤリと笑うような表情を浮かべた大きなクオルカンティカートが手を伸ばそうとした瞬間、別のクオルカンティカートが木の上から降りてきた。
何かを話しかけるように大きなクオルカンティカートに向けてギャーギャーと声を上げている。
すると大きなクオルカンティカートは顔をゆがめて怒りの表情を浮かべた。
薫に伸ばしかけた手を引っ込めて大きなクオルカンティカートはどこかに行ってしまった。
「え……ええっ!? ちょ、ぼ、僕は男ですよー!」
一口に食べると言ってもその意味合いが薫の考えていたものと違った。
クオルカンティカートは薫のことを女だと思って連れてきたのであった。
そして薫を性的な意味を持って食べようとしていたのである。
「だ、ダメだってそれは!」
それならただ食べられた方がマシであると薫の顔が一気に青くなる。
そんな意味の分からない対象にされて死んでいくなどとても受け入れられない。
しかし覚醒者でもない薫の力ではツタがほんの少し揺れるだけだった。
性の対象にされることも嫌悪感を覚える。
そしてもし仮に女ではないとバレた時にどうなるのかと薫はさらに恐怖を感じた。
体を見られただけでは男だとバレなかったみたいであるが下まで脱がせられたら流石にバレてしまう。
きっと怒ったら八つ裂きにされる。
本当の最悪は男でも構わなかった時である。
「だ、誰か助けて! 圭さん……お願いです……」
死ぬにしたって死に方というものもある。
「ヒッ!」
薫が泣きそうになっているとクオルカンティカートがまた現れた。
しかし薫をいやらしい目で見た大きなクオルカンティカートではない。
「……メス?」
先ほどのクオルカンティカートと違って胸が膨らんでいるように見えた。
メスならばきっとそうしたことはしない。
クオルカンティカートが近づいてきて今度こそ殺されるのだと薫は目をつぶった。
ブチリと音が聞こえて薫は地面に倒れた。
体を吊り下げられていたのに急に支えを失ってバランスが取れなかったからである。
目を開けるとツタが切られていた。
どうしてなのか困惑していると今度は手を引っ張られた。
手に結ばれたツタを噛みちぎり、薫は自由になった。
「な……なんで?」
メスのクオルカンティカートたちは答えない。
言葉が通じてるかも分からないクオルカンティカートはスッと腕を伸ばしてジャングルの向こうを指差した。
「に、逃げてもいいの?」
クオルカンティカートが何をさせようとしているのか薫はなんとなく察した。
このクオルカンティカートは薫を逃がそうとしている。
理由は知らない。
けどこの機会を逃してはならないと薫は指差された方向に逃げ出した。
どれぐらい気を失っていたのか分からないけれど目を覚ましたらそこは知らない場所だった。
ジャングルのように鬱蒼と木が生えた場所で、ここがどこなのか薫には見当もつかなかった。
「う……くそっ……」
そして薫は太い蔦のようなもので大きな木に縛り付けられていた。
手首をぐるぐる巻きにされ吊り上げられるように拘束されていて、いくら力を入れてもツタはびくともしない。
一度冷静になって何が起きたのか思い出そうとする。
「そうか……急にモンスターが入ってきたんだ」
気を失う前にモンスターに襲われたことは覚えていた。
急に窓から飛び込んできたサルのような姿をしたモンスターが子供に襲い掛かろうとしたので薫は咄嗟に間に割り込んだ。
そうしたら殴りつけられて気を失った。
なぜこんなところにいるのか気を失っていたから分からないがモンスターが関わっていることは容易に推測できた。
「どうしよう……このままじゃ食べられるのかな」
薫は誘拐されたのは食事として食べるためだと考えた。
モンスターが人を食い荒らすことも珍しくはない。
薫が気絶したので安全に食べられる場所に連れてきたのだ。
「圭さん……」
ジワジワと胸に絶望感が広がるけれど薫もまだ諦めてはいない。
孤児院には圭たちがいた。
きっと探してくれているに違いないと思った。
まだ諦めるには早い。
「うっ……はぁ……」
どうにかツタから逃れようとするがクネクネと体が動くばかりでなんの変化もない。
「……こ、こいつが僕を」
何か使えそうなものがないか周りをキョロキョロと見ていたら木の上から一体のモンスターが降りてきた。
サルのような見た目をしたクオルカンティカートであるが薫が最後に見たものよりも大きい。
腰に布を巻いた大きなクオルカンティカートはゆっくりと薫に手を伸ばした。
「……な、なに!?」
殺される。
そう思ったのだが大きなクオルカンティカートは薫の上の服を両手で摘むとビリビリと引き裂いた。
上半身があらわになって薫は困惑する。
大きなクオルカンティカートは一歩薫から離れる。
気持ち悪い視線だと薫は思った。
舐め回すように薫の体を見てくる。
そして薫は気がついてしまった。
大きなクオルカンティカートの腰布の真ん中が急にもっこりとしてきたことに。
べろりと舌舐めずりをした大きなクオルカンティカートの考えていることが分かった。
「う……ウソでしょ?」
ニヤリと笑うような表情を浮かべた大きなクオルカンティカートが手を伸ばそうとした瞬間、別のクオルカンティカートが木の上から降りてきた。
何かを話しかけるように大きなクオルカンティカートに向けてギャーギャーと声を上げている。
すると大きなクオルカンティカートは顔をゆがめて怒りの表情を浮かべた。
薫に伸ばしかけた手を引っ込めて大きなクオルカンティカートはどこかに行ってしまった。
「え……ええっ!? ちょ、ぼ、僕は男ですよー!」
一口に食べると言ってもその意味合いが薫の考えていたものと違った。
クオルカンティカートは薫のことを女だと思って連れてきたのであった。
そして薫を性的な意味を持って食べようとしていたのである。
「だ、ダメだってそれは!」
それならただ食べられた方がマシであると薫の顔が一気に青くなる。
そんな意味の分からない対象にされて死んでいくなどとても受け入れられない。
しかし覚醒者でもない薫の力ではツタがほんの少し揺れるだけだった。
性の対象にされることも嫌悪感を覚える。
そしてもし仮に女ではないとバレた時にどうなるのかと薫はさらに恐怖を感じた。
体を見られただけでは男だとバレなかったみたいであるが下まで脱がせられたら流石にバレてしまう。
きっと怒ったら八つ裂きにされる。
本当の最悪は男でも構わなかった時である。
「だ、誰か助けて! 圭さん……お願いです……」
死ぬにしたって死に方というものもある。
「ヒッ!」
薫が泣きそうになっているとクオルカンティカートがまた現れた。
しかし薫をいやらしい目で見た大きなクオルカンティカートではない。
「……メス?」
先ほどのクオルカンティカートと違って胸が膨らんでいるように見えた。
メスならばきっとそうしたことはしない。
クオルカンティカートが近づいてきて今度こそ殺されるのだと薫は目をつぶった。
ブチリと音が聞こえて薫は地面に倒れた。
体を吊り下げられていたのに急に支えを失ってバランスが取れなかったからである。
目を開けるとツタが切られていた。
どうしてなのか困惑していると今度は手を引っ張られた。
手に結ばれたツタを噛みちぎり、薫は自由になった。
「な……なんで?」
メスのクオルカンティカートたちは答えない。
言葉が通じてるかも分からないクオルカンティカートはスッと腕を伸ばしてジャングルの向こうを指差した。
「に、逃げてもいいの?」
クオルカンティカートが何をさせようとしているのか薫はなんとなく察した。
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理由は知らない。
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