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第五章

ボランティア活動2

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「梅山さん、洗濯物干し終わり……あれ、お客様ですか?」

 運び込んだ物資の確認が終わった。
 ゲームなどのおもちゃ類や文房具の一部を子供たちに渡そうとまた別の場所に運ぶことになった。

 すると窓の外から声が聞こえてきたみんなで振り返る。
 圭には窓から覗き込んでいる子に見覚えがあった。

「こちらはボランティアで手伝ってくださるかたがたですよ」

「あれ……どっかで見たことある!」

「うん、あるな」

 波瑠とカレンも見たような気がするのだけどどこで見たのか思い出せないでいた。

「こないだのゲートでせこせこと働いていてくれて子だねぇ」

「あっ、思い出した!」

 夜滝はしっかりと覚えていた。
 つい先日覚醒者協会からの依頼で行ったゲート攻略の時に色々と働いてくれていた男か女かちょっとした議論になった子である。

「ええと、スケルトンのゲートを攻略してくださった方々ですよね? 名前は確か……リーダビリティギルド?」

 向こうの方も圭たちのことを覚えていてくれた。

「俺は村雨圭。先日会ったね。君の名前は?」

「僕はバーンスタイン薫と申します」

「バ……」

 思いもしなかった名前にみんな驚く。
 まさかここで横文字の名前が出てくるなんて想像もできない。

「バーンスタインです。僕のファミリーネームです」

「この子は親がアメリカの方なんです」

 なるほどと圭は思った。
 薫の中性的な容姿はどこか日本人離れをしている。

 日本人の容姿であるのにどことなく雰囲気が違うのは日本以外の血が入っているからなのだと腑に落ちた。
 そのために非常に中性的な綺麗な顔立ちをしているのだ。

「お母さんが日本人でお父さんがアメリカ人ですよ」

 きっと両親の顔の良いところをもらったのだろう。
 ニコリと笑う薫の顔には圭も少しドキリとしてしまう。

「にしても薫……か」

 カレンが小さく唸っている。
 名前を聞けば性別が分かると思ったのに名前もまた中性的でどっちとも取れる名前だった。

 結局どっちか分からない。

「はい! 薫……さんは男の子ですか、女の子ですか?」

 我慢しきれなくなった波瑠が手を上げてストレートに質問する。
 もうこうなったらこそこそ様子をうかがうより正直に聞いてしまった方が失礼もない。

「あははっ、僕は男ですよ!」

 機嫌を損ねた様子もなく薫は笑って答える。

「よく言われます。女の子みたいだって。髪も伸ばしてますしね」

 髪というより顔である。
 男だと言われても信じない人がいそうな顔立ちをしているのだから女の子のようだと言われるのだ。

「高校生? それとも……中学生だったりする?」

「高校1年です」

「じゃあ年下だね!」

 若いなと思っていたけれど確かに若かった。

「高校生? じゃあどうして覚醒者協会の仕事を……」

 高卒でも覚醒者協会に就職できるが高校生のうちは就職できない。
 けれど薫はゲート前で覚醒者協会として働いていた。

「あれは覚醒者協会で開催している職業体験プログラムで。本当は現場に出ないんですけど人手が足りないって事で僕が立候補したんです」

「ふーん、偉いんだな」

「そんなことないですよ」

 照れたように薫がはにかんで笑った。
 アイドルでもやれば物凄い人気が出そうだなとぼんやりと圭は考えていた。

「薫君もこちらに来て物を運ぶの手伝ってください。女性ばかりで大変でしょうから」

「分かりました!」

 別に苦労はない。
 夜滝も波瑠もカレンも覚醒者で力は普通の人よりも強い。

 けれど走って中に入ってきた薫は僕も持ちますよ!と段ボールを持ってくれた。
 教会の奥に入るとガラリと雰囲気が変わった。

 教会ではなくかなり大きな一軒家のような雰囲気の建物になった。
 この一軒家のようなところが崩れた後に孤児院として改築した部分である。

「ありがとう!」

 まずは文房具類を配っていく。
 ノートやペン、希望する子には色鉛筆なんかも配る。

「すげー!」

「やったー!」

 正直言って文房具類は子供たちのメインではない。
 子供たちの興味は娯楽に関する物である。

 体を動かせるようにサッカーボールや女の子らしく遊べる人形もあるが子供たちの大きな興奮を引き出したのは新しいゲームだった。
 お金もある大和ギルドの後援があるので少々お金のかかる物も支援してくれるのである。

 圭もちょっと羨ましいぐらいだ。

「後は……和輝さんが直してくれ…………」

「ピピ……」

「フィーネ!?」

「なんでここにいるんだよ!」

「おじさんこれなーに?」

 子供が物を使えば壊れてしまうこともある。
 けれど簡単にはそうした物は捨てずに直せそうなものは和輝が直したりしている。

 今回は和輝が直したものも持ってきていたのだけど箱を開けるとそこにフィーネが入っていた。

「ジャジャン!」

「ジャジャン、じゃないぞ!」

「えっ、どうやって?」

「フィーネスゴイ。コッソリツイテキタ!」

 家で1人待っているのは寂しい。
 なのでフィーネは隙を見て荷物に紛れ込んでついてきていたのであった。

「これは何なのですか?」

「フィーネ!」

「おや、しゃべるのですね?」

「最新式のAIロボットだよぅ」

「そ、そうです! 自分で学んで話したりするんですよ!」

 とっさに夜滝がついた言い訳に圭も乗っかる。
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