上 下
159 / 366
第四章

犯罪覚醒者10

しおりを挟む
「なんだ……?」

「よかった!」

「心配したよー!」

「ほ、本当に大丈夫か?」

 顔を上げると目の前に女性がいて、その後ろに圭の顔を覗き込む夜滝たち3人が心配そうな顔をして立っていた。

「何があったんだ?」

 遠藤に操られている間の記憶は圭になかった。
 なので圭からしてみれば殴られて、遠藤に見られた瞬間から急に今になったのである。

 ドアを開けた車の座席に座らせられていて全く状況が飲み込めていない。

「つか……なんかほっぺた痛いな……」

 ズキンと頬が痛んで圭は顔に手をやった。
 圭の頬は赤く腫れ上がっている。

「あっ……ヒ、ヒーラーさん、治してもらえますか?」

「はーい」

 目の前にいる女性はヒーラーであった。
 圭の洗脳を解くためにそうした治療も出来るヒーラーが派遣されていたのである。

 圭の頬の治療がされる中で後ろでカレンが気まずそうに笑っている。
 戦いにおいて圭は離れていたので巻き込まれることはなかった。

 なのになぜ圭の頬がひどく腫れているのか。
 それはカレンが原因であった。

 ピンクダイヤモンドを倒した後カレンたちは圭を含めて倒したピンクダイヤモンドもゲートの外に運び出した。
 圭はぼんやりしていて動かなかったのでカレンが肩に担いで外に出した。

 そのあと覚醒者協会に連絡をして人を待つ間に圭をどうにか出来ないかと思ったのだ。
 盾で触れてみたけれど悪魔の力で洗脳されたわけじゃなかったので圭の洗脳は解けなかった。

 そこで少し刺激を与えたら目が覚めないかとカレンは思ったのだ。
 パンパンと頬を軽く叩いてみたけど圭は目を覚さない。

 ここでタイミングが悪かったのはちょっと圭が動いたのだ。
 たまたまだったのか何なのか理由は分からないが3人は刺激を与えるのが効果があったのだと思った。

 結果圭は頬が腫れるまで叩かれることになったのだけど意識は戻らなかったのである。

「頭の後ろも殴られていたので治しました。他に外傷は見当たりませんが病院で精密検査を受けられることをオススメします」

「ありがとうございます。分かりました」

 もう何回病院に行ったらいいんだというぐらい病院に行っている気がする。
 圭が笑ってお礼を言うとヒーラーの女性は圭の状態を報告するためにその場を離れていった。

「何があったのか説明お願いしてもいいか?」

 よく周りを見ると覚醒者協会の腕章をつけた人がいたり救急車まで止まっている。
 圭はいまいちゲートでのことも思い出せないでいた。

「そうだねぇ。私が説明しよう」

 夜滝がゲート中で起きたことを説明してくれた。
 ピンクダイヤモンドが急にカレンを刺して襲いかかってきたことや圭をスキルで洗脳していたことなどをざっくりと聞かされて圭は驚いた。

「カレンは大丈夫なのか?」

 自分のこともそうだが刺されたと聞いてまずカレンのことを心配した。

「おう、防具の隙間狙うように下から刺されたけどこうしてピンピンしてるぜ」

 よく見ると下腹部のところのインナーが破れている。
 そこが刺されたのだろう。

「ん……」

 無事だとは分かっているのに思わず確かめるのに手を伸ばしてしまった。

「すまんな、俺が油断してやられたばっかりに」

「いや、別に、それはいいんだけど……」

「圭」

 夜滝が冷たい目をして圭の手を掴んで引っ張る。

「何……」

「圭さんえっち」

「えっ……あっ、ごめっ!」

 カレンは顔を真っ赤にしている。
 ほとんど無意識にカレンのお腹を触ってしまっていた。

 カレンは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。
 そりゃあ夜滝と波瑠に怒られるというものである。

「まあ、お兄さんが触りたいってなら……いいけど」

「ダメだ。私が許さないよぅ」

「そーだよー!」

「別に私が良いって言ってるんだからいいだろ」

「うりゃ!」

「ひゃっ! くすぐったいだろ!」

「良いって言ったじゃん!」

 波瑠がカレンの脇腹をつつく。

「おりゃ、おりゃー!」

「や、やめれー!」

 脇腹をガードしようとするけれどカレンは波瑠の速度に敵わない。

「お話のところ申し訳ございません」

 キャッキャとしていると細身に四角いメガネの男性が圭たちの方に来た。

「覚醒者協会の調査官陣内と申します。お話聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」

 こうした時に覚醒者協会から出てくるのは大体薫であったが今回は違う人であった。

「ピンクダイヤモンドに襲われたそうですが……」

 陣内による圭の聞き取りが始まる。
 夜滝たちはもう済んでいるので要点を押さえてサクサクと質問され、圭も答えていく。

「ご協力ありがとうございます。経歴を見ると……もしかしたら余罪があるかもしれないですね。またお話を聞かせていただくこともあるかもしれません。
 お車で来ているようですが運転は?」

「えっと……」

「それはカレンがやってくれるから大丈夫だよ」

「そうですか。ですが無理はなさらないようにお願いします。それでは失礼します」

「これで終わりかな?」

「そうだねぇ。とりあえず帰ろうか」

「おい、怒るぞ!」

「へへーん、カレンに捕まえられるならやってごらん!」

「ムカつく!」

 とりあえずみんなには何ともなさそうでよかったと圭は胸を撫で下ろした。
 後日ピンクダイヤモンドに余罪が見つかって圭たちが思っていたよりも重たい罪に問われることと謝罪、そしてギルドとして正式に認証されたことの連絡があった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...