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第三章
小問題、大問題2
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水野にも確認してもらって書類を揃えた。
ギルドメンバーとなるみんなの覚醒者証のコピーや同意書などももらい、覚醒者協会に提出しに来た。
受付の感じなどはお役所のような形に近いが一般市民が何か用のある場所ではないので空いてはいる。
ただ一部混んでいるところもある。
それは覚醒者等級検査窓口である。
モンスターの影響で雇用も安定しない。
高等級といかなくてもある程度の等級の覚醒者になれれば生活には困らないのでみんな自分が覚醒者の才能があるのではないかと期待を持って検査を受けにくる。
中にはすでに検査を受けている人もいて、再覚醒と呼ばれるより強くなる現象なんかが起きていないかと願うような人もいたりする。
また1人青い顔をして検査を終えた人が出てくる。
試しに真実の目で確認してるみるとF級覚醒者だった。
F級だと一発逆転はほとんどできない。
残酷な現実。
圭も検査を受けにきてG級だった時はショックを受けたものだと思い出す。
「ギルドの設立ですね。書類確認いたしますのでお席でお待ちください」
ただ圭は覚醒者等級検査を受けにきたのではない。
書類を提出する窓口は他に人もいなくてすぐに対応してもらえた。
必要な書類を提出して待合のためのイスに座ってスマホでもいじって呼ばれるのを待つ。
「村雨さん」
「はい……って伊丹さん」
声をかけられて顔を上げると受付の女性ではなく薫が目の前にいた。
「お久しぶりですね」
「ええ、久しぶりです」
「少しよろしいですか? ギルドの設立の件などについてお話ししたいことがあります」
なんだろうと思うけど薫ならば特に不安なこともない。
また1人、今度はG級の覚醒者が出てきたなと思いながら圭は立ち上がった。
「お身体に不調などはありませんでしたか?」
「俺の方はなんとも。むしろ伊丹さんの方が大丈夫でしたか?」
マティオにぶん殴られた薫。
治療を受けて治ってはいたけれど一瞬死んだのではと思えるほどの状況だった。
「私の方もなんともありませんでした。頭が痛むとか言って数日休ませてもらいましたがピンピンとしていました」
「それ、言ってもいいんですか?」
「村雨さんが他に漏らすとは思いませんので」
「じゃあ秘密ですね」
薫がニヤリと笑う。
最初の印象ではかなりクールな感じの人であったけどこうして話してみると意外とユーモアもある人だ。
「こちらです」
一般のオフィスの横にある個室。
『課長 綾瀬紬』とドア横にプレートが付いている。
「どうぞ」
薫がドアをノックすると中から女性の声が返ってきた。
「お入りください」
「失礼します……」
こんなところに通されるなんてなんなんだと少し緊張してきた。
薫が開けてくれたので軽くお辞儀しながら入ると部屋の中には髪の赤い女性がいた。
この人が綾瀬紬なんだろうとすぐにピンときた。
「はじめまして。覚醒者取締課の課長綾瀬紬です」
「あ、村雨圭です」
「そちらにお座りください」
綾瀬のデスクの前にイスが用意されていて圭はそこに座った。
なんだか面接みたいですごく緊張する。
「こうしてお呼びして申し訳ありません。いくつか聞きたいことがありまして」
「聞きたいことですか?」
覚醒者協会に目をつけられることが何かあっただろうかと考えてみる。
まあ、色々ありそうな気はする。
「今回ギルド設立の申請をなされたそうですね」
「はい」
「ギルドマスターは村雨圭さん、あなたですね」
「そうです」
等級も高いし和輝がいいんじゃないかと思ったんだけど年寄りに責任を負わせるつもりかと返されてしまった。
どうせ中心となるのは圭である。
ならばと圭がギルドマスターになることになった。
別に1番強い人がギルドマスターにならなければいけないわけではない。
ギルドマスターの仕事は最終的に責任を取ることである。
ならば和輝じゃなく圭が責任を取ろうと最後はギルドマスターのところに自分の名前を書いた。
「あなたはG級覚醒者……間違いないですか?」
「……はい」
綾瀬の質問に圭はドキリとしてしまう。
「もしかしてですが再覚醒などしてはいませんか?」
「それは……そうだったら嬉しいですけど……」
あまりにも核心を突くような言葉に圭も動揺を隠しきれない。
「最近起きたいくつかの事件に村雨圭さん、あなたが関わっています。とてもじゃないですがG級覚醒者に乗り切れるような事件ではない。……そのために再覚醒者なのではないかとこちらでは考えています」
事件の顛末を見るに能力が高くはないがG級ほど低くもなさそうに思えた。
当然圭を犯罪者だとは見ていない。
だが関わった事件も多く、能力的なところにも疑念が出てきた。
たまたま今回ギルドの設立のために覚醒者協会を訪れていたので綾瀬は直接会ってみることにしたのである。
再覚醒したとしてもその申告は個人の裁量に任されており義務ではない。
けれど何かがあった時のために覚醒者の能力を正確に把握しておきたい意図は覚醒者協会にはある。
「覚醒者等級検査受けていかれませんか?」
「じゃあ……」
これはごまかしようもない。
綾瀬の圧力に押されるように圭は覚醒者等級検査を受けることにした。
ギルドメンバーとなるみんなの覚醒者証のコピーや同意書などももらい、覚醒者協会に提出しに来た。
受付の感じなどはお役所のような形に近いが一般市民が何か用のある場所ではないので空いてはいる。
ただ一部混んでいるところもある。
それは覚醒者等級検査窓口である。
モンスターの影響で雇用も安定しない。
高等級といかなくてもある程度の等級の覚醒者になれれば生活には困らないのでみんな自分が覚醒者の才能があるのではないかと期待を持って検査を受けにくる。
中にはすでに検査を受けている人もいて、再覚醒と呼ばれるより強くなる現象なんかが起きていないかと願うような人もいたりする。
また1人青い顔をして検査を終えた人が出てくる。
試しに真実の目で確認してるみるとF級覚醒者だった。
F級だと一発逆転はほとんどできない。
残酷な現実。
圭も検査を受けにきてG級だった時はショックを受けたものだと思い出す。
「ギルドの設立ですね。書類確認いたしますのでお席でお待ちください」
ただ圭は覚醒者等級検査を受けにきたのではない。
書類を提出する窓口は他に人もいなくてすぐに対応してもらえた。
必要な書類を提出して待合のためのイスに座ってスマホでもいじって呼ばれるのを待つ。
「村雨さん」
「はい……って伊丹さん」
声をかけられて顔を上げると受付の女性ではなく薫が目の前にいた。
「お久しぶりですね」
「ええ、久しぶりです」
「少しよろしいですか? ギルドの設立の件などについてお話ししたいことがあります」
なんだろうと思うけど薫ならば特に不安なこともない。
また1人、今度はG級の覚醒者が出てきたなと思いながら圭は立ち上がった。
「お身体に不調などはありませんでしたか?」
「俺の方はなんとも。むしろ伊丹さんの方が大丈夫でしたか?」
マティオにぶん殴られた薫。
治療を受けて治ってはいたけれど一瞬死んだのではと思えるほどの状況だった。
「私の方もなんともありませんでした。頭が痛むとか言って数日休ませてもらいましたがピンピンとしていました」
「それ、言ってもいいんですか?」
「村雨さんが他に漏らすとは思いませんので」
「じゃあ秘密ですね」
薫がニヤリと笑う。
最初の印象ではかなりクールな感じの人であったけどこうして話してみると意外とユーモアもある人だ。
「こちらです」
一般のオフィスの横にある個室。
『課長 綾瀬紬』とドア横にプレートが付いている。
「どうぞ」
薫がドアをノックすると中から女性の声が返ってきた。
「お入りください」
「失礼します……」
こんなところに通されるなんてなんなんだと少し緊張してきた。
薫が開けてくれたので軽くお辞儀しながら入ると部屋の中には髪の赤い女性がいた。
この人が綾瀬紬なんだろうとすぐにピンときた。
「はじめまして。覚醒者取締課の課長綾瀬紬です」
「あ、村雨圭です」
「そちらにお座りください」
綾瀬のデスクの前にイスが用意されていて圭はそこに座った。
なんだか面接みたいですごく緊張する。
「こうしてお呼びして申し訳ありません。いくつか聞きたいことがありまして」
「聞きたいことですか?」
覚醒者協会に目をつけられることが何かあっただろうかと考えてみる。
まあ、色々ありそうな気はする。
「今回ギルド設立の申請をなされたそうですね」
「はい」
「ギルドマスターは村雨圭さん、あなたですね」
「そうです」
等級も高いし和輝がいいんじゃないかと思ったんだけど年寄りに責任を負わせるつもりかと返されてしまった。
どうせ中心となるのは圭である。
ならばと圭がギルドマスターになることになった。
別に1番強い人がギルドマスターにならなければいけないわけではない。
ギルドマスターの仕事は最終的に責任を取ることである。
ならば和輝じゃなく圭が責任を取ろうと最後はギルドマスターのところに自分の名前を書いた。
「あなたはG級覚醒者……間違いないですか?」
「……はい」
綾瀬の質問に圭はドキリとしてしまう。
「もしかしてですが再覚醒などしてはいませんか?」
「それは……そうだったら嬉しいですけど……」
あまりにも核心を突くような言葉に圭も動揺を隠しきれない。
「最近起きたいくつかの事件に村雨圭さん、あなたが関わっています。とてもじゃないですがG級覚醒者に乗り切れるような事件ではない。……そのために再覚醒者なのではないかとこちらでは考えています」
事件の顛末を見るに能力が高くはないがG級ほど低くもなさそうに思えた。
当然圭を犯罪者だとは見ていない。
だが関わった事件も多く、能力的なところにも疑念が出てきた。
たまたま今回ギルドの設立のために覚醒者協会を訪れていたので綾瀬は直接会ってみることにしたのである。
再覚醒したとしてもその申告は個人の裁量に任されており義務ではない。
けれど何かがあった時のために覚醒者の能力を正確に把握しておきたい意図は覚醒者協会にはある。
「覚醒者等級検査受けていかれませんか?」
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これはごまかしようもない。
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