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第二章
猛るシカと戦って1
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「ん……」
「圭!」
「圭さん!」
「おに……圭さん!」
目を開けると見知らぬ天井と3人の女性の顔。
どの子も美人で、一瞬死んだのかと思えるほどであった。
ぼんやりとしていた頭がはっきりとしてくるとそれが夜滝、波瑠、カレンだと分かった。
「ここは?」
「ゲートの外、助けに来てくれた人たちが設置したテントの中だよ」
「助け? テント?」
「そう、あのヤバそうな男は本当にヤバかったみたいでA級覚醒者が助けに来たんだ」
北条やかなみが来る前に圭は気を失っていた。
なので助けが来たこともわかっていない。
もう少し詳しく夜滝に何があったのかを聞いてようやく状況を理解する。
「……何もできなかったな」
圭は悔しそうな表情を浮かべる。
少しばかり強くなったと思っていた。
夜滝や波瑠、カレンも仲間になってまともに戦えるようになったと思ったのにカイには全く歯が立たなかった。
みんな助かったことは嬉しかったけれど何もできなかった自分が妙に腹立たしくて、情けなくて胸の内がモヤモヤとした。
弱かった時にはしょうがないと諦められていた。
なのに強くなれるかもしれないと希望が見えているだけなのに今はまだ何も守れないことに感情が抑えきれなかった。
どうしてなのか。
F級やE級程度の力しかなくてまだまだ弱いのは当然なのに悔しくてしょうがない。
「そ、そんなことないよ!」
「波瑠?」
「圭さんは私たちのこと守ってくれてるよ! 最初の時だって、さっきだって……」
「ちょ、波瑠? 何で泣いて……」
怒り顔で圭の言葉を否定した波瑠は急激に涙目になった。
唇を噛んで我慢していたけどすぐに涙が溢れ出す。
波瑠と圭が襲われた時に圭は能力的に劣っているにも関わらず忠成に食らいついて戦った。
先ほどだって忠成の時よりも明らかに能力差があるのに圭は指を折られても必死にカイにしがみついて波瑠を逃がそうとした。
何もできなかったなんてことはない。
大きな脅威に立ち向かい、限界を超えて戦っている。
むしろ何もできなかったのは波瑠の方だ。
立ち向かう勇気も出なくて言われるがままに逃げようとした。
自分こそ何もできなかったのだと急に悔しくなって涙が出てきてしまった。
「それを言うなら私も……」
「私も勝手にかかっていって迷惑かけたし……」
なんだかテントの中の雰囲気がズーンと重たくなる。
「あら、目を覚まされましたか?」
それぞれフォローのしようもなくて沈んでいるとテントに女性が入ってきた。
「あなたは?」
「大海ギルドのヒーラー片平美波と申します」
片平は助け出された圭を治療してくれたヒーラーであった。
気を失っていた圭の様子を確かめに来た。
「腹部と手の骨折、全身の打撲と脳しんとうといったところですかね。治療はしましたが後遺症などがあるかもしれませんので後ほど病院で検査を受けられた方がいいと思います」
「ありがとうございます」
話に夢中で忘れていたけれど体の不調は無くなっていた。
殴られて折れた肋骨も逆に折り曲げられた指も治っている。
多少頭はぼんやりとしているけれどこれぐらいは日常にもあり得るぐらいのレベルである。
「それと八重樫和輝さんの治療も終わりました」
「本当ですか!」
片平は和輝の治療も行っていた。
圭たちからだいぶ遅れてゲートから水に乗せられて運び出された和輝はかなり弱っていた。
カレンがテントを飛び出して和輝のところに向かう。
「あの……状況は」
「まだ分かりません。相手もA級覚醒者の犯罪者で私たちも入らないように言われているのです。上杉ギルド長もまだお戻りではありませんし戦闘が続いているのだと思います」
「気を失っていたので動かすのは危険だとこちらで治療しましたが何があるか分かりません。早めにここから避難なされた方がいいと思います」
今回危険な犯罪者がいるということで一般人の乗る救急車なども規制をかけられてゲート周辺には来られないようになっていた。
圭や和輝の状態も悪く、ヒーラーもいたのでその場で治療したのだが本来圭たちはゲートから離れるべきであった。
「ひとまず八重樫和輝さんの容態も安定しましたのでギルド員を数名つけて搬送……これは」
突如として甲高い笛の音が響き渡った。
片平が顔色を変えてテントの外に出る。
圭たちも一度顔を見合わせて何かの緊急事態だとテントを出る。
「何事ですか?」
外では多くの人たちが慌ただしく動いていた。
片平が1人捕まえて話を聞き出す。
「ダンジョンブレイクです!」
「なんですって? どこのダンジョンが?」
「ギルド長が入ったダンジョンがです」
「はい? そんなはずないじゃない」
「ですがすでにブレイキングゲート状態で中からモンスターが出てきています」
「そんな……」
「現在大和ギルドの岸本さんを中心に対応にあたっていますがモンスターの勢いが強いようでこちらにもモンスターが向かっているみたいです」
圭たちが攻略していたゲートはブレイクを起こすまでまだ時間の余裕があった。
それなのに急にダンジョンブレイクを起こすなどとても考えられないことである。
原因がなんであるのか考えるのはともかくダンジョンからモンスターが溢れ出す異常事態が起きていることは間違いなかった。
「圭!」
「圭さん!」
「おに……圭さん!」
目を開けると見知らぬ天井と3人の女性の顔。
どの子も美人で、一瞬死んだのかと思えるほどであった。
ぼんやりとしていた頭がはっきりとしてくるとそれが夜滝、波瑠、カレンだと分かった。
「ここは?」
「ゲートの外、助けに来てくれた人たちが設置したテントの中だよ」
「助け? テント?」
「そう、あのヤバそうな男は本当にヤバかったみたいでA級覚醒者が助けに来たんだ」
北条やかなみが来る前に圭は気を失っていた。
なので助けが来たこともわかっていない。
もう少し詳しく夜滝に何があったのかを聞いてようやく状況を理解する。
「……何もできなかったな」
圭は悔しそうな表情を浮かべる。
少しばかり強くなったと思っていた。
夜滝や波瑠、カレンも仲間になってまともに戦えるようになったと思ったのにカイには全く歯が立たなかった。
みんな助かったことは嬉しかったけれど何もできなかった自分が妙に腹立たしくて、情けなくて胸の内がモヤモヤとした。
弱かった時にはしょうがないと諦められていた。
なのに強くなれるかもしれないと希望が見えているだけなのに今はまだ何も守れないことに感情が抑えきれなかった。
どうしてなのか。
F級やE級程度の力しかなくてまだまだ弱いのは当然なのに悔しくてしょうがない。
「そ、そんなことないよ!」
「波瑠?」
「圭さんは私たちのこと守ってくれてるよ! 最初の時だって、さっきだって……」
「ちょ、波瑠? 何で泣いて……」
怒り顔で圭の言葉を否定した波瑠は急激に涙目になった。
唇を噛んで我慢していたけどすぐに涙が溢れ出す。
波瑠と圭が襲われた時に圭は能力的に劣っているにも関わらず忠成に食らいついて戦った。
先ほどだって忠成の時よりも明らかに能力差があるのに圭は指を折られても必死にカイにしがみついて波瑠を逃がそうとした。
何もできなかったなんてことはない。
大きな脅威に立ち向かい、限界を超えて戦っている。
むしろ何もできなかったのは波瑠の方だ。
立ち向かう勇気も出なくて言われるがままに逃げようとした。
自分こそ何もできなかったのだと急に悔しくなって涙が出てきてしまった。
「それを言うなら私も……」
「私も勝手にかかっていって迷惑かけたし……」
なんだかテントの中の雰囲気がズーンと重たくなる。
「あら、目を覚まされましたか?」
それぞれフォローのしようもなくて沈んでいるとテントに女性が入ってきた。
「あなたは?」
「大海ギルドのヒーラー片平美波と申します」
片平は助け出された圭を治療してくれたヒーラーであった。
気を失っていた圭の様子を確かめに来た。
「腹部と手の骨折、全身の打撲と脳しんとうといったところですかね。治療はしましたが後遺症などがあるかもしれませんので後ほど病院で検査を受けられた方がいいと思います」
「ありがとうございます」
話に夢中で忘れていたけれど体の不調は無くなっていた。
殴られて折れた肋骨も逆に折り曲げられた指も治っている。
多少頭はぼんやりとしているけれどこれぐらいは日常にもあり得るぐらいのレベルである。
「それと八重樫和輝さんの治療も終わりました」
「本当ですか!」
片平は和輝の治療も行っていた。
圭たちからだいぶ遅れてゲートから水に乗せられて運び出された和輝はかなり弱っていた。
カレンがテントを飛び出して和輝のところに向かう。
「あの……状況は」
「まだ分かりません。相手もA級覚醒者の犯罪者で私たちも入らないように言われているのです。上杉ギルド長もまだお戻りではありませんし戦闘が続いているのだと思います」
「気を失っていたので動かすのは危険だとこちらで治療しましたが何があるか分かりません。早めにここから避難なされた方がいいと思います」
今回危険な犯罪者がいるということで一般人の乗る救急車なども規制をかけられてゲート周辺には来られないようになっていた。
圭や和輝の状態も悪く、ヒーラーもいたのでその場で治療したのだが本来圭たちはゲートから離れるべきであった。
「ひとまず八重樫和輝さんの容態も安定しましたのでギルド員を数名つけて搬送……これは」
突如として甲高い笛の音が響き渡った。
片平が顔色を変えてテントの外に出る。
圭たちも一度顔を見合わせて何かの緊急事態だとテントを出る。
「何事ですか?」
外では多くの人たちが慌ただしく動いていた。
片平が1人捕まえて話を聞き出す。
「ダンジョンブレイクです!」
「なんですって? どこのダンジョンが?」
「ギルド長が入ったダンジョンがです」
「はい? そんなはずないじゃない」
「ですがすでにブレイキングゲート状態で中からモンスターが出てきています」
「そんな……」
「現在大和ギルドの岸本さんを中心に対応にあたっていますがモンスターの勢いが強いようでこちらにもモンスターが向かっているみたいです」
圭たちが攻略していたゲートはブレイクを起こすまでまだ時間の余裕があった。
それなのに急にダンジョンブレイクを起こすなどとても考えられないことである。
原因がなんであるのか考えるのはともかくダンジョンからモンスターが溢れ出す異常事態が起きていることは間違いなかった。
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