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第二章
カレンと爺さん1
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「いでぇ!」
「そんなことでカレンを守れると思うのかぁ!」
「いや爺さん、守んのは私の方だし……」
雷が落ちた。
実際に落雷があったわけじゃなく和輝に圭が叱責されて、持っていた杖で太ももを殴られたのである。
色々なことはあったけれどカレンは圭たちの仲間になってくれることを承諾してくれた。
借金の恩返しもあるが覚醒者になれるなら覚醒者として活躍してみたい思いもどこかにあったのだ。
借金は八重樫工房全体で少しずつ返すことにもなって、圭が打ち明けた秘密も当然他に話さないと約束してくれた。
そうなったのでカレンも覚醒してレベルを上げていく必要がある。
和輝にもそのことを説明したのだけどそれでは安心できないと言われてしまった。
強くなることにも懐疑的であるしそうだとしても強くなるまでの間不安である。
圭たちもそうだと言ったが不安が拭い切れなかった和輝が見守りとしてついてくることになった。
保護者同伴となってカレンは気まずそうだったのだが和輝はなんとB級覚醒者。
ケガの影響で激しい動きこそ出来ないもののそれを差し引いてもC級やD級相当の強さがあると見てもいい。
年を取りケガがあっても圭たちより上なので自分で身を守ることも出来る。
むしろまだまだ守られるぐらい。
そうして和輝が付いてきて見守られる中でカレンのレベル上げが始まった。
例によってカレンは毒矢を持たされて圭たち3人でモンスターを引きつけて戦っていた。
問題もなく順調に見えていたのだけど和輝の目から見たら違ったらしい。
戦い方がなっていない!
そのような叱責を受けた。
特に目をつけられたのは圭だった。
和輝はパワーを生かしたアタッカーであり、カレンがひとまずタンクとして役割を果たそうとするなら圭は自ずとアタッカーという役割を果たすことになる。
最近だいぶマシになってきたとはいっても圭もまだまだ経験の浅い覚醒者になる。
可愛い可愛い孫娘を預けるには圭の技量が足りていないということなのであった。
それから始まる和輝の指導。
夜滝や波瑠の動きにも指導は入るのだけどすごく優しく丁寧に指導している。
対して圭に対する指導は厳しい。
この差はなんなんだと圭は思わざるを得なかった。
「タイミングが遅い! もっとしっかり合わせればもっと力を乗せられる!」
それぞれどの役割も大切であるけれどアタッカーというのは敵を倒すために重要な役割でアタッカーが確実にモンスターを倒せば戦いにおけるリスクはグッと減らすことができる。
注意を引きつけ、攻撃を受けるタンクのためにも相手をちゃんと倒せるアタッカーでなくてはならないのである。
段々と熱が入ってくる指導を圭は甘んじて受け入れる。
圭自身経験が浅くて実力が不足していることは自覚している。
誰かが教えてくれるのならそれに越したことはない。
むしろ望むところである。
「ふむ……色々と言いはするが筋は悪くないぞ」
身体的というよりも精神的にも疲れた圭は休憩で甘いものを多く口にしていた。
カレンが作ってくれたお弁当を食べて反省会を行っていた。
「波瑠ちゃんは突っ込みすぎだな。もう少し周りを見てタイミングを図ったり、合わせることしなければならない。攻撃するだけではなく相手を翻弄したり少し注意を逸らすだけでも大きな意味を持つだろう」
「分かりました!」
波瑠の動きもだいぶ良くなっている。
良い装備も身につけて自信もついてきた。
速さも高いのでF級、あるいはE級のモンスターでも波瑠の動きをとらえるのは難しい。
「夜滝ちゃんは逆に慎重すぎるな。
魔法が味方に当たったりする危険もあるから慎重になることは分かるが魔法は発動までに一拍ある。
使う魔法や距離に応じて敵に届くまで時間もかかる。
タイミングを見過ぎて適切な時から魔法が遅れてしまっている。
離れて味方を俯瞰できるのだから1つ早い判断が必要だな」
「なるほどねぇ」
夜滝もなんだかんだとモンスターと戦うことに慣れてきた。
優斗が作った杖の補助効果もあって魔法自体も強くなった。
低級モンスターを討伐しているのでレベルの上がりは鈍くてスキルや才能といったものはまだ覚醒していないが現状でも夜滝の魔法は強い。
将来性は非常に高い。
「カレンはまだ覚醒したてだからな」
カレンはまだ立ち回りなどを気にする段階ではない。
毒武器でちまちま相手を倒して少しでもレベルを上げるべきでタンクなんかの役割を任せるのはまだ早い。
「問題は圭だな」
「えっ、さっき筋は悪くないって」
「筋は悪くないがまだまだだ。カレンを任せるにはもっと強くなってもらわにゃならん」
「努力はしますけど……」
そうはいうが圭も今の段階で能力を見ると何かに特化しているのではないバランス型である。
スキルや才能を見ても攻撃に特化したものではない。
技術を身につけ経験を積んでいくより今はやれることもない。
「能力があるからと誰でも最初から戦えるわけではない。経験を積み、必要なものを見つけていきなさい」
「分かりました」
厳しさはあるが和輝の指導者としての技量は悪くない。
よく見てくれているし的確なアドバイスはとてもためになる。
「むぅ……早く私も役に立ちたい……」
「そう焦るなよ」
離れて毒を塗ったクロスボウを撃っているだけなのはちょっと面白くもない。
カレンはやや不満そうな顔をしていた。
「そんなことでカレンを守れると思うのかぁ!」
「いや爺さん、守んのは私の方だし……」
雷が落ちた。
実際に落雷があったわけじゃなく和輝に圭が叱責されて、持っていた杖で太ももを殴られたのである。
色々なことはあったけれどカレンは圭たちの仲間になってくれることを承諾してくれた。
借金の恩返しもあるが覚醒者になれるなら覚醒者として活躍してみたい思いもどこかにあったのだ。
借金は八重樫工房全体で少しずつ返すことにもなって、圭が打ち明けた秘密も当然他に話さないと約束してくれた。
そうなったのでカレンも覚醒してレベルを上げていく必要がある。
和輝にもそのことを説明したのだけどそれでは安心できないと言われてしまった。
強くなることにも懐疑的であるしそうだとしても強くなるまでの間不安である。
圭たちもそうだと言ったが不安が拭い切れなかった和輝が見守りとしてついてくることになった。
保護者同伴となってカレンは気まずそうだったのだが和輝はなんとB級覚醒者。
ケガの影響で激しい動きこそ出来ないもののそれを差し引いてもC級やD級相当の強さがあると見てもいい。
年を取りケガがあっても圭たちより上なので自分で身を守ることも出来る。
むしろまだまだ守られるぐらい。
そうして和輝が付いてきて見守られる中でカレンのレベル上げが始まった。
例によってカレンは毒矢を持たされて圭たち3人でモンスターを引きつけて戦っていた。
問題もなく順調に見えていたのだけど和輝の目から見たら違ったらしい。
戦い方がなっていない!
そのような叱責を受けた。
特に目をつけられたのは圭だった。
和輝はパワーを生かしたアタッカーであり、カレンがひとまずタンクとして役割を果たそうとするなら圭は自ずとアタッカーという役割を果たすことになる。
最近だいぶマシになってきたとはいっても圭もまだまだ経験の浅い覚醒者になる。
可愛い可愛い孫娘を預けるには圭の技量が足りていないということなのであった。
それから始まる和輝の指導。
夜滝や波瑠の動きにも指導は入るのだけどすごく優しく丁寧に指導している。
対して圭に対する指導は厳しい。
この差はなんなんだと圭は思わざるを得なかった。
「タイミングが遅い! もっとしっかり合わせればもっと力を乗せられる!」
それぞれどの役割も大切であるけれどアタッカーというのは敵を倒すために重要な役割でアタッカーが確実にモンスターを倒せば戦いにおけるリスクはグッと減らすことができる。
注意を引きつけ、攻撃を受けるタンクのためにも相手をちゃんと倒せるアタッカーでなくてはならないのである。
段々と熱が入ってくる指導を圭は甘んじて受け入れる。
圭自身経験が浅くて実力が不足していることは自覚している。
誰かが教えてくれるのならそれに越したことはない。
むしろ望むところである。
「ふむ……色々と言いはするが筋は悪くないぞ」
身体的というよりも精神的にも疲れた圭は休憩で甘いものを多く口にしていた。
カレンが作ってくれたお弁当を食べて反省会を行っていた。
「波瑠ちゃんは突っ込みすぎだな。もう少し周りを見てタイミングを図ったり、合わせることしなければならない。攻撃するだけではなく相手を翻弄したり少し注意を逸らすだけでも大きな意味を持つだろう」
「分かりました!」
波瑠の動きもだいぶ良くなっている。
良い装備も身につけて自信もついてきた。
速さも高いのでF級、あるいはE級のモンスターでも波瑠の動きをとらえるのは難しい。
「夜滝ちゃんは逆に慎重すぎるな。
魔法が味方に当たったりする危険もあるから慎重になることは分かるが魔法は発動までに一拍ある。
使う魔法や距離に応じて敵に届くまで時間もかかる。
タイミングを見過ぎて適切な時から魔法が遅れてしまっている。
離れて味方を俯瞰できるのだから1つ早い判断が必要だな」
「なるほどねぇ」
夜滝もなんだかんだとモンスターと戦うことに慣れてきた。
優斗が作った杖の補助効果もあって魔法自体も強くなった。
低級モンスターを討伐しているのでレベルの上がりは鈍くてスキルや才能といったものはまだ覚醒していないが現状でも夜滝の魔法は強い。
将来性は非常に高い。
「カレンはまだ覚醒したてだからな」
カレンはまだ立ち回りなどを気にする段階ではない。
毒武器でちまちま相手を倒して少しでもレベルを上げるべきでタンクなんかの役割を任せるのはまだ早い。
「問題は圭だな」
「えっ、さっき筋は悪くないって」
「筋は悪くないがまだまだだ。カレンを任せるにはもっと強くなってもらわにゃならん」
「努力はしますけど……」
そうはいうが圭も今の段階で能力を見ると何かに特化しているのではないバランス型である。
スキルや才能を見ても攻撃に特化したものではない。
技術を身につけ経験を積んでいくより今はやれることもない。
「能力があるからと誰でも最初から戦えるわけではない。経験を積み、必要なものを見つけていきなさい」
「分かりました」
厳しさはあるが和輝の指導者としての技量は悪くない。
よく見てくれているし的確なアドバイスはとてもためになる。
「むぅ……早く私も役に立ちたい……」
「そう焦るなよ」
離れて毒を塗ったクロスボウを撃っているだけなのはちょっと面白くもない。
カレンはやや不満そうな顔をしていた。
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