32 / 76
第2章
32 ウサギの悪行には意味がある
しおりを挟む
ウサウサピョンピョンウサピョンピョンッ――
――今日も旅館のウサギのキャラクターの目覚まし時計が騒がしい。おかげで僕の意識も覚醒した。
寝起きの調子が良いのは金縛り霊3姉妹のおかげかな。
昨夜訪れた庭園は極寒で体調が悪くなりそうだったけど、3姉妹がそういうものも含めて吸い取ってくれたのだろう。おかげで晴れたぽかぽか気分だ。
それに泥だらけだと思ってた布団も服もそんな汚れは一つもなかった。
庭園で引っ張られた時にできた汚れがなくなる理由が全くわからない。こればかりは疲労とかとは全くの別だ。
夢だったのかって思うぐらい不思議な体験だな……。
「いやー旅行に来てから体が元気だなー」
「そうね~。楽しいからかもしれないわね~」
「腰痛まで治ってやがるぜ。本当来てよかった」
寝起きの両親の体の調子は良いらしい。
お母さんの言った通り、旅行の楽しさで体が元気なのかもしれないと錯覚してもおかしくない。
それほど金縛り霊の不思議な力はすごいって事だな……。
この家族旅行も明日で終わる。
明日は帰る準備やらで忙しくなるだろう。ゆっくり遊べるのは今日で最後ということになる。
つまり金縛り霊3姉妹とのかくれんぼも今夜で最後。なんとしてでも見つけ出してあげたい……
「よーし今日は兎村のグルメ巡りだ!」
「ウサギちゃん。美味しい物いっぱい食べましょうね」
「朝食は外で食べるからな!」
今日の予定はグルメ巡り。なので旅館で朝食は取らずそのまま食べ歩きをする事になった。
3人で食べ歩き。兎村名物の料理をシェアしながら食べていくので、いろんな物を食べることができる。
でも食べ歩きに全く集中できない僕がいる。
このグルメ巡りで3姉妹の手掛かりを見つけられるといいのだけど……。
「は~い、ウサギちゃんの分」
「これって……」
「ウサギソフトよ~」
お母さんはボーッとしていた僕にウサギソフトという茶色いソフトクリームを渡してくれた。
まさかウサギの味がするのかと思ったけど、ただのチョコレート味だった。安心した。
「おいウサギ。これも食ってみろよ」
「うわぁ」
「ナイスキャッチ!」
お父さんがいきなり投げてきたのは、ウサギ煎餅と書かれた袋に入った1枚の煎餅だった。
キャッチできたのはよかったけど、おかげでウサギソフトを落としそうになった。
袋には野生のウサギも食べれる煎餅とも書かれている。ああ、あのウサギたちなら食べそうだな……。
チョコレート味のソフトクリームのお口直しにウサギ煎餅を開けて一口食べてみる。
パクっ。
うん。これは美味しい。普通に美味しい。普通すぎる煎餅だ。
「ンッンッ!」
「ンッンッ! ンッンッ!」
ウサギ煎餅を開けた途端2匹の野生のウサギが現れた。
僕が開けるまで隠れてたのだろうか。すごいおねだりしていて可愛い。
というか開けるまで待ってたのなら賢いな。
昨夜も行方不明のビラを僕のポケットから盗んだ。思い出すとやっぱり賢すぎ。
それからの両親の次から次へと名物グルメを買っては食べてを繰り返していた。
ウサギダンゴ、ウサギラーメン、ウサギケーキ、ウサギカレー、ウサギ饅頭。
ありとあらゆる兎村の名物グルメを食べた。
今思えば甘い物の次はしょっぱい物。その次は甘い物と計画的に食べている気がしてきた。
偶然かもしれないけどおかげで食べるのは苦じゃなかった。
そして今、僕たちは蕎麦屋さんでウサギそばを食べている最中だ。
蕎麦屋さんのおばあさんは、僕たちの食事中にウサギについて話をしてきた。
普通なら食事中に話しをかけてくるのは失礼だと思う。しかし両親は興味津々で話しを聞いていた。
まあ、旅行先ならこういう事もあるよな。それにしてもウサギみたいな見た目のおばあさんだな。
ウサギ信者の頂点って感じがする。
「この兎村のウサギは神様なんじゃよ」
「そうみたいですね」
ウサギの神話か……。
もしかしたらウサギがこのおばあさんに化けて話しているのかもしれない。
ウサギが人間界を征服するために神話を話しているとか……?
そんな妄想をしながらおばあさんの長い話を聞いた。
「ウサギは進むべき道を示すのじゃよ。ウサギの悪行には意味が有るのじゃ」
「だから結婚指輪を取られたのかも!」
「ああ、それでプロポーズが成功したんだ。間違いないだろ」
両親は熱くなりながらおばあさんの話を聞いている。
まさにおばあさんが言った通りのことが、両親の身にも起きたのだからテンションが上がるのはわかる。
「ところでお兄さんや。化けウサギは良い妖怪か悪い妖怪、どっちだと思う?」
急に話を振られた。僕のことすごいじーっと見てるんだけど……。
えーっとなんだって?
化けウサギが良いか悪いか?
「う~ん。悪さばかりするイメージがあるので悪い妖怪かな? でもさっきの話からすると良い妖怪なのかも。何か理由があって悪いことしてるとか?」
「そうじゃ。お兄さんの言う通り良い妖怪じゃ。守護霊や座敷童子、他にも金縛り霊のように良い幽霊がいるじゃろ。妖怪にも良い妖怪がたくさんいるのじゃよ。とくにウサギ様はそうじゃな」
不意に聞き慣れた単語が飛び出してきたような気がするんだけど……。
「どうしたんじゃ、そんなに驚いた顔をして。正解したことがそんなに驚いたのか?」
「おばあちゃん。金縛り霊を知ってるの?」
「金縛り霊か。知っておるよ」
初めてだ。金縛り霊の事を知っている人に会ったのは……。このおばあさん一体何者なんだ?
「あれじゃろ。金縛り中に見える幽霊のことじゃろ」
確かにおばあさんが言った通り、金縛り霊は金縛り中に見える幽霊のことだ。
知ってて当然の知識か……。
ただ良い幽霊と言っていた事が引っかかる。
世間では普通、金縛り霊のイメージは悪いはずだ。
僕が知っている金縛り霊の何かを知っているかもしれない……。
「それでじゃな、兎村のウサギは実は1000匹以上いるんじゃよ」
ああ、おばあさんの話がウサギの話に戻った。
驚きすぎて金縛り霊の事聞きそびれた。もう少し詳しく聞きたかったな。
おばあさんの話を聞きながらウサギそばを完食させた。
店を出るときにおばあさんは、僕に向かって意味深な言葉を言った。
「お兄さんや。困ったらウサギ様に聞くんじゃぞ。導いてくれるじゃろう」
「は、はい……あはは、ウサギ様に導いてもらいます」
この兎村の挨拶のようなものだろう、と思って得意の愛想笑いで返してしまった。
それにしても本当にウサギみたいな見た目のおばあさんだな……。
◆◇◆◇◆◇◆◇
グルメ巡りも終わりウサギのようにお腹を膨らませながら旅館に帰って来た。
途中のお土産屋さんで購入したウサギ煎餅とウサギマシュマロが、しょっぱい甘いの繰り返しで永遠と食べれてしまう。罪深き食欲だ。
両親もお腹いっぱいのはずなのに部屋に戻っても食べ続けていた。いよいよ体型までウサギみたいになってしまう。
食べ過ぎて寝れなくなってしまったら、金縛りにかからなくなってしまうので、僕は途中で食べるのをやめた。
まだ食べたいけど我慢だ。
今日がこの旅館で寝る最後の日だ。目が覚めればこの旅館を出ていくことになる。
両親はすでに帰り支度を終えてる。あとは寝るだけか……。
あっという間だったけど楽しかったな。
でも思い出に浸ってる場合じゃない。僕にはやらなきゃいけないことがある。
かくれんぼ最終日に向けて、いざ布団の中へ。食べたら眠くなるのは人間の性だ。素晴らしいではないか。
眠りについて金縛りにかかってから僕の本当の1日は始まる。
だから僕にとって眠るってことは1日の始まりを意味する。本番はここからだ。
あの3姉妹を見つけることができるラストチャンスだ。今日こそ絶対に見つけてあげないとダメだ。
絶対に見つけてやる。僕が3姉妹を救ってみせる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
金縛り霊3姉妹との最後のかくれんぼが始まる。
僕はいつも通り金縛りにかかってから意識が覚醒した。布団を覗くと中には金縛り霊3姉妹が潜り込んでいる。
最終日だからだろうか、いつも以上に抱きつき方が強いような気がするんだが。
特にヒナが強い。腕だけでなく足も使って抱きついている。完全に抱き枕にされている。
「お兄ちゃん……」
ヒナは幸せそうな顔で呟いた。
最初の印象だとクールでかっこいい感じに思ってたけど、実は3姉妹の中で1番の甘えん坊なのかもしれない。
昨夜フナにされたように優しくヒナの頭を撫でてあげたくなった。だから撫でてあげよう。
「では最終日は私がお供しますわね。二人とも起きなさい!」
長女のハナが僕に抱きつく二人を起こす。さすが長女。しっかりしている。
「はっ! フナいつの間に寝てたー? おにーさんってすごー! えいよーすごー」
「そ、そうなの?」
そんなに僕の栄養とやらはすごいのか。
思い返せばカナちゃんもレイナちゃんもユウナさんも僕の栄養をやけに気に入っている。
何か特別な力でもあるのだろうか。25年間生きてきて初めての金縛りで特別な力が開花したのかもしれない。
この1ヶ月で金縛り霊たちと新密に関われた。人生が少し、いや、すごく楽しくなった。
だから今日ここで金縛り霊の3姉妹に全力で恩返しをしよう。そう心に決めた。
「あの~ハナちゃん。ヒナが全く起きないんですけど、どうしたらいいのこれ?」
「うおーい! 起きてー! かくれんぼーかくれんぼー」
フナちゃんが必死に起こそうとするが起きない。コアラのようにずっとしがみついている。
「本当は起きてるんでしょ。早く離れなさい」
「もう少しだけ……お兄ちゃんと……」
「もう~、ダメよ。起きなさい」
ハナちゃんが布団をいきなり取られた。この行為は僕にも被害が及ぶ。寒い。
「ヒナ、起きてくれって、起きてるのか……離れてくれー」
「わかったよ。離れるって……」
ヒナは渋々離れてくれた。
寂しい顔をされると罪悪感がすごい残る。顔を見なかったらよかったと後悔してしまうくらいだ。
布団を取られて気付いたことがある。昨日よりももっと寒い。
でもこうなると予想はしてた。だからグルメ巡りの時に寒さ対策用にウサギマフラーを購入しておいたのだ。
ウサギの毛皮のような素材のウサギマフラーを装着した。庭園の探索は寒過ぎたので学習したのだ。
でも昨日よりも着込んだのに今日のほうが寒いっておかしいな。ベリーハードな最終日になりそうな予感だ。
「あたしたちは隠れて待ってるから見つけてくれよな」
「みつけてー見つけてー」
「うん。もちろん」
ヒナとフナちゃんが浮かびながら部屋を出て行った。僕は拳をいつの間にか強く握りしめていた。気合い十分だ。
「それじゃウサギさん。行きましょう」
最終日のパートナーはしっかり者の長女ハナちゃんだ。
長女だけあって胸もでかい。見事に立派に成長していらっしゃる。
なぜお胸の事を考えているかというと、今まさにその大きなお胸が僕の右腕を包み込んでいる。
ああ、柔らかい。こんなにも柔らかいものなのか?
これじゃ集中してできないではないか。
「あの~いきなりであれなんですけど……もうちょっと離れて歩きませんか?」
「あら? こういうのがお好きかと思ったのですが、嫌でしたか?」
「え?」
いやいやいや大好きです。すごく大好きですよ。
でも、しっかり者のお姉さんの口からそんな言葉が出るなんて意外だ。
今の会話からしてわざと豊満な胸を押し当ててるって事だよな。
正体は、とんだ痴女姉ちゃんだったわ……
「このままでお願いします!」
なぜかイケボで応えてしまった。このままで許されるのならこのままがいい。
「それで今日はどこを探すかしら?」
「庭園かな……」
蕎麦屋のおばあちゃんが言っていた『ウサギは進むべき道を示すのじゃよ。ウサギの悪行には意味が有るのじゃ』って言葉がどうしても引っかかる。
昨日僕のポケットからビラを盗んだウサギ。なんでスマホじゃなくて紙切れのビラを盗んだのか?
あの行動に意味があるのかもしれない。
だからまずは庭園で昨日のウサギを探さなくてはならない。
「ンッンッ! ンッンッ!」
「あら可愛いウサギさん」
庭園に入ると真っ先に1匹のウサギが近付いて来た。昨日のウサギなのだろうか?
「ンッンッ!」
このウサギも僕の足を登ってきている。昨日のウサギと同じ手口でポケットをあさってる。常習犯だ。
「あの~ポケット漁ってますよ」
「大丈夫大丈夫。このままこのまま」
ポケットの中身が軽くなった感覚がある。何かを盗ったんだ。
その瞬間、ウサギはそのまま僕の足から飛び降りて走って逃げていった
「あっ……ウサギさんスマホ盗られてますよ」
「ふふふ、問題ない」
「え?」
「あのスマホはお父さんのスマホだ」
「えぇ、問題ありまくりじゃないですか?」
「実はGPS機能を入れておいた! なのであの盗人ウサギがどこに行ったかすぐにわかる!」
「なるほど、さすがウサギさん」
ここまでは作戦通りだ。ウサギにわざとスマホを盗ませてGPS機能を使って追いかける。まさに天才の発想。
最終日の今日はどんな手を使ってでも必ず見つけ出したい。
「自分のスマホでお父さんのスマホの位置を確認っと……こっちだ。行こう」
「は、はい」
僕は右腕をおっぱいに包まれ、左手にスマホを持ちながらウサギをすぐに追いかけた。
蕎麦屋のおばあちゃんが言っていた通り、何か意味がある行動をしてくれよ……。
GPSの反応を辿りながら庭園の中を歩いた。
そしてGPSが反応している位置まできたが、肝心のウサギの姿がどこにもない。
「おかしいな~? ウサギもいないしスマホもない……ってスマホ無くしたのバレたらお父さんに怒られる……なんでないの? どこ行ったの? 反応はあるのにスマホがない……どうなってるの?」
「お、落ち着いてください」
さっきまでの自信が嘘みたいにいきなり不安に駆られてしまった。それにこの状況落ち着けるはずがない。
かくれんぼの途中でスマホも見つけなくちゃいけないってやる事増えちゃったんだけど……。
「大丈夫ですよ。全てウサギ様の行いですから。許されます。これなら怒られずに済みますよ」
「それもそうだ、全てウサギ様がやったこと! 僕は一切関係がない。さすがハナちゃん!」
「ふふふっ」
「ははははっ」
自然と笑ってしまった。でもなんの解決にもなってないんじゃないか?
でも待てよ。GPSの反応が目の前で止まっていて目の前は行き止まり。
何かおかしい。もう少し調べてみる価値はありそうだ。
「って、待てよ……これって」
「どうしたんですか? 何か見つけました?」
大きな岩の下を見てすぐに一枚の紙を見つけた。
ただの紙なら不思議には思わない。だけど明らかにおかしい点がある。
「この紙、なんで岩に挟まれてるんだ」
動かせるはずのない大きな岩。その岩の下に紙が挟まれている。こんな挟まり方は不自然だ。
だって、大きな岩を動かさなきゃこんな風に挟まらるはずがない。
「嘘だろ……」
挟まれてる紙を引っ張って取ってみたら衝撃を受けた。
その紙は昨日僕がウサギに取られた3姉妹の行方不明のビラだった。
「ウサギは進むべき道を示すのじゃよ。ウサギの悪行には意味が有るのじゃ」
つい蕎麦屋のおばあちゃんの言葉を口に出してしまった。
「なんですかその言葉?」
「いや、ウサギ様すごいなって思っただけ……」
不自然に挟まっていたビラ。ウサギのこの行為に意味があるとすれば、この大きな岩に仕掛けがあるはずだ。
とりあえず押してみようかな。
「うわ、意外と軽い。これなら動かせる」
なんか岩を押して進むゲームあったよな。かいりきウーハーって言いながら進やつ。それ思い出しちゃったわ。
大きな岩はひ弱な僕でも軽々と押せてしまった。完全に何かあるとしか思えない。
「これって……」
「野生のウサギの隠れ家かしら?」
人が余裕で入れるくらいの大きな抜け道が地下へと広がっている。
このまま方角だと商店街の方だよな。この旅館と商店街の地下道ってことか。
まさかこんなところが繋がってるなんて……
「あの~ハナちゃん」
「どうしました?」
ここまで来たら聞くしかない。もう時間がないんだ。躊躇してられない。
「どうして亡くなったか記憶はある?」
行方不明になり、亡くなってしまった事について恐る恐る聞いてみた。
僕の言葉を聞いたハナちゃんの顔はニッコリと笑った。
――今日も旅館のウサギのキャラクターの目覚まし時計が騒がしい。おかげで僕の意識も覚醒した。
寝起きの調子が良いのは金縛り霊3姉妹のおかげかな。
昨夜訪れた庭園は極寒で体調が悪くなりそうだったけど、3姉妹がそういうものも含めて吸い取ってくれたのだろう。おかげで晴れたぽかぽか気分だ。
それに泥だらけだと思ってた布団も服もそんな汚れは一つもなかった。
庭園で引っ張られた時にできた汚れがなくなる理由が全くわからない。こればかりは疲労とかとは全くの別だ。
夢だったのかって思うぐらい不思議な体験だな……。
「いやー旅行に来てから体が元気だなー」
「そうね~。楽しいからかもしれないわね~」
「腰痛まで治ってやがるぜ。本当来てよかった」
寝起きの両親の体の調子は良いらしい。
お母さんの言った通り、旅行の楽しさで体が元気なのかもしれないと錯覚してもおかしくない。
それほど金縛り霊の不思議な力はすごいって事だな……。
この家族旅行も明日で終わる。
明日は帰る準備やらで忙しくなるだろう。ゆっくり遊べるのは今日で最後ということになる。
つまり金縛り霊3姉妹とのかくれんぼも今夜で最後。なんとしてでも見つけ出してあげたい……
「よーし今日は兎村のグルメ巡りだ!」
「ウサギちゃん。美味しい物いっぱい食べましょうね」
「朝食は外で食べるからな!」
今日の予定はグルメ巡り。なので旅館で朝食は取らずそのまま食べ歩きをする事になった。
3人で食べ歩き。兎村名物の料理をシェアしながら食べていくので、いろんな物を食べることができる。
でも食べ歩きに全く集中できない僕がいる。
このグルメ巡りで3姉妹の手掛かりを見つけられるといいのだけど……。
「は~い、ウサギちゃんの分」
「これって……」
「ウサギソフトよ~」
お母さんはボーッとしていた僕にウサギソフトという茶色いソフトクリームを渡してくれた。
まさかウサギの味がするのかと思ったけど、ただのチョコレート味だった。安心した。
「おいウサギ。これも食ってみろよ」
「うわぁ」
「ナイスキャッチ!」
お父さんがいきなり投げてきたのは、ウサギ煎餅と書かれた袋に入った1枚の煎餅だった。
キャッチできたのはよかったけど、おかげでウサギソフトを落としそうになった。
袋には野生のウサギも食べれる煎餅とも書かれている。ああ、あのウサギたちなら食べそうだな……。
チョコレート味のソフトクリームのお口直しにウサギ煎餅を開けて一口食べてみる。
パクっ。
うん。これは美味しい。普通に美味しい。普通すぎる煎餅だ。
「ンッンッ!」
「ンッンッ! ンッンッ!」
ウサギ煎餅を開けた途端2匹の野生のウサギが現れた。
僕が開けるまで隠れてたのだろうか。すごいおねだりしていて可愛い。
というか開けるまで待ってたのなら賢いな。
昨夜も行方不明のビラを僕のポケットから盗んだ。思い出すとやっぱり賢すぎ。
それからの両親の次から次へと名物グルメを買っては食べてを繰り返していた。
ウサギダンゴ、ウサギラーメン、ウサギケーキ、ウサギカレー、ウサギ饅頭。
ありとあらゆる兎村の名物グルメを食べた。
今思えば甘い物の次はしょっぱい物。その次は甘い物と計画的に食べている気がしてきた。
偶然かもしれないけどおかげで食べるのは苦じゃなかった。
そして今、僕たちは蕎麦屋さんでウサギそばを食べている最中だ。
蕎麦屋さんのおばあさんは、僕たちの食事中にウサギについて話をしてきた。
普通なら食事中に話しをかけてくるのは失礼だと思う。しかし両親は興味津々で話しを聞いていた。
まあ、旅行先ならこういう事もあるよな。それにしてもウサギみたいな見た目のおばあさんだな。
ウサギ信者の頂点って感じがする。
「この兎村のウサギは神様なんじゃよ」
「そうみたいですね」
ウサギの神話か……。
もしかしたらウサギがこのおばあさんに化けて話しているのかもしれない。
ウサギが人間界を征服するために神話を話しているとか……?
そんな妄想をしながらおばあさんの長い話を聞いた。
「ウサギは進むべき道を示すのじゃよ。ウサギの悪行には意味が有るのじゃ」
「だから結婚指輪を取られたのかも!」
「ああ、それでプロポーズが成功したんだ。間違いないだろ」
両親は熱くなりながらおばあさんの話を聞いている。
まさにおばあさんが言った通りのことが、両親の身にも起きたのだからテンションが上がるのはわかる。
「ところでお兄さんや。化けウサギは良い妖怪か悪い妖怪、どっちだと思う?」
急に話を振られた。僕のことすごいじーっと見てるんだけど……。
えーっとなんだって?
化けウサギが良いか悪いか?
「う~ん。悪さばかりするイメージがあるので悪い妖怪かな? でもさっきの話からすると良い妖怪なのかも。何か理由があって悪いことしてるとか?」
「そうじゃ。お兄さんの言う通り良い妖怪じゃ。守護霊や座敷童子、他にも金縛り霊のように良い幽霊がいるじゃろ。妖怪にも良い妖怪がたくさんいるのじゃよ。とくにウサギ様はそうじゃな」
不意に聞き慣れた単語が飛び出してきたような気がするんだけど……。
「どうしたんじゃ、そんなに驚いた顔をして。正解したことがそんなに驚いたのか?」
「おばあちゃん。金縛り霊を知ってるの?」
「金縛り霊か。知っておるよ」
初めてだ。金縛り霊の事を知っている人に会ったのは……。このおばあさん一体何者なんだ?
「あれじゃろ。金縛り中に見える幽霊のことじゃろ」
確かにおばあさんが言った通り、金縛り霊は金縛り中に見える幽霊のことだ。
知ってて当然の知識か……。
ただ良い幽霊と言っていた事が引っかかる。
世間では普通、金縛り霊のイメージは悪いはずだ。
僕が知っている金縛り霊の何かを知っているかもしれない……。
「それでじゃな、兎村のウサギは実は1000匹以上いるんじゃよ」
ああ、おばあさんの話がウサギの話に戻った。
驚きすぎて金縛り霊の事聞きそびれた。もう少し詳しく聞きたかったな。
おばあさんの話を聞きながらウサギそばを完食させた。
店を出るときにおばあさんは、僕に向かって意味深な言葉を言った。
「お兄さんや。困ったらウサギ様に聞くんじゃぞ。導いてくれるじゃろう」
「は、はい……あはは、ウサギ様に導いてもらいます」
この兎村の挨拶のようなものだろう、と思って得意の愛想笑いで返してしまった。
それにしても本当にウサギみたいな見た目のおばあさんだな……。
◆◇◆◇◆◇◆◇
グルメ巡りも終わりウサギのようにお腹を膨らませながら旅館に帰って来た。
途中のお土産屋さんで購入したウサギ煎餅とウサギマシュマロが、しょっぱい甘いの繰り返しで永遠と食べれてしまう。罪深き食欲だ。
両親もお腹いっぱいのはずなのに部屋に戻っても食べ続けていた。いよいよ体型までウサギみたいになってしまう。
食べ過ぎて寝れなくなってしまったら、金縛りにかからなくなってしまうので、僕は途中で食べるのをやめた。
まだ食べたいけど我慢だ。
今日がこの旅館で寝る最後の日だ。目が覚めればこの旅館を出ていくことになる。
両親はすでに帰り支度を終えてる。あとは寝るだけか……。
あっという間だったけど楽しかったな。
でも思い出に浸ってる場合じゃない。僕にはやらなきゃいけないことがある。
かくれんぼ最終日に向けて、いざ布団の中へ。食べたら眠くなるのは人間の性だ。素晴らしいではないか。
眠りについて金縛りにかかってから僕の本当の1日は始まる。
だから僕にとって眠るってことは1日の始まりを意味する。本番はここからだ。
あの3姉妹を見つけることができるラストチャンスだ。今日こそ絶対に見つけてあげないとダメだ。
絶対に見つけてやる。僕が3姉妹を救ってみせる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
金縛り霊3姉妹との最後のかくれんぼが始まる。
僕はいつも通り金縛りにかかってから意識が覚醒した。布団を覗くと中には金縛り霊3姉妹が潜り込んでいる。
最終日だからだろうか、いつも以上に抱きつき方が強いような気がするんだが。
特にヒナが強い。腕だけでなく足も使って抱きついている。完全に抱き枕にされている。
「お兄ちゃん……」
ヒナは幸せそうな顔で呟いた。
最初の印象だとクールでかっこいい感じに思ってたけど、実は3姉妹の中で1番の甘えん坊なのかもしれない。
昨夜フナにされたように優しくヒナの頭を撫でてあげたくなった。だから撫でてあげよう。
「では最終日は私がお供しますわね。二人とも起きなさい!」
長女のハナが僕に抱きつく二人を起こす。さすが長女。しっかりしている。
「はっ! フナいつの間に寝てたー? おにーさんってすごー! えいよーすごー」
「そ、そうなの?」
そんなに僕の栄養とやらはすごいのか。
思い返せばカナちゃんもレイナちゃんもユウナさんも僕の栄養をやけに気に入っている。
何か特別な力でもあるのだろうか。25年間生きてきて初めての金縛りで特別な力が開花したのかもしれない。
この1ヶ月で金縛り霊たちと新密に関われた。人生が少し、いや、すごく楽しくなった。
だから今日ここで金縛り霊の3姉妹に全力で恩返しをしよう。そう心に決めた。
「あの~ハナちゃん。ヒナが全く起きないんですけど、どうしたらいいのこれ?」
「うおーい! 起きてー! かくれんぼーかくれんぼー」
フナちゃんが必死に起こそうとするが起きない。コアラのようにずっとしがみついている。
「本当は起きてるんでしょ。早く離れなさい」
「もう少しだけ……お兄ちゃんと……」
「もう~、ダメよ。起きなさい」
ハナちゃんが布団をいきなり取られた。この行為は僕にも被害が及ぶ。寒い。
「ヒナ、起きてくれって、起きてるのか……離れてくれー」
「わかったよ。離れるって……」
ヒナは渋々離れてくれた。
寂しい顔をされると罪悪感がすごい残る。顔を見なかったらよかったと後悔してしまうくらいだ。
布団を取られて気付いたことがある。昨日よりももっと寒い。
でもこうなると予想はしてた。だからグルメ巡りの時に寒さ対策用にウサギマフラーを購入しておいたのだ。
ウサギの毛皮のような素材のウサギマフラーを装着した。庭園の探索は寒過ぎたので学習したのだ。
でも昨日よりも着込んだのに今日のほうが寒いっておかしいな。ベリーハードな最終日になりそうな予感だ。
「あたしたちは隠れて待ってるから見つけてくれよな」
「みつけてー見つけてー」
「うん。もちろん」
ヒナとフナちゃんが浮かびながら部屋を出て行った。僕は拳をいつの間にか強く握りしめていた。気合い十分だ。
「それじゃウサギさん。行きましょう」
最終日のパートナーはしっかり者の長女ハナちゃんだ。
長女だけあって胸もでかい。見事に立派に成長していらっしゃる。
なぜお胸の事を考えているかというと、今まさにその大きなお胸が僕の右腕を包み込んでいる。
ああ、柔らかい。こんなにも柔らかいものなのか?
これじゃ集中してできないではないか。
「あの~いきなりであれなんですけど……もうちょっと離れて歩きませんか?」
「あら? こういうのがお好きかと思ったのですが、嫌でしたか?」
「え?」
いやいやいや大好きです。すごく大好きですよ。
でも、しっかり者のお姉さんの口からそんな言葉が出るなんて意外だ。
今の会話からしてわざと豊満な胸を押し当ててるって事だよな。
正体は、とんだ痴女姉ちゃんだったわ……
「このままでお願いします!」
なぜかイケボで応えてしまった。このままで許されるのならこのままがいい。
「それで今日はどこを探すかしら?」
「庭園かな……」
蕎麦屋のおばあちゃんが言っていた『ウサギは進むべき道を示すのじゃよ。ウサギの悪行には意味が有るのじゃ』って言葉がどうしても引っかかる。
昨日僕のポケットからビラを盗んだウサギ。なんでスマホじゃなくて紙切れのビラを盗んだのか?
あの行動に意味があるのかもしれない。
だからまずは庭園で昨日のウサギを探さなくてはならない。
「ンッンッ! ンッンッ!」
「あら可愛いウサギさん」
庭園に入ると真っ先に1匹のウサギが近付いて来た。昨日のウサギなのだろうか?
「ンッンッ!」
このウサギも僕の足を登ってきている。昨日のウサギと同じ手口でポケットをあさってる。常習犯だ。
「あの~ポケット漁ってますよ」
「大丈夫大丈夫。このままこのまま」
ポケットの中身が軽くなった感覚がある。何かを盗ったんだ。
その瞬間、ウサギはそのまま僕の足から飛び降りて走って逃げていった
「あっ……ウサギさんスマホ盗られてますよ」
「ふふふ、問題ない」
「え?」
「あのスマホはお父さんのスマホだ」
「えぇ、問題ありまくりじゃないですか?」
「実はGPS機能を入れておいた! なのであの盗人ウサギがどこに行ったかすぐにわかる!」
「なるほど、さすがウサギさん」
ここまでは作戦通りだ。ウサギにわざとスマホを盗ませてGPS機能を使って追いかける。まさに天才の発想。
最終日の今日はどんな手を使ってでも必ず見つけ出したい。
「自分のスマホでお父さんのスマホの位置を確認っと……こっちだ。行こう」
「は、はい」
僕は右腕をおっぱいに包まれ、左手にスマホを持ちながらウサギをすぐに追いかけた。
蕎麦屋のおばあちゃんが言っていた通り、何か意味がある行動をしてくれよ……。
GPSの反応を辿りながら庭園の中を歩いた。
そしてGPSが反応している位置まできたが、肝心のウサギの姿がどこにもない。
「おかしいな~? ウサギもいないしスマホもない……ってスマホ無くしたのバレたらお父さんに怒られる……なんでないの? どこ行ったの? 反応はあるのにスマホがない……どうなってるの?」
「お、落ち着いてください」
さっきまでの自信が嘘みたいにいきなり不安に駆られてしまった。それにこの状況落ち着けるはずがない。
かくれんぼの途中でスマホも見つけなくちゃいけないってやる事増えちゃったんだけど……。
「大丈夫ですよ。全てウサギ様の行いですから。許されます。これなら怒られずに済みますよ」
「それもそうだ、全てウサギ様がやったこと! 僕は一切関係がない。さすがハナちゃん!」
「ふふふっ」
「ははははっ」
自然と笑ってしまった。でもなんの解決にもなってないんじゃないか?
でも待てよ。GPSの反応が目の前で止まっていて目の前は行き止まり。
何かおかしい。もう少し調べてみる価値はありそうだ。
「って、待てよ……これって」
「どうしたんですか? 何か見つけました?」
大きな岩の下を見てすぐに一枚の紙を見つけた。
ただの紙なら不思議には思わない。だけど明らかにおかしい点がある。
「この紙、なんで岩に挟まれてるんだ」
動かせるはずのない大きな岩。その岩の下に紙が挟まれている。こんな挟まり方は不自然だ。
だって、大きな岩を動かさなきゃこんな風に挟まらるはずがない。
「嘘だろ……」
挟まれてる紙を引っ張って取ってみたら衝撃を受けた。
その紙は昨日僕がウサギに取られた3姉妹の行方不明のビラだった。
「ウサギは進むべき道を示すのじゃよ。ウサギの悪行には意味が有るのじゃ」
つい蕎麦屋のおばあちゃんの言葉を口に出してしまった。
「なんですかその言葉?」
「いや、ウサギ様すごいなって思っただけ……」
不自然に挟まっていたビラ。ウサギのこの行為に意味があるとすれば、この大きな岩に仕掛けがあるはずだ。
とりあえず押してみようかな。
「うわ、意外と軽い。これなら動かせる」
なんか岩を押して進むゲームあったよな。かいりきウーハーって言いながら進やつ。それ思い出しちゃったわ。
大きな岩はひ弱な僕でも軽々と押せてしまった。完全に何かあるとしか思えない。
「これって……」
「野生のウサギの隠れ家かしら?」
人が余裕で入れるくらいの大きな抜け道が地下へと広がっている。
このまま方角だと商店街の方だよな。この旅館と商店街の地下道ってことか。
まさかこんなところが繋がってるなんて……
「あの~ハナちゃん」
「どうしました?」
ここまで来たら聞くしかない。もう時間がないんだ。躊躇してられない。
「どうして亡くなったか記憶はある?」
行方不明になり、亡くなってしまった事について恐る恐る聞いてみた。
僕の言葉を聞いたハナちゃんの顔はニッコリと笑った。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる