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第1章
16 ドキドキが、ドキドキが止まらない!
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朝か。
いつの間にか寝てた。
無意識に耳たぶを触る。
昨日レイナちゃんがはむはむしていた耳たぶだ。
ピピピピッピピピピッ
目覚ましが鳴る音だ。うるさいのですぐに消した。
目覚ましが鳴る前に起きるって珍しいな。
確か、こういうのって早朝覚醒っていう睡眠障害だよな。
生活習慣の乱れや精神的ストレス、悩み事などがある時などに発症してしまうらしい。
そうか。僕は悩んでいるのか。
何に悩んでるんだ?
いや、何に悩んでるかぐらいわかってる。
レイナちゃんだ。
レイナちゃんはロリフェイスでめちゃくちゃ可愛い。それに敬語が使えて礼儀正しい女の子。
カナちゃんに負けないくらいの超絶美少女……だと思ってたのに。
昨夜のレイナちゃんの様子がおかしかった。
いや、あれがレイナちゃんの本性か。
メンヘラ妹属性。勝手に名付けた属性だけど、おそらく間違ってはいないだろう。
あれは……レイナちゃんは完全にメンヘラ妹属性だ!
毎日来るって言ってたけど、その場合はカナちゃんはどうなるんだ?
二人で来てくれるんなら嬉しい。でもカナちゃんは別の人のところに行ってたんだよな。
もしもカナちゃんがその人のことを気に入って毎晩金縛りをかけに行ったら……もうカナちゃんに会えなくなるんじゃないのか?
それは嫌だ。あの笑顔が見れなくなるのは嫌だ。あの寝息が聞けなくなるのも嫌だ。
レイナちゃんのことも気になってるのは本当だ。
でもカナちゃんのことが忘れられない。
これから僕はどうしたらいいんだ。
レイナちゃんとの関係をどうしたら良いのだろうか?
このままでいいのか?
カナちゃんにもう一度来てもらうにはどうしたらいいんだ?
でもカナちゃんが来たら今度はレイナちゃんに会えなくなるんじゃないか?
僕は傲慢だ。そして強欲だ。
二人を好きになってる。
いいのかこれで?
二人を好きになっていいのか?
金縛りに悩んでいた。
金縛りにかかれば誰しも悩むだろう。
しかし僕の場合は、一般的な金縛りではなく特別な金縛りに悩まされている。
それにしても体が軽い。
レイナちゃんが僕の『疲労』を吸い取ってくれたおかげだろう。
いつも以上に体が軽くて元気なのは『疲労』を全部吸い尽くしてくれたんだと思う。
レイナちゃんの愛に飢えたあの笑顔。
レイナちゃんのあの瞳。僕を求める獣の瞳だ。
口で吸い取った方が栄養が増えるとか言ってた。
それにキスをしようともしてた。
いや、それ以前に僕の栄養が美味しいとかも言ってたな。
今までに味わったことがないほど美味しいって。
僕の『疲労』ってそんなに美味しいのか?
何か特別な……例えば……重大な病気を抱えているとか? それだったら怖い。
僕の体は大丈夫なのだろうか?
それも悩みのタネだ。
『金縛りにかかって健康になりました』という事例は聞いたことがない。
けれど僕の体は元気。健康に向かっている気がしてならない。
力が漲ってくるし、やる気が出る。今日を生きようと思える。
金縛りにかかることが生きがいになってる。
そんなやる気に満ち溢れた今日は居酒屋のバイトがある。
スマホの画面に『扉の修理が終わったので営業します』というメッセージが表示されてる。
バイトか。リナ先輩に会えるな。
昨日はリナ先輩とデートをした。そして夢にまでリナ先輩が現れた。結果的に悪夢になってしまったが……。
何だろう……リナ先輩とバイトで会うのがちょっと恥ずかしい。会いたいって気持ちは強いのに。
この気持ちは何だろう? 胸がドキドキする。苦しい。緊張する。
まさか……恋……?
僕はカナちゃんとレイナちゃんと、それにリナ先輩の三人に同時に恋をしているってこと?
最近ドキドキすることが多すぎておかしくなったのか?
このドキドキを恋だと勘違いしているだけなのか?
だとしたらレイナちゃんに対しても勘違い?
もしかしたらカナちゃんに対しても勘違い?
いや、勘違いなんかじゃない。
カナちゃんのことを考えるだけでめちゃくちゃ胸がドキドキする。
レイナちゃんのことだって、リナ先輩のことだって、考えるだけで鼓動が激しくビートを刻む。
欲張りすぎだよね。傲慢すぎるよね。
三人を同時に好きになっていいのかな?
童貞のくせに。童貞のくせに傲慢すぎるよね。
◆◇◆◇◆◇◆◇
バイトだ。
いつもよりも早く到着してしまった。
なぜなら新しい扉を見たかったからだ。
ごめんなさい。嘘です。少しでも早くリナ先輩に会いたかったからです。
この気持ちが恋なのか、ただドキドキしているだけなのか確かめたい。
でも扉は扉でめっちゃいい感じになってる。
前回の扉よりも暗めで居酒屋らしい感じになったな。
個人的には前の扉よりも今の扉の方が好きだ。
まあ、それくらいの感想しか出ないけど。
さて、バイトが始まるまでスタッフルームで待っておこう。
もしかしたらリナ先輩も早く来るかもしれないし。
「おっ、ウサギくん。早いね」
「リ、リナ先輩!」
ちょうどリナ先輩のことを考えてたから後ろから声をかけられて驚いた。
脳内で再生された声かと一瞬だけ勘違いしたけど、やっぱりリナ先輩だ。
「驚かせちゃったね。あっ、昨日のデートは楽しかったねっ! 今日のバイトもよろしくね~」
「あっ、はい! よろしくお願いします」
スタッフルームに向かっていくリナ先輩を目で追いかける。
いや、ただただ見惚れているだけだ。
恋だ。今確信した。
僕が抱いているこの感情は恋だ。
紛れもなく恋だ。
綺麗なロングヘアーの金髪。
服を着ていても豊満なおっぱいがはっきりとくっきりと見える。横向きだと尚更だ。
デートをしたからか?
夢に出たからか?
いつも以上にドキドキしてしまう。挙動不審になってしまう。
バイト前だっていうのに、どうしよう。
集中だ。集中するんだ。心を落ち着かせろ。平常心だ。平常心。
リナ先輩のことが好きだって気持ちは本物だ。
だけど職場恋愛はダメだ。絶対ダメだ。
職場恋愛は絶対に失敗する……。落ち着くんだ……。
◆◇◆◇
「「「お疲れ様でした」」」
いつの間にかバイトが終わった。
全然記憶がない。
いや、嘘だ。記憶はある。
ずっとリナ先輩のことを考えていた。
ずっとリナ先輩のことを見ていた。
自分自身を褒めたい。よくミスしなかったなと。
でもこのままじゃダメだ。
リナ先輩のことを意識しすぎたらいつかミスをする。
もう意識するのをやめないと。
恋するのは僕の勝手だ。でも絶対にリナ先輩とは付き合えない。
だってリナ先輩は誰もが認めるほどの超絶美少女。
清楚系ギャルで巨乳で優しくて……。それで……それで……。
「ウサギくん? 聞いてる?」
「あっ、え? は、はい!」
そ、そうだ。
今はスタッフルームでリナ先輩と二人っきりだったんだ。
「あたしさぁ~、最近好きな人ができたんだよね~。付き合いたいんだけどさ~、今の関係のままでも良いかなって思ってるんだよね……」
唐突に恋バナが始まった。
って!? え? 好きな人!?
いきなり失恋してしまった。
というか今までこんな話、僕にしたことなかったよな。
なんでだ?
ああ~、これも昨日のデートのおかげか?
距離が近付いたってことか?
だったら僕はリナ先輩の恋が実るように協力しなきゃ。
だって僕とリナ先輩はバイトの先輩と後輩の関係。
いい感じで言えば友達の関係なのだから。
そんな友達が悩んでいるんだ。
そして相談してくれてるんだ。
ちゃんと答えよう。
童貞の僕に気の利いた答えを出せるかどうかわからないけど。
「ごめんね。童貞のウサギくんにはキツイ話だったよね」
あまりにも長すぎる間に耐えられず先にリナ先輩が口を開いてしまった。
申し訳なさすぎる。本当に申し訳なさすぎる。
それだけ衝撃だったんだ。
「ど、童貞って、失礼ですよ。今考えてたところです」
「あはは。ごめんごめん。ウサギくんはさ、童貞だけどさ、一応男じゃん?」
「そ、そうですけど。童貞は余計ですよ」
「だから相談しようと思ったんだ。それでさ、考えはまとまった? どう思う? 告白するか、しないか、それか告白されるように猛アタックするか? 男はどうされるのが一番嬉しいのかな?」
「ちょ、ちょっと待ってください。全然考えまとまってないですよ」
「え~! 早く考えまとめてよ~」
おっぱいが当たりそうなほどグイグイ迫ってくる。
本気だ。この人は本気だ。
好きな人と結ばれるために本気で相談しに来ている。
それならそれ相応の答えを出してあげなければならない。
だからこそ考えがまとまらなくなる。
「んーっと、そ、そうですね……」
それにおっぱいが近くて全然集中できねー。
そ、そうだ。こういう時は自分と重ね合わせるんだ。
カナちゃんかレイナちゃんのどちらかと本気で結ばれたいってなったら僕はどうする?
自分から告白するか?
それとも告白を待つか?
待つならいつまで待てば良い?
相手は金縛りの幽霊だ。
金縛りの幽霊に寿命のようなものがあるかどうかは全くわからない。
不老不死みたいな感じだろうか?
普通に考えたら成仏するまでだろうか?
それなら僕から告白しなきゃ。
いついなくなるかわからないから。
そ、そうか。いついなくなるかわからないんだ。
金縛りの幽霊だろうが、生きた人間だろうが、明日も会えるとは限らないんだ。
何が起きるかわからない。それが人生だ。
って人生を語れるほどの人生を送ってないんだけどね。
でもなんとなく答えが出たぞ。
「男の人から告白ですかね。やっぱり男から告白するのが普通だと思います」
って、それは僕の意見だ!
僕がカナちゃんかレイナちゃんに告白するって意見だ!
間違えた。リナ先輩だったらリナ先輩から告白した方が絶対にいい。
というかリナ先輩みたいな超絶美少女な巨乳からの告白なら誰でもOK出すぞ。
訂正しないと。
「なるほどね~。ありがとうウサギくん!」
ああ、訂正できねー。
もう手遅れだ。
相手の人に頑張ってもらうしかない。
「それじゃあたし、好きな人に告白されるように頑張ってみるわ~」
「は、はい! 頑張ってください。応援してます!」
複雑な気持ちだ。
リナ先輩に彼氏ができる事が嫌だと思ってしまった。
でもリナ先輩の幸せのためだ。全力で応援したいって気持ちもある。
僕とリナ先輩はバイトの先輩後輩の関係だ。この関係を維持していこう。
僕たちはこれ以上も以下も無いんだから……。
「そ、それじゃお疲れ様でした。また明日もよろしくお願いします!」
「あっ、ちょっと待って! ウサギくん」
「は、はい」
「えーっとね」
どうしたんだろう。
リナ先輩らしくない。
だってくねくねと恥ずかしがってるように見えるから。
顔も赤くなってるし。
「今日ってこの後、用事とかある?」
「今日ですか? いいえ。家に帰って寝るだけですよ」
「そ、それじゃ、あたしの家に来ない?」
「え?」
えええええええええええええええええ!?
家? 何? どういうこと?
「さっきの恋バナの話の続きがどうしてもしたいのっ!」
あっ、そういうことか。
本気で悩んでるんだもんな。
相談したいよな。
「だ、ダメかな?」
「あっ、えーっと……そ、その……」
でもダメだ。
女の人の家になんていけない。
しかも恋する乙女の家にだなんて。
本気で相談したいって気持ちは伝わったけど、こればかりはダメだ。
ごめんなさい。リナ先輩。断ります。
「……いいですよ」
あっ、断れなかった。
「やったー! ありがとー!」
ああ、おっぱいが当たってる!
おっぱいが当たってるー!!
ドキドキが止まらなーい!
いつの間にか寝てた。
無意識に耳たぶを触る。
昨日レイナちゃんがはむはむしていた耳たぶだ。
ピピピピッピピピピッ
目覚ましが鳴る音だ。うるさいのですぐに消した。
目覚ましが鳴る前に起きるって珍しいな。
確か、こういうのって早朝覚醒っていう睡眠障害だよな。
生活習慣の乱れや精神的ストレス、悩み事などがある時などに発症してしまうらしい。
そうか。僕は悩んでいるのか。
何に悩んでるんだ?
いや、何に悩んでるかぐらいわかってる。
レイナちゃんだ。
レイナちゃんはロリフェイスでめちゃくちゃ可愛い。それに敬語が使えて礼儀正しい女の子。
カナちゃんに負けないくらいの超絶美少女……だと思ってたのに。
昨夜のレイナちゃんの様子がおかしかった。
いや、あれがレイナちゃんの本性か。
メンヘラ妹属性。勝手に名付けた属性だけど、おそらく間違ってはいないだろう。
あれは……レイナちゃんは完全にメンヘラ妹属性だ!
毎日来るって言ってたけど、その場合はカナちゃんはどうなるんだ?
二人で来てくれるんなら嬉しい。でもカナちゃんは別の人のところに行ってたんだよな。
もしもカナちゃんがその人のことを気に入って毎晩金縛りをかけに行ったら……もうカナちゃんに会えなくなるんじゃないのか?
それは嫌だ。あの笑顔が見れなくなるのは嫌だ。あの寝息が聞けなくなるのも嫌だ。
レイナちゃんのことも気になってるのは本当だ。
でもカナちゃんのことが忘れられない。
これから僕はどうしたらいいんだ。
レイナちゃんとの関係をどうしたら良いのだろうか?
このままでいいのか?
カナちゃんにもう一度来てもらうにはどうしたらいいんだ?
でもカナちゃんが来たら今度はレイナちゃんに会えなくなるんじゃないか?
僕は傲慢だ。そして強欲だ。
二人を好きになってる。
いいのかこれで?
二人を好きになっていいのか?
金縛りに悩んでいた。
金縛りにかかれば誰しも悩むだろう。
しかし僕の場合は、一般的な金縛りではなく特別な金縛りに悩まされている。
それにしても体が軽い。
レイナちゃんが僕の『疲労』を吸い取ってくれたおかげだろう。
いつも以上に体が軽くて元気なのは『疲労』を全部吸い尽くしてくれたんだと思う。
レイナちゃんの愛に飢えたあの笑顔。
レイナちゃんのあの瞳。僕を求める獣の瞳だ。
口で吸い取った方が栄養が増えるとか言ってた。
それにキスをしようともしてた。
いや、それ以前に僕の栄養が美味しいとかも言ってたな。
今までに味わったことがないほど美味しいって。
僕の『疲労』ってそんなに美味しいのか?
何か特別な……例えば……重大な病気を抱えているとか? それだったら怖い。
僕の体は大丈夫なのだろうか?
それも悩みのタネだ。
『金縛りにかかって健康になりました』という事例は聞いたことがない。
けれど僕の体は元気。健康に向かっている気がしてならない。
力が漲ってくるし、やる気が出る。今日を生きようと思える。
金縛りにかかることが生きがいになってる。
そんなやる気に満ち溢れた今日は居酒屋のバイトがある。
スマホの画面に『扉の修理が終わったので営業します』というメッセージが表示されてる。
バイトか。リナ先輩に会えるな。
昨日はリナ先輩とデートをした。そして夢にまでリナ先輩が現れた。結果的に悪夢になってしまったが……。
何だろう……リナ先輩とバイトで会うのがちょっと恥ずかしい。会いたいって気持ちは強いのに。
この気持ちは何だろう? 胸がドキドキする。苦しい。緊張する。
まさか……恋……?
僕はカナちゃんとレイナちゃんと、それにリナ先輩の三人に同時に恋をしているってこと?
最近ドキドキすることが多すぎておかしくなったのか?
このドキドキを恋だと勘違いしているだけなのか?
だとしたらレイナちゃんに対しても勘違い?
もしかしたらカナちゃんに対しても勘違い?
いや、勘違いなんかじゃない。
カナちゃんのことを考えるだけでめちゃくちゃ胸がドキドキする。
レイナちゃんのことだって、リナ先輩のことだって、考えるだけで鼓動が激しくビートを刻む。
欲張りすぎだよね。傲慢すぎるよね。
三人を同時に好きになっていいのかな?
童貞のくせに。童貞のくせに傲慢すぎるよね。
◆◇◆◇◆◇◆◇
バイトだ。
いつもよりも早く到着してしまった。
なぜなら新しい扉を見たかったからだ。
ごめんなさい。嘘です。少しでも早くリナ先輩に会いたかったからです。
この気持ちが恋なのか、ただドキドキしているだけなのか確かめたい。
でも扉は扉でめっちゃいい感じになってる。
前回の扉よりも暗めで居酒屋らしい感じになったな。
個人的には前の扉よりも今の扉の方が好きだ。
まあ、それくらいの感想しか出ないけど。
さて、バイトが始まるまでスタッフルームで待っておこう。
もしかしたらリナ先輩も早く来るかもしれないし。
「おっ、ウサギくん。早いね」
「リ、リナ先輩!」
ちょうどリナ先輩のことを考えてたから後ろから声をかけられて驚いた。
脳内で再生された声かと一瞬だけ勘違いしたけど、やっぱりリナ先輩だ。
「驚かせちゃったね。あっ、昨日のデートは楽しかったねっ! 今日のバイトもよろしくね~」
「あっ、はい! よろしくお願いします」
スタッフルームに向かっていくリナ先輩を目で追いかける。
いや、ただただ見惚れているだけだ。
恋だ。今確信した。
僕が抱いているこの感情は恋だ。
紛れもなく恋だ。
綺麗なロングヘアーの金髪。
服を着ていても豊満なおっぱいがはっきりとくっきりと見える。横向きだと尚更だ。
デートをしたからか?
夢に出たからか?
いつも以上にドキドキしてしまう。挙動不審になってしまう。
バイト前だっていうのに、どうしよう。
集中だ。集中するんだ。心を落ち着かせろ。平常心だ。平常心。
リナ先輩のことが好きだって気持ちは本物だ。
だけど職場恋愛はダメだ。絶対ダメだ。
職場恋愛は絶対に失敗する……。落ち着くんだ……。
◆◇◆◇
「「「お疲れ様でした」」」
いつの間にかバイトが終わった。
全然記憶がない。
いや、嘘だ。記憶はある。
ずっとリナ先輩のことを考えていた。
ずっとリナ先輩のことを見ていた。
自分自身を褒めたい。よくミスしなかったなと。
でもこのままじゃダメだ。
リナ先輩のことを意識しすぎたらいつかミスをする。
もう意識するのをやめないと。
恋するのは僕の勝手だ。でも絶対にリナ先輩とは付き合えない。
だってリナ先輩は誰もが認めるほどの超絶美少女。
清楚系ギャルで巨乳で優しくて……。それで……それで……。
「ウサギくん? 聞いてる?」
「あっ、え? は、はい!」
そ、そうだ。
今はスタッフルームでリナ先輩と二人っきりだったんだ。
「あたしさぁ~、最近好きな人ができたんだよね~。付き合いたいんだけどさ~、今の関係のままでも良いかなって思ってるんだよね……」
唐突に恋バナが始まった。
って!? え? 好きな人!?
いきなり失恋してしまった。
というか今までこんな話、僕にしたことなかったよな。
なんでだ?
ああ~、これも昨日のデートのおかげか?
距離が近付いたってことか?
だったら僕はリナ先輩の恋が実るように協力しなきゃ。
だって僕とリナ先輩はバイトの先輩と後輩の関係。
いい感じで言えば友達の関係なのだから。
そんな友達が悩んでいるんだ。
そして相談してくれてるんだ。
ちゃんと答えよう。
童貞の僕に気の利いた答えを出せるかどうかわからないけど。
「ごめんね。童貞のウサギくんにはキツイ話だったよね」
あまりにも長すぎる間に耐えられず先にリナ先輩が口を開いてしまった。
申し訳なさすぎる。本当に申し訳なさすぎる。
それだけ衝撃だったんだ。
「ど、童貞って、失礼ですよ。今考えてたところです」
「あはは。ごめんごめん。ウサギくんはさ、童貞だけどさ、一応男じゃん?」
「そ、そうですけど。童貞は余計ですよ」
「だから相談しようと思ったんだ。それでさ、考えはまとまった? どう思う? 告白するか、しないか、それか告白されるように猛アタックするか? 男はどうされるのが一番嬉しいのかな?」
「ちょ、ちょっと待ってください。全然考えまとまってないですよ」
「え~! 早く考えまとめてよ~」
おっぱいが当たりそうなほどグイグイ迫ってくる。
本気だ。この人は本気だ。
好きな人と結ばれるために本気で相談しに来ている。
それならそれ相応の答えを出してあげなければならない。
だからこそ考えがまとまらなくなる。
「んーっと、そ、そうですね……」
それにおっぱいが近くて全然集中できねー。
そ、そうだ。こういう時は自分と重ね合わせるんだ。
カナちゃんかレイナちゃんのどちらかと本気で結ばれたいってなったら僕はどうする?
自分から告白するか?
それとも告白を待つか?
待つならいつまで待てば良い?
相手は金縛りの幽霊だ。
金縛りの幽霊に寿命のようなものがあるかどうかは全くわからない。
不老不死みたいな感じだろうか?
普通に考えたら成仏するまでだろうか?
それなら僕から告白しなきゃ。
いついなくなるかわからないから。
そ、そうか。いついなくなるかわからないんだ。
金縛りの幽霊だろうが、生きた人間だろうが、明日も会えるとは限らないんだ。
何が起きるかわからない。それが人生だ。
って人生を語れるほどの人生を送ってないんだけどね。
でもなんとなく答えが出たぞ。
「男の人から告白ですかね。やっぱり男から告白するのが普通だと思います」
って、それは僕の意見だ!
僕がカナちゃんかレイナちゃんに告白するって意見だ!
間違えた。リナ先輩だったらリナ先輩から告白した方が絶対にいい。
というかリナ先輩みたいな超絶美少女な巨乳からの告白なら誰でもOK出すぞ。
訂正しないと。
「なるほどね~。ありがとうウサギくん!」
ああ、訂正できねー。
もう手遅れだ。
相手の人に頑張ってもらうしかない。
「それじゃあたし、好きな人に告白されるように頑張ってみるわ~」
「は、はい! 頑張ってください。応援してます!」
複雑な気持ちだ。
リナ先輩に彼氏ができる事が嫌だと思ってしまった。
でもリナ先輩の幸せのためだ。全力で応援したいって気持ちもある。
僕とリナ先輩はバイトの先輩後輩の関係だ。この関係を維持していこう。
僕たちはこれ以上も以下も無いんだから……。
「そ、それじゃお疲れ様でした。また明日もよろしくお願いします!」
「あっ、ちょっと待って! ウサギくん」
「は、はい」
「えーっとね」
どうしたんだろう。
リナ先輩らしくない。
だってくねくねと恥ずかしがってるように見えるから。
顔も赤くなってるし。
「今日ってこの後、用事とかある?」
「今日ですか? いいえ。家に帰って寝るだけですよ」
「そ、それじゃ、あたしの家に来ない?」
「え?」
えええええええええええええええええ!?
家? 何? どういうこと?
「さっきの恋バナの話の続きがどうしてもしたいのっ!」
あっ、そういうことか。
本気で悩んでるんだもんな。
相談したいよな。
「だ、ダメかな?」
「あっ、えーっと……そ、その……」
でもダメだ。
女の人の家になんていけない。
しかも恋する乙女の家にだなんて。
本気で相談したいって気持ちは伝わったけど、こればかりはダメだ。
ごめんなさい。リナ先輩。断ります。
「……いいですよ」
あっ、断れなかった。
「やったー! ありがとー!」
ああ、おっぱいが当たってる!
おっぱいが当たってるー!!
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