異世界担々麺 〜魔王と勇者が担々麺ひとつで異世界征服する物語〜

アイリスラーメン

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お前に食わせる担々麺はねぇ

034:息巻く常連客たち、偽魔王と偽勇者について

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「緊急事態じゃな」
「あぁ、色々とな」

 満身創痍まんしんそういのオーグルとリューギのために急いで担々麺の調理に取り掛かっている魔王マカロンと勇者ユークリフォンス。
 二人は調理をしながら客席に聞こえない程度の声量で会話を進めた。

「確認なんだが、まーちゃんがボコボコにしたってわけじゃ無いよな?」
「その質問そっくりそのまま返したいのじゃが、その質問をするということはゆーくんにも心当たりはないのじゃな」
「当然だ。あそこまでやる理由がない。理由があっとしても、あの二人はうちの大事な大事な常連客だ。手なんて出すわけがないよ」
「妾も同意見じゃよ」

 魔王マカロンと勇者ユークリフォンスは自分たちの担々麺を好いてくれる客を大事に思っている。
 それも魔王だった頃、勇者だった頃に抱いていた仲間への想い以上に大事に思っているのだ。
 家族以上に、と言っても過言ではないほどに。

「俺たちの偽物ってのも許せないが、うちの常連客を傷つけたのはもっと許せないな」
「うぬ。でもどうして偽勇者と偽魔王はあの二人を襲ったんじゃろ? そもそもなんで魔王と勇者を名乗っておきながら一緒にいるんじゃ? あり得んじゃろ。魔王と勇者は普通対立するべき存在。一緒にいるなど世界がひっくり返ってもありえん」
「あ、あれ? 俺勇者だよな? それでまーちゃんは魔王だよな? もう何年も一緒にいるんだけど? そんで料理屋を営んでるんだけど? この状況自体矛盾してないか?」
「何を言っておる。それは世界がひっくり返ったからじゃろ。妾は勇者ではないおぬしの部分を知って惚れたんじゃ。今となっては勇者の部分にも惚れておるがのぉ。いや、もしかしたら世界大戦の最中もおぬしにぞっこんじゃったかもしれんが……どんな時でもおぬしの事ばかり考えておったぞ」

 聞いている方が気恥ずかしくなるような台詞を当然のように吐く魔王マカロン。
 思ったことを口にしてしまう性格だからこそ吐けるキザな台詞だ。
 いつもなら口が滑ったと恥ずかしがる場面ではあるが、いつも以上に調理に集中しているためか、自分が吐いたキザな台詞に気付く事はなかった。
 そんな魔王マカロンに対して勇者ユークリフォンスは、頬をトマト担々麺よりも真っ赤に染めていた。もはや耳まで真っ赤だ。

「そ、そうだな。と、とりあえず調理に集中しようか。うん。その方がいい。ミスしたら大変だからな。うん」

 勇者ユークリフォンスは恥ずかしさを誤魔化すために調理に集中した。
 そのおかげもあってか、一つもミスをする事なく〝真紅のトマト担々麺〟と〝極上の担々つけ麺〟が完成する。

「お待たせしました」「お待たせしたのじゃ!」

 担々麺を席へ運んだ魔王マカロンと勇者ユークリフォンスの二人の声が重なった。

「おぉおおおおッ」「うおおおおお!!」

 担々麺を瞳に映したオーグルとリューギの声も重なった。
 この時点で満身創痍だとは思えないほどの笑顔を浮かべている。
 担々麺を見ただけで元気を取り戻すほど担々麺を愛しているのである。

「食べながらでいいから話を聞かせてほしいのじゃ」

 魔王マカロンの言葉に元魔王軍大幹部の鬼人の大男――オーグルはこう答える。

「食べ終わってからにしてくれッ。今は〝真紅のトマト担々麺〟を食べる時間なんだァ。誰にも邪魔されたくないッ。まあ、魔王様にだったら邪魔されてもいいがなッ!」

 今でもおとろえることのない魔王への忠誠心。
 その魔王様が目の前にいるとはつゆ知らずの失言である。
 変装魔法で変装しているため、仕方がないと言えば仕方がない。
 むしろ変装魔法の効果が衰えていない証明にもなった。

「龍人のお客さんも同じだよな?」

 問いかける勇者ユークリフォンスに対してリューギは、麺をすする音で返す。


 ――ズルルッ、ズーッ、ズルズルッ!!!


「だよな。まあ、邪魔されたくないって気持ちはわかるし……食べ終わるのを待つしかないか」
「そうじゃな」

 魔王マカロンと勇者ユークリフォンスは仕方なく二人が食べ終わるのを待った。
 その間、常連客が次々に来店する。
 キャリア三十年の情報屋の羊人ようじん――ランセ・ムートン、店潰しの美食家の異名を持つエルフ――エルバーム、災厄で最凶の邪竜――カタストロフィー、正義の盗賊団の盗賊かしら――ロド・ブリガンと下っ端盗賊――ウボ・バンディーの順番だ。
 その来店客の分も担々麺を作り終え、ようやくオーグルとリューギの話を聞けることになった。
 他の客もいるが、担々麺を交わし合った仲、ということで気にすることなく偽魔王と偽勇者の話を始めたのである。

「聞いてくれみんな。世界最強である俺にここまでの深傷を負わせたのは、魔王と勇者だ。世界最強である俺の攻撃が全く通用しなかった」
「俺様は信じたくないが、あの強さ紛れもなく勇者のものッ。魔王様に関しては信じていないがァ、否定する証拠が一つもないのも事実だァ。むしろ俺様たちがここまでやられたってことが勇者と魔王様だということを証明しているのかもしれないッ。もしかしたら魔王様は勇者に敗れて変わってしまったのかもしれないッ。くッ、勇者めッ。絶対に殺してやるッ! そして魔王様を取り戻してやるッ!」
「正直なところ、世界最強である俺と元魔王軍大幹部の彼が狙われた理由はわかっていない。偶然なのか、必然なのか、あるいは世界最強である俺に引き寄せられたのか。くははははっ。どんな理由にせよ奴らが襲ってきたのは事実だ」

 偽魔王と偽勇者の話をするオーグルとリューギ。その話の切りのいいタイミングで情報屋のムートンが口を開いた。

「魔王と勇者が復活した噂は本当だったのですね」

 その言葉にこの場にいる全員が驚いたが、中でも本物の魔王と勇者であるマカロンとユークリフォンスの二人の驚きが強かった。

「情報屋さん! その話を詳しく!」

 身を乗り出したのは勇者ユークリフォンスだ。
 そんな勇者ユークリフォンスの反応を見たムートンは、魔王と勇者が復活したという噂について話し出す。
 本来情報屋は情報を無償で話す事はない。対価をいただいてからその対価にふさわしい分の情報を話すのだ。
 そんな情報屋の決まりを無視して無償で情報を提供したのは、この店――担々麺専門店『魔勇家まゆうや』を気に入っているからである。
 それはつまりここの店主である魔王マカロンと勇者ユークリフォンスのことも気に入っているということだ。
 だから無償で喋るのだ。お気に入りの店主たちに、そして同じくここの店が好きな常連客たちに。

「魔王と名乗る人物、ここでは〝仮魔王〟とでも呼びましょうか」

 その呼び名に魔王が反応する。

「いや、偽物の可能性の方が濃厚じゃと思う。だから〝偽魔王〟と呼ばんか?」
「偽魔王ですか……でもオーグルさんとリューギさんの発言から本物の可能性の方が濃厚な気がしますよ。なので仮魔王の方が……」
「ダメじゃ。ダメ! 絶対にダメじゃ! 絶対に偽魔王じゃ!」

 頑なに呼び名にこだわる魔王マカロン。実際偽物なのだから偽魔王の方がしっくりくる、と魔王本人だからこそ思っているのだ。
 魔王かもしれないという可能性を残したなどという呼び名では絶対に呼びたくないのである。

「店主様が言うのならそうしましょう。魔王を〝偽魔王〟と、そして勇者と名乗る人物も同様に〝偽勇者〟と呼びましょう。その偽魔王と偽勇者が、魔王と勇者を名乗りながらあちこちで暴れているという情報があります。それも力を見せつけるかのように強者ばかりを狙うとか……。有名な施設や村ばかりを狙うとか……。目的は定かではありませんが、今は注目されようと、そして自分たちが魔王と勇者だと信じてもらおうとしている段階だと、私たち情報屋の間では推測されています」
「なるほど。強者を倒し続ければ、たとえ偽勇者たちが偽物だとしても、本物だと信じてしまうわな。でも力を見せつけて、魔王と勇者だって信じさせてどうする気なんだろうか。まさか恐怖政治テロルでもやろうってんじゃないだろうな?」

 勇者ユークリフォンスの考えにムートンは頷く。

「店主様のその考え……可能性はゼロではありませんね。さらにこれは憶測に過ぎませんが……偽魔王と偽勇者はへ向かって来ていると思われます」
「ん? ここって? この国にはもう入ってるだろ?」
「いいえ。国ではなく、ここ――元魔王城……現、担々麺専門店『魔勇家まゆうや』にですよ。ただしこれは私のただの憶測に過ぎませんよ」
「憶測でもなんでもいい。なんでそう思ったんだ?」
「偽魔王と偽勇者が起こした騒動、謂わば事件が起きた場所がだんだんとこちら側に近付いて来てるんですよ。北からだんだんと……」

 事件が起きた場所を辿れば、それは自ずと見えてくる。

 しかしなぜこの場所へ――担々麺専門店『魔勇家まゆうや』へ向かって来ているのか?
 その答えも単純明快だ。

 それは、恐怖政治テロルを実現するためにここが――元魔王城が必要だからである。
 長きに渡る世界大戦で世界を恐怖の渦に呑み込んでいた魔王。
 そんな魔王の城をアジトにして魔王を名乗れば、再び世界が恐怖の渦に呑み込まれること間違い無いのだ。
 それを偽魔王たちは狙っているのだとしたら全ての辻褄が合う。

「そんな……そんなことをしたら〝冷涼の冷やし担々麺〟が食べられなくなるじゃないッスか!」

 バンディーが悲しそうな顔をしながら声を上げた。
 世界平和が云々よりも自分が食べる担々麺のことだけを考えている発言だ。
 場違いな意見、空気を読めていない、と常人なら指摘や注意をするかもしれない。
 しかしここにいる誰が彼を注意しなかった。
 ここにいる全員がバンディーと同じ気持ちだからだ。

『大丈夫だ。余がいる間はお主らは安心していろ。たとえ奴らが本物の魔王と勇者だとしても、担々麺を死守して見せよう』

 魔王と勇者に匹敵する存在である邪竜が言った。その言葉の信頼さたるや凄まじい。

『ところで偽勇者と偽魔王はどんな姿だったんだ? 相手の姿を知っているか否かで戦況は大きく変化するからな』

 邪竜カタストロフィーの問いに答えたのは、偽勇者と偽魔王と実際に戦ったオーグルだった。

「仮面を被っていやがったんで顔はわからないッ。だが、背丈ならわかるぜッ。ちょうど店主たちみたいな感じだッ。偽魔王が女店主、偽勇者が男店主って具合だぜッ!」
「妾たちと背丈が同じじゃと!? 何とも気持ち悪い話じゃな……」

 勇者ユークリフォンスと偽勇者、魔王マカロンと偽魔王の背丈が同じだと話すオーグル。
 偶然にしては出来過ぎている、と魔王マカロンと勇者ユークリフォンスはこの時思った。

「そういや、魔王様と勇者も店主たちと同じくらいの背丈だったなァ。体型までそっくりだぜッ」
「お、お、お、そ、そうか。へ、へぇ~。偶然って重なるもんなんだな。あははは……」

 わかりやすく動揺する勇者ユークリフォンス。
 指摘されてしまう前に魔王マカロンがフォローに入る。

「妾たちと背丈や体型が似てるって話は一旦置いとくぞ。先ほどの話からして今後はここが危険になる可能性がある。店主として、皆を危険な目に遭わすわけにはいかんからのぉ。偽魔王と偽勇者が誰かに倒されるまで一時的に休業しようかと思っておるんじゃが……」

 客のためだと言う魔王マカロンだが、本当の理由は別にある。
 それは自分たちの手で偽物を倒してしまおうという考えだ。
 この場所――元魔王城を襲撃する可能性が高いのなら迎え撃てばいい。
 迎え撃つ場合、正体を隠している二人からしたら、客である皆が邪魔になってしまうのだ。
 正体を隠しつつ偽物を迎え撃つには店を一時的に休業にする必要があるのである。
 その魔王マカロンの意図に同じ秘密を共有する勇者ユークリフォンスはすぐに気付く。
 すぐさま肯定に入ろうとするが、常連客の偽魔王と偽勇者に対する怒りの表情を見てしまい、言葉を発するのが一拍遅れてしまう。
 その遅れた一拍の間に常連客たちは滑り込むように言葉を発する。

「俺様たちが不甲斐ないせいだァ。店は休業しなくていいッ。というかしないでくれッ。必ず倒してみせるからよォ。この店のためにもッ! 魔王様の城のためにもッ」
 と、元魔王軍大幹部のオーグルが拳を強く握りしめ気合いを込めながら言った。

「俺もこのまま負けっぱなしじゃいられない。この店が安心して営業できるように、世界最強の龍人族である俺が絶対に偽勇者と偽魔王を倒してやるぞ。くははははっ!!!」
 と、自称世界最強の龍人――リューギが意気揚々と、そして声高らかに言った。

「私もこの店が休業するのはとっても困るのだけれど。だから私も戦うわ。うふふっ。意外と私、魔力が多いのよっ。魔力量だけで言えば魔王に匹敵するほどにねっ」
 と、店潰しの美食家――エルバームが、妖艶さと不気味さを合わせた笑みを浮かべながら言った。

「奪い返すだけが正義の盗賊団じゃない。奪われるのを阻止するのも正義の盗賊団だ。微力ながら協力させてもらう」
「さすがかしらッス! 俺も全力でみなさんの手助けをするッスよ!」
 と、正義の盗賊団の盗賊かしら――ブリガンが腕を組みながら、下っ端盗賊のバンディーがガッツポーズを取りながら言った。

「はい! はい! 私も協力いたします! 情報戦に関しましては私にお任せてください! 有益な情報を集めてみせます」
 と、キャリア三十年の情報屋のムートンが、メモ帳とペンを胸の前で強く握りしめながら言った。

『余がいる。心配は無用だ。先ほども言ったが死守してみせる。店も担々麺も奴らには奪わせない』
 と、災厄で最凶の邪竜カタストロフィーが自信満々に鋭い牙と爪を光らせながら言った。

 このように魔王マカロンの意図を知らない常連客たちは気合い十分に燃えているのである。

「あっ、えーっとじゃな……大切なお客様に迷惑を……かけるわけには……」
「そ、そう! 気持ちは本当に嬉しいんだけど、休業した方が安全かなって……うん。安全第一だよね」
「そうなのじゃ! お客様の安全が第一なのじゃ!」
「むしろ俺たちの心配なんていらないから! 俺たちなら大丈夫だからさ……って聞いてなくね?」

 魔王マカロンと勇者ユークリフォンスは休業するように促そうとするものの、常連客たちは偽勇者と偽魔王をどうやって倒すかの議論で熱くなり息巻いていた。そのため、二人の話を全く聞いていなかった。
 そして半ば強引に休業するかしないか問題の話が終わってしまったのだった。
 もちろん『休業しない』方向で話は進んだ。
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