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お前に食わせる担々麺はねぇ
033:満身創痍の来店客、犯人は魔王と勇者?
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ある日の担々麺専門店『魔勇家』。
開店準備を終え来店客を待っていると、早速二人の常連客が扉を開く。
――チャリンチャリンチャリンッ。
来店客を知らせる心地よい銀鈴の音色が店内に響く。
「いらっしゃいませなのじゃぁああああああ!? ど、どうしたのじゃ!?」
魔王マカロンは来店客を案内すべく扉へと向かったのだが、来店客の姿を瞳に映した瞬間、思わず声を上げてしまうほどの衝撃を受けた。
その声に釣られて仕込みをしていた勇者ユークリフォンが厨房から飛び出した。
「ど、どうした、まーちゃん! 何があった? って、おい! マジで何があったんだよ!?」
彼も来店客の姿を瞳に映して心配の声を上げた。
魔王マカロンと勇者ユークリフォンスの二人を驚かせ心配させるほど、来店客は満身創痍だったのだ。
その来店客とは、元魔王軍大幹部の鬼人族の大男オーグルと自称世界最強の龍人族の男リューギの二人だ。
「す、すまないッ……驚かせてしまったなッ。さッ、こっちだァ、リューギッ。いつもの席に座るぞッ……うッ……」
「はぁはぁ……わ、悪い……オーグル。ここまで、は、運んで、もらって……」
「何言ってんだッ、当然だろッ! 俺様たちはもう担々麺を交わした仲なんだからなァ」
オーグルはリューギに肩を貸している。
二人とも満身創痍なのは間違い無いのだが、辛うじてオーグルの方が体力がまだ残っているようだ。
そして『酒を交わした仲』を担々麺に置き換えて言っていることから、二人で喧嘩のようなことをしていたわけでは無いことは明白である。
「あ、こちらの席へどうぞなのじゃ。って、そうじゃない! どうしたんじゃと聞いておるのじゃよ」
「そうだ。お前らがここまで怪我を負うだなんて。怪我から推測するに事故ではなさそうだな。誰にやられたんだ?」
魔王マカロンはオーグルを大幹部として扱うほどその実力を買っていた。
勇者ユークリフォンスはオーグルと直接戦ったことがあるためその強さを知っている。
リューギに至っては『強い』や『最強』などという言葉が自称ではあるものの、来店のたびに二人の耳に届いていた。
だから魔王マカロンと勇者ユークリフォンスは二人が強者であるということを知っている。自分たちが認めるほどの強者だということを。
そんな強者を満身創痍にさせるほどの更なる強者。それが一体誰なのか。腰を下ろしたばかりのリューギが答えた。
「世界最強である龍人族の、俺と、元魔王軍大幹部の、オーグルを、ここまでやったのは……魔王と勇者だ」
「ま、魔王と……」
「ゆ、勇者だって!?」
衝撃の犯人に魔王マカロンと勇者ユークリフォンスは互いの瞳を見た。
それが長い時間続く。見つめ合っている時間で考えれば最長だろう。
しかし、綺麗な瞳だと、かっこいい瞳だと、見惚れているわけでは無い。
衝撃的すぎて思考が追いつかず固まってしまっているのだ。
そんな絶賛思考停止中の二人にオーグルが声をかけた。
「と、とりあえず、いつものを頼むッ! 回復薬や治癒魔法なんかよりも、担々麺の方が回復するからなァ。うぐッ……た、頼むッ……一刻を争うッ!!」
担々麺で体力が回復するというのは諸説ありだ。
否、担々麺を愛する者からしたら、オーグルの言葉はあながち間違いでは無いのかもしれない。
だから声をかけられて思考が動き出した勇者ユークリフォンスは、回復薬や治癒魔法を勧めるのではなく、担々麺を作るために踵を返して厨房へと向かった。
「わ、わかった! オーグルはトマト担々麺、リューギは担々つけ麺だな! ちょっと待っててくれ! まーちゃん! 急いで作るぞ!」
「うぬ! 急がねばのぉ」
魔王マカロンも勇者ユークリフォンスの後を追い、厨房へと姿を消した。
「はぁはぁ……は、早く〝極上の担々つけ麺〟を食べないと……死んでしまう……うぐッ……」
「そうだなッ。あと少しだァ。くッ、た、耐えるぞッ! 絶対に死ぬんじゃねーぞッ!!」
「ああ! 一口も食べれずに死ぬわけにはいかない! はぁはぁ……絶対に……死なない!」
オーグルとリューギは流れる血を抑えながら担々麺の完成を待つのだった。
開店準備を終え来店客を待っていると、早速二人の常連客が扉を開く。
――チャリンチャリンチャリンッ。
来店客を知らせる心地よい銀鈴の音色が店内に響く。
「いらっしゃいませなのじゃぁああああああ!? ど、どうしたのじゃ!?」
魔王マカロンは来店客を案内すべく扉へと向かったのだが、来店客の姿を瞳に映した瞬間、思わず声を上げてしまうほどの衝撃を受けた。
その声に釣られて仕込みをしていた勇者ユークリフォンが厨房から飛び出した。
「ど、どうした、まーちゃん! 何があった? って、おい! マジで何があったんだよ!?」
彼も来店客の姿を瞳に映して心配の声を上げた。
魔王マカロンと勇者ユークリフォンスの二人を驚かせ心配させるほど、来店客は満身創痍だったのだ。
その来店客とは、元魔王軍大幹部の鬼人族の大男オーグルと自称世界最強の龍人族の男リューギの二人だ。
「す、すまないッ……驚かせてしまったなッ。さッ、こっちだァ、リューギッ。いつもの席に座るぞッ……うッ……」
「はぁはぁ……わ、悪い……オーグル。ここまで、は、運んで、もらって……」
「何言ってんだッ、当然だろッ! 俺様たちはもう担々麺を交わした仲なんだからなァ」
オーグルはリューギに肩を貸している。
二人とも満身創痍なのは間違い無いのだが、辛うじてオーグルの方が体力がまだ残っているようだ。
そして『酒を交わした仲』を担々麺に置き換えて言っていることから、二人で喧嘩のようなことをしていたわけでは無いことは明白である。
「あ、こちらの席へどうぞなのじゃ。って、そうじゃない! どうしたんじゃと聞いておるのじゃよ」
「そうだ。お前らがここまで怪我を負うだなんて。怪我から推測するに事故ではなさそうだな。誰にやられたんだ?」
魔王マカロンはオーグルを大幹部として扱うほどその実力を買っていた。
勇者ユークリフォンスはオーグルと直接戦ったことがあるためその強さを知っている。
リューギに至っては『強い』や『最強』などという言葉が自称ではあるものの、来店のたびに二人の耳に届いていた。
だから魔王マカロンと勇者ユークリフォンスは二人が強者であるということを知っている。自分たちが認めるほどの強者だということを。
そんな強者を満身創痍にさせるほどの更なる強者。それが一体誰なのか。腰を下ろしたばかりのリューギが答えた。
「世界最強である龍人族の、俺と、元魔王軍大幹部の、オーグルを、ここまでやったのは……魔王と勇者だ」
「ま、魔王と……」
「ゆ、勇者だって!?」
衝撃の犯人に魔王マカロンと勇者ユークリフォンスは互いの瞳を見た。
それが長い時間続く。見つめ合っている時間で考えれば最長だろう。
しかし、綺麗な瞳だと、かっこいい瞳だと、見惚れているわけでは無い。
衝撃的すぎて思考が追いつかず固まってしまっているのだ。
そんな絶賛思考停止中の二人にオーグルが声をかけた。
「と、とりあえず、いつものを頼むッ! 回復薬や治癒魔法なんかよりも、担々麺の方が回復するからなァ。うぐッ……た、頼むッ……一刻を争うッ!!」
担々麺で体力が回復するというのは諸説ありだ。
否、担々麺を愛する者からしたら、オーグルの言葉はあながち間違いでは無いのかもしれない。
だから声をかけられて思考が動き出した勇者ユークリフォンスは、回復薬や治癒魔法を勧めるのではなく、担々麺を作るために踵を返して厨房へと向かった。
「わ、わかった! オーグルはトマト担々麺、リューギは担々つけ麺だな! ちょっと待っててくれ! まーちゃん! 急いで作るぞ!」
「うぬ! 急がねばのぉ」
魔王マカロンも勇者ユークリフォンスの後を追い、厨房へと姿を消した。
「はぁはぁ……は、早く〝極上の担々つけ麺〟を食べないと……死んでしまう……うぐッ……」
「そうだなッ。あと少しだァ。くッ、た、耐えるぞッ! 絶対に死ぬんじゃねーぞッ!!」
「ああ! 一口も食べれずに死ぬわけにはいかない! はぁはぁ……絶対に……死なない!」
オーグルとリューギは流れる血を抑えながら担々麺の完成を待つのだった。
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