クラスメイトでご当地アイドルの推しとのツーショットチェキが100枚に到達しました。〜なぜか推しは僕と普通のツーショット写真が撮りたいらしい〜

アイリスラーメン

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《2学期突入編》

016:2学期最大の学校行事

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「――というわけでして、2学期はがあります。明日から金曜日までの朝のホームルーム、そして水曜日の6時間目のホームルーム、それら全てを使っていいので今週中に文化祭の出し物や各々の役割などを決めてください」

 文化祭――担任の先生が発したその言葉に〝ときめき〟を感じた。
 高校生なら誰もが〝ときめき〟を感じる学校行事のひとつかもしれない。
 けれど僕が感じている〝ときめき〟は、とは違う。
 僕にとってこの文化祭は、ただの文化祭じゃないからだ。
 なぜなら……

 喋り続ける先生を余所よそに、僕の瞳は天使を映した。
 真剣に先生の話を訊いている天使。だけどちょっと眠そうな表情を見せる天使。その眠気を吹き飛ばすかのように首を横に振る天使。滑らかになびく髪はまるで天使のベールだ。
 そんな天使こと小熊さんが同じクラスにいる。
 〝推し〟と一緒に文化祭ができるんだ。ただの文化祭なんかじゃない。

 思い返せば体育祭……なんでもっと早く小熊さんの――くままの存在に気が付かなかったんだ。
 体育祭に良い思い出なんて一切ないぞ。くままを知っていればもっと記憶に残る体育祭だったはずなのに。

「――ではホームルームを終わりにします。日直さんお願いします」

 あっ、やばい。くままのことを考えてたらホームルームが終わってしまった。
 後半全く訊いてなかったぞ。まあ、なんとかなるか。
 それよりも文化祭だ。
 記憶に残らなかった悲しき体育祭と同じような末路を辿らないようにしなければ。

 ホームルームが終わるとクラスがざわめきだす。
 それはいつものことなのだが、今この瞬間のざわめきには統一感のようなものがあった。

「文化祭何やる~?」

「中学の時はたこ焼きやったよ~」

「え~いいな~。私の中学校は文化祭無かったよ~」

 などと、男子も女子も文化祭の話で持ちきりだ。
 もちろん僕も例に外れない。

「なあ、隼兎はやと。お前は文化祭何やりたい?」

 僕に話しかけてきたのは、親友の純平だ。
 ニヤニヤと楽しそうな表情。それだけで文化祭が楽しみなのがわかる。

「う~ん。無難で大変じゃないのがいいかな」

「コスプレ喫茶なんてどう?」

「コスプレ喫茶? 純平にそんな趣味があったの?」

「純平くんに、じゃなくて、に、だよ?」

「こ、小熊さん!?」

 どうしてだ? 僕は純平と話していたはずなのに。
 それに純平は目の前にいる。小熊さんの姿はない。
 じゃあなんだ? 小熊さんの声は幻聴か?
 いや、違う。これはテレパシーだ!
 小熊さんが僕の脳内に直接話しかけているんだ!
 小熊さんならあり得る。天使や女神を凌駕する尊き存在――くまま様だからな。

「おーい。隼兎くん。後ろだよ?」

「あっ、小熊さん!」

 そうか、後ろだったか。
 確かに後ろから声がしたな。
 そのせいでテレパシーのたぐいかと勘違いしてしまった。

「幻聴とかテレパシーとか考えてたでしょ?」

 なぜバレた!?
 そ、そうだ! 小熊さんは心を読むことができる女神だった!

「あと心を読まれたー、とか思ってるでしょ? そんな特殊能力ないからねっ。私は隼兎くんの表情を見てそうかなーって思っただけよ。図星でしょ?」

「ず、図星です……」

 だとしてもすごい洞察力だ。さすが天使。さすが女神。さすがくまま様!

「お~い。俺のこと忘れて二人の世界に入らないでくれないか?」

「ごめんね純平くん」「ごめん純平」

 声が重なった。
 なぜだろう。恥ずかしい感情が芽生える。ただ声が重なっただけなのに。

「まあ、いいや。それで小熊はコスプレ喫茶がやりたいのか。文化祭と言えば真っ先に浮かぶわな」

「うんっ。でもじゃないよ~」

 小悪魔のような笑みを浮かべる小熊さん。
 ただのコスプレ喫茶じゃないとは……いったい?

「ただのコスプレ喫茶じゃないって、じゃあどんなコスプレ喫茶だよ?」

 ナイス質問。さすが僕の親友だ。

「チェキが撮れるコスプレ喫茶っ! どうかな?」

 この瞬間、僕は目の前にいる小熊さんが、神様以上の存在であると確信した。
 なんて素晴らしい案を出すんだ。全知全能の神――くまま様!

「くまま様の意見に賛成であります!」

「くまくまくまくまッ! よろしい。さすが私のファン」

「ははー。仰せのままにー」

「おい。だから二人だけの世界に入らないでくれ!」

 純平が呆れた顔でツッコミを入れる。
 純平も目の前のくまま様にひれ伏せばいいのに。って、そうか。純平はくままではなくれおれお推しだった。
 推しがいるのならひれ伏さないか。

「純平くんはどう? 一票入れてくれる?」

「ここで争っても仕方ないだろ。隼兎がやりたいなら小熊の意見に一票入れてやるよ」

「やったー!」

 ぴょんっ、と飛び跳ねて喜ぶ小熊さん。
 なんて可愛いらしい動きなんだ。
 可愛い動き選手権があれば間違いなく優勝だ。
 この動きを引き出してくれた純平にはサムズアップを送らなければ。

「純平。ナイスだ!」

「何がだよ……。それよりもコスプレ喫茶って人気な出し物だろ? 他のクラスとの競争率も激しいんじゃねーか?」

「甘い。甘すぎるよ、純平くん」

「そうだ! そうだ! 甘すぎるんだよ、純平は!」

「お前ら仲いいな……。で、何が甘いんだよ?」

 純平から質問を受けた小熊さんは、胸を張って一歩前に出た。

「このクラスには経験と実績を積んだくままちゃんがいるんだよ? 他のクラスには負けませんっ! チェキに関してはだけどね」

「そうだ! そうだ! くまま様が全て導いてくれるんだぞー!」

「お前ら本当に仲がいいな……」

 呆れた表情のままだけど、納得はしてくれたみたいだ。よかった。
 もしこのままこのクラスの出し物が小熊さんが言う『チェキが撮れるコスプレ喫茶』になったとしたら、学校行事で正規にくままとツーショットチェキが撮れるではないか!
 やばい。想像しただけで胸がドキドキする。
 コスプレ喫茶……ご当地アイドルのイベントで拝めることができない衣装で、ツーショットチェキが撮れるなんて。
 家宝が――いや、もはや世界遺産が増えるレベルの話だ!
 チェキが撮れるコスプレ喫茶が実現するように僕は全力で協力する。全身全霊かけて小熊さんを応援する。
 そう心に固く誓った。
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