上 下
8 / 47

008:私を性処理の道具に使うなー!

しおりを挟む
 ――ギシギシギシギシッ。

 うぅ……ぅ……。
 なんだろう。
 誰かにゆささぶられてる感じがする。

 ――ギシギシギシギシッ。

 この感覚、あれだ。
 会社のみ会でい潰れたときにみんなが一生懸命起こしてくれた時と同じだ。
 特に先輩。
 いやぁ~、あの時は迷惑かけたなぁ。

 ――ギシギシギシギシッ。

 酔い潰れた私に気を遣って、優しくさぶってくれてたな。
 でも起こさないと店に迷惑がかかるから、時々激しく揺さぶってたっけ。
 そんな優しい先輩に甘えちゃって、全然起きなかったんだよなぁ。

 あぁ、懐かしいなぁ。
 もうそんな飲み会もこの世界じゃできないよね……。
 だってここ異世界だもん。
 いや、待てよ。酒場とかあるんじゃね?
 ギルドとかで木のたるジョッキで乾杯かんぱいとかっ!
 憧れるなぁ~。

 ――ギシギシギシギシッ。

 ん? 待てよ。
 この世界には先輩はいないはず。
 それに私お酒とか飲んでないぞ!?
 じゃあ、私を揺さぶってるのは誰?
 優しく、そして激しくて揺さぶってるこれは何?

 も、もしかしてイケメン冒険者!?
 眠る前に妄想もうそうしてたことが現実にっ!?
 それなら早く目覚めないとっ!!!

 夢と現実の境目さかいめにあった私の意識が覚醒かくせいする。

 イケメン冒険者さ~ん。
 おはようございま……す……?

 私の瞳に映ったのは、イケメン冒険者とは全くかけ離れたモンスターの姿だった。
 小柄な体と深緑色しんりょくいろの肌、鼻はピエロの付け鼻のように大きく、耳が少しだけとがっている。
 そしてよだれを滝のように垂らしながら、欲望に正直な表情を恥ずかしもなく晒している。
 そんな下劣げれつなモンスターが私の瞳に映っていた。

 ――ギシギシギシギシッ。

 って、何をこすり付けとるんじゃーい!!!!

 下劣なモンスターは、オスの特徴的な部分を――オスにしか存在しないを私に擦り付けていた。

「キィイイイイイイ!! (痴漢は犯罪よー!!)」

 私は激しく抵抗し、下劣なモンスターを引き離す。
 引き離したからこそ、下劣なモンスターの全体が見えはっきりと分かった。
 この下劣なモンスターの正体はゴブリンだ。

「ぐずじゅ……ずりゅ……」

 よだれをすすりながら近付くゴブリン。
 啜ったよだれはすぐに垂れ落ちる。
 それだけ大量のよだれが口内から溢れ出てるのだ。

 うわっ、気持ち悪い。

 というかこのゴブリン、私を……宝箱をなんだと思ってるんだ!?
 宝箱を性処理せいしょりの道具に使うのは自由だが、私を性処理の道具に使うなんて許すまじ!!!
 私のきよき体をもてあそぼうとするなんて許すまじ!!!
 この体はイケメン冒険者にささげるって決めてるんだよ。
 下劣なゴブリンなんかにれられてたまるかっ!!

「キィイイイイイ。キィイイイイイ!!! (今すぐ私の前から消えろ。この下劣なゴブリンめ)」

「ぐずゅりゅ……じゅるるるるぅらぁあー!!」

 うわっ、よだれをすすりながら咆哮ほうこうしやがった!
 よだれ飛びまくりだ。汚ねぇ!!!
 こんな汚い咆哮見たことないぞっ!!

「じゅりゅり……」

 って、おいおいおいおい。
 なんて顔して近付いてくるんだよ。
 これが犯罪者の顔かっ!?
 性欲に正直すぎて気持ち悪いぞっ! (ブーメラン発言)

「じゅるりゃぁぁぁあー!!」

 うわぁぁぁああー!!
 襲ってきやがったー!!
 ついに我慢できなくなって襲ってきやがったー!!

 よっいしょっ!!

 私はゴブリンを軽くかわす。
 躱されるとは思っていなかったのだろう。
 ゴブリンは壁に激突した。

 そんなゴブリンを見て私は大声で笑ってやった。

「カパカパカパカパカパカパッ!!!」

 遅い。遅すぎるぞ、下劣なゴブリンめ!
 ドラゴンカップルとオーガから逃げ切ったこの私――俊敏なミミックちゃんからしたら、お前の動きなんて止まって見えるわー!

「カパカパカパカパカパカパッ!!!!」

 我ながらに下品な笑い方だな。

「じゅるりゃぁぁぁあー!!」

 そりゃそうだ。諦めるわけないよな。
 でも私もお前の相手をしてる暇がないんだよ。
 そもそも相手してもらえると思うなよっ。

 私はゴブリンに背を向け飛び跳ねた。
 そしてゴブリンから全速力で離れる。
 エスケープ! エスケープッ!
 あんな下劣なモンスターと同じ空気なんて吸いたくないっ!
 半径1億メートル離れてほしいもんだっ!

「じゅりぃいいいいいい!!!!」

 ゴブリンの悔しげな叫びが私の鼓膜を振動させた。

 へっへー。悔しかったら追いついてみろー!
 お尻ぺんぺーん。
 お尻じゃなくて背中か? まぁ、どっちでもいいか。
 お尻ぺんぺーん。
 ドラゴンとオーガを見た後だとゴブリンなんて全然怖くないんだよーだ!

「じゅらぁあああああああああああ!!!!!」

 ほうほう。そんなに悔しいか!
 そんなに悔しいのかー!
 そりゃそうだろうな。
 こんなに可愛いミミックちゃんにフラれたんだもんな~。
 こんなにいい女、もう二度と会えないもんな~。
 最後に私の後ろ姿を目に焼き付けるんだなー!
 それくらいは許してやろう。下劣なゴブリンめ。

 それでは……
「キィイイイイ~ (さようなら~)」

 私は叫び声続けるゴブリンに向かって別れを告げた。
 その時だった――

 なっ、なに!?
 地響きが――!
 もしかしてオーガ?
 くっそ。しつこいなぁ。
 でも地響きから推測するに結構遠い位置からだ。
 それに地響きは私の後ろから……ん?
 後ろと……右と……左からも……あ、あれ?
 四方八方から地響きが!?
 オーガじゃなくて地震か?
 いや、違う。地震じゃない。
 これは……何かがこっちに向かってきてる感じだ。

「「「じゅりゅりらぁああああああああ!!!!!」」」

 ぎゃぁああああああああ!!!
 大量のゴブリンだー!!!!
 10? 20? 50? 
 いや、もっといるぞー!!

 もしかしてさっきのゴブリン、悔しくて叫んでたんじゃなくて、仲間を呼んでたのか!?
 さ、最悪だー!!!
 やめてー!!!
 こっちこないでー!!

「キィイイイイー!! (私をけがさないでー!! ) 」

「「「じゅりゅりらぁああああああああ!!!!!」」」

 私の叫びは性欲に満ち溢れたゴブリンの下劣な叫び声にかき消された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...