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060:死のロシアンルーレット
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「死のゲームの内容はロシアンルーレットだ」
「ロシアンルーレット……」
殺気を放ちキンタロウを睨み続ける黒田の口から死のゲームが明かされた。
黒田は右手で服の中のを探り始めた。そしてすぐに手に収まりの良い黒い何かを取り出した。その黒い何かをキンタロウに向ける。
「おいッ!」
キンタロウは黒田が向けた黒い何かを認識し叫んだ。震えていた体だったが全身に血が一気に走った。そして頭では危険信号が鳴り響く。
死の危険。なぜなら黒田が向けている黒い何かは拳銃だ。黒田は服から拳銃を取り出したのだ。
とっさにキンタロウは手を広げた。それは自分を守るためではなく己の後ろに立つ仲間たちを守るためだ。仲間を助けるために過去に戻ったキンタロウの体は自然と動いたのだ。
そんなキンタロウの広げた手は小刻みに震えていた。
「フッヘッヘッヘヘ。逃げねーなんてな。腰抜けのクソガキかと思ってたぜ。その目、本当にアイツにそっくりでムカつくなー。今すぐ殺したい気分だ」
黒田は引き金を引かずに拳銃を下ろした。その姿を見てキンタロウも震える手を下ろす。
「キ、キンタロウくん」
不安と恐怖に呑み込まれているイチゴは、キンタロウが腰に巻いているパーカーを指で摘んだ。キンタロウが受けた恐怖を手を握って拭おうと思ったのだろう。しかしイチゴの手はキンタロウのパーカーにまでしか届かなかったのだ。
「そ、それでロシアンルーレットのルールは……」
キンタロウは怯えながら口を開いた。
「フヘッヘヘヘ。ルールは簡単だ。銃に弾を1発だけ入れて自分の頭に銃口を向けて交互に撃ち合う。直接殺せないってのが残念だけどよ、目の前でクソガキの頭が吹っ飛ぶところを見て我慢してやるよ。フヘヘヘヘッヘ」
狂気的に笑い目を充血させながらルール説明をする黒田。
ロシアンルーレットとは回転式拳銃に実弾を1発入れて交互に自分の頭に銃口を向けて引き金を引く死のゲームだ。
「ワサビじゃないのかよ……」
ロシアンルーレットのルールを聞いたキンタロウが軽口を叩く。
銃口を向けてきた時点でロシアンルーレットがワサビやカラシのような可愛いものではないことぐらい誰でもわかる。
「俺と金宮のクソガキのタイマン勝負だ。死んだほうが負け。金宮のクソガキが死んだら次のマスに行っていいぞ。てめーらには興味がないからな。フヘヘッヘヘ」
黒田はキンタロウとの1対1の対決を要求、否、強制した。
黒田自身も死ぬかもしれない死のゲームだが黒田は自信満々だ。
「くそ……」
キンタロウは逃げられない状況に舌打ちを打った。そして震える拳を握りしめ震えを止めようとする。
「キンちゃん。こんなことやめましょう。別の方法を今考えます」
モリゾウは思考を巡らせてロシアンルーレットそしてこのマスからの脱出方法を考え始めた。いつものように手に顎をのせなかったのは恐怖で腕が上がらなかったからだ。
「フヘッヘヘヘヘ。無駄だ。ソイツはここで死ぬ。それにこのマスから出る方法はゲームを終わらせる以外ねーんだよ。フヘヘッヘヘ」
黒田が狂気的に笑いながら言ったようにマスからの脱出方法はそのマスで行われるゲームを終わらせる以外方法はない。仮に方法があったとしてもそれはバ・グ・以外あり得ないのだ。
そしてモリゾウもマスからの脱出方法は何も浮かばない。このマスに止まる前からずっと考えていたものだ。その方法が浮かばなかったからこそ今までのマスは真っ当にゲームに参加しクリアしたのだ。
もしマスからの脱出方法が浮かんでいたとしたらこれまで止まってきたマスでもその方法を試していただろう。
「俺はてめーを今すぐに殺したいんだ。さっさと始めるぞコラァ」
急き立てる黒田は右手で持つ拳銃のシリンダーを親指で乱暴に回し続けている。そして苛立ち貧乏ゆすりが早くなる。
「キンタロウくん。嫌だよぉ」
イチゴはキンタロウのパーカーを小さな手で掴んで引っ張っている。キンタロウを死のゲームに参加させないために引っ張っているのだ。
その手は震えて力が入っていない状態だったが決して掴んだパーカーを離そうとしなかった。この手を離してしまったらキンタロウが帰ってこない気がしたのだ。
「キンタロウ……」
ノリもキンタロウの心配をし名前を呼んだ。普段マッチョポーズばかりとっているノリだったがこの時はマッチョポーズをとっていなかった。
「死人に別れの言葉なんて必要ねーだろォ! さっさとしやがれェ!」
しんみりとしているボドゲ部に苛立った黒田は叫んだ。どうせ死ぬのだから早くしろと憤怒している。
そしてキンタロウの死のゲームに挑戦するための覚悟の時間すらも与えてはくれない。
そんな黒田の態度に覚悟が決まらないキンタロウは息を思いっきり吐いた。
息を吐いた瞬間キンタロウは頭を切り替えた。覚悟は決まっていない。けれどやるしかない。それなら切り替えてロシアンルーレットに集中するしかないのだ。
「あぁあああああ、もうやるしかねーんだよな。やるよやるよ。クソクソクソクソクソ!」
頭を切り替えたキンタロウはいつものように騒ぎ始めた。騒ぐことによって少しでも恐怖を打ち消そうとしているのだ。
それは自然に出た行為だ。ルーティーンとでもいうのだろうか。
「やるよやるよ。やってやるよ。おっさん!」
キンタロウは威勢を張りながら歩き出した。しかし一歩前に出たキンタロウの足は止まった。キンタロウの足を止めたのはイチゴだ。
「キンタロウくん。ダメだって」
キンタロウのパーカーを掴んでいたイチゴの手はとっさにキンタロウの手を握りしめていたのだ。
キンタロウは不安な声を出すイチゴに心配かけまいと声をかける。
「大丈夫だよ」
何が大丈夫なのだろうか
「絶対に大丈夫……」
だから何が大丈夫なのだろうか
「絶対に勝つから」
震える少年のどこからそんな根拠が出るのだろうか
「だから大丈夫だよ」
キンタロウはイチゴの手を強く握り締め返した。そして心配そうに見つめる仲間の顔を一人ずつ見る。
しかし顔を見るだけでそれ以上の言葉はかけなかった。これ以上時間を使ってしまうと苛立っている黒田が何をしで出すかわからない。
あまりにも遅すぎると仲間の命を先に奪うだなんてこともする可能性があると思ってしまったからだ。だからキンタロウはイチゴの震える小さな手から自分の手をするりと抜いた。
イチゴの手は恐怖で力が入っていなかった。だからこそ簡単に手が抜けたのだ。
「ぁ……」
キンタロウの手が離れた瞬間イチゴの口から声が自然とこぼれた。離れた手を再びつかもうと手を伸ばしたがイチゴの小さな手はもう届かなかった。
キンタロウの背中は火ノ神との戦いでシャツが焦げ火傷の痕が目立っている。イチゴは遠くなるキンタロウの背中を見て泣きそうになる。
しかしイチゴは泣かなかった。キンタロウはまだ生きている。死んでしまう未来を想像するよりも生きて笑顔で戻ってくる姿を想像した方がずっと良いからだ。
だからイチゴは一歩一歩遠くなるキンタロウの背中に声をかけた。
「キンタロウくん! 頑張ってぇ!」
「まかせんしゃい!」
イチゴの言葉を受けたキンタロウは歯を光らせサムズアップをした。そして恐怖と不安で震えていたキンタロウの体はピタリと止まったのだ。
一歩ずつ歩くキンタロウは真っ直ぐに黒田の目を見た。キンタロウの瞳は不安と恐怖の色が薄くなっていた。
そのキンタロウの瞳を見た黒田はニヤリと微笑んだ。
「やっぱりてめーはアイツに似てんな」
その声は声にならないほど小さな声で口の中だけで呟いたのだった。
キンタロウと黒田の死のロシアンルーレットが始まろうとしている。
「ロシアンルーレット……」
殺気を放ちキンタロウを睨み続ける黒田の口から死のゲームが明かされた。
黒田は右手で服の中のを探り始めた。そしてすぐに手に収まりの良い黒い何かを取り出した。その黒い何かをキンタロウに向ける。
「おいッ!」
キンタロウは黒田が向けた黒い何かを認識し叫んだ。震えていた体だったが全身に血が一気に走った。そして頭では危険信号が鳴り響く。
死の危険。なぜなら黒田が向けている黒い何かは拳銃だ。黒田は服から拳銃を取り出したのだ。
とっさにキンタロウは手を広げた。それは自分を守るためではなく己の後ろに立つ仲間たちを守るためだ。仲間を助けるために過去に戻ったキンタロウの体は自然と動いたのだ。
そんなキンタロウの広げた手は小刻みに震えていた。
「フッヘッヘッヘヘ。逃げねーなんてな。腰抜けのクソガキかと思ってたぜ。その目、本当にアイツにそっくりでムカつくなー。今すぐ殺したい気分だ」
黒田は引き金を引かずに拳銃を下ろした。その姿を見てキンタロウも震える手を下ろす。
「キ、キンタロウくん」
不安と恐怖に呑み込まれているイチゴは、キンタロウが腰に巻いているパーカーを指で摘んだ。キンタロウが受けた恐怖を手を握って拭おうと思ったのだろう。しかしイチゴの手はキンタロウのパーカーにまでしか届かなかったのだ。
「そ、それでロシアンルーレットのルールは……」
キンタロウは怯えながら口を開いた。
「フヘッヘヘヘ。ルールは簡単だ。銃に弾を1発だけ入れて自分の頭に銃口を向けて交互に撃ち合う。直接殺せないってのが残念だけどよ、目の前でクソガキの頭が吹っ飛ぶところを見て我慢してやるよ。フヘヘヘヘッヘ」
狂気的に笑い目を充血させながらルール説明をする黒田。
ロシアンルーレットとは回転式拳銃に実弾を1発入れて交互に自分の頭に銃口を向けて引き金を引く死のゲームだ。
「ワサビじゃないのかよ……」
ロシアンルーレットのルールを聞いたキンタロウが軽口を叩く。
銃口を向けてきた時点でロシアンルーレットがワサビやカラシのような可愛いものではないことぐらい誰でもわかる。
「俺と金宮のクソガキのタイマン勝負だ。死んだほうが負け。金宮のクソガキが死んだら次のマスに行っていいぞ。てめーらには興味がないからな。フヘヘッヘヘ」
黒田はキンタロウとの1対1の対決を要求、否、強制した。
黒田自身も死ぬかもしれない死のゲームだが黒田は自信満々だ。
「くそ……」
キンタロウは逃げられない状況に舌打ちを打った。そして震える拳を握りしめ震えを止めようとする。
「キンちゃん。こんなことやめましょう。別の方法を今考えます」
モリゾウは思考を巡らせてロシアンルーレットそしてこのマスからの脱出方法を考え始めた。いつものように手に顎をのせなかったのは恐怖で腕が上がらなかったからだ。
「フヘッヘヘヘヘ。無駄だ。ソイツはここで死ぬ。それにこのマスから出る方法はゲームを終わらせる以外ねーんだよ。フヘヘッヘヘ」
黒田が狂気的に笑いながら言ったようにマスからの脱出方法はそのマスで行われるゲームを終わらせる以外方法はない。仮に方法があったとしてもそれはバ・グ・以外あり得ないのだ。
そしてモリゾウもマスからの脱出方法は何も浮かばない。このマスに止まる前からずっと考えていたものだ。その方法が浮かばなかったからこそ今までのマスは真っ当にゲームに参加しクリアしたのだ。
もしマスからの脱出方法が浮かんでいたとしたらこれまで止まってきたマスでもその方法を試していただろう。
「俺はてめーを今すぐに殺したいんだ。さっさと始めるぞコラァ」
急き立てる黒田は右手で持つ拳銃のシリンダーを親指で乱暴に回し続けている。そして苛立ち貧乏ゆすりが早くなる。
「キンタロウくん。嫌だよぉ」
イチゴはキンタロウのパーカーを小さな手で掴んで引っ張っている。キンタロウを死のゲームに参加させないために引っ張っているのだ。
その手は震えて力が入っていない状態だったが決して掴んだパーカーを離そうとしなかった。この手を離してしまったらキンタロウが帰ってこない気がしたのだ。
「キンタロウ……」
ノリもキンタロウの心配をし名前を呼んだ。普段マッチョポーズばかりとっているノリだったがこの時はマッチョポーズをとっていなかった。
「死人に別れの言葉なんて必要ねーだろォ! さっさとしやがれェ!」
しんみりとしているボドゲ部に苛立った黒田は叫んだ。どうせ死ぬのだから早くしろと憤怒している。
そしてキンタロウの死のゲームに挑戦するための覚悟の時間すらも与えてはくれない。
そんな黒田の態度に覚悟が決まらないキンタロウは息を思いっきり吐いた。
息を吐いた瞬間キンタロウは頭を切り替えた。覚悟は決まっていない。けれどやるしかない。それなら切り替えてロシアンルーレットに集中するしかないのだ。
「あぁあああああ、もうやるしかねーんだよな。やるよやるよ。クソクソクソクソクソ!」
頭を切り替えたキンタロウはいつものように騒ぎ始めた。騒ぐことによって少しでも恐怖を打ち消そうとしているのだ。
それは自然に出た行為だ。ルーティーンとでもいうのだろうか。
「やるよやるよ。やってやるよ。おっさん!」
キンタロウは威勢を張りながら歩き出した。しかし一歩前に出たキンタロウの足は止まった。キンタロウの足を止めたのはイチゴだ。
「キンタロウくん。ダメだって」
キンタロウのパーカーを掴んでいたイチゴの手はとっさにキンタロウの手を握りしめていたのだ。
キンタロウは不安な声を出すイチゴに心配かけまいと声をかける。
「大丈夫だよ」
何が大丈夫なのだろうか
「絶対に大丈夫……」
だから何が大丈夫なのだろうか
「絶対に勝つから」
震える少年のどこからそんな根拠が出るのだろうか
「だから大丈夫だよ」
キンタロウはイチゴの手を強く握り締め返した。そして心配そうに見つめる仲間の顔を一人ずつ見る。
しかし顔を見るだけでそれ以上の言葉はかけなかった。これ以上時間を使ってしまうと苛立っている黒田が何をしで出すかわからない。
あまりにも遅すぎると仲間の命を先に奪うだなんてこともする可能性があると思ってしまったからだ。だからキンタロウはイチゴの震える小さな手から自分の手をするりと抜いた。
イチゴの手は恐怖で力が入っていなかった。だからこそ簡単に手が抜けたのだ。
「ぁ……」
キンタロウの手が離れた瞬間イチゴの口から声が自然とこぼれた。離れた手を再びつかもうと手を伸ばしたがイチゴの小さな手はもう届かなかった。
キンタロウの背中は火ノ神との戦いでシャツが焦げ火傷の痕が目立っている。イチゴは遠くなるキンタロウの背中を見て泣きそうになる。
しかしイチゴは泣かなかった。キンタロウはまだ生きている。死んでしまう未来を想像するよりも生きて笑顔で戻ってくる姿を想像した方がずっと良いからだ。
だからイチゴは一歩一歩遠くなるキンタロウの背中に声をかけた。
「キンタロウくん! 頑張ってぇ!」
「まかせんしゃい!」
イチゴの言葉を受けたキンタロウは歯を光らせサムズアップをした。そして恐怖と不安で震えていたキンタロウの体はピタリと止まったのだ。
一歩ずつ歩くキンタロウは真っ直ぐに黒田の目を見た。キンタロウの瞳は不安と恐怖の色が薄くなっていた。
そのキンタロウの瞳を見た黒田はニヤリと微笑んだ。
「やっぱりてめーはアイツに似てんな」
その声は声にならないほど小さな声で口の中だけで呟いたのだった。
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