上 下
60 / 97

059:死の番人

しおりを挟む
 ボドゲ部たちはダイチたち三兄妹と協力して『第5層17マス』の宝探しゲームそして最終ミッションの脱出ゲームをクリアすることができた。
 そして1回限りの特別なサイコロ『青く輝くサイコロ』を最終ミッションの報酬として入手。青く輝くサイコロは6面ダイスで数字が全て10倍になっている。
 ノリの『最大値スキル』のおかげで6の10倍の数の60の目を出し60マス進むことができたのだ。そしてイチゴが振った層を決める赤いサイコロは4の目が出た。

 ボドゲ部たちは『第4層77マス』に一瞬のうちにワープし到着したのだ。ここは白い床、白い天井、白い壁のボドゲ空間の特徴的な真っ白な空間だった。
 そして到着した途端、ゾッと背筋が凍る感覚に襲った。
 キンタロウたちの目の前には40代くらいの髭を生やしたイカツイ顔つきの男が血を流している男の頭を踏みつけていた。踏みつけられている男は悲鳴や叫び声が全くない。むしろ動いてもいない。死んでいるのだろうか。
そして何度も必要以上に男の頭を踏みつけているイカツイ顔つきの男の最大の特徴は左腕がないところだ。

「フッヘッヘッヘッヘ、待ってたぞ。クソガキ……」
 その男は狂気的に笑いながら到着したばかりのボドゲ部たち、否、キンタロウに声をかけた。

「クソガキが参加してるって聞いて嬉しくてよ。フヘヘッヘヘッヘ。本当ににそっくりじゃねえかよ。殺しがいがあるってもんだぜ。フヘッヘッヘッヘ。ああ、今日はなんて素晴らしい日なんだ。フヘヘヘッヘヘッヘ」
 男は両手を広げるように右手を広げ叫んだ。そして天に向かって笑い飛ばす。

「お、おっさん誰だよ。その足をどけろよ……」
 キンタロウは狂気的な男の圧に怯えながらも拳を強く握りしめながら言った。

「おいおい、クソガキ、俺に指図すんのか? あぁん? 殺すぞ? 金髪クソガキがぁ」
 目を充血させキンタロウに牙を向ける男。その殺気は凄まじくキンタロウは震えて言い返すことができない。

「キンちゃん……この人やばいですよ。こんな殺意見たことありませんよ……」
 震えるキンタロウの隣でモリゾウは怯えていた。モリゾウは『探偵スキル』の相手の心情を見る能力を使い男を見た。その時に男のの濃さが異常で本気なのだとモリゾウは感じ取ったのだ。

「フヘッッッヘッヘッッ。ああ、失った左腕が疼うずくよ。疼く疼く疼く疼く疼くゥウウウ」
 男は右手で左肩を触りながら幸福感に溺れている。右腕は血管が浮き出て己の左肩を握り潰してしまうのではないかと思うくらい力が入っている。
 そして男は力が抜けたように右腕を下ろした。力なくぶら下がる右手とは裏腹に男の殺気はさらに増幅した。

 その姿にボドゲ部たちは鳥肌が立つ震えおののいた。包まれた恐怖から逃げ出すように一歩後ろに下がろうとするが包み込んだ恐怖は足をと掴みその一歩を決して許さない。

「ああ、そうだ。自己紹介してなかったな。俺はここ『第4層77マス』の番人の黒田だ」
 溢れんばかりの殺気を放つ黒田はこのマスの番人だと自己紹介をした。口元がニヤけた後にすぐキンタロウを睨みつけた。

「フッヘッヘヘヘ。あぁすぐ近くに死を感じるよ……」
 黒田が言葉を言い終えた直後に踏み潰されている男が白い床に吸い込まれていくように消えていった。男がいた白い床には男が流したであろう血だけが残った。
 白い床を見てみるとあちらこちらに水たまりのように血がたまっている。消えた男の他に消えていった人たちがいたのだろう。

「その消え方って……」
 男が消えていく瞬間はボドゲ部たちには見覚えがある。それはキンタロウが嘔吐した時に吐瀉物がきれいに消えていったのと同じような消え方だったのだ。

 今までボドゲ空間にプレイヤーの死体がなかったのはプレイヤーが死んでいないからではない。プレイヤーの死体はボドゲ空間のシステムによって消えるのだ。
『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』がデスゲームだとプレイヤーにバレないための隠蔽工作なのだろう。
 しかし血だけは残っている。吐瀉物や涙、ヨダレそしてプレイヤーの死体は消えるが血だけは消えないようだ。
 なぜなのか。そんなことを考えている余裕はない。目の前の殺人鬼が今にも襲ってきそうな勢いでさっきを放っているからだ。

「さあ特別にを始めようか。
「なんで知ってんだ……」
「フヘッヘッヘヘッヘ」
 番人の黒田はキンタロウの苗字を言いながら狂気的に笑ったのだった。

 第4層77マスで黒田との死のゲームが始まろうとしている。

「死のゲームって第6層だけじゃないのかよ……」
 キンタロウは死のゲームが始まろうとしていることに衝撃を受けていた。ボドゲ部たちは初めて第4層のマスに止まった。初めての第4層なのでこの層で行われるゲームの内容は知らないのだ。
 そのゲームの内容が殺気を放つ男の口から死のゲームだと聞かされてボドゲ部たちは怯えている。

「いーや、第4層は死のゲームとは関係ない。フヘッッヘヘヘ。俺がいるところは全て死のゲームになるんだよクソガキ」
「じゃあ、第4層の本当のゲームの内容って」
「死人に教える義理はねーよ。クソガキ」
 キンタロウの言葉をかき消す勢いで黒田は怒鳴った。

 黒田の発言から第4層の本来のゲームは死のゲームではないことがわかった。しかし本来のゲームの内容を黒田から教えてもらうことは叶わない。
 同時にルールを勝手に変えれるほどの権限を黒田が持っていることが判明した。
 狂気的に笑う黒田。人間をゴミのように踏み潰していた黒田。そしてキンタロウの苗字を知っている黒田。黒田は一体何者なのだろうか?  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲームで第二の人生を!~最強?チート?ユニークスキル無双で【最強の相棒】と一緒にのんびりまったりハチャメチャライフ!?~

俊郎
SF
『カスタムパートナーオンライン』。それは、唯一無二の相棒を自分好みにカスタマイズしていく、発表時点で大いに期待が寄せられた最新VRMMOだった。 が、リリース直前に運営会社は倒産。ゲームは秘密裏に、とある研究機関へ譲渡された。 現実世界に嫌気がさした松永雅夫はこのゲームを利用した実験へ誘われ、第二の人生を歩むべく参加を決めた。 しかし、雅夫の相棒は予期しないものになった。 相棒になった謎の物体にタマと名付け、第二の人生を開始した雅夫を待っていたのは、怒涛のようなユニークスキル無双。 チートとしか言えないような相乗効果を生み出すユニークスキルのお陰でステータスは異常な数値を突破して、スキルの倍率もおかしなことに。 強くなれば将来は安泰だと、困惑しながらも楽しくまったり暮らしていくお話。 この作品は小説家になろう様、ツギクル様、ノベルアップ様でも公開しています。 大体1話2000~3000字くらいでぼちぼち更新していきます。 初めてのVRMMOものなので応援よろしくお願いします。 基本コメディです。 あまり難しく考えずお読みください。 Twitterです。 更新情報等呟くと思います。良ければフォロー等宜しくお願いします。 https://twitter.com/shiroutotoshiro?s=09

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師――

黒鯛の刺身♪
SF
 半機械化生命体であるバイオロイド戦闘員のカーヴは、科学の進んだ未来にて作られる。  彼の乗る亜光速戦闘機は撃墜され、とある惑星に不時着。  救助を待つために深い眠りにつく。  しかし、カーヴが目覚めた世界は、地球がある宇宙とは整合性の取れない別次元の宇宙だった。  カーヴを助けた少女の名はセーラ。  戦い慣れたカーヴは日雇いの軍師として彼女に雇われる。  カーヴは少女を助け、侵略国家であるマーダ連邦との戦いに身を投じていく。 ――時に宇宙暦880年  銀河は再び熱い戦いの幕を開けた。 ◆DATE 艦名◇クリシュナ 兵装◇艦首固定式25cmビーム砲32門。    砲塔型36cm連装レールガン3基。    収納型兵装ハードポイント4基。    電磁カタパルト2基。 搭載◇亜光速戦闘機12機(内、補用4機)    高機動戦車4台他 全長◇300m 全幅◇76m (以上、10話時点) 表紙画像の原作はこたかん様です。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

五仕旗 Prequel-Primal(ごしき プリクエル・プライマル)

旋架
ファンタジー
人とモンスターが共存していた時代。 采漢紳(シャッハ・ジェン)は人間を避けながら、人やモンスター達を傷つける危険なモンスターを成敗していた。 ある日、彼に恨みを持つモンスターの手によって、彼の仲間や村の人々が攫われる。 采漢紳は仲間を助けるため、人間の子どもである針趣 糸詠(はりお しゅうた)や仲間のモンスター達とともに、高難易度のゲームが行われるダンジョン、巣窟盤(ベースメント)に挑むのであった。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

瞼が閉じる前に

一歩
SF
 帳倶楽部。それは、夜を求める者達が集う世界。  夜を愛する者、陽光を避ける者、隠居生活に選ぶ者、インドアの空気を愛する者……。  夜はどんな者も受け入れ、そして離れ難い欲求を、住む者に植え付ける。  まるで巨大な生き物の胃袋の中にいるかのように、その温もりに安心し、そして、……気が付けば何かを失っているのだ。 ーーーー  『帳倶楽部』 巨大な夜に包まれた国に住む、ある人々の小さな物語。

処理中です...