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057:ボドゲ部と三兄妹
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スタート地点の上空では白鳥に変身したソラが檸檬色の髪の少年を抱き抱えながら火ノ神と鬼ごっこをしている。捕まってしまったら焼け焦げて炭になってしまう1回限りの死の鬼ごっこだ。
そして地上ではモリゾウを片手で抱えた傷だらけのカンガルー、否、召喚兎のディオスダードがスタート地点である『ウサギの歯』に到着した。
これで三兄妹チームとボドゲ部チームの全員がスタート地点に揃ったことになる。これで炎の脱出ゲームはクリアだ。残りは燃えるジャングルと火ノ神がいるこのマスから次のマスに行くことで完全クリアのミッションコンプリートとなる。
「キンちゃんにはキツいと思いますがソラさんの作戦うまくいきましたね」
スタート地点にたどり着きディオスダードの腕から降りたモリゾウが死の鬼ごっこを繰り広げている上空の2匹の鳥を見ながら言った。
「頑張ってくだされ。キンタロウ殿」
ディオスダードは上空を見上げキンタロウにエールを送った。
そんなディオスダードはまだ召喚されたままだ。もしものことが起きた場合ディオスダードは戻さない方が良いとモリゾウが判断したのだった。
ボドゲ部の全員が到着したのを確認した案内兎の真っ白で年寄りなゴロウは口を開いた。
「お主らのチームもミッションコンプリートじゃ。おめでとう。では報酬は主に渡せばいいのじゃな?」
「そうだ」
ゴロウはノリに向かって杖の先を向けた。そしてダイチの時と同じように光がノリの目の前で止まりひまりの中から青く輝くサイコロが現れた。この青く輝くサイコロこそが報酬だ。
「青いサイコロで目が10倍になって……まさか……」
モリゾウは初めて見た青く輝くサイコロを見てすぐに理解した。そのまま言葉を続けずにノリの目を見た。それほど驚いているのだ。
ノリはモリゾウと目があった瞬間に軽く頷きはを見せながら笑った。
そして作戦通り次のマスに進むためダイチとノリが同時に唱える。
「『ダイス』」
唱えた瞬間に出現したのは赤いサイコロのみだ。通常なら赤いサイコロと一緒に青いサイコロも出現するのだが、その青いサイコロは今、目の前で10倍の数字を表示しながら輝いている。
「イチゴ。頼む」
ノリはイチゴに赤いサイコロを託した。そのままノリが振ってしまうと『最大値スキル』の影響で6の目が出てしまう。
赤いサイコロは1から6まである層を決めるサイコロだ。層の難易度や危険度は数字が大きいほど高い。なので確実に6が出てしまうノリは赤いサイコロを振ることができないのだ。
「それじゃ同時に振ってこのマスからお別れしようぜ。君たちに会えて本当によかったよ。ありがとう。生きて現実世界に戻れたらまたどこかで会おう。そしたらパーッと楽しいことでもしようぜ」
ダイチは笑顔で別れの言葉を告げた。そんなダイチも左手は血に塗れ、Tシャツやズボンは切り傷や噛み傷の跡がある。
ボロボロの状態のダイチはボドゲ部に会わなければクリアできなかったのではないか。妹たちを守れなかったのではないかと思っているのだ。だからこそボドゲ部に心の底から感謝している。現実世界で会って今日の出来事を笑い話のように語りたいと思っているのだ。
感謝を受けたボドゲ部もダイチと同じくらい感謝の気持ちでいっぱいだ。
ダイチやソラがいなければ火ノ神に殺されていたかもしれない。それに宝箱まで安全に案内してくれたおかげで他の危険生物から襲われずに済んだのだ。
ダイチの案内がなければ宝箱にたどり着く前に死んでいた可能性だってある。
ボドゲ部たちの方が感謝の気持ちでいっぱいだ。
「絶対生きてこのゲームをクリアしましょう。本当にありがとうございました」
背筋をしっかりと伸ばしたモリゾウはダイチに向かって律儀に頭を下げた。頭を下げるだけでは感謝が足りない。けれど今は頭を下げるしかない。そんなもどかしい気持ちの中、誠心誠意、感謝の気持ちを見せたのだ。
イチゴはウミと同じ目線の高さになるように腰を落とししゃがんだ。
「約束だよぉウミちゃん。また会おうねぇ」
「うんッ。やくそくー」
小さな手で小さな頭を撫でる。黄色い大きなリボンがズレてしまわないようにそっと優しく撫でたのだ。
まだまだ話したいことがある一同だが上空で火ノ神から逃げ回っている仲間のためにも先に進まなければいけない。
「振るぞぉおおお!」
ノリが背中の痛みに耐えながら大声を出した。その大声を合図にイチゴとダイチがサイコロを構えた。そして振った。
「えいっ」
イチゴは赤いサイコロを地面に転がすように振った。
「おらっァアア」
ダイチは両手で持った2つのサイコロを同時に地面に落とすように振った。
そしてノリは大声を出したあと、天に向かって全力で報酬の青く輝くサイコロを投げた。
ノリが投げたサイコロは天井のようにぶつかるような障害物はなく重力に逆らえなくなるまで真上を飛び続ける。
そのサイコロをキンタロウとソラ、そして火ノ神も視界に捉えた。
サイコロが振られたということは別れがきたことも意味する。そのことを瞬時に理解したキンタロウは叫びたい気持ちを抑えて口を開いた。
「ソラァアアアア、アリガツゥォオオオオ、うおぉ、ウヴゥ、またあ、会おうぅううう、なぁぁぁああああ」
叫ぶのをやめても火ノ神から逃げていることは変わらない。物凄い速いソラの飛行で上手く言葉が出なかったがそれでも気持ちを伝えた。
「結婚!? キーくぅん今結婚しようって言った!? ちょっと気が早いんじゃないのぉ? うへうへうへ」
「ぬぅぅうううあんだってぇえええ? ぬあぁあああああ」
感謝の気持ちを伝え終えたキンタロウは再び叫び始めたのでソラの言葉が耳に入ってこなかった。そしてソラは幻聴が聞こえていたらしくキンタロウの感謝の言葉とは全く別物の言葉が聞こえていたのだった。
「結婚式は海外にしましょう! う~んそうだな……ハワイ、グアム、キーくぅんはどこがいい?」
「ぬぁんだぁってぇえええぬぇぇええ」
「クァアアアアアアア!」
地上にいる者たちには見えていないが上空では様々な表情があった。
キンタロウに告白されたと勘違いして顔を真っ赤に染める白鳥姿のソラ。ソラはキンタロウとの将来を勝手に妄想し始めている。
そして浮遊感とスピードに耐えられず顔色を悪くするキンタロウ。ソラの妄想など少年の耳には届かない。
その2人に咆哮を上げ今にも食らいつかんとばかりクチバシを突き出し必死に追い続ける火ノ神。
そんな3者の表情を確認したかのように天にまで上ってきた青く輝くサイコロは重力に逆らえず落下していく。
このサイコロが目を出せばゲームクリアだ。
『第5層17マス』での火ノ神との戦いは幕を閉じようとしている。
そして地上ではモリゾウを片手で抱えた傷だらけのカンガルー、否、召喚兎のディオスダードがスタート地点である『ウサギの歯』に到着した。
これで三兄妹チームとボドゲ部チームの全員がスタート地点に揃ったことになる。これで炎の脱出ゲームはクリアだ。残りは燃えるジャングルと火ノ神がいるこのマスから次のマスに行くことで完全クリアのミッションコンプリートとなる。
「キンちゃんにはキツいと思いますがソラさんの作戦うまくいきましたね」
スタート地点にたどり着きディオスダードの腕から降りたモリゾウが死の鬼ごっこを繰り広げている上空の2匹の鳥を見ながら言った。
「頑張ってくだされ。キンタロウ殿」
ディオスダードは上空を見上げキンタロウにエールを送った。
そんなディオスダードはまだ召喚されたままだ。もしものことが起きた場合ディオスダードは戻さない方が良いとモリゾウが判断したのだった。
ボドゲ部の全員が到着したのを確認した案内兎の真っ白で年寄りなゴロウは口を開いた。
「お主らのチームもミッションコンプリートじゃ。おめでとう。では報酬は主に渡せばいいのじゃな?」
「そうだ」
ゴロウはノリに向かって杖の先を向けた。そしてダイチの時と同じように光がノリの目の前で止まりひまりの中から青く輝くサイコロが現れた。この青く輝くサイコロこそが報酬だ。
「青いサイコロで目が10倍になって……まさか……」
モリゾウは初めて見た青く輝くサイコロを見てすぐに理解した。そのまま言葉を続けずにノリの目を見た。それほど驚いているのだ。
ノリはモリゾウと目があった瞬間に軽く頷きはを見せながら笑った。
そして作戦通り次のマスに進むためダイチとノリが同時に唱える。
「『ダイス』」
唱えた瞬間に出現したのは赤いサイコロのみだ。通常なら赤いサイコロと一緒に青いサイコロも出現するのだが、その青いサイコロは今、目の前で10倍の数字を表示しながら輝いている。
「イチゴ。頼む」
ノリはイチゴに赤いサイコロを託した。そのままノリが振ってしまうと『最大値スキル』の影響で6の目が出てしまう。
赤いサイコロは1から6まである層を決めるサイコロだ。層の難易度や危険度は数字が大きいほど高い。なので確実に6が出てしまうノリは赤いサイコロを振ることができないのだ。
「それじゃ同時に振ってこのマスからお別れしようぜ。君たちに会えて本当によかったよ。ありがとう。生きて現実世界に戻れたらまたどこかで会おう。そしたらパーッと楽しいことでもしようぜ」
ダイチは笑顔で別れの言葉を告げた。そんなダイチも左手は血に塗れ、Tシャツやズボンは切り傷や噛み傷の跡がある。
ボロボロの状態のダイチはボドゲ部に会わなければクリアできなかったのではないか。妹たちを守れなかったのではないかと思っているのだ。だからこそボドゲ部に心の底から感謝している。現実世界で会って今日の出来事を笑い話のように語りたいと思っているのだ。
感謝を受けたボドゲ部もダイチと同じくらい感謝の気持ちでいっぱいだ。
ダイチやソラがいなければ火ノ神に殺されていたかもしれない。それに宝箱まで安全に案内してくれたおかげで他の危険生物から襲われずに済んだのだ。
ダイチの案内がなければ宝箱にたどり着く前に死んでいた可能性だってある。
ボドゲ部たちの方が感謝の気持ちでいっぱいだ。
「絶対生きてこのゲームをクリアしましょう。本当にありがとうございました」
背筋をしっかりと伸ばしたモリゾウはダイチに向かって律儀に頭を下げた。頭を下げるだけでは感謝が足りない。けれど今は頭を下げるしかない。そんなもどかしい気持ちの中、誠心誠意、感謝の気持ちを見せたのだ。
イチゴはウミと同じ目線の高さになるように腰を落とししゃがんだ。
「約束だよぉウミちゃん。また会おうねぇ」
「うんッ。やくそくー」
小さな手で小さな頭を撫でる。黄色い大きなリボンがズレてしまわないようにそっと優しく撫でたのだ。
まだまだ話したいことがある一同だが上空で火ノ神から逃げ回っている仲間のためにも先に進まなければいけない。
「振るぞぉおおお!」
ノリが背中の痛みに耐えながら大声を出した。その大声を合図にイチゴとダイチがサイコロを構えた。そして振った。
「えいっ」
イチゴは赤いサイコロを地面に転がすように振った。
「おらっァアア」
ダイチは両手で持った2つのサイコロを同時に地面に落とすように振った。
そしてノリは大声を出したあと、天に向かって全力で報酬の青く輝くサイコロを投げた。
ノリが投げたサイコロは天井のようにぶつかるような障害物はなく重力に逆らえなくなるまで真上を飛び続ける。
そのサイコロをキンタロウとソラ、そして火ノ神も視界に捉えた。
サイコロが振られたということは別れがきたことも意味する。そのことを瞬時に理解したキンタロウは叫びたい気持ちを抑えて口を開いた。
「ソラァアアアア、アリガツゥォオオオオ、うおぉ、ウヴゥ、またあ、会おうぅううう、なぁぁぁああああ」
叫ぶのをやめても火ノ神から逃げていることは変わらない。物凄い速いソラの飛行で上手く言葉が出なかったがそれでも気持ちを伝えた。
「結婚!? キーくぅん今結婚しようって言った!? ちょっと気が早いんじゃないのぉ? うへうへうへ」
「ぬぅぅうううあんだってぇえええ? ぬあぁあああああ」
感謝の気持ちを伝え終えたキンタロウは再び叫び始めたのでソラの言葉が耳に入ってこなかった。そしてソラは幻聴が聞こえていたらしくキンタロウの感謝の言葉とは全く別物の言葉が聞こえていたのだった。
「結婚式は海外にしましょう! う~んそうだな……ハワイ、グアム、キーくぅんはどこがいい?」
「ぬぁんだぁってぇえええぬぇぇええ」
「クァアアアアアアア!」
地上にいる者たちには見えていないが上空では様々な表情があった。
キンタロウに告白されたと勘違いして顔を真っ赤に染める白鳥姿のソラ。ソラはキンタロウとの将来を勝手に妄想し始めている。
そして浮遊感とスピードに耐えられず顔色を悪くするキンタロウ。ソラの妄想など少年の耳には届かない。
その2人に咆哮を上げ今にも食らいつかんとばかりクチバシを突き出し必死に追い続ける火ノ神。
そんな3者の表情を確認したかのように天にまで上ってきた青く輝くサイコロは重力に逆らえず落下していく。
このサイコロが目を出せばゲームクリアだ。
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