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052:キーくぅん

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「って火ノ神の近くまで来たものの、何もできん。おとりすらもできない状況なんだけど……。ディオスダードがいてくれなかったらどうなってたことやら……」
 ディオスダードを助けるために戻ってきたキンタロウだったが燃えるジャングルの前で何もできないでいた。

「それに俺のパーカー丸焦げじゃんかよ。お気に入りの勇者ウサッギーパーカーなのに、くそッ」
 勇者ウサッギーというボドゲのキャラクターが描かれているパーカーを落ち込んだ様子で見つめるキンタロウ。
 着ることも可能だが背中の部分が焦げて穴も開いているので腰に巻くことにした。

 パーカーを腰に巻いて結んでいる時、キンタロウの耳に火ノ神とは違う翼の音が届いた。
「2匹目!? ってこれさっきもやったな……」

 キンタロウの後ろに着地したのは白鳥に変身しているソラだった。

「キーくぅん今戻ったよ~ん、って背中が、火傷、え、どうしたの?」
「キーくん?」
 呼び方が変わっていることに首を傾げるキンタロウ。キンタロウの火傷をしている背中を見て慌てるソラ。
 そんなソラは作戦会議を終えて真っ先にキンタロウの元へと飛んできたのだ。

「そのハーピィのスキルって筋力とかも増したりする? 筋肉男と小さな女の子を運べたりする?」
 慌てているソラに向かってキンタロウが真っ先に口を開き質問を重ねる。

「は、はい! アタシのこの白鳥……じゃなくてハーピィのスキルは普段よりも力持ちになるよ。キーくぅん!」
 素直に答えたソラの顔は燃えるジャングルよりも真っ赤に染まっていた。そして照れながら体をウネウネとさせている。
「だったら俺からのお願いだ。ノリとイチゴをスタート地点にまで連れてってくれ! 頼む!」
 キンタロウはソラの翼を握りしめた。今度はもふらない。指と指の間に羽毛が入り込みもふりたい衝動に駆られるがキンタロウはもふらなかった。
 なぜなら仲間を助けたいという意志の方が勝っているからだ。このままではスタート地点に戻っても火ノ神にやかれて死んでしまう。だから少しでも早く全員がスタート地点に戻らなくてはいけない。そのためにもソラの力が必要なのだ。

のためなら、アタシはどこまでも飛びます。うへうへうへ」
「あっちの方、走ってると思うから頼んだ!」
 ニヤけ顔のソラだったがキンタロウが手を離した瞬間にしょんぼりとした顔に豹変する。そして手を離したキンタロウはノリとイチゴが走ってるであろう方角を指差す。未来の旦那という言葉は完全に無視、否、気付いていなかった。

 ソラはキンタロウの頼みを全力で応えるべく翼を大きく広げ低空飛行でキンタロウが指を差した方へ飛んで行った。
 器用にハートの形を描きながら飛んでいる。煙などがあればハートの形が浮かび上がっていただろう。
 そしてソラは「キーくぅん! キーくぅん!」と叫びながら目をハートにさせているのだった。
 その飛び去る速さに「モグラよりも速ぇえ」と感動するキンタロウだった。 

 その後、キンタロウの耳にまた別の声が届く。

「キンちゃーん、ふぇはぇぁ……結構離れてて驚きました、はぁはぁ……」
 その声の持ち主はモリゾウだった。息を切らし走ってきている。

「作戦通りに、っ、はぁ、いったみたいですね、はぁ……よ、よかったです」
「作戦? ソラ何も言ってなかったぞ、あ、いや、キークンって変な言葉唱えてた」
「えぇえええ、ソラさんしっかりしてくださいよー! キンちゃんに作戦を伝えに行ったんじゃないんですか……」
 モリゾウとの作戦会議が終わった瞬間に作戦をキンタロウに真っ先に伝えに行ったソラだったが、キンタロウを目の前にした途端、作戦を伝えるのを忘れていたらしい。そんなここにいない鳥女にモリゾウは呆れた様子で文句を言った。

「それで、ソラさんはどこに行ったんですか?」
「ああ、俺がノリとイチゴのところに行くように言っちゃったけど作戦に支障はない?」
 キンタロウはとっさにソラに頼み事をしてしまったのを後悔した。この頼み事で作戦に支障が出てしまえば全員の命に関わるかもしれない。もう少し慎重に行動すべきだと拳を強く握りしめて反省している。
 そんなキンタロウにモリゾウはため息を吐き安心した表情に戻った。

「まったく、作戦通りってのが腑に落ちないですね!」
 モリゾウはそのまま頭を搔いた。

「マジか、それならよかった。そんで俺たちはどうすんの?」
「まずはソラさんの考えた作戦を聞いてください。1回しか言わないんでちゃんと覚えてくださいよ」
「う、ういっす……」

 モリゾウは人差し指をピーンと立たせながら言った。その姿に怯むキンタロウだった。  
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