神様が作った盤上遊戯(ボードゲーム)〜クリア率0%のデスゲームだろうが俺は何度でも挑戦する〜

アイリスラーメン

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039:ウサギVSワニ

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 モリゾウのかざした右手から白い煙がもくもくと上がりその煙の中にカンガルーのようなシルエットが浮かび上がった。
 その後、白い煙が消えていきカンガルーのシルエットの正体が明らかになる。胸筋、背筋、上腕二頭筋、上半身のありとあらゆる筋肉がムキムキの茶色いカンガルー。否、ウサギだ。

「やっと吾輩の出番ゾ」
 召喚兎のディオスダードが召喚された。

 ディオスダードは目の前に青ワニを見下しボクサーのようにファイティングポーズで構えた。
 青ワニを見ていたディオスダードだが奥の崖にぶら下がっているキンタロウが視界をチラつかせている。

「キンタロウ殿は何をしているのでしょうか?」
「あぁあ? 今、俺の名前呼んだ? 何だってえ?」
 遠くにいて聞こえるはずのディオスダードの声がキンタロウの耳に届いた。地獄耳というのだろうか。

 騒ぐキンタロウを見て安心したのだろうか再び視線を青ワニに戻すディオスダード。

「モリゾウ殿、イチゴ殿、下がってくださいゾ」
「は、はい。よろしくお願いします!」
「ディオスダードちゃん頑張ってぇ~」

 ディオスダードは筋肉で青ワニを威嚇しモリゾウとイチゴをこの場から逃した。

 強固な鱗の青いワニと筋肉ムキムキの茶色いウサギが睨み合っている。
 2匹はじわりじわりと間合いを詰めていく。先にウサギの拳が入るのか。ワニの牙が届くのか。はたまた先に動いたものにカウンターの1撃が入るのか。

 答えはそのどちらでもなかった。

 青ワニの真下の地面から手が飛び出した。そして青ワニの足を掴んだのだ。それをしたのはもちろんダイチだ。

 この刹那の一瞬をディオスダードは逃さなかった。ダイチに足を掴まれ身動きが取れなくなった青ワニに強烈な1撃を喰らわす。この1撃はディオスダードにとってウォーミングアップの1撃に等しい。

「ふんぬッ!」

 ディオスダードはプロボクサーのように構え、拳を何発も青ワニの顔面に喰らわした。

「ふんッ! ふんッ! ふーんッ!」

 軽やかなステップを踏み、殴りつける拳は止まらない。ワンツーワンツーと拳が入るがどの拳もストレート、アッパー並に強力だ。

「いきますゾ!」

 連続で打撃を喰らわしていたディオスダードの動きが止まった。そして右拳に力を込めている。
 今まで以上に強烈な1撃が来るとダイチは直感した。その直感はこの場にいる全員が感じている。もちろんその攻撃を受けようと白目を向く青ワニも同じだ。

「フンヌゥァア!!」

 ディオスダードの叫びと共に強烈なストレートパンチがワニの顔面に入りめり込んだ。パンチが入るのと同時にダイチは掴んでいた手を離した。

 青ワニはディオスダードの1撃を受け止めきれずに顔を軸に回転しながら岩に衝突した。その岩は最初に青ワニが噛み砕いたあの岩だ。岩はえぐり取られるように形が変形した。
 もしダイチが手を離していなかったらダイチの腕を丸ごと持っていったかもしれない。そうなってしまった場合ダイチは無事ではいられなかっただろう。それほどの威力だったのだ。
 もちろんダイチが手を離していなければディオスダードも威力を抑えていた。ダイチが手を離したのを瞬きの一瞬で見極めたので全力で殴ったのだ。

 この場にいる全員は、ディオスダードの拳の破壊力に驚き開いた口が塞がらないでいた。

「す、すげー」
 遠くで見ていたキンタロウですらその衝撃を間近で感じたかのように驚いている。

 岩のそばで腹を天に向けて倒れている青ワニの牙は全て折れている。そして白目を向いて倒れていた。

 召喚兎のディオスダード、青ワニを撃破。  
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