神様が作った盤上遊戯(ボードゲーム)〜クリア率0%のデスゲームだろうが俺は何度でも挑戦する〜

アイリスラーメン

文字の大きさ
上 下
36 / 97

036:睨み合うワニとモグラ

しおりを挟む
 イチゴが青ワニの鋭い牙の餌食になる瞬間だった。

「どりゃぁあー!」

 叫び声と共に青ワニは勢いよく浮いた。青ワニの腹部目掛けてモグラ人間のダイチが凄まじい回転をしながら飛び出たのだった。

 間一髪。イチゴはダイチに助けられた。

「イチゴちゃんッ!!」
 恐怖で動けなくなったイチゴにモリゾウが叫びながら駆けつけた。そしてイチゴの手を取り無理やりでも立たせようと引っ張る。
 力が抜けているイチゴだがなんとか立ち上がることができた。それも軽い体のイチゴをひ弱なモリゾウが全力で引っ張ったおかげだろう。

「大丈夫ですか。とにかく今はここから離れましょう」
「う、うん……」
 助かった余韻も生きてる喜びも感じることなくこの場をダイチに任せモリゾウとイチゴは、先ほど青ワニに噛み砕かれた岩の後ろに隠れた。

 イチゴの足取りではここに身を潜めた方が良いとモリゾウが判断したのだ。
 そしてこの場所を選んだ理由はもう1つある。

「微量ながらダイチさんのお手伝いをします。イチゴちゃんはここで待っててください」
 モリゾウは青ワニと戦うダイチ元へと走り出した。
 そう。この場所を選んだ理由は青ワニと戦うダイチに近すぎず、なおかつ離れすぎていないからだ。

 ダイチは青ワニの腹部に強烈な一撃を喰らわせたが、青ワニはダメージをさほど喰らった様子はなく大きな尻尾を巧みに操り地面に着地した。
 普通のワニなら腹は柔らかく弱点だろう。しかしこの青いワニは違った。腹まで強固な鱗に守られているのだ。
 青ワニは腹部に攻撃を受けたことによって大きな尻尾をブンブンと地面に叩きつけている。その姿からは苛立ち、怒りを爆発させているのがわかる。イチゴを助けた1撃だったが青ワニを怒らせ本気にさせてしまった。

 そして攻撃を喰らわせたダイチの方がダメージを負っていた。想像以上に硬い腹を殴ったせいで、殴った右拳から肩までがジンジンと痛んでいるのだ。

 睨み合うワニとモグラ。それを見るモリゾウ。助けに行くと豪語したがモリゾウにはただ見守ることしかできなかった。

「考えろ。考えろ」と考えるように自分に呪いをかけるモリゾウ。

(今、ディオスダードを呼ぶべきでしょうか。いや、逸れてしまったキンちゃんたちのほうも心配です。ディオスダードを呼ぶときは本当にどうしようもなくなった時の最終手段にしないといけませんよね。だったらどうしたら。この状況で僕にできることは……)

 モリゾウは、キンタロウとノリの『緑ヘビ討伐』の時のキンタロウと同じ考えでディオスダードを最終手段に残しておくつもりだ。
 召喚兎のディオスダードを召喚すれば勝てるかもしれない。しかしキンタロウもモリゾウも別行動になってしまった相手のことを考え、ディオスダードをギリギリまで使わないつもりでいるのだ。
 仲間の心配をしている場合じゃない状況だ。まず自分の身を最優先に考えるべきだが、仲間だからこそ仲間を最優先に心配するのだ。

 岩をも砕く頑丈な顎と牙を持つ青ワニ。弱点のはずの腹部も強固な鱗に守られている。

「何か手は……」と呟いた瞬間にモリゾウは何かを閃いた。そしてダイチと青ワニに背を向けて岩に隠れるイチゴの元へと戻っていった。

「イチゴちゃん歩けますか」
「う、うん。も、もう大丈夫だよぉ」
 イチゴは手足が動くことを確認し固まった体をほぐすために軽くストレッチを始めた。

「それなら協力してほしいことがあります」
「協力? もちろんなんでもするよぉ。早くダイチさんを助けないと」
 小さな拳を2つ作り胸の前でガッツポーズをとるイチゴ。

「青ワニの弱点を見つけました。ダイチさんに加勢しましょう!」
 モリゾウは何かを企んでいる表情をしている。そしてきた道にあるジャングルの木々を見つめた。  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無記名戦旗 - no named warbanner -

重土 浄
SF
世界全てと重なり合うようにして存在する電子空間メタアース内では、今日も仮想通貨の覇権戦争が行われている そこで戦うのは全ての市民、インセンティブにつられて戦うギグソルジャー(臨時雇い傭兵)たちだ オンラインARゲームが戦争の手段となったこの時代で、いまだ純粋なプロゲーマーを目指す少年、一色空是はその卓越した技能ゆえに戦火に巻き込まれていく… オンラインと現実の境界線上で起こる新しい世界戦争。それを制するのは、ゲームの強さだけだ! (他サイトでも連載中)

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~

オイシイオコメ
SF
 75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。  この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。  前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。  (小説中のダッシュ表記につきまして)  作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

Table Talk Re Play Girls.

Olivia
現代文学
ボードゲーム感覚でサイコロ一つで遊べるテーブルトークRPG。

サマーバケーション

平木明日香
SF
中学時代から豪速球で名を馳せた投手だった橘祐輔(たちばなゆうすけ)は、甲子園出場をかけた県大会の決勝で、まさかの逆転負けを許してしまう。 それ以来、自分の思い通りにプレーができなくなってしまっていた。 『野球を辞める』 そのことを真剣に考えていた矢先、学校に向かう道中だった電車が、脱線事故を起こしてしまう。 祐輔はその事故の影響で、意識不明の重体に陥っていた。 そしてもう一人、電車に同乗していた安藤三夏(あんどうみか)という少女も、頭を強く打ち、目を覚まさなくなっていた。 2人は、子供の頃からの幼なじみだった。 高校では別々の道を歩み、連絡ももう取らなくなっていた。 中学時代の、ある“事件“以来… 目を覚ました三夏は、自分が祐輔の体の中に入っていることに気づく。 病室のベットの上で、眠ったままの「自分」の姿を見ながら、祐輔の意識が遠のいていく気配を感じていた。 子供の頃に交わした約束。 心のうちに秘めた想い。 もう2度と、再会することのなかったはずの2人が、最後の夏に駆けた「夢」とは?

毒素擬人化小説『ウミヘビのスープ』 〜十の賢者と百の猛毒が、寄生菌バイオハザード鎮圧を目指すSFファンタジー〜 

天海二色
SF
 西暦2320年、世界は寄生菌『珊瑚』がもたらす不治の病、『珊瑚症』に蝕まれていた。  珊瑚症に罹患した者はステージの進行と共に異形となり凶暴化し、生物災害【バイオハザード】を各地で引き起こす。  その珊瑚症の感染者が引き起こす生物災害を鎮める切り札は、毒素を宿す有毒人種《ウミヘビ》。  彼らは一人につき一つの毒素を持つ。  医師モーズは、その《ウミヘビ》を管理する研究所に奇縁によって入所する事となった。  彼はそこで《ウミヘビ》の手を借り、生物災害鎮圧及び珊瑚症の治療薬を探究することになる。  これはモーズが、治療薬『テリアカ』を作るまでの物語である。  ……そして個性豊か過ぎるウミヘビと、同僚となる癖の強いクスシに振り回される物語でもある。 ※《ウミヘビ》は毒劇や危険物、元素を擬人化した男子になります ※研究所に所属している職員《クスシヘビ》は全員モデルとなる化学者がいます ※この小説は国家資格である『毒物劇物取扱責任者』を覚える為に考えた話なので、日本の法律や規約を世界観に採用していたりします。 参考文献 松井奈美子 一発合格! 毒物劇物取扱者試験テキスト&問題集 船山信次  史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり 齋藤勝裕  毒の科学 身近にある毒から人間がつくりだした化学物質まで 鈴木勉   毒と薬 (大人のための図鑑) 特別展「毒」 公式図録 くられ、姫川たけお 毒物ずかん: キュートであぶない毒キャラの世界へ ジェームス・M・ラッセル著 森 寛敏監修 118元素全百科 その他広辞苑、Wikipediaなど

戦場立志伝

居眠り
SF
荒廃した地球を捨てた人類は宇宙へと飛び立つ。 運良く見つけた惑星で人類は民主国家ゾラ連合を 建国する。だが独裁を主張する一部の革命家たちがゾラ連合を脱出し、ガンダー帝国を築いてしまった。さらにその中でも過激な思想を持った過激派が宇宙海賊アビスを立ち上げた。それを抑える目的でゾラ連合からハル平和民主連合が結成されるなど宇宙は混沌の一途を辿る。 主人公のアルベルトは愛機に乗ってゾラ連合のエースパイロットとして戦場を駆ける。

処理中です...