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035:川には青い鱗
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目的の川へは約5分ほどで到着した。
川は上流から下流にかけて激しく流れている。川の向こう側は高い崖になっていて崖を登ことは困難に思える。崖の上にはジャングルが続いている。
「結構近くにありましたね。時間かからなくて助かりました」
川に到着してすぐにモリゾウが安堵の表情で言った。
「青い球はどこにあるんだろぅ?」
「そうだな。さてどこにあるのやら?」
辺りを見渡すイチゴとダイチ。しかし青い球などどこにも見当たらない。
モリゾウは探偵スキルを使い『青い球』の反応が無いかを確かめる。『青い球』の反応はないものの別に気になる反応があることにモリゾウは気が付いた。
「何かがこちらに近付いてきてます」
探偵スキルでも一際大きな反応をする何かが近付いてきていたのだ。モリゾウが感じた異様な反応にイチゴもダイチも警戒を高めた。
すると川の上流から青色のワニが泳気ながらこちらに向かってきている。
「もしかしてあのワニが青い球持ってたりしませんかね?」
「ま、まさかな……」
青いワニを見て怯えるモリゾウとダイチ。
肉食性で水中生活に適応した爬虫類のワニ。モリゾウたちに近付いてきているワニは全身が青い。爪と牙以外は青だ。
大きさは一般的なワニとさほど変わらないだろう。だが青ワニの鱗は触らなくてもわかるほどの強固さ。牙や顎を見ても岩をも軽く噛み砕きそうな勢いだ。
「こっちの岩に登れ! ワニが来るぞぉお!」
ダイチが叫んだ。その声に固まっていた体が一気に動き出しモリゾウとイチゴは岩の上に登り避難した。岩の上に登ればワニが襲ってくる心配はないだろう。もし登ってきたとしても鬼ごっこのように相手の動きを先読みして逃げていけば鋭い牙の餌食になることはないだろう。
「やっぱりこっちに来ましたね……」
青ワニは川から陸へ上がり、3人が避難している岩の前で止まった。
「止まったねぇ。ど、どうするぅ?」
そんなイチゴの不安を一気に煽るように青ワニが岩に噛み付いた。
「ぇええ!?」
青ワニが噛んだ部分の岩は粉々に砕かれた。そして3人はバランスを崩し岩から転がり落ちてしまった。
モリゾウは全身で受け身をとって転がった。ダイチは着地と共に地面にそのまま潜っていった。
「いてててぇ」とイチゴは可愛らしい尻から落ちてしまい着地失敗。
そんなイチゴの目の前には青いワニが牙を輝かせながらヨダレを垂らしている。息は荒く今にも襲いかかってきそうだ。
「うぅ」
イチゴは恐怖から立ち上がることができずにいた。
「イチゴちゃん! 逃げてぇえ!」とモリゾウが声を上げた。
しかしイチゴは動くことができない。足が全く動かずにいる。ただただ食べられるのを待つエサのように。
青ワニは慌てることなく1歩ずつゆっくりとイチゴに近付く。そんな姿により一層恐怖を感じるイチゴ。
「イチゴちゃん!!」
モリゾウが叫ぶ。その声はイチゴには届いている。だが恐怖がイチゴの心を蝕み動けないどころか声も出せない状態だ。
青ワニは口を大きく開けた。そしてゆっくりと歩いていた時とは比べ物にならないほどの素早さでイチゴの頭を目掛けて噛み付こうと前に踏み出した。
食べられる一歩手前のイチゴの頭の中では、走馬灯や死に対することは一切浮かばなかった。むしろ何も浮かばない。イチゴは目の前の大きな牙だけをただじっと見ていた。
もうモリゾウの叫ぶ声は聞こえない。何も感じない。ただ死を待ち死を受け入れるだけだ。
「ぁ……」
イチゴから出た声はもう生きるのを諦めた小さな声だった。
川は上流から下流にかけて激しく流れている。川の向こう側は高い崖になっていて崖を登ことは困難に思える。崖の上にはジャングルが続いている。
「結構近くにありましたね。時間かからなくて助かりました」
川に到着してすぐにモリゾウが安堵の表情で言った。
「青い球はどこにあるんだろぅ?」
「そうだな。さてどこにあるのやら?」
辺りを見渡すイチゴとダイチ。しかし青い球などどこにも見当たらない。
モリゾウは探偵スキルを使い『青い球』の反応が無いかを確かめる。『青い球』の反応はないものの別に気になる反応があることにモリゾウは気が付いた。
「何かがこちらに近付いてきてます」
探偵スキルでも一際大きな反応をする何かが近付いてきていたのだ。モリゾウが感じた異様な反応にイチゴもダイチも警戒を高めた。
すると川の上流から青色のワニが泳気ながらこちらに向かってきている。
「もしかしてあのワニが青い球持ってたりしませんかね?」
「ま、まさかな……」
青いワニを見て怯えるモリゾウとダイチ。
肉食性で水中生活に適応した爬虫類のワニ。モリゾウたちに近付いてきているワニは全身が青い。爪と牙以外は青だ。
大きさは一般的なワニとさほど変わらないだろう。だが青ワニの鱗は触らなくてもわかるほどの強固さ。牙や顎を見ても岩をも軽く噛み砕きそうな勢いだ。
「こっちの岩に登れ! ワニが来るぞぉお!」
ダイチが叫んだ。その声に固まっていた体が一気に動き出しモリゾウとイチゴは岩の上に登り避難した。岩の上に登ればワニが襲ってくる心配はないだろう。もし登ってきたとしても鬼ごっこのように相手の動きを先読みして逃げていけば鋭い牙の餌食になることはないだろう。
「やっぱりこっちに来ましたね……」
青ワニは川から陸へ上がり、3人が避難している岩の前で止まった。
「止まったねぇ。ど、どうするぅ?」
そんなイチゴの不安を一気に煽るように青ワニが岩に噛み付いた。
「ぇええ!?」
青ワニが噛んだ部分の岩は粉々に砕かれた。そして3人はバランスを崩し岩から転がり落ちてしまった。
モリゾウは全身で受け身をとって転がった。ダイチは着地と共に地面にそのまま潜っていった。
「いてててぇ」とイチゴは可愛らしい尻から落ちてしまい着地失敗。
そんなイチゴの目の前には青いワニが牙を輝かせながらヨダレを垂らしている。息は荒く今にも襲いかかってきそうだ。
「うぅ」
イチゴは恐怖から立ち上がることができずにいた。
「イチゴちゃん! 逃げてぇえ!」とモリゾウが声を上げた。
しかしイチゴは動くことができない。足が全く動かずにいる。ただただ食べられるのを待つエサのように。
青ワニは慌てることなく1歩ずつゆっくりとイチゴに近付く。そんな姿により一層恐怖を感じるイチゴ。
「イチゴちゃん!!」
モリゾウが叫ぶ。その声はイチゴには届いている。だが恐怖がイチゴの心を蝕み動けないどころか声も出せない状態だ。
青ワニは口を大きく開けた。そしてゆっくりと歩いていた時とは比べ物にならないほどの素早さでイチゴの頭を目掛けて噛み付こうと前に踏み出した。
食べられる一歩手前のイチゴの頭の中では、走馬灯や死に対することは一切浮かばなかった。むしろ何も浮かばない。イチゴは目の前の大きな牙だけをただじっと見ていた。
もうモリゾウの叫ぶ声は聞こえない。何も感じない。ただ死を待ち死を受け入れるだけだ。
「ぁ……」
イチゴから出た声はもう生きるのを諦めた小さな声だった。
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