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016:クリア率0%
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少年の意識は覚醒した。
意識が覚醒した場所は、現実世界なのか、死後の世界なのか、ボドゲ空間なのかわからない。
ただわかるのは真っ白な地面に倒れていることだけだ。
少年の口から溢れた血塊が真っ白な地面を汚す。
(ぁぁ……そ、うか……俺……死ぬのか……)
自分の口から溢れた血塊と、真っ白な地面から反射して映る自分の表情を見て、少年は死を悟った。
「君は死なない」
「……ぅ……だ……れぁ……」
死にかけの少年に根拠のない言葉がかけられた。
少年は言葉をかけた相手の顔を確かめるほどの体力は残されていない。そのため根拠のない言葉をかけてきた相手の顔を確かめることができなかった。
唯一確認できたのは倒れている少年の視界に映る異様なまでに黒い靴だけだ。
(ひ……と……だよな……)
話しかけてきている時点で人間だという事はわかるのだが、少年は人間かどうか疑っていた。
「君はゴールをした。けれどそれはクリアではない」
何を言っているのかさっぱりわからない。ゴールしたのにクリアじゃない。一体どういう事なのだろうか。
少年は思考を巡らせるが血が足りていない分、脳が回らない。意識も朦朧と始めてきている。
そんな少年に向かって再び黒い靴の人間が声をかける。
「ゴールしたのは君だけだ。仲間を助けるために君は、再びこのゲームに挑戦するだろう。だからこれはクリアではない。このゲームはクリア率0%のデスゲームだからね」
仲間とは、死にかけている少年の仲間のことだ。
その言葉に消えかかっていた意識を引き戻した。
「なかぁ……くりぁ……ぜぉ……」
少年の脳裏には仲間と記憶が流れる。
すると突然、脳が焼けるような感覚に襲われる。記憶が光の速さで少年の脳を刺激したのだ。
その瞬間、血塊と吐瀉物が混じり合ったものを口から真っ白い地面に吐いた。
(そうだ……おれたちは……)
――ドラゴンに殺された。
この言葉は口には出さずに噛み砕き飲み込んだ。
そして少年は自分の両足と左腕の感覚がないことに気が付く――否、思い出したのだ。ドラゴンに噛みちぎられた事を。
仲間も焼かれ、噛み殺された事を思い出した。
少年は叫んだ。血塊を吐きながらも叫び続けた。そして叫びながら泣いた。
「ゴールしたご褒美だ。金色のサイコロを振りたまえ」
唯一感覚があった右手の手のひらに金色のサイコロが置かれた。
サイコロを振る力は少年には残っていない。振る力はないが手のひらから落とせば振ったことになる。
だから少年は右手にある金色のサイコロを手のひらから落とした。
「ふっ、また君の挑戦を楽しみにしているよ」
少年を鼻で笑った。当然だろう。クリア率0%のゲームにどれだけ挑戦してもクリアする事ができないのだから。
それでも少年は諦めようとしなかった。
最後の命の灯火を感じながらも少年は、鼻で笑った目の前の人物に向かって鼻で笑い返した。
「みんなを……救うまで、何度でも……挑戦して……やる」
その言葉を最後に少年、金宮キンタロウの意識は消えた。暗くなっていた翡翠色の瞳も完全に光を失った。
そしてキンタロウの全身が金色に光だしそのまま消えた。
「出た目は『過去』の目か……好きな『過去』にワープしたのだろうが、君はどの過去を選ぶのだろうか?」
キンタロウの右手から落ちた金色の3面ダイスを見て男は言った。
3面ダイスの目には『現在』『未来』『過去』が書かれている。キンタロウは『過去』の目を出したのだ。
ゴールした人間は現実世界に戻れる。しかし3面ダイスで出た目によってどの時間に戻るのかは変わるのだ。
出た目が『過去』なら好きな時間の『過去』に戻ることができる。『未来』なら好きな時間の未来だ。
体験したことがある『過去』ならその瞬間に戻れるが、体験したことがない『過去』や『未来』に行く場合はどの場所にワープするかは不明だ。
ただ好きな時間だけを選べるのだ。
もし『現在』の目が出た場合はそのまま。現実世界にも帰れずにその場に残ることになる。
キンタロウは『過去』にワープすることになるがキンタロウが一番に望む『過去』にワープすることになる。
「やっと君が現れた。待っていたよ。キンタロウ……」
男の言葉が100マスの白い空間に静かに響いた。
なぜ名前を知っているのか。なぜキンタロウを待っていたのか。
それはこの男『神様』にしかわからない。今は……
意識が覚醒した場所は、現実世界なのか、死後の世界なのか、ボドゲ空間なのかわからない。
ただわかるのは真っ白な地面に倒れていることだけだ。
少年の口から溢れた血塊が真っ白な地面を汚す。
(ぁぁ……そ、うか……俺……死ぬのか……)
自分の口から溢れた血塊と、真っ白な地面から反射して映る自分の表情を見て、少年は死を悟った。
「君は死なない」
「……ぅ……だ……れぁ……」
死にかけの少年に根拠のない言葉がかけられた。
少年は言葉をかけた相手の顔を確かめるほどの体力は残されていない。そのため根拠のない言葉をかけてきた相手の顔を確かめることができなかった。
唯一確認できたのは倒れている少年の視界に映る異様なまでに黒い靴だけだ。
(ひ……と……だよな……)
話しかけてきている時点で人間だという事はわかるのだが、少年は人間かどうか疑っていた。
「君はゴールをした。けれどそれはクリアではない」
何を言っているのかさっぱりわからない。ゴールしたのにクリアじゃない。一体どういう事なのだろうか。
少年は思考を巡らせるが血が足りていない分、脳が回らない。意識も朦朧と始めてきている。
そんな少年に向かって再び黒い靴の人間が声をかける。
「ゴールしたのは君だけだ。仲間を助けるために君は、再びこのゲームに挑戦するだろう。だからこれはクリアではない。このゲームはクリア率0%のデスゲームだからね」
仲間とは、死にかけている少年の仲間のことだ。
その言葉に消えかかっていた意識を引き戻した。
「なかぁ……くりぁ……ぜぉ……」
少年の脳裏には仲間と記憶が流れる。
すると突然、脳が焼けるような感覚に襲われる。記憶が光の速さで少年の脳を刺激したのだ。
その瞬間、血塊と吐瀉物が混じり合ったものを口から真っ白い地面に吐いた。
(そうだ……おれたちは……)
――ドラゴンに殺された。
この言葉は口には出さずに噛み砕き飲み込んだ。
そして少年は自分の両足と左腕の感覚がないことに気が付く――否、思い出したのだ。ドラゴンに噛みちぎられた事を。
仲間も焼かれ、噛み殺された事を思い出した。
少年は叫んだ。血塊を吐きながらも叫び続けた。そして叫びながら泣いた。
「ゴールしたご褒美だ。金色のサイコロを振りたまえ」
唯一感覚があった右手の手のひらに金色のサイコロが置かれた。
サイコロを振る力は少年には残っていない。振る力はないが手のひらから落とせば振ったことになる。
だから少年は右手にある金色のサイコロを手のひらから落とした。
「ふっ、また君の挑戦を楽しみにしているよ」
少年を鼻で笑った。当然だろう。クリア率0%のゲームにどれだけ挑戦してもクリアする事ができないのだから。
それでも少年は諦めようとしなかった。
最後の命の灯火を感じながらも少年は、鼻で笑った目の前の人物に向かって鼻で笑い返した。
「みんなを……救うまで、何度でも……挑戦して……やる」
その言葉を最後に少年、金宮キンタロウの意識は消えた。暗くなっていた翡翠色の瞳も完全に光を失った。
そしてキンタロウの全身が金色に光だしそのまま消えた。
「出た目は『過去』の目か……好きな『過去』にワープしたのだろうが、君はどの過去を選ぶのだろうか?」
キンタロウの右手から落ちた金色の3面ダイスを見て男は言った。
3面ダイスの目には『現在』『未来』『過去』が書かれている。キンタロウは『過去』の目を出したのだ。
ゴールした人間は現実世界に戻れる。しかし3面ダイスで出た目によってどの時間に戻るのかは変わるのだ。
出た目が『過去』なら好きな時間の『過去』に戻ることができる。『未来』なら好きな時間の未来だ。
体験したことがある『過去』ならその瞬間に戻れるが、体験したことがない『過去』や『未来』に行く場合はどの場所にワープするかは不明だ。
ただ好きな時間だけを選べるのだ。
もし『現在』の目が出た場合はそのまま。現実世界にも帰れずにその場に残ることになる。
キンタロウは『過去』にワープすることになるがキンタロウが一番に望む『過去』にワープすることになる。
「やっと君が現れた。待っていたよ。キンタロウ……」
男の言葉が100マスの白い空間に静かに響いた。
なぜ名前を知っているのか。なぜキンタロウを待っていたのか。
それはこの男『神様』にしかわからない。今は……
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