神様が作った盤上遊戯(ボードゲーム)〜クリア率0%のデスゲームだろうが俺は何度でも挑戦する〜

アイリスラーメン

文字の大きさ
上 下
16 / 97

016:クリア率0%

しおりを挟む
 少年の意識は覚醒した。
 意識が覚醒した場所は、現実世界なのか、死後の世界なのか、ボドゲ空間なのかわからない。
 ただわかるのは真っ白な地面に倒れていることだけだ。

 少年の口から溢れた血塊けっかいが真っ白な地面を汚す。

(ぁぁ……そ、うか……俺……死ぬのか……)

 自分の口から溢れた血塊と、真っ白な地面から反射して映る自分の表情を見て、少年は死を悟った。

「君は死なない」

「……ぅ……だ……れぁ……」

 死にかけの少年に根拠のない言葉がかけられた。
 少年は言葉をかけた相手の顔を確かめるほどの体力は残されていない。そのため根拠のない言葉をかけてきた相手の顔を確かめることができなかった。
唯一確認できたのは倒れている少年の視界に映る異様なまでに黒い靴だけだ。

(ひ……と……だよな……)

 話しかけてきている時点で人間だという事はわかるのだが、少年は人間かどうか疑っていた。

「君はをした。けれどそれはではない」

 何を言っているのかさっぱりわからない。ゴールしたのにクリアじゃない。一体どういう事なのだろうか。
 少年は思考を巡らせるが血が足りていない分、脳が回らない。意識も朦朧もうろうと始めてきている。
 そんな少年に向かって再び黒い靴の人間が声をかける。

「ゴールしたのは君だけだ。仲間を助けるために君は、再びこのゲームに挑戦するだろう。だからこれはクリアではない。このゲームは%のデスゲームだからね」

 仲間とは、死にかけている少年の仲間のことだ。
 その言葉に消えかかっていた意識を引き戻した。

「なかぁ……くりぁ……ぜぉ……」

 少年の脳裏には仲間と記憶が流れる。
 すると突然、脳が焼けるような感覚に襲われる。記憶が光の速さで少年の脳を刺激したのだ。
 その瞬間、血塊けっかい吐瀉物としゃぶつが混じり合ったものを口から真っ白い地面に吐いた。

(そうだ……おれたちは……)

――に殺された。

 この言葉は口には出さずに噛み砕き飲み込んだ。
 そして少年は自分の両足と左腕の感覚がないことに気が付く――否、思い出したのだ。ドラゴンに噛みちぎられた事を。
 仲間も焼かれ、噛み殺された事を思い出した。

 少年は叫んだ。血塊を吐きながらも叫び続けた。そして叫びながら泣いた。

「ゴールしたご褒美だ。金色のサイコロを振りたまえ」

 唯一感覚があった右手の手のひらに金色のサイコロが置かれた。
 サイコロを振る力は少年には残っていない。振る力はないが手のひらから落とせば振ったことになる。
 だから少年は右手にある金色のサイコロを手のひらから落とした。

「ふっ、また君の挑戦を楽しみにしているよ」

 少年を鼻で笑った。当然だろう。クリア率0%のゲームにどれだけ挑戦してもクリアする事ができないのだから。
 それでも少年は諦めようとしなかった。
 最後の命の灯火を感じながらも少年は、鼻で笑った目の前の人物に向かって鼻で笑い返した。

「みんなを……救うまで、何度でも……挑戦して……やる」

 その言葉を最後に少年、金宮キンタロウの意識は消えた。暗くなっていた翡翠色ひすいいろの瞳も完全に光を失った。

 そしてキンタロウの全身が金色に光だしそのまま消えた。

「出た目は『過去』の目か……好きな『過去』にワープしたのだろうが、君はどの過去を選ぶのだろうか?」

 キンタロウの右手から落ちた金色の3面ダイスを見て男は言った。
 3面ダイスの目には『現在』『未来』『過去』が書かれている。キンタロウは『過去』の目を出したのだ。
 ゴールした人間は現実世界に戻れる。しかし3面ダイスで出た目によってどの時間に戻るのかは変わるのだ。
 出た目が『過去』なら好きな時間の『過去』に戻ることができる。『未来』なら好きな時間の未来だ。
 体験したことがある『過去』ならその瞬間に戻れるが、体験したことがない『過去』や『未来』に行く場合はどの場所にワープするかは不明だ。
 ただ好きな時間だけを選べるのだ。
 もし『現在』の目が出た場合はそのまま。現実世界にも帰れずにその場に残ることになる。

 キンタロウは『過去』にワープすることになるがキンタロウが一番に望む『過去』にワープすることになる。

「やっと君が現れた。待っていたよ。キンタロウ……」

 男の言葉が100マスの白い空間に静かに響いた。
 なぜ名前を知っているのか。なぜキンタロウを待っていたのか。
 それはこの男『神様』にしかわからない。今は……  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

ゲームの中に転生したのに、森に捨てられてしまいました

竹桜
ファンタジー
 いつもと変わらない日常を過ごしていたが、通り魔に刺され、異世界に転生したのだ。  だが、転生したのはゲームの主人公ではなく、ゲームの舞台となる隣国の伯爵家の長男だった。  そのことを前向きに考えていたが、森に捨てられてしまったのだ。  これは異世界に転生した主人公が生きるために成長する物語だ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

女子中学生、核兵器を廃絶

青村砂希
SF
主人公は大学の研究室で助手をしている28才の男性。 彼は研究室の教授から「私に何かあった時は娘を頼む」と言われました。 その後、教授は行方不明となり、そのお嬢さんは彼のアパートへ嫁いで来ました。 しかしその子はまだ中学生、さすがに同居する訳にはいきません。 透明感のある美少女が、いそいそと彼の部屋へ通い、身の回りの世話をしてくれます。 そんな中、彼はその子が特殊な教育を受けていた事を知り、特別な感情を抱きはじめます。 そして、その子が父親から渡されていた研究論文と、彼の研究を組み合わせた時、世界の軍事バランスが根底から崩れる事に2人は気付きます。 この研究、世界80億人の生命を脅かす。外部に漏れてはいけない。 秘密を共有した2人は、新たな生活を密かに始めます。 しかし、謎の組織にマークされている事を、2人は知りません。 2人には、どのような現実が待ち受けているのでしょう。 サクサク読んで頂ける事を目指しました。 是非、お付き合い下さい。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

【改訂版】異世界転移で宇宙戦争~僕の専用艦は艦隊旗艦とは名ばかりの単艦行動(ぼっち)だった~

北京犬(英)
SF
本作はなろう旧版https://ncode.syosetu.com/n0733eq/を改稿したリニューアル改訂版になります。  八重樫晶羅(高1)は、高校の理不尽な対応で退学になってしまう。 生活に困窮し、行方不明の姉を探そうと、プロゲーマーである姉が参加しているeスポーツ”Star Fleet Official edition”通称SFOという宇宙戦艦を育てるゲームに参加しようと決意する。 だが待ち受けていたのは異世界転移。そこは宇宙艦を育てレベルアップさせることで生活をする世界で3年縛りで地球に帰ることが出来なかった。 晶羅は手に入れた宇宙艦を駆り、行方不明の姉を探しつつデブリ採取や仮想空間で模擬戦をして生活の糧とします。 その後、武装少女のアバターでアイドルになって活動したり、宇宙戦争に巻き込まれ獣耳ハーレムを作ったりします。 宇宙帝国で地位を得て領地経営で惑星開発をしたり、人類の天敵の機械生命との戦闘に駆り出されたり波瀾万丈の生活をおくることになります。 ぼっちのチート宇宙戦艦を育てて生き残り、地球への帰還を目指す物語です。 なろうでも公開していますが、最新話はこちらを先行公開する予定です。

或いは、逆上のアリス

板近 代
SF
 絶滅動物復活プロジェクトにて、ドードー鳥の復活を試み成功させた人類。同時期に、不思議の国のアリスの作者であるルイス・キャロルを模した人工知能を稼働させたことも影響して『不思議化』を起こした地球は平面となってしまった。  不思議化した世界を我が物顔で歩き回るのは、人間の加工品であり高い身体能力を持つ生物、猫鬼。その中でも特別な存在であるクロネコの脳内には、不思議の国のアリスの原典が搭載されていた。  クロネコを含む猫鬼を製造したのは、世界最高の天才科学者であるルールー・ララトアレ。彼女は地球を滅亡させまいと、試行錯誤を続けているのだ。 ※当作品は小説家になろうにも投稿しております

処理中です...