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015:全滅
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『第6層14マス』
キンタロウたちは震えていた。怯えて声も出ない状態だ。
なぜならそこには見たことない生物が立っていたからだ。否、見たことはある。だが存在するはずのない生き物だ。
ビル5階分くらいの大きさ。ダイヤモンドよりも硬そうな鱗。今にも喰らったものを噛み砕くような顎と咀嚼するために必要な鋭い牙。
キンタロウたちが瞳に映している生物はドラゴンだ。ドラゴンが目の前に異質なオーラを放ちながら立っていた。
「ヴォオオオオオ!」
ドラゴンが咆哮を上げた。ドラゴンの咆哮は暴風に変わりそのままキンタロウたちの全身を襲った。
キンタロウたちの体は動かない。否、動いている。信じられないほど震えている。だからこの場から逃げ出すことができない。
恐怖の具現化。死の具現化。それは目の前のドラゴンだ。
逃げなくては死ぬ。なのに逃げられない。
攻略方法は?
ない。
「逃げっ」
ノリが叫ぼうとしたのはキンタロウの耳に届いた。しかし届いた言葉は途中で止まった。代わりにキンタロウに届いたのは血飛沫だ。
血飛沫がキンタロウの右半身にかかった。
驚きのあまり目の前が真っ白になった。否、真っ赤に染まった。
キンタロウは思わず右を向いてしまった。頭では理解しているが信じられない。だから確認してしまった。
「うぅ……」
そこにはノリだったものが下半身だけを残し立っていた。悲惨な姿に変わったノリを見たキンタロウは心が恐怖に染められた。
歯がガタガタと揺れ、生まれたての小鹿のように足がガタガタと震えた。
その恐怖は次から次へと襲いかかってくる。
「モリゾ……ウ?」
キンタロウの左半身が燃えるように熱くなった。同時に焦げた臭いがキンタロウの鼻を刺激する。
モリゾウは炭となって消えたのだ。残ったのは頭蓋骨と燃えなかった左腕くらいだろう。
「ぁ……」
キンタロウは涙を流し膝をついた。ドラゴンの牙にはイチゴが人形のようにぶら下がってる。
そしてイチゴの体は半分にちぎられ下半身はドラゴンの口の中に入り、上半身は真下に落ちた。
落下するときには重心が一番重い頭から落ちる。だからそこ無情にも残酷な音がキンタロウの耳に届く。
イチゴの頭が潰れた音だ。
「ぁぅ……イチゴ……」
イチゴの目が転がりキンタロウと目が合った。助けを求めるように目だけがキンタロウを見つめている。
次にキンタロウと目が合ったのはドラゴンだ。
ドラゴンは口から落下したイチゴの上半身を踏みつぶし1歩前に歩き出した。
ゆっくりとゆっくりとキンタロウの元へ歩いていく。
キンタロウにとっては死が近付いている感覚だ。死と隣り合わせのキンタロウ。思考は停止。何も考えられない。
停止しているはずの思考からは『ドラゴンに食べられる』とただそれだけが理解できた。今のキンタロウは死を待つだけの家畜と変わらない。
「んぐっ……はぁはぁ……ヴォぇ……」
血と恐怖の臭いでキンタロウは嘔吐した。そしてドラゴンは鼻息がかかる距離まで近付いた。
ドラゴンは大きな口を開く。全てを飲み込むほど大きな口だ。牙は赤く染まっていた。イチゴの血だろう。
ドラゴンの牙に噛みちぎられると分かった瞬間、キンタロウは意味のわからない言葉を聞いた。
「■■■■■■■■■」
思考が停止しているから言葉がわからなかったのではない。本当に意味のわからない言葉だったのだ。
それは誰が放った言葉なのかすらわからない。もしかしたら目の前のドラゴンの可能性がある。
ドラゴン語だからわからなかったのだと。
もしくは死んだ仲間たちの声だろうか。走馬灯とは違うが死者の声が聞こえたのかもしれない。
そんなことを考えたのは一瞬だ。キンタロウはドラゴンに噛みちぎられた。
噛みちぎられた箇所は足だ。太腿から上はドラゴンの口の中。太腿から下はドラゴンの牙と牙の間から口の外に飛び出しそのまま落ちていった。
ボドゲ部の4人は『第6層14マス』にて、ドラゴンに殺され全滅した。
キンタロウたちは震えていた。怯えて声も出ない状態だ。
なぜならそこには見たことない生物が立っていたからだ。否、見たことはある。だが存在するはずのない生き物だ。
ビル5階分くらいの大きさ。ダイヤモンドよりも硬そうな鱗。今にも喰らったものを噛み砕くような顎と咀嚼するために必要な鋭い牙。
キンタロウたちが瞳に映している生物はドラゴンだ。ドラゴンが目の前に異質なオーラを放ちながら立っていた。
「ヴォオオオオオ!」
ドラゴンが咆哮を上げた。ドラゴンの咆哮は暴風に変わりそのままキンタロウたちの全身を襲った。
キンタロウたちの体は動かない。否、動いている。信じられないほど震えている。だからこの場から逃げ出すことができない。
恐怖の具現化。死の具現化。それは目の前のドラゴンだ。
逃げなくては死ぬ。なのに逃げられない。
攻略方法は?
ない。
「逃げっ」
ノリが叫ぼうとしたのはキンタロウの耳に届いた。しかし届いた言葉は途中で止まった。代わりにキンタロウに届いたのは血飛沫だ。
血飛沫がキンタロウの右半身にかかった。
驚きのあまり目の前が真っ白になった。否、真っ赤に染まった。
キンタロウは思わず右を向いてしまった。頭では理解しているが信じられない。だから確認してしまった。
「うぅ……」
そこにはノリだったものが下半身だけを残し立っていた。悲惨な姿に変わったノリを見たキンタロウは心が恐怖に染められた。
歯がガタガタと揺れ、生まれたての小鹿のように足がガタガタと震えた。
その恐怖は次から次へと襲いかかってくる。
「モリゾ……ウ?」
キンタロウの左半身が燃えるように熱くなった。同時に焦げた臭いがキンタロウの鼻を刺激する。
モリゾウは炭となって消えたのだ。残ったのは頭蓋骨と燃えなかった左腕くらいだろう。
「ぁ……」
キンタロウは涙を流し膝をついた。ドラゴンの牙にはイチゴが人形のようにぶら下がってる。
そしてイチゴの体は半分にちぎられ下半身はドラゴンの口の中に入り、上半身は真下に落ちた。
落下するときには重心が一番重い頭から落ちる。だからそこ無情にも残酷な音がキンタロウの耳に届く。
イチゴの頭が潰れた音だ。
「ぁぅ……イチゴ……」
イチゴの目が転がりキンタロウと目が合った。助けを求めるように目だけがキンタロウを見つめている。
次にキンタロウと目が合ったのはドラゴンだ。
ドラゴンは口から落下したイチゴの上半身を踏みつぶし1歩前に歩き出した。
ゆっくりとゆっくりとキンタロウの元へ歩いていく。
キンタロウにとっては死が近付いている感覚だ。死と隣り合わせのキンタロウ。思考は停止。何も考えられない。
停止しているはずの思考からは『ドラゴンに食べられる』とただそれだけが理解できた。今のキンタロウは死を待つだけの家畜と変わらない。
「んぐっ……はぁはぁ……ヴォぇ……」
血と恐怖の臭いでキンタロウは嘔吐した。そしてドラゴンは鼻息がかかる距離まで近付いた。
ドラゴンは大きな口を開く。全てを飲み込むほど大きな口だ。牙は赤く染まっていた。イチゴの血だろう。
ドラゴンの牙に噛みちぎられると分かった瞬間、キンタロウは意味のわからない言葉を聞いた。
「■■■■■■■■■」
思考が停止しているから言葉がわからなかったのではない。本当に意味のわからない言葉だったのだ。
それは誰が放った言葉なのかすらわからない。もしかしたら目の前のドラゴンの可能性がある。
ドラゴン語だからわからなかったのだと。
もしくは死んだ仲間たちの声だろうか。走馬灯とは違うが死者の声が聞こえたのかもしれない。
そんなことを考えたのは一瞬だ。キンタロウはドラゴンに噛みちぎられた。
噛みちぎられた箇所は足だ。太腿から上はドラゴンの口の中。太腿から下はドラゴンの牙と牙の間から口の外に飛び出しそのまま落ちていった。
ボドゲ部の4人は『第6層14マス』にて、ドラゴンに殺され全滅した。
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