神様が作った盤上遊戯(ボードゲーム)〜クリア率0%のデスゲームだろうが俺は何度でも挑戦する〜

アイリスラーメン

文字の大きさ
上 下
6 / 97

006:状況整理

しおりを挟む
 落ち着きを取り戻したモリゾウは立ち上がった。

「と、とりあえず……状況を整理しましょう」

 モリゾウは青ざめた表情をしている。状況を整理しようとしているがモリゾウ自身すでに頭の中で状況が整理してあり絶望している。

「このとかいう、ふざけた空間に僕たち1万人のプレイヤーが移動させられた。そして脳に流れ込んできたルールによるとゲームをクリアしないと現実世界には戻れないみたいですね」

 モリゾウの説明を筋肉男のノリと小柄の美少女イチゴが集中しながら聞いている。キンタロウはまだ気絶したままだ。

「ボドゲとしてのルールは2つの6面ダイスを振ってマスを進む双六ゲームのようですね。赤いサイコロは1~6層ある層の場所を決める。青いサイコロは前に進むマスの数を決める。マスは層ごとに100マス。6層あるので全部で600マス存在しますね。ゴールはどの層でも100マス目にたどり着けばいいみたいです」

 手に顎を乗せながらゆっくりと倒れているキンタロウの周りを歩き出したモリゾウ。キンタロウを踏まないように注意しながら歩くが、その行動に意味はあるのだろうか。

「赤いサイコロと青いサイコロ、一振りで36パターンですね。どれか一つのマスに止まり、止まったマスでゲームを行う。勝利すると次に進めるらしいです。どんな仕掛けがあるのやら」

 モリゾウは説明を終えると歩くのをやめた。


 キンタロウ達ボドゲ部は『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』の世界に閉じ込められてしまったのだ。この世界を『ボドゲ空間』と言う。
 現実世界に戻るには『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』をクリアするしか方法がない。


「昔から知っていたかのように頭の中にルールがあるな」

 ノリは不思議そうな表情でマッチョポーズをとっている。ポーズと表情が全く噛み合っていない。

「でも頭の中のルールに載っていない情報もありますね。先ほどのピエロについてなんて一切情報がありません」

 モリゾウは険しい表情で頭の中の情報を読み返すがどこを見てもピエロについての情報はない。
 それは現実世界で『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』の製造会社の情報がなかった時と同じように。

「もしかして神様……とかぁ?」

 モリゾウよりも先にイチゴが甘い声で最もらしい答えに辿り着いた。
 誰もがあのピエロをこのゲームを作った神様だと思うだろう。だが、モリゾウは違和感を感じている。
 ピエロがスピーチをしていた時、誰かに話させられているように見えたのだ。
 それは主催者側が司会者を用意したイベントのように。それが関係者なのか部外者なのか置いておいてモリゾウはピエロが神様だとは思ってはいない。

『ピロピロリ~ン』

 突然頭の中に謎のメロディが流れた。モリゾウとノリとイチゴはお互いに顔を見合わせた。そして他のプレイヤーたちもざわつき始めた。
 どうやら全員の頭の中に一斉にメロディが流れたらしい。

 このメロディに関してなにも情報はない。頭の中のルールにも載っていない。
 しかしこのメロディを聞いた全員が直感した。これはスタートを知らせるメロディだと言うことに。
 ピエロが言った1時間が経過したのだ。

「は、始まっちゃった……キ、キンタロウくん起きてぇ」

 キンタロウの肩を優しく揺らすイチゴ。そんな優しく揺らしても起きない。心地よいゆりかごのようになってしまい逆効果だ。

「キンタロウ起きろ」

 イチゴに代わり筋肉男のノリがキンタロウを揺らした。いきなり激しくは揺らさずに徐々に徐々に激しく揺らしていく。

「じ、地震!」

 キンタロウ寝起きの第一声だ。激しく揺らされたことによって地震が起きたのだと勘違いしている。

「みんな……ウッ……あ、頭が痛ぇ……な、なんだこれは……ウヴォェ」

 意識覚醒後に頭の中の情報が処理しきれずに頭痛に変わった。そして吐き気と目眩を襲われ再び吐くキンタロウ。

「ハァ……ハァ……」

「よしよしぃ」

 キンタロウの背中を優しくさするイチゴ。背中をさすられて、すらすらと嘔吐する。
 吐き出された吐瀉物は白い床から綺麗に消えていく。

「キンちゃん大丈夫ですか?」

 焦りながら声をかけるモリゾウ。そんなモリゾウに対して「大丈夫だ……」と強がるキンタロウ。

「クリアしないと現実世界に帰れないみたいですよ……キンちゃんどうしますか?」

 意識を覚醒してすぐのキンタロウに判断を委ねるモリゾウ。
 不安そうなな表情を浮かべて栗色の瞳でキンタロウを見つめるイチゴ。
 マッチョポーズをとりながらキンタロウの返答を待つノリ。

 3人の表情をゆっくりと見たキンタロウは濡れた子ウサギのように震えた。
 そして青ざめた表情でモリゾウの問いに返答をする。

「こ、このゲームってさ……死んだりしないよね……?」

 誰も口にしなかった恐怖の言葉をキンタロウは怯えながら言った。  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。 亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。 さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。 南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。 ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

New Life

basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。  待ちに待ったVRMMO《new life》  自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。  ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。  第二部? むしろ本編? 始まりそうです。  主人公は美少女風美青年?

光と陰がまじわる日(未完成)

高間ノリオ
SF
これはある少年の身に起こる奇々怪界な物語 季節は夏、少年(主人公)の名は優(ゆう)14歳なのだ、ある日手にれた特殊な能力で危機的状況を乗り越えて行く、これから優に何が起きるかは貴方の目で確かめて頂きたい…どうぞ

処理中です...