神様が作った盤上遊戯(ボードゲーム)〜クリア率0%のデスゲームだろうが俺は何度でも挑戦する〜

アイリスラーメン

文字の大きさ
上 下
5 / 97

005:目の前には道化師

しおりを挟む
 目を開けるとそこには『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』のパッケージに載っていたキャラクターの道化師がステージの上に立っていた。

「あいつは箱にいた可愛くないピエロ……」

 キンタロウの第一声だ。何が起きたか理解できない様子で辺りを見渡している。

 ピエロの肌は白く塗られ鼻は丸く赤い。大きなピンク色の靴を履いている。さらにはピンク色の髪の毛にピンク色の衣装。
 くるくる回りながら手にした帽子からウサギを何匹も出している。マジシャンみたいだ。さすが道化師と言ったところだ。

 そして金色の光に包まれて移動してきた場所は壁があるのかないのかわからない真っ白な空間だった。まるで印刷ミスのゲーム盤のように真っ白だ。
 現実世界のどこかなのか、バーチャル空間なのか、異世界なのか、檸檬色の髪の少年たちはまだわからない。
 ただわかるのは『ピンク色が際立っているピエロ』と『真っ白な空間』と……

「何だ、ここは」
「おい、説明しろよ!」
「ふざけるな帰せ!」
「降りてこいピエロ!」
「帰りたいよ」

『大量に集められた人間』だけだ。

 老若男女問わず集められている。その全員がステージの上に立つピエロに野次を飛ばしている。泣いている人や怯えている人もいる。
 そんな大勢の中、キンタロウはボドゲ部の仲間たちを探そうと振り返った。
 なぜ振り返ったのかと言うとキンタロウの背後から甘い音色のロリボイスが聞こえたからだ。

「いててぇ……」

「イチゴ大丈夫か?」

 キンタロウの後ろでしりもちをついているのはイチゴだ。イチゴに優しく手を差し伸べるキンタロウ。
 その後ろでモリゾウが驚いた様子で立っている。倒れていたノリも同様に驚いた様子で立ち上がった。
 幸いボドゲ部の仲間たちは全員離れる事なくここに移動してきたらしい。

「ここは……?」とモリゾウが疑問を口にしたのと同時にマジックを披露していたピエロが咳払いをした。

「これで全員♦︎全員♠︎全員♣︎揃いましたよ~ん❤︎ 私待ちくたびれちゃったよ~ん❤︎」

 ピエロが持っていたシルクハットが一瞬でマイクに変わった。そのマイクを使いピエロは大勢いる人前で意気揚々と話を始めた。
 全員が静かに耳を傾ける。野次を飛ばしていた人たちも怯えていた人たちも全員だ。

「『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』は300万個発売。そして先ほど見事に完売♦︎完売♠︎完売♣︎しましたよ~ん❤︎皆さ~ん拍手っ!」

 拍手を要求したが誰も拍手をしない。シーンとした冷たい空気が流れていく。

「は~い。パチパチパチパチ!」

 この空気に耐えられなくなったピエロは自ら拍手をした。そして口でも拍手音を出した。

「そして『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』を開けてゲームをスタートした先着1万人の皆様がこのボドゲ空間に招待されたのよ~ん❤︎皆様は選ばれた人間♦︎人間♠︎人間♣︎なのよ~ん❤︎」

 ステージを歩き回りながら慣れたように喋るピエロ。

 どうやらキンタロウたちと同じく『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』をプレイしようとしていたプレイヤー1万人がこの白い空間に移動させられたらしい。

「人数も揃ったと言う事で『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』始めたいと思うよ~ん❤︎ルールは簡単♦︎簡単♠︎簡単♣︎今から参加プレイヤー1万人の頭の中に流しますよ~ん❤︎」

 と次の瞬間、全員の脳に大量のデータが光の速度で流れ込んだ。情報処理しきれずに頭がパンクしそうになる。否、何人かは耐えきれずに倒れ、何人かは嘔吐。人がバタバタと倒れていく。
 嘔吐した吐瀉物は不思議と白い床に吸い込まれるように消えていった。

 そしてキンタロウも嘔吐し倒れている。完全に意識は闇の中だ。
 筋肉男のノリは頭を押さえながら膝をついた。何とか耐えようとするが光の速度で流れてくる情報は自慢の筋肉ではどうすることもできない。ただ堪えるだけしかできないのだ。
 小柄の美少女イチゴと頭脳派のモリゾウは耐えられずに倒れてしまっている。だが2人の意識はある。
 そんな2人にノリは声をかける。声をかけなければ意識を失ってしまうほどギリギリの状態だからだ。

「だ、大丈夫か……? しっかり意識を……」

「うぅ……」

 弱々しい声でイチゴが答えた。か弱いイチゴはもう限界だろう。

「なんなんですか……いったい……なにが……どうなって……」

 モリゾウは必死に情報を整理しようとしている。だが頭脳派のモリゾウですら理解できない状況に苦しんでいる。

「あららら~。ほとんどの参加者が倒れちゃったわね~ん❤︎ピエロの私は優しいから1時間待ってあげるわ~ん。1時間後♦︎1時間後♠︎1時間後♣︎ゲームをスタートするよーん❤︎みんな頑張ってちょ~だいね~ん! ルールは頭の中に入ってるから大丈夫だよね~ん。理解できなかったらそれまでね~ん。ゴールをするの楽しみに待ってるわよ~ん❤︎」

 ピエロは説明を終え丁寧にお辞儀をした。そんな終わりを感じさせるお辞儀をした後にマジシャンのように一瞬でピンク色の煙と共に姿を消した。  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし
SF
ゲーム好きの高校生、宝 光(たからひかる)は朝目が覚めるとミミック(見習い)になっていた。 身動きが取れず、唯一出来ることは口である箱の開閉だけ。 動揺しつつもステータス画面のチュートリアルを選択すると、自称創造主の一人である男のハイテンションな説明が始まった。 光がこの世界に転送されミミックにされた理由が、「名前がそれっぽいから。」 人間に戻り、元の世界に帰ることを目標にミミックとしての冒険が始まった。 おかげさまで、SF部門で1位、HOTランキングで22位となることが出来ました。 今後とも面白い話を書いていきますので応援を宜しくお願い致します。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第六部 『特殊な部隊の特殊な自主映画』

橋本 直
SF
毎年恒例の時代行列に加えて豊川市から映画作成を依頼された『特殊な部隊』こと司法局実働部隊。 自主映画作品を作ることになるのだがアメリアとサラの暴走でテーマをめぐり大騒ぎとなる。 いざテーマが決まってもアメリアの極めて趣味的な魔法少女ストーリに呆れて隊員達はてんでんばらばらに活躍を見せる。 そんな先輩達に振り回されながら誠は自分がキャラデザインをしたという責任感のみで参加する。 どたばたの日々が始まるのだった……。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

アカネ・パラドックス

雲黒斎草菜
SF
超絶美人なのに男を虫ケラのようにあしらう社長秘書『玲子』。その虫けらよりもひどい扱いを受ける『裕輔』と『田吾』。そんな連中を率いるのはドケチでハゲ散らかした、社長の『芸津』。どこにでもいそうなごく普通の会社員たちが銀河を救う使命を背負わされたのは、一人のアンドロイド少女と出会ったのが始まりでした。 『アカネ・パラドックス』では時系列を複雑に絡めた四次元的ストーリーとなっております。途中まで読み進むと、必ず初めに戻って読み返さざるを得ない状況に陥ります。果たしてエンディングまでたどり着きますでしょうか――。

ジャクタ様と四十九人の生贄

はじめアキラ
ホラー
「知らなくても無理ないね。大人の間じゃ結構大騒ぎになってるの。……なんかね、禁域に入った馬鹿がいて、何かとんでもないことをやらかしてくれたんじゃないかって」  T県T群尺汰村。  人口数百人程度のこののどかな村で、事件が発生した。禁域とされている移転前の尺汰村、通称・旧尺汰村に東京から来た動画配信者たちが踏込んで、不自然な死に方をしたというのだ。  怯える大人達、不安がる子供達。  やがて恐れていたことが現実になる。村の守り神である“ジャクタ様”を祀る御堂家が、目覚めてしまったジャクタ様を封印するための儀式を始めたのだ。  結界に閉ざされた村で、必要な生贄は四十九人。怪物が放たれた箱庭の中、四十九人が死ぬまで惨劇は終わらない。  尺汰村分校に通う女子高校生の平塚花林と、男子小学生の弟・平塚亜林もまた、その儀式に巻き込まれることになり……。

処理中です...