神様が作った盤上遊戯(ボードゲーム)〜クリア率0%のデスゲームだろうが俺は何度でも挑戦する〜

アイリスラーメン

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004:白紙

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 取扱説明書を一通り読み終えたモリゾウは、取扱説明書を閉じた。

「ルールは大体頭の中に入れました」

「さすがモリゾウ! 早速やろうぜ!」

 体育座りから突然飛び上がったキンタロウは瞳を輝かせている。

「では、お待ちかねの『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』を始めましょう」

 モリゾウはそれぞれに駒を配った。駒はプレイヤーの分身ともいえる重要な役割を持つ。
 キンタロウは黄色、イチゴは赤色、ノリは青色、モリゾウは緑色の駒だ。

 各自、駒を選ばなかったのは理由がある。ボドゲ部の部員はそれぞれ自分の担当カラーが存在するからだ。
 その担当カラーは先ほどモリゾウが配った駒の色と一致している。
 もし自分の担当カラーの駒がない場合は、自分たちでそのボドゲの駒に似せて作ったり、普段から持っている自分に見立てた『マイコマ』を使用したりする。
 お互いが駒の色を把握していることによってボドゲもスムーズに進行する事が可能になるのだ。
 今回キンタロウたちボドゲ部が遊ぼうとしている『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』は幸い遊べる最大人数が8人だ。なので自分たちの担当カラーの駒は付属されていた。

 モリゾウからコマを受け取ったキンタロウは意気揚々と箱の中身からゲーム盤を取り出した。

「なんだこれ真っ白じゃんか。これがゲーム盤なのか?」

 キンタロウが取り出したゲーム盤は両面真っ白だ。普通人生ゲームなどのゲーム盤にはマス目が記載されている。
 そうでなければスタート地点もゴール地点もない、ただの紙になってしまうからだ。

「あれ? おかしいですね。取扱説明書にはちゃんとマス目が書かれてましたよ」

 閉じたばかりの取扱説明書を焦りながら開くモリゾウ。何度取扱説明書を確認しても真っ白の紙など付属品に存在しない。
 そしてゲーム盤がキンタロウの購入した『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』に入っていなかったのだ。
 考えられる点は一つ。印刷ミスだ。

「はあ? ふっざけんな!」

 苛立たせ声を上げるキンタロウ。無理もない。3時間も並びやっとの思いで手に入れたボードゲームだ。
 遊ぼうとした瞬間に遊べないと分かれば誰だって激怒するだろう。

「印刷ミスとかありえないだろ。何度も言うが7564円だぞ。クレームだクレーム! お~い、イチゴ~製造会社の電話番号を教えてくれ~」

 箱を見ていたイチゴに製造会社の電話番号の確認を頼んだ。そのままイチゴは箱の隅から隅まで電話番号が記載されていないか探す。

「それが……電話番号どころか会社名も何も書いてないよぉ」

「取扱説明書にも書いてありませんね」

 同時進行でモリゾウも取扱説明書の中に電話番号が載っていないか確認していた。
 箱にも取扱説明書にも記載されていない電話番号。そして会社名。その他、会社を特定できる情報は一切書かれていない。

 そんな時、箱の中身を覗き込むイチゴが何かを発見した。

「あっ、待って箱の内側になんか書いてあるぅ」

 イチゴが見つけたのは文字だ。その文字をイチゴが一文字一文字ゆっくりと読んだ。

「えーっと、『わからない事があれば神様に聞いてね』だってぇ」

 落書きのように書かれた文字は、その名の通りただの落書きだった。

「何が神様だ! 金返せかね!」

 イチゴが持っている箱を壊そうと飛びつこうとするキンタロウ。
 そのキンタロウを筋肉男のノリが片手で止めた。まるで暴れるウサギの耳を掴み自由を奪うマジシャンのようだ。

「落ち着けキンタロウ。箱を壊したら返品できないだろ。だからイチゴは丁寧に中身を見たんだろう」

 ノリの意見はごもっともだ。筋肉男で筋トレばかりしているが、しっかり周りを見ている。

「そうですよ。キンちゃん落ち着いてください」

 ノリの意見に賛同するモリゾウ。だがキンタロウはノリに襟首を掴まれながらも暴れていた。お菓子をねだる子供のように手足をバタつかせている。

「う、うるせぇ……」

 キンタロウは弱々しくその一言だけを飛ばして暴れるのをやめた。そしてまた落ち込んだ。
 ノリに襟首を掴まれ体を浮かばせた状態で落ち込んでいる。その姿は親ウサギが子ウサギの首を口で咥えているかのようだった。

「とりあえず取扱説明書に載っているイラストを見ながらできるところまでやってみましょう。白紙ゲーム版なら印刷すれば何とかなりそうですし」

「あ、それ良いアイディアだ」

 モリゾウの意見に指をパチンと鳴らし賛同するキンタロウ。確かにその通りだ。白紙なら印刷すれば良いではないか。印刷が不可能ならペンでマス目を書くのも有りだろう。

 謎に包まれた大人気ボードゲーム『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』。ここまでの情報によると双六や人生ゲームの類のボードゲームだと言う事が判明している。
 それなら従来の人生ゲームの流れでゲームを進めていけばある程度は遊べるだろう。

 遊べる可能性があるなら遊ぶ。それもボドゲ部のモットーともいえるだろう。

 暴れなくなったキンタロウを筋肉男のノリが離した。代わりに持ったのは自分の担当カラーでもある青色の駒だ。
 その駒を片手で持ちダンベルを上げ下げするかのような動作を始めた。何でもダンベルにしてしまう筋肉あるあるだろ。

 そんなノリの様子を見て各自、自分の駒を持った。

「よし。やってみっか!」

 そのキンタロウの掛け声とともに駒をスタート位置である左下の角に置いた。

 その瞬間、白紙だったゲーム盤が金色に光り輝いた。その光は一瞬で全てを照らす激しい光だ。キンタロウたちの視界を光が奪い全身を包み込んだ。
 激しい光に耐えきれずキンタロウたちは目を閉じた。目を閉じるだけでは光を防げず手のひらで目を覆う。
 ゲーム盤が光ったのか、自分たちが光の中に吸い込まれたのかどちらかなのかその時は誰も判断できない。
 その答えは両方だ。ゲーム盤が光だし、その光にキンタロウたちを飲み込むように包み込んでいたのだ。

「……まぶし……」

 刹那、キンタロウたちを包み込んでいた金色の光は全てを飲み込んだ。    
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