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最終章:エピローグ
最終話 異世界スローライフを送りたいだけなんだが
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マサキとブランシュは遅れてティーパーティーに参加した。
ヒーローは遅れて登場するもの、という言葉があるが、この世界を救った二人の英雄がまさにそれだ。
戦いの場だけでなくても遅れて登場するのである。
ただ兎人族の元神様アルミラージ・ウェネトの予言の書『白き英雄』の通り、マサキは『黒き英雄』にはなっていない。そのため、マサキのことを英雄と呼ぶのは少し違う。
有名になってしまうと何かと面倒事に巻き込まれ、夢の『三食昼寝付きのスローライフ』を送る障害になると判断したマサキ本人が『黒き英雄』になることを拒んで、いつも通りの生活を求めて身を潜めたのである。
人間不信らしいマサキの判断である。
だから世間は、世界を救った『黒き英雄』が誰なのかはわかっていない。ごく一部の者のみが知る事実だ。
それとは対照的にブランシュは『白き英雄』となった。正真正銘、仮ではない『白き英雄』だ。
これは当初からブランシュ本人が求めていた称号であるため、喜んでこの称号を受け取っていたのである。
ブランシュが『白き英雄』として讃えられれば、『黒き英雄』の存在が影となり薄くなる。
よって『黒き英雄』が誰なのか詮索する者もそこまで現れなかったのである。
これもマサキにとっては都合の良い話だ。
そして幻獣であるルナもまた『黒き英雄』と同じで謎のまま。
これについても予言の書通りである。
『幻獣』という生物が謎のままだということも今まで通り。世間からしたら迷宮のままだ。
そんな世界を救った英雄たちは今、家族に囲まれながらティーパーティーを楽しんでいる。
椅子に座るマサキの膝の上には小さな女の子――マサキの娘がクダモノハサミを美味しそうに頬張っている。
その横にはネージュが座っており、娘の頬についたクリームを拭いてあげていた。
「ここにもクリームが付いてますよ。ここにも、ここにも」
「ありがとーママ!」
感謝を告げたそばからまたクリームを付けてしまうマサキとネージュの娘。
超がつくほどの親バカであるマサキとネージュは、それすらも――一つ一つの行動の全てが幸せだと感じていた。
「飲み物の飲まないとダメッスよ。ニンジンジュースどうぞッス!」
マサキの娘にニンジンジュースを渡したのはダールだ。
量が減ったらすぐに注げるように、ウォーターピッチャーも持っているという用意周到っぷりだ。
「クーが作ったケーキも食べて欲しいぞー!」
特大のホールケーキを持ってきたのはクレールだ。
一人では絶対に食べきれない量だが、全てをマサキの娘に食べてもらいたいと本気で思っている。
「クリームばかりだと体を壊してしまうかもしれないから、果物をどうぞ」
「クリームばかりだと体を壊してしまうかもしれないから、野菜をどうぞ」
双子の姉妹デールとドールが持ってきたのは、新鮮な果物と野菜だ。
打ち合わせをしたかのように声が完璧に揃っている。双子の姉妹のシンクロ率は五年がたった今でも健在。むしろシンクロ率は上がっている。
「それでは私はいつもみたいに楽しい楽しいマスターとの日々をお話ししますねー! 私がマスターに襲われた日のことを……」
「娘に変な話しないでくれる!? あと襲ったことなんて一度もないし!」
瞬時にツッコミを入れるマサキ。ビエルネスはマサキのツッコミに構うことなく話を続けた。
話す際は言葉ではなく、風属性の魔法を使い、紙芝居ならぬ風芝居で読み聞かせていた。
ビエルネスの話の内容はともかく、マサキとビエルネスのやり取りにマサキの娘は笑っていた。
「ンッンッ。ンッンッ」
いつの間にかマサキの娘の膝の上には、チョコレートカラーのもふもふなウサギが声を漏らしながら座っていた。
時折、額を擦り付けたりしてウサギ独特の愛情表現も行ったりもしている。
これをみてわかる通り、マサキの家族全員がマサキの娘を溺愛しているのである。ウサギであるルナを含めて全員だ。
そんな溺愛っぷりを微笑ましく見守るのが、兎人族の神の執事――ガルドマンジェである。
そんなガルドマンジェに向かって兎人族の神――ハクトシンが口を開く。
「キミも混ざればいいじゃないか」
「いいえ。私はこの光景を見ているだけで満足ですから」
ガルドマンジェはネージュの曽祖父に当たる人物なのだが、その事実をマサキたちは知らない。ネージュも含めて全員だ。
だからここでガルドマンジェが輪に入るわけにはいかず見守り続けているのだ。
不老不死となり見守り続けた今までのように。
「キミもだよ。ブランシュ」
ハクトシンはブランシュにも声をかけた。
「私もここから見ているだけで十分ですよ」
ブランシュも見守ることに徹する。
ハクトシンがブランシュにも声をかけたのは、ブランシュとマサキの関係を知っているからだ。
この世界とは別の世界――地球での関係を。
でもそれは地球での関係のこと。だからブランシュは見守ることに徹するのである。
ブランシュからの返事を聞いたハクトシンは、妖精族のルーネスとフエベスにも声をかけた。
「キミたちもガルドマンジェとブランシュと同じ意見かな?」
ルーネスとフエベスはビエルネスの姉妹だ。
だから親戚と言っても過言ではない間柄である。
しかしルーネスもビエルネスもハクトシンが言った通り、マサキたちの輪には入らない。
「まだまだ時間はたっぷりとありますからね。タイミングを見てあの柔らかそうな頬を突きに行きますよ」
「私はブーちゃんの近くにいるだけでそれでいいんだけどね。きゃはっ。ブーちゃんがどうしてもって言うなら付いて行くし、どうしてもって言わなくても付いて行くから! きゃはっ! 結局ブーちゃんの行くところならどこへでも付いて行くってことー!」
ルーネスとフエベスにはそれぞれの意見があるが、どちらも結論から言うと、幸せそうにしている家族の邪魔をしたくないのである。
「そうだね。ボクもタイミングを見てあの娘に神の力でも授けに行くよ」
ハクトシンは膝の上に乗っているミニウサギのシロを撫でながら言った。
その発言に、ブランシュ、ガルドマンジェ、ルーネス、フエベスの四人が声を揃えて「え?」と驚く。
声の揃いっぷりは、双子の姉妹デールとドールをも凌ぐほどだ。
さらにはブランシュの内に秘めている加護『月の声』までも四人と同じように「え?」と言いながら驚いていた。
驚く四人の表情を見ながらハクトシンは紅茶を啜る。
そして喉を潤わせた直後、「冗談だよ」と笑いながら言った。
どこからどこまでが冗談なのか、本当に冗談なのか、ハクトシンの表情を見てもわからない。
そして相手の嘘を見抜くことが得意でもある『月の声』ですらハクトシンの本音を見抜けなかったのだ。
もしかしたら本当に神の力をマサキの娘に授けるのかもしれない。
そんな会話をしてる間にマサキたちの方では新たな動きがあった。
「あっ、そうだった!」
「あっ、そうだった!」
「ん? どうした?」
何かを思い出した様子のデールとドールにマサキは小首を傾げる。
「さっき郵便受けを確認したんだけど、こんな招待状が入ってたよー」
「さっき郵便受けを確認したんだけど、こんな招待状が入ってたよー」
「しょ、招待状?」
その招待状なるものをデールとドールの二人が同時に渡してきた。
四つ折りにされた何の変哲もないただの茶色の紙だ。
六年以上もこの世界にいるマサキは、この茶色の紙をタイジュグループ製の紙だとすぐに認識する。
それだけこの世界に馴染んできているということである。
それをマサキは受け取り一枚ずつゆっくりと開いていく。まずはデールから受け取った招待状だ。
「えーっと、五年ぶりの開催のウサギレースで……スペシャルゲストにぴょんぴょんマスク選手とルナ選手を!? って、何で住所がバレてるんだよ! あ、いや、選手登録の時に住所書いたか! スペシャルゲストなんて嫌だ! 絶対に嫌だ! 目立ちたくない! 人前に立つと発作が!」
スペシャルゲストという名誉な招待状のはずが、マサキは頑なに拒んだ。
成長したマサキであっても人前に出ることは、やはり緊張してしまうもの。
そして不安に駆られて当日までの一週間位は、一睡もできなくなってしまうのだ。
それが人間不信で情緒不安定なマサキなのである。
この手紙はデールから受け取った時と同じ状態に戻して、躊躇うことなくジャージのポケットに仕舞った。
直後、今度はドールから受け取った茶色の手紙を開封しようとする。
ウサギレースの手紙よりも随分と立派な手紙。高級感のある手紙だ。
(こ、国王からの手紙!? 黒き英雄殿……あっ、人違いですね)
マサキは内容を全て読むことなく、乱暴にポケットに仕舞った。見なかったことにしたのだ。
(俺はみんなと平凡にスローライフを楽しみたいんだ。国王からの招待なんて絶対に行きたくない)
マサキの決意は揺るがない。
『黒き英雄』になど今さらなりなくないのだ。その気持ちは五年前から変わらないのである。
「何が書いてあったんですか?」
隣に座っているネージュが気になって質問した。
他の家族たちも皆、マサキが見た内容に興味津々の様子だ。
「あ、いや、別に……ただの広告チラシだったわ。あはははっ」
マサキは笑って誤魔化した。
その誤魔化しは家族には通用しないことを知ってても、笑って誤魔化すしかなかったのだ。
それだけのことが国王からの手紙に書かれていたのだから。
(兎人ちゃんと――家族と異世界スローライフを送りたいだけなんだが、どうもうまくいかないな。一難去ってまた一難って感じだわ……でもまあ、夢を追いかけ続けている過程が一番楽しいって言うし。実際今が一番楽しくて幸せってのもあるよな。でもいつかは夢を叶えたいよな。スローライフの夢を。家族も増えたしまだまだ頑張らなきゃな)
家族と異世界スローライフを送るため、夢の三食昼寝付きのスローライフを叶えるため、マサキはこれからも頑張り続けるのだと心に――魂に誓ったのだった。
ヒーローは遅れて登場するもの、という言葉があるが、この世界を救った二人の英雄がまさにそれだ。
戦いの場だけでなくても遅れて登場するのである。
ただ兎人族の元神様アルミラージ・ウェネトの予言の書『白き英雄』の通り、マサキは『黒き英雄』にはなっていない。そのため、マサキのことを英雄と呼ぶのは少し違う。
有名になってしまうと何かと面倒事に巻き込まれ、夢の『三食昼寝付きのスローライフ』を送る障害になると判断したマサキ本人が『黒き英雄』になることを拒んで、いつも通りの生活を求めて身を潜めたのである。
人間不信らしいマサキの判断である。
だから世間は、世界を救った『黒き英雄』が誰なのかはわかっていない。ごく一部の者のみが知る事実だ。
それとは対照的にブランシュは『白き英雄』となった。正真正銘、仮ではない『白き英雄』だ。
これは当初からブランシュ本人が求めていた称号であるため、喜んでこの称号を受け取っていたのである。
ブランシュが『白き英雄』として讃えられれば、『黒き英雄』の存在が影となり薄くなる。
よって『黒き英雄』が誰なのか詮索する者もそこまで現れなかったのである。
これもマサキにとっては都合の良い話だ。
そして幻獣であるルナもまた『黒き英雄』と同じで謎のまま。
これについても予言の書通りである。
『幻獣』という生物が謎のままだということも今まで通り。世間からしたら迷宮のままだ。
そんな世界を救った英雄たちは今、家族に囲まれながらティーパーティーを楽しんでいる。
椅子に座るマサキの膝の上には小さな女の子――マサキの娘がクダモノハサミを美味しそうに頬張っている。
その横にはネージュが座っており、娘の頬についたクリームを拭いてあげていた。
「ここにもクリームが付いてますよ。ここにも、ここにも」
「ありがとーママ!」
感謝を告げたそばからまたクリームを付けてしまうマサキとネージュの娘。
超がつくほどの親バカであるマサキとネージュは、それすらも――一つ一つの行動の全てが幸せだと感じていた。
「飲み物の飲まないとダメッスよ。ニンジンジュースどうぞッス!」
マサキの娘にニンジンジュースを渡したのはダールだ。
量が減ったらすぐに注げるように、ウォーターピッチャーも持っているという用意周到っぷりだ。
「クーが作ったケーキも食べて欲しいぞー!」
特大のホールケーキを持ってきたのはクレールだ。
一人では絶対に食べきれない量だが、全てをマサキの娘に食べてもらいたいと本気で思っている。
「クリームばかりだと体を壊してしまうかもしれないから、果物をどうぞ」
「クリームばかりだと体を壊してしまうかもしれないから、野菜をどうぞ」
双子の姉妹デールとドールが持ってきたのは、新鮮な果物と野菜だ。
打ち合わせをしたかのように声が完璧に揃っている。双子の姉妹のシンクロ率は五年がたった今でも健在。むしろシンクロ率は上がっている。
「それでは私はいつもみたいに楽しい楽しいマスターとの日々をお話ししますねー! 私がマスターに襲われた日のことを……」
「娘に変な話しないでくれる!? あと襲ったことなんて一度もないし!」
瞬時にツッコミを入れるマサキ。ビエルネスはマサキのツッコミに構うことなく話を続けた。
話す際は言葉ではなく、風属性の魔法を使い、紙芝居ならぬ風芝居で読み聞かせていた。
ビエルネスの話の内容はともかく、マサキとビエルネスのやり取りにマサキの娘は笑っていた。
「ンッンッ。ンッンッ」
いつの間にかマサキの娘の膝の上には、チョコレートカラーのもふもふなウサギが声を漏らしながら座っていた。
時折、額を擦り付けたりしてウサギ独特の愛情表現も行ったりもしている。
これをみてわかる通り、マサキの家族全員がマサキの娘を溺愛しているのである。ウサギであるルナを含めて全員だ。
そんな溺愛っぷりを微笑ましく見守るのが、兎人族の神の執事――ガルドマンジェである。
そんなガルドマンジェに向かって兎人族の神――ハクトシンが口を開く。
「キミも混ざればいいじゃないか」
「いいえ。私はこの光景を見ているだけで満足ですから」
ガルドマンジェはネージュの曽祖父に当たる人物なのだが、その事実をマサキたちは知らない。ネージュも含めて全員だ。
だからここでガルドマンジェが輪に入るわけにはいかず見守り続けているのだ。
不老不死となり見守り続けた今までのように。
「キミもだよ。ブランシュ」
ハクトシンはブランシュにも声をかけた。
「私もここから見ているだけで十分ですよ」
ブランシュも見守ることに徹する。
ハクトシンがブランシュにも声をかけたのは、ブランシュとマサキの関係を知っているからだ。
この世界とは別の世界――地球での関係を。
でもそれは地球での関係のこと。だからブランシュは見守ることに徹するのである。
ブランシュからの返事を聞いたハクトシンは、妖精族のルーネスとフエベスにも声をかけた。
「キミたちもガルドマンジェとブランシュと同じ意見かな?」
ルーネスとフエベスはビエルネスの姉妹だ。
だから親戚と言っても過言ではない間柄である。
しかしルーネスもビエルネスもハクトシンが言った通り、マサキたちの輪には入らない。
「まだまだ時間はたっぷりとありますからね。タイミングを見てあの柔らかそうな頬を突きに行きますよ」
「私はブーちゃんの近くにいるだけでそれでいいんだけどね。きゃはっ。ブーちゃんがどうしてもって言うなら付いて行くし、どうしてもって言わなくても付いて行くから! きゃはっ! 結局ブーちゃんの行くところならどこへでも付いて行くってことー!」
ルーネスとフエベスにはそれぞれの意見があるが、どちらも結論から言うと、幸せそうにしている家族の邪魔をしたくないのである。
「そうだね。ボクもタイミングを見てあの娘に神の力でも授けに行くよ」
ハクトシンは膝の上に乗っているミニウサギのシロを撫でながら言った。
その発言に、ブランシュ、ガルドマンジェ、ルーネス、フエベスの四人が声を揃えて「え?」と驚く。
声の揃いっぷりは、双子の姉妹デールとドールをも凌ぐほどだ。
さらにはブランシュの内に秘めている加護『月の声』までも四人と同じように「え?」と言いながら驚いていた。
驚く四人の表情を見ながらハクトシンは紅茶を啜る。
そして喉を潤わせた直後、「冗談だよ」と笑いながら言った。
どこからどこまでが冗談なのか、本当に冗談なのか、ハクトシンの表情を見てもわからない。
そして相手の嘘を見抜くことが得意でもある『月の声』ですらハクトシンの本音を見抜けなかったのだ。
もしかしたら本当に神の力をマサキの娘に授けるのかもしれない。
そんな会話をしてる間にマサキたちの方では新たな動きがあった。
「あっ、そうだった!」
「あっ、そうだった!」
「ん? どうした?」
何かを思い出した様子のデールとドールにマサキは小首を傾げる。
「さっき郵便受けを確認したんだけど、こんな招待状が入ってたよー」
「さっき郵便受けを確認したんだけど、こんな招待状が入ってたよー」
「しょ、招待状?」
その招待状なるものをデールとドールの二人が同時に渡してきた。
四つ折りにされた何の変哲もないただの茶色の紙だ。
六年以上もこの世界にいるマサキは、この茶色の紙をタイジュグループ製の紙だとすぐに認識する。
それだけこの世界に馴染んできているということである。
それをマサキは受け取り一枚ずつゆっくりと開いていく。まずはデールから受け取った招待状だ。
「えーっと、五年ぶりの開催のウサギレースで……スペシャルゲストにぴょんぴょんマスク選手とルナ選手を!? って、何で住所がバレてるんだよ! あ、いや、選手登録の時に住所書いたか! スペシャルゲストなんて嫌だ! 絶対に嫌だ! 目立ちたくない! 人前に立つと発作が!」
スペシャルゲストという名誉な招待状のはずが、マサキは頑なに拒んだ。
成長したマサキであっても人前に出ることは、やはり緊張してしまうもの。
そして不安に駆られて当日までの一週間位は、一睡もできなくなってしまうのだ。
それが人間不信で情緒不安定なマサキなのである。
この手紙はデールから受け取った時と同じ状態に戻して、躊躇うことなくジャージのポケットに仕舞った。
直後、今度はドールから受け取った茶色の手紙を開封しようとする。
ウサギレースの手紙よりも随分と立派な手紙。高級感のある手紙だ。
(こ、国王からの手紙!? 黒き英雄殿……あっ、人違いですね)
マサキは内容を全て読むことなく、乱暴にポケットに仕舞った。見なかったことにしたのだ。
(俺はみんなと平凡にスローライフを楽しみたいんだ。国王からの招待なんて絶対に行きたくない)
マサキの決意は揺るがない。
『黒き英雄』になど今さらなりなくないのだ。その気持ちは五年前から変わらないのである。
「何が書いてあったんですか?」
隣に座っているネージュが気になって質問した。
他の家族たちも皆、マサキが見た内容に興味津々の様子だ。
「あ、いや、別に……ただの広告チラシだったわ。あはははっ」
マサキは笑って誤魔化した。
その誤魔化しは家族には通用しないことを知ってても、笑って誤魔化すしかなかったのだ。
それだけのことが国王からの手紙に書かれていたのだから。
(兎人ちゃんと――家族と異世界スローライフを送りたいだけなんだが、どうもうまくいかないな。一難去ってまた一難って感じだわ……でもまあ、夢を追いかけ続けている過程が一番楽しいって言うし。実際今が一番楽しくて幸せってのもあるよな。でもいつかは夢を叶えたいよな。スローライフの夢を。家族も増えたしまだまだ頑張らなきゃな)
家族と異世界スローライフを送るため、夢の三食昼寝付きのスローライフを叶えるため、マサキはこれからも頑張り続けるのだと心に――魂に誓ったのだった。
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人間不信のマサキくんと、恥ずかしがり屋の兎人・ネージュちゃんの心温まる交流を、コミカルかつ丁寧に描かれてますね。
読んでてホッコリできる作品です。
二人でビクビクしてる場面や、二人の距離感がバグってる場面など見所が満載ですね🌟
マフマフ♡
初コメントありがとうございます!!!
そうなんですよ!的確なコメントすばらしいです!
二人の距離感がバグってるところとガクガクブルブル震えてるところ自分もお気に入りなんですよー!!