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第3章:成長『温泉旅行編』
146 金縛り霊?
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マサキたちは布団を準備し、それぞれがそれぞれの布団の上で横一列に並んでいる。
マサキ、ネージュ、クレール、デール、ドール、ダールの順番だ。そしてデールとドールの間にイングリッシュロップイヤーのルナがいてデールとドールにもふもふされている状態である。
ここまではマサキとネージュの家に泊まりに来た時と同じような構図になっている。さらにここから妖精族のビエルネスが加わる。
マサキの頭の上で寝ていたビエルネスはすでに布団の上だ。それもマサキがネージュとクレールの間に位置する枕元に予め布団を用意しておき、そこにビエルネスを置いたのである。
電気を消していざ就寝。という時に事件は起きた。
トランプで遊んでいる際に一度も目を覚まさなかったビエルネスがこのタイミングで目を覚まし目が冴えてしまい眠れなくなってしまったのだ。
マサキが頭の上からビエルネスを起こさないように移動させていたのだが、その際に意識が徐々に覚醒していったのである。
(な、なんでマスターの枕元じゃないんですか……私は兎人様の隣よりもマスターの隣で寝たいというのに……)
暗闇でも見える薄水色の瞳で辺りを確認するビエルネス。実際、間接照明と月明かりが照らしているのでマサキたちがいる部屋は真っ暗ではない。けれど薄暗く視界がぼんやりするほどだ。
それくらいの暗さなら妖精族の薄水色の瞳ではバッチリと視界に映し判別することができる。
そこでビエルネスはマサキの顔をじっくりと見ながら考え始めた。
(ここでマスターを襲ってもいいのですよ。マスターとの初めての夜ですし……照れ屋なマスターから仕掛けてくることはないですから私から仕掛けないと……でもですね。最近私はある事に興味があるのです)
ニヤニヤと悪巧みを企む時の顔になるビエルネス。
(そう。私の興味をそそるのは……『NTR』です! 私はマスターと肉体関係を持つことを願ってます。しかしながらまだそれは実現していない。だからこそ……実現していないからこそ『NTR』は本領を発揮するのです。このマスターとあんなことやこんなことをしたい抑えられない気持ち……この気持ちが強ければ強いほど興奮するのですよ……ハァハァ……)
頭の中だけではなく実際に興奮した顔をするビエルネス。誰にも悟られないようにと荒くなる息は抑えているが表情だけはどうしてもコントロールができていない。
(今夜、私は私の興奮を極上のものにするために……『NTR作戦』を決行する! ハァハァ……そのためにあの魔法も準備してきましたからね。ハァハァ……)
楽しみなのだろう。これから起きる事を想像しながらヨダレを垂らしている。
そんなビエルネスをじーっと見ている者がいる。間接照明と月明かりだけの薄暗い部屋の中じーっと見ているその人物は――
「ンッンッ」
ルナだ。ルナの漆黒の瞳には興奮しているビエルネスが映っている。そして時計の秒針がチクタクと動く音よりも小さな音で声を漏らしていた。
(ウ、ウサギ様……なんだろう。じーっと見てますけど、見えているのでしょうか? 確か、ウサギは人間族よりも光に対する感度が八倍とかそこらへんでしたね。だとしたらこのくらいの薄暗さならきっとハッキリとまではいきませんが見えている可能性がありますね)
漆黒の瞳と薄水色の瞳が交差する中、ビエルネスの思考が巡る。何を考えているのかわからない無表情のルナに対して余計に思考が巡るのである。
しかしながらその思考も一旦ここまで。ルナはデールとドールに引っ張られて布団の中へと潜り込んだ。
「ん~ルナちゃん……うしゃうしゃ……」
「ん~ルナちゃん……うしゃうしゃ……」
二人同時に寝言を溢す双子の姉妹デールとドール。温泉でのぼせてしまった際に部屋で睡眠を取っていたので寝れないかと心配していたマサキたちだったが、その心配はいらなかった。さすが子供。よく寝るのである。
そんな双子の姉妹の寝言を聞いたダールは安心からか、体の力がスッと抜けて今よりもさらに深い眠りへと誘われていく。
ダールは、己が持つ『俊足スキル』を完全にコントロールできていないので、このメンバーの中では一番によく眠る人物でもある。
そしてクレールも瞳を閉じダールたちと同じように眠りに誘われている。
先ほども説明にあったデールとドールと同じようにクレールも昼寝をしていた。けれどクレールも子供といえば子供だ。デールとドールほどではないが子供なのだ。
さらに成長期真っ只中。クレールもクレールでよく眠る兎人族の美少女なのである。
「ハフーハフー」
いまだに眠りに誘われていないのはマサキとネージュとビエルネスだけだろう。
ビエルネスは目を覚まし目が冴えてしまったからだが、マサキとネージュは違う。昼寝もしていないし心身ともに疲労しているはずなのだが、なかなか寝付けないのである。
それもそのはず。なぜなら――
(自分の家じゃないと寝れねー!)
(旅館だと寝れないですー!)
自分の家ではない旅行先の旅館では寝れない体質なのである。
精神不安定に陥ることが多い二人だ。用意された客室とはいえ見知らぬ場所。何が起きるかわからない不安と緊張、そして恐怖で寝付けないのである。
全員一緒という安心感はあるが薄暗い中、自分だけの世界に入り込んでしまうと不安と緊張と恐怖がより一層深く感じてしまうものだ。なんとも不憫な体質なのだろう。
(端っこで寝るってのも怖いし……かといってネージュに抱きつくのもあれだしな。それにルナちゃんをデールとドールから取り上げて俺の抱き枕にするのも気が進まない……どうするかな……明日のためとか自分で言ってたくせに、言ってた張本人が寝れないだなんて話にならないからな。とりあえずもう少しだけ頑張ってみるか)
マサキは再び睡眠に挑戦をする。意識を深い深い闇の部分へと持っていきゆっくりと深呼吸をする。そのまま何も考えないように努力をする。そう。何も考えないという事を考えながら。
隣で睡眠に挑戦中のネージュも同じ気持ちだ。
(どうしましょう寝れません。どうしましょうどうしましょうどうしましょうどうしましょう。あれ? 寝るってどうするんでしたっけ? 寝るためには何をしたらいいんでしたっけ? 寝てる時ってなんで意識がないんですか……とても怖いじゃないですか……死んだ時も同じなんですかね……死んだらお月様に逝くのはわかりますが、意識はあるんですかね? 魂だけ? そもそも寝てる時の意識はどこにあるんですかね……どうしましょうどうしましょうどうしましょうどうしましょう。全く寝れないです……)
むしろネージュの方がマサキよりも酷かった。
旅行先では普段考えないような事を考えてしまうもの。それを今ネージュが実際に体感している。あまりにもスケールが広すぎる不安でネージュはますます眠れない状態になっている。
そんな時だった。
(なんか光りました?)
瞳を閉じていても目蓋に感じるくらいの光が刹那の一瞬強く光ったのである。
その光を感じたネージュは反射的に瞳を開く。青く澄んだ瞳の瞳孔が薄暗い部屋に合わせ大きさを変える。
光の発生源から背を向けていたマサキには感じることもできなかった光だ。なのでマサキの思考は先ほどと同じく何も考えないという事を考え続けている。
(…………何も考えない…………無…………零…………何も考えない…………何も考えない…………何も…………何も…………)
眠ることに苦戦中のマサキの体が突然重くなる。
(うぐ……な、なんだ? 何か乗ってる? 何かって何? いや、何かわからないから何かなんだよな……というかなんだ? だ、ダメだ……こ、怖すぎて目を開けられない……金縛り霊とか座敷童子とかか? りょ、旅館だもんな……こっちの世界にもそういう幽霊いるよな……てか怖すぎるだろ……や、やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい)
マサキが感じている重みが動き出す。明らかに何かがいるとわかるほどに。
(なになになになになに? なんで動いてんだよ。怖すぎるだろ。よりによってなんで俺は起きてるんだ……やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい……これって幽霊が俺の布団の中に入ってるってこと? 何もしない方がいい感じ? 叫びたい叫びたい。というか目を開けたい……ここから逃げたい。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖すぎる……ネ、ネージュたちは大丈夫か? 何も声が聞こえないってことは俺にだけ幽霊が? い、いや待てよ…………ルナちゃんの可能性も……)
体にのしかかる重みの原因がイングリッシュロップイヤーのルナではないかと考え始める。一番有り得る存在と可能性だ。しかしすぐにその可能性はゼロに等しいとわかる。
(ルナちゃんはこんなに大きくない。もっと軽いしもっともふもふだ……考えれば考えるほど怖い……というかいつまで俺の上に……やっぱり金縛りの類か。動けないってのもそういうことだろう……)
マサキは体にのしかかる重みの原因を金縛りだと確信した。その瞬間、体に力が入る。動けないと分かった以上、緊急事態に備えて動こうと力を入れたのだ。
(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!温泉旅館での金縛り怖すぎる!)
全身に力が入ったマサキは突然、体が動いた。横向きで寝ていた状態からうつ伏せになったのである。仰向けよりもうつ伏せの方が逃げやすいと無意識に判断したのだろう。
うつ伏せになった瞬間、背中に違和感を感じた。幽霊の重みに対する違和感ではない。幽霊とは無縁の違和感だ。
(ぷ、ぷに……ぷに……って……)
マサキの背中にはスライムのようなぷにぷにとした柔らかい重みを感じた。そして締め付けられるような苦しい思いを味わう。
(く、苦しい……お、押し潰される……金縛り霊に押し潰される……)
ギュッと体を締め付けられて余計に身動きが取れなくなる。うつ伏せの状態から匍匐前進や四足歩行で逃げたくても締め付けられているせいで逃げることができない。
(だ、ダメだ……こ、声も出ない……に、逃げられない……く、苦しい……し、死ぬ……金縛り霊に殺される……)
絶体絶命。布団の中のマサキは逃げることも命乞いをすることもできない。ただただ金縛り霊のいつまで続くかわからない拘束に耐え続けるしかなかったのだった。
その影にはクスクスと笑う小さな影があったのだった。
マサキ、ネージュ、クレール、デール、ドール、ダールの順番だ。そしてデールとドールの間にイングリッシュロップイヤーのルナがいてデールとドールにもふもふされている状態である。
ここまではマサキとネージュの家に泊まりに来た時と同じような構図になっている。さらにここから妖精族のビエルネスが加わる。
マサキの頭の上で寝ていたビエルネスはすでに布団の上だ。それもマサキがネージュとクレールの間に位置する枕元に予め布団を用意しておき、そこにビエルネスを置いたのである。
電気を消していざ就寝。という時に事件は起きた。
トランプで遊んでいる際に一度も目を覚まさなかったビエルネスがこのタイミングで目を覚まし目が冴えてしまい眠れなくなってしまったのだ。
マサキが頭の上からビエルネスを起こさないように移動させていたのだが、その際に意識が徐々に覚醒していったのである。
(な、なんでマスターの枕元じゃないんですか……私は兎人様の隣よりもマスターの隣で寝たいというのに……)
暗闇でも見える薄水色の瞳で辺りを確認するビエルネス。実際、間接照明と月明かりが照らしているのでマサキたちがいる部屋は真っ暗ではない。けれど薄暗く視界がぼんやりするほどだ。
それくらいの暗さなら妖精族の薄水色の瞳ではバッチリと視界に映し判別することができる。
そこでビエルネスはマサキの顔をじっくりと見ながら考え始めた。
(ここでマスターを襲ってもいいのですよ。マスターとの初めての夜ですし……照れ屋なマスターから仕掛けてくることはないですから私から仕掛けないと……でもですね。最近私はある事に興味があるのです)
ニヤニヤと悪巧みを企む時の顔になるビエルネス。
(そう。私の興味をそそるのは……『NTR』です! 私はマスターと肉体関係を持つことを願ってます。しかしながらまだそれは実現していない。だからこそ……実現していないからこそ『NTR』は本領を発揮するのです。このマスターとあんなことやこんなことをしたい抑えられない気持ち……この気持ちが強ければ強いほど興奮するのですよ……ハァハァ……)
頭の中だけではなく実際に興奮した顔をするビエルネス。誰にも悟られないようにと荒くなる息は抑えているが表情だけはどうしてもコントロールができていない。
(今夜、私は私の興奮を極上のものにするために……『NTR作戦』を決行する! ハァハァ……そのためにあの魔法も準備してきましたからね。ハァハァ……)
楽しみなのだろう。これから起きる事を想像しながらヨダレを垂らしている。
そんなビエルネスをじーっと見ている者がいる。間接照明と月明かりだけの薄暗い部屋の中じーっと見ているその人物は――
「ンッンッ」
ルナだ。ルナの漆黒の瞳には興奮しているビエルネスが映っている。そして時計の秒針がチクタクと動く音よりも小さな音で声を漏らしていた。
(ウ、ウサギ様……なんだろう。じーっと見てますけど、見えているのでしょうか? 確か、ウサギは人間族よりも光に対する感度が八倍とかそこらへんでしたね。だとしたらこのくらいの薄暗さならきっとハッキリとまではいきませんが見えている可能性がありますね)
漆黒の瞳と薄水色の瞳が交差する中、ビエルネスの思考が巡る。何を考えているのかわからない無表情のルナに対して余計に思考が巡るのである。
しかしながらその思考も一旦ここまで。ルナはデールとドールに引っ張られて布団の中へと潜り込んだ。
「ん~ルナちゃん……うしゃうしゃ……」
「ん~ルナちゃん……うしゃうしゃ……」
二人同時に寝言を溢す双子の姉妹デールとドール。温泉でのぼせてしまった際に部屋で睡眠を取っていたので寝れないかと心配していたマサキたちだったが、その心配はいらなかった。さすが子供。よく寝るのである。
そんな双子の姉妹の寝言を聞いたダールは安心からか、体の力がスッと抜けて今よりもさらに深い眠りへと誘われていく。
ダールは、己が持つ『俊足スキル』を完全にコントロールできていないので、このメンバーの中では一番によく眠る人物でもある。
そしてクレールも瞳を閉じダールたちと同じように眠りに誘われている。
先ほども説明にあったデールとドールと同じようにクレールも昼寝をしていた。けれどクレールも子供といえば子供だ。デールとドールほどではないが子供なのだ。
さらに成長期真っ只中。クレールもクレールでよく眠る兎人族の美少女なのである。
「ハフーハフー」
いまだに眠りに誘われていないのはマサキとネージュとビエルネスだけだろう。
ビエルネスは目を覚まし目が冴えてしまったからだが、マサキとネージュは違う。昼寝もしていないし心身ともに疲労しているはずなのだが、なかなか寝付けないのである。
それもそのはず。なぜなら――
(自分の家じゃないと寝れねー!)
(旅館だと寝れないですー!)
自分の家ではない旅行先の旅館では寝れない体質なのである。
精神不安定に陥ることが多い二人だ。用意された客室とはいえ見知らぬ場所。何が起きるかわからない不安と緊張、そして恐怖で寝付けないのである。
全員一緒という安心感はあるが薄暗い中、自分だけの世界に入り込んでしまうと不安と緊張と恐怖がより一層深く感じてしまうものだ。なんとも不憫な体質なのだろう。
(端っこで寝るってのも怖いし……かといってネージュに抱きつくのもあれだしな。それにルナちゃんをデールとドールから取り上げて俺の抱き枕にするのも気が進まない……どうするかな……明日のためとか自分で言ってたくせに、言ってた張本人が寝れないだなんて話にならないからな。とりあえずもう少しだけ頑張ってみるか)
マサキは再び睡眠に挑戦をする。意識を深い深い闇の部分へと持っていきゆっくりと深呼吸をする。そのまま何も考えないように努力をする。そう。何も考えないという事を考えながら。
隣で睡眠に挑戦中のネージュも同じ気持ちだ。
(どうしましょう寝れません。どうしましょうどうしましょうどうしましょうどうしましょう。あれ? 寝るってどうするんでしたっけ? 寝るためには何をしたらいいんでしたっけ? 寝てる時ってなんで意識がないんですか……とても怖いじゃないですか……死んだ時も同じなんですかね……死んだらお月様に逝くのはわかりますが、意識はあるんですかね? 魂だけ? そもそも寝てる時の意識はどこにあるんですかね……どうしましょうどうしましょうどうしましょうどうしましょう。全く寝れないです……)
むしろネージュの方がマサキよりも酷かった。
旅行先では普段考えないような事を考えてしまうもの。それを今ネージュが実際に体感している。あまりにもスケールが広すぎる不安でネージュはますます眠れない状態になっている。
そんな時だった。
(なんか光りました?)
瞳を閉じていても目蓋に感じるくらいの光が刹那の一瞬強く光ったのである。
その光を感じたネージュは反射的に瞳を開く。青く澄んだ瞳の瞳孔が薄暗い部屋に合わせ大きさを変える。
光の発生源から背を向けていたマサキには感じることもできなかった光だ。なのでマサキの思考は先ほどと同じく何も考えないという事を考え続けている。
(…………何も考えない…………無…………零…………何も考えない…………何も考えない…………何も…………何も…………)
眠ることに苦戦中のマサキの体が突然重くなる。
(うぐ……な、なんだ? 何か乗ってる? 何かって何? いや、何かわからないから何かなんだよな……というかなんだ? だ、ダメだ……こ、怖すぎて目を開けられない……金縛り霊とか座敷童子とかか? りょ、旅館だもんな……こっちの世界にもそういう幽霊いるよな……てか怖すぎるだろ……や、やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい)
マサキが感じている重みが動き出す。明らかに何かがいるとわかるほどに。
(なになになになになに? なんで動いてんだよ。怖すぎるだろ。よりによってなんで俺は起きてるんだ……やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい……これって幽霊が俺の布団の中に入ってるってこと? 何もしない方がいい感じ? 叫びたい叫びたい。というか目を開けたい……ここから逃げたい。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖すぎる……ネ、ネージュたちは大丈夫か? 何も声が聞こえないってことは俺にだけ幽霊が? い、いや待てよ…………ルナちゃんの可能性も……)
体にのしかかる重みの原因がイングリッシュロップイヤーのルナではないかと考え始める。一番有り得る存在と可能性だ。しかしすぐにその可能性はゼロに等しいとわかる。
(ルナちゃんはこんなに大きくない。もっと軽いしもっともふもふだ……考えれば考えるほど怖い……というかいつまで俺の上に……やっぱり金縛りの類か。動けないってのもそういうことだろう……)
マサキは体にのしかかる重みの原因を金縛りだと確信した。その瞬間、体に力が入る。動けないと分かった以上、緊急事態に備えて動こうと力を入れたのだ。
(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!温泉旅館での金縛り怖すぎる!)
全身に力が入ったマサキは突然、体が動いた。横向きで寝ていた状態からうつ伏せになったのである。仰向けよりもうつ伏せの方が逃げやすいと無意識に判断したのだろう。
うつ伏せになった瞬間、背中に違和感を感じた。幽霊の重みに対する違和感ではない。幽霊とは無縁の違和感だ。
(ぷ、ぷに……ぷに……って……)
マサキの背中にはスライムのようなぷにぷにとした柔らかい重みを感じた。そして締め付けられるような苦しい思いを味わう。
(く、苦しい……お、押し潰される……金縛り霊に押し潰される……)
ギュッと体を締め付けられて余計に身動きが取れなくなる。うつ伏せの状態から匍匐前進や四足歩行で逃げたくても締め付けられているせいで逃げることができない。
(だ、ダメだ……こ、声も出ない……に、逃げられない……く、苦しい……し、死ぬ……金縛り霊に殺される……)
絶体絶命。布団の中のマサキは逃げることも命乞いをすることもできない。ただただ金縛り霊のいつまで続くかわからない拘束に耐え続けるしかなかったのだった。
その影にはクスクスと笑う小さな影があったのだった。
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