99 / 417
第3章:成長『食品展示会編』
99 案内役
しおりを挟む
ネージュは無人販売所イースターパーティーの代表として食品展示会に参加するための受付を済ませた。
「これで終わりですね」
受付は単純なものでギルドカードと招待状の提示。そしてサインを書くだけの作業だった。
「ではではこれで受付は終了になりまーす」
「この参加証を首からかけて入場くださいねー」
「今から私たちがかけますのでそのままお待ちくださーい」
薄緑色の髪の妖精サバドとリンゴは参加証を一つずつ持ちながら飛んだ。そしてサバドはネージュに、リンゴはダールに参加証を首からかける。
再び参加証を取りに下降する二匹の妖精。参加証を持つとリンゴが先にマサキの元へと飛んだ。
「ウ、ウサギ様がいて……か、かけれない……」
「ンッンッ」
「ちょっとだけ退いてくれるかな? ウサギ様」
「ンッンッ」
「ん~、退いてくれないんですね」
「ンッンッ」
「こうなったら退かすしか~」
「ンッンッ」
「も、もふもふだぁ~。もふもふに埋もれちゃう~」
会話が成立しているようで成立していない。ルナはただ声を漏らしているだけなのである。
そんなもふもふに埋もれて困っているリンゴを助けるべくマサキは空いている左手だけでルナの顔を少しだけ持ち上げた。
ルナの顔を持ち上げた反動でルナの大きなウサ耳がマサキの顔に当たる。そしてふさふさもふもふのうさ耳毛がマサキの顔をくすぐる。
「い、今のうちに参加証をかけてくれー!」
「わ、わかりました!」
「早く、早く! ルナちゃんのウサ耳が顔に当たってくすぐったい」
「今かけますよー。お待ちくださーい」
リンゴは素早くマサキの首に参加証をかけた。
参加証がかかったことに気づいたマサキはルナを元の位置に戻す。ルナの顎と前足がマサキの頭の上に乗った。そこがルナの定位置だ。
そしてむずむずとした顔を開いた左手で掻き快感を味わった。
「気持ちいい~」
マサキが顔を掻いて快感を味わっている中、もう一匹の妖精サバドが参加証を持って飛びながら困っていた。
無人販売所イースターパーティーのもう一人の参加者クレールを探しているのだ。
「一、二、三。あれ? もう一人の方はどちらに?」
妖精だからといっても透明スキルの効果で透明になっているクレールを認識できないのである。
そんな困り状態のサバドにネージュが声をかけた。
「そこにいると思いますよ。ゆっくりとかけてみてください」
「え? そこって……ここ?」
「はい。もう少し低めがいいと思いますよ。騙されたと思ってかけてみてください」
「わ、わかりました。やってみます」
サバドはネージュに言われた通り何もない空間に参加証をかけ始める。
するとサバドは何かに当たる感覚を味わった。
「な、何かある!?」
それは透明状態のクレールだ。
透明スキルは姿が見えなくなるのはもちろんのこと、気配や声も消える特殊なスキルだ。
しかし触れることは可能。なのでサバドが触れたのはクレールの頭なのである。
「ぬぅーん。もう少しこっちだよー」
「わぁ! 勝手にヒモが!」
クレールはサバドの手伝いをするために参加証のヒモを広げた。そして見えていないサバドに合わせながら自分の首に参加証をかけた。
「す、すごいです。参加証が浮いてます……」
「わーすごーい。こんな参加者始めて!」
「う、動いたー! 本当に誰かいるんですねー」
「すごいすごーい」
サバドとリンゴは浮いている参加証の周りをブンブンと飛び回りながら感動していた。
これで参加者四人の首に参加証がかけられたことになる。
「もう中に入ってもいいんだよね?」
「はい。もちろんですよ! 案内などは必要でしょうかー?」
サバドとリンゴは薄水色の瞳をキラキラと輝かせながらマサキのことを見つめ始めた。
案内役になって一緒に行動したいのだろう。
「あ、案内? えーっとゆっくり自分たちのペースで回ろうと思ってるから……そ、その……」
マサキが案内役を断ろうとした時、サバドとリンゴは先ほどよりもさらに薄水色の瞳をキラキラと輝かせて始めた。マサキの目の前で上目遣いをしながら媚びている。
そんな瞳をされてしまえばマサキは断れなくなってしまう。
「えーっと、案内役か……ネージュはどう? 案内役つけてみるか?」
「ええ。もちろんですよ。可愛らしい妖精さんと一緒に周れるのは嬉しいです」
「おお、意外な回答だな。魔法が効いてきたってことなのかな」
「そ、そうですかね? 自分だとよくわかりませんけど、マサキさんも妖精さんと普通に会話してますよ」
「た、確かにそうだな。自分ではわからないもんだな。魔法ってすげーや。ルーネスさんには感謝しないと」
マサキとネージュは平常心を保ちながら妖精たちと普通に会話をしていることをありがたく思った。そして魔法をかけてくれたルーネスに心の中で感謝をした。
そんな時、マサキの目の前でぷかぷかと浮かんでいる妖精のサバドが口を開いた。
「あ、あの……案内役は……どうしますか?」
「そ、そうだった!」
話が脱線してしまうほどマサキたちはリラックスしていたということだ。
「ダールは案内役つけてもOK?」
「アタシは全然問題ないッスよ。むしろついてくれた方がアタシの負担も減るので嬉しいッス!」
「た、確かにそうだな。クレールはどうだ?」
透明状態のクレールは参加証をブンブンと振り回して返事をした。おそらくOKのサインなのだろう。
「よし。決まりだな。それじゃあ案内役をお願いするよ1」
「やったー!」
サバドとリンゴは嬉しさのあまり抱き合いながら竜巻のように回り上昇を始めた。
その喜ぶ姿を見てからマサキは口を開いた。
「えーっと、二人で案内してくれる感じなの?」
「もちろんですよー」
「もちろんですー!」
マサキの質問に竜巻のように回っている二匹の妖精が同時に答えた。
「そ、それじゃあ受付はどうすんの? まだまだ客は来るだろ?」
マサキは受付の担当がいなくなることを心配しているのだ。
他人の心配をするほど心の余裕というものが現れている証拠だ。
「それは問題ありませんよ」
「別の妖精が来ますからー!」
「それじゃー」
「早速だけどー」
「案内を始めますよー」
「行きましょー行きましょー」
息の合った会話。さすが姉妹と言ったところだ。
竜巻のように飛ぶのをやめたサバドとリンゴはマサキたちを案内するために先頭を飛び始めた。
(ぐいぐい行くじゃんか。すげーテンション高いな。というか本当に他の妖精が来た。どこかで見てたのかな? いやいや妖精だから魔法とかで通じてんだろうな。念波とかそういう類のやつかな? まあなんでもいいか。この二匹の案内に従おう……)
食品展示会にやってきたマサキたちよりもテンションが上がっているのは、無人販売所という未知の販売店を考えたマサキたちに興味が湧いているのである。
先に会場に入っていった案内役の妖精を追いかけるマサキとネージュの足取りは遅い。緊張しているのだ。
「なんか緊張してきた……魔法のおかげでいつもよりはマシなんだけどそれでも緊張する……」
「わ、私も緊張してきましたよ。も、もしかして魔法の効果が切れちゃったってことはないですよね」
「さすがに切れてないだろ。半日くらい持続するって言ってたし、切れたら俺たちガタガタ震え上がってるはずだからな」
「そ、そうですよね」
「せっかくだし緊張しながらでも楽しもうぜ。魔法の力を存分に利用してな」
「はい! それがいいですね! こんな機会ありませんしね! 楽しみましょう!」
マサキとネージュは慣れない環境に緊張しながらもルーネスがかけた魔法の影響で精神的に安定し食品展示会に挑むことができるのだ。
ネガティブ思考もいつもよりは少ない。どちらかと言えばポジティブ思考の割合の方が多い。
マサキたちが追いつくとサバドとリンゴの二匹の案内役の妖精が口を開いた。
「まずは順路通りに進みますよ」
「気になる店舗があればお気軽に仰ってくださいねー」
「交渉などのお手伝いもしますよー」
「試食も試飲も出来ますので遠慮せずにどうぞ~」
案内役らしくなってきたサバドとリンゴ。そんな二匹の妖精について行きながら店舗と店舗の通路を歩く。
出店している店舗は屋台のような感じでテントを張っている。そこにテーブルが一つ出されていてそのテーブルの上に商品が置かれているという感じだ。
食品展示会というだけあって様々な料理が並んでいる。さらには使い捨ての食器や高級なグラスまで料理や食品に関係する様々な商品までも店舗別に置かれているのである。
左右に店舗があるということでマサキたちの足取りは遅い。そして気になる試食品にも手が伸びるので余計に足取りは遅くなる。さらにはパフォーマンスをする店舗もあるので見入ってしまう。
それが食品展示会の楽しみ方でもあるので足取りは遅くても構わないのである。
「ところでどっちが無人販売所を思いついたのー?」
「それとどっちがイースターパーティーって楽しそうな店舗名をつけたのー?」
「教えてー教えてー」
先ほど答えることができなかった質問が再び始まった。
魔法にかかっている今ならマサキたちは答えることができる。なのでネージュは可愛らしい二匹の妖精に向かって答えを言った。
「無人販売所も店名もマサキさんが考えましたよ! すごい発想ですよね!」
「私が正解だー! やったー!」
「へーどっちもマサキ様が考えたんですねー。すごーい!」
正解したサバドは大喜びで飛び回った。不正解だったリンゴはサバドのことなど気にすることもなくマサキを称賛する。
「でもどうやって思いついたの? 無人で販売するなんて思いついても普通出来ないよ!」
「あー、それは……企業秘密ってやつだ!」
「えーずるいよー! 教えてよー」
キラキラと薄水色の瞳を輝かせるリンゴ。
そんなリンゴの瞳に怯みそうになるもマサキは答えることはせず企業秘密だと言い切った。
「企業秘密は企業秘密!」
「わ、わかりました。企業秘密なら仕方ないなー」
(あれ? 意外とすんなりと諦めてくれてた。これもルーネスさんのおかげか? 地元の知識とかって言ってもよかったんだが、俺はこの世界に詳しくないしすぐに嘘だってバレるだろうからな。それに異世界から来たって正直に話したらそれはそれで面倒なことになりそうだし。というかネージュたちにもそのことは話してないから話せるはずもない……)
安堵するマサキの鼻腔に香ばしい香りが誘惑してきた。マサキはすぐに誘惑してきたニオイの方を見る。
マサキの黒瞳に映ったのは『ソーセージ』の店舗だった。
マサキの視線に気付いたサバドは案内を始めた。
「まずはこちらから見ていきましょうー!」
マサキたちはソーセージの香ばしい香りに手招きされながら、ソーセージの店舗に吸い込まれていった。
「これで終わりですね」
受付は単純なものでギルドカードと招待状の提示。そしてサインを書くだけの作業だった。
「ではではこれで受付は終了になりまーす」
「この参加証を首からかけて入場くださいねー」
「今から私たちがかけますのでそのままお待ちくださーい」
薄緑色の髪の妖精サバドとリンゴは参加証を一つずつ持ちながら飛んだ。そしてサバドはネージュに、リンゴはダールに参加証を首からかける。
再び参加証を取りに下降する二匹の妖精。参加証を持つとリンゴが先にマサキの元へと飛んだ。
「ウ、ウサギ様がいて……か、かけれない……」
「ンッンッ」
「ちょっとだけ退いてくれるかな? ウサギ様」
「ンッンッ」
「ん~、退いてくれないんですね」
「ンッンッ」
「こうなったら退かすしか~」
「ンッンッ」
「も、もふもふだぁ~。もふもふに埋もれちゃう~」
会話が成立しているようで成立していない。ルナはただ声を漏らしているだけなのである。
そんなもふもふに埋もれて困っているリンゴを助けるべくマサキは空いている左手だけでルナの顔を少しだけ持ち上げた。
ルナの顔を持ち上げた反動でルナの大きなウサ耳がマサキの顔に当たる。そしてふさふさもふもふのうさ耳毛がマサキの顔をくすぐる。
「い、今のうちに参加証をかけてくれー!」
「わ、わかりました!」
「早く、早く! ルナちゃんのウサ耳が顔に当たってくすぐったい」
「今かけますよー。お待ちくださーい」
リンゴは素早くマサキの首に参加証をかけた。
参加証がかかったことに気づいたマサキはルナを元の位置に戻す。ルナの顎と前足がマサキの頭の上に乗った。そこがルナの定位置だ。
そしてむずむずとした顔を開いた左手で掻き快感を味わった。
「気持ちいい~」
マサキが顔を掻いて快感を味わっている中、もう一匹の妖精サバドが参加証を持って飛びながら困っていた。
無人販売所イースターパーティーのもう一人の参加者クレールを探しているのだ。
「一、二、三。あれ? もう一人の方はどちらに?」
妖精だからといっても透明スキルの効果で透明になっているクレールを認識できないのである。
そんな困り状態のサバドにネージュが声をかけた。
「そこにいると思いますよ。ゆっくりとかけてみてください」
「え? そこって……ここ?」
「はい。もう少し低めがいいと思いますよ。騙されたと思ってかけてみてください」
「わ、わかりました。やってみます」
サバドはネージュに言われた通り何もない空間に参加証をかけ始める。
するとサバドは何かに当たる感覚を味わった。
「な、何かある!?」
それは透明状態のクレールだ。
透明スキルは姿が見えなくなるのはもちろんのこと、気配や声も消える特殊なスキルだ。
しかし触れることは可能。なのでサバドが触れたのはクレールの頭なのである。
「ぬぅーん。もう少しこっちだよー」
「わぁ! 勝手にヒモが!」
クレールはサバドの手伝いをするために参加証のヒモを広げた。そして見えていないサバドに合わせながら自分の首に参加証をかけた。
「す、すごいです。参加証が浮いてます……」
「わーすごーい。こんな参加者始めて!」
「う、動いたー! 本当に誰かいるんですねー」
「すごいすごーい」
サバドとリンゴは浮いている参加証の周りをブンブンと飛び回りながら感動していた。
これで参加者四人の首に参加証がかけられたことになる。
「もう中に入ってもいいんだよね?」
「はい。もちろんですよ! 案内などは必要でしょうかー?」
サバドとリンゴは薄水色の瞳をキラキラと輝かせながらマサキのことを見つめ始めた。
案内役になって一緒に行動したいのだろう。
「あ、案内? えーっとゆっくり自分たちのペースで回ろうと思ってるから……そ、その……」
マサキが案内役を断ろうとした時、サバドとリンゴは先ほどよりもさらに薄水色の瞳をキラキラと輝かせて始めた。マサキの目の前で上目遣いをしながら媚びている。
そんな瞳をされてしまえばマサキは断れなくなってしまう。
「えーっと、案内役か……ネージュはどう? 案内役つけてみるか?」
「ええ。もちろんですよ。可愛らしい妖精さんと一緒に周れるのは嬉しいです」
「おお、意外な回答だな。魔法が効いてきたってことなのかな」
「そ、そうですかね? 自分だとよくわかりませんけど、マサキさんも妖精さんと普通に会話してますよ」
「た、確かにそうだな。自分ではわからないもんだな。魔法ってすげーや。ルーネスさんには感謝しないと」
マサキとネージュは平常心を保ちながら妖精たちと普通に会話をしていることをありがたく思った。そして魔法をかけてくれたルーネスに心の中で感謝をした。
そんな時、マサキの目の前でぷかぷかと浮かんでいる妖精のサバドが口を開いた。
「あ、あの……案内役は……どうしますか?」
「そ、そうだった!」
話が脱線してしまうほどマサキたちはリラックスしていたということだ。
「ダールは案内役つけてもOK?」
「アタシは全然問題ないッスよ。むしろついてくれた方がアタシの負担も減るので嬉しいッス!」
「た、確かにそうだな。クレールはどうだ?」
透明状態のクレールは参加証をブンブンと振り回して返事をした。おそらくOKのサインなのだろう。
「よし。決まりだな。それじゃあ案内役をお願いするよ1」
「やったー!」
サバドとリンゴは嬉しさのあまり抱き合いながら竜巻のように回り上昇を始めた。
その喜ぶ姿を見てからマサキは口を開いた。
「えーっと、二人で案内してくれる感じなの?」
「もちろんですよー」
「もちろんですー!」
マサキの質問に竜巻のように回っている二匹の妖精が同時に答えた。
「そ、それじゃあ受付はどうすんの? まだまだ客は来るだろ?」
マサキは受付の担当がいなくなることを心配しているのだ。
他人の心配をするほど心の余裕というものが現れている証拠だ。
「それは問題ありませんよ」
「別の妖精が来ますからー!」
「それじゃー」
「早速だけどー」
「案内を始めますよー」
「行きましょー行きましょー」
息の合った会話。さすが姉妹と言ったところだ。
竜巻のように飛ぶのをやめたサバドとリンゴはマサキたちを案内するために先頭を飛び始めた。
(ぐいぐい行くじゃんか。すげーテンション高いな。というか本当に他の妖精が来た。どこかで見てたのかな? いやいや妖精だから魔法とかで通じてんだろうな。念波とかそういう類のやつかな? まあなんでもいいか。この二匹の案内に従おう……)
食品展示会にやってきたマサキたちよりもテンションが上がっているのは、無人販売所という未知の販売店を考えたマサキたちに興味が湧いているのである。
先に会場に入っていった案内役の妖精を追いかけるマサキとネージュの足取りは遅い。緊張しているのだ。
「なんか緊張してきた……魔法のおかげでいつもよりはマシなんだけどそれでも緊張する……」
「わ、私も緊張してきましたよ。も、もしかして魔法の効果が切れちゃったってことはないですよね」
「さすがに切れてないだろ。半日くらい持続するって言ってたし、切れたら俺たちガタガタ震え上がってるはずだからな」
「そ、そうですよね」
「せっかくだし緊張しながらでも楽しもうぜ。魔法の力を存分に利用してな」
「はい! それがいいですね! こんな機会ありませんしね! 楽しみましょう!」
マサキとネージュは慣れない環境に緊張しながらもルーネスがかけた魔法の影響で精神的に安定し食品展示会に挑むことができるのだ。
ネガティブ思考もいつもよりは少ない。どちらかと言えばポジティブ思考の割合の方が多い。
マサキたちが追いつくとサバドとリンゴの二匹の案内役の妖精が口を開いた。
「まずは順路通りに進みますよ」
「気になる店舗があればお気軽に仰ってくださいねー」
「交渉などのお手伝いもしますよー」
「試食も試飲も出来ますので遠慮せずにどうぞ~」
案内役らしくなってきたサバドとリンゴ。そんな二匹の妖精について行きながら店舗と店舗の通路を歩く。
出店している店舗は屋台のような感じでテントを張っている。そこにテーブルが一つ出されていてそのテーブルの上に商品が置かれているという感じだ。
食品展示会というだけあって様々な料理が並んでいる。さらには使い捨ての食器や高級なグラスまで料理や食品に関係する様々な商品までも店舗別に置かれているのである。
左右に店舗があるということでマサキたちの足取りは遅い。そして気になる試食品にも手が伸びるので余計に足取りは遅くなる。さらにはパフォーマンスをする店舗もあるので見入ってしまう。
それが食品展示会の楽しみ方でもあるので足取りは遅くても構わないのである。
「ところでどっちが無人販売所を思いついたのー?」
「それとどっちがイースターパーティーって楽しそうな店舗名をつけたのー?」
「教えてー教えてー」
先ほど答えることができなかった質問が再び始まった。
魔法にかかっている今ならマサキたちは答えることができる。なのでネージュは可愛らしい二匹の妖精に向かって答えを言った。
「無人販売所も店名もマサキさんが考えましたよ! すごい発想ですよね!」
「私が正解だー! やったー!」
「へーどっちもマサキ様が考えたんですねー。すごーい!」
正解したサバドは大喜びで飛び回った。不正解だったリンゴはサバドのことなど気にすることもなくマサキを称賛する。
「でもどうやって思いついたの? 無人で販売するなんて思いついても普通出来ないよ!」
「あー、それは……企業秘密ってやつだ!」
「えーずるいよー! 教えてよー」
キラキラと薄水色の瞳を輝かせるリンゴ。
そんなリンゴの瞳に怯みそうになるもマサキは答えることはせず企業秘密だと言い切った。
「企業秘密は企業秘密!」
「わ、わかりました。企業秘密なら仕方ないなー」
(あれ? 意外とすんなりと諦めてくれてた。これもルーネスさんのおかげか? 地元の知識とかって言ってもよかったんだが、俺はこの世界に詳しくないしすぐに嘘だってバレるだろうからな。それに異世界から来たって正直に話したらそれはそれで面倒なことになりそうだし。というかネージュたちにもそのことは話してないから話せるはずもない……)
安堵するマサキの鼻腔に香ばしい香りが誘惑してきた。マサキはすぐに誘惑してきたニオイの方を見る。
マサキの黒瞳に映ったのは『ソーセージ』の店舗だった。
マサキの視線に気付いたサバドは案内を始めた。
「まずはこちらから見ていきましょうー!」
マサキたちはソーセージの香ばしい香りに手招きされながら、ソーセージの店舗に吸い込まれていった。
0
お気に入りに追加
448
あなたにおすすめの小説
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜
橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?
器用さんと頑張り屋さんは異世界へ 〜魔剣の正しい作り方〜
白銀六花
ファンタジー
理科室に描かれた魔法陣。
光を放つ床に目を瞑る器用さんと頑張り屋さん。
目を開いてみればそこは異世界だった!
魔法のある世界で赤ちゃん並みの魔力を持つ二人は武器を作る。
あれ?武器作りって楽しいんじゃない?
武器を作って素手で戦う器用さんと、武器を振るって無双する頑張り屋さんの異世界生活。
なろうでも掲載中です。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転移は分解で作成チート
キセル
ファンタジー
黒金 陽太は高校の帰り道の途中で通り魔に刺され死んでしまう。だが、神様に手違いで死んだことを伝えられ、元の世界に帰れない代わりに異世界に転生することになった。
そこで、スキルを使って分解して作成(創造?)チートになってなんやかんやする物語。
※処女作です。作者は初心者です。ガラスよりも、豆腐よりも、濡れたティッシュよりも、凄い弱いメンタルです。下手でも微笑ましく見ていてください。あと、いいねとかコメントとかください(′・ω・`)。
1~2週間に2~3回くらいの投稿ペースで上げていますが、一応、不定期更新としておきます。
よろしければお気に入り登録お願いします。
あ、小説用のTwitter垢作りました。
@W_Cherry_RAITOというやつです。よろしければフォローお願いします。
………それと、表紙を書いてくれる人を募集しています。
ノベルバ、小説家になろうに続き、こちらにも投稿し始めました!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる