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第2章:出逢い『空飛ぶウサギが来た編』
79 ウサギを飼いたい
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寂しげな背中で歩くマサキを見て薄桃色の髪の美少女クレールが口を開く。
「おにーちゃんおにーちゃん」
「ん? どうした?」
「あの子はもういいの?」
「もういいのって……ウサギちゃんを家族のもとに返すのが目的だったからもう目的は果たされたじゃんか。あと他に何かすることあるの?」
「そうじゃなくて……おにーちゃんはあの子を飼いたくないの?」
クレールから出た言葉は、とても純粋な言葉だった。
マサキの左腕の中にいたウサギを飼いたくないのかという質問だ。
「いやいやいや、そもそもうちで飼えないだろ。一応部屋の隣が無人販売所だぞ。食べ物を扱ってるのに動物とか飼ちゃダメだろ……」
「え? なんで?」
純粋無垢な表情で紅色の瞳を向けるクレールから再び純粋な質問が飛びかかる。それはあまりにも純粋な質問でクレールにとっては純粋な疑問なのだ。
「いや、なんでって……」
マサキはこの時、クレール以外の二人の顔を見渡した。青く澄んだ瞳と黄色の瞳を持った美少女たちと交互に瞳が交差する。
その美少女たちは小首を傾げて不思議そうにマサキを見つめていた。
「あ、あれ? も、もしかして……そんな常識ここにはない感じ?」
ここはマサキが住んでいた日本とは別の異世界だ。日本の常識が通用しないことがある。
今マサキが思考している常識は、飲食店や食べ物を取り扱う店舗でペットなどの動物を店内に入れてはいけないと言う常識だ。これは来店する客のみならず店員側も適用される常識。
同時に飲食店や食品の販売店と家が繋がっている場合もこの常識は適用されると思っていた。
だからこそマサキは家の一角に無人販売所がある理由でペットを飼ってはいけないと思っていたのである。
居酒屋で働いていたからこそ、動物と飲食店の常識の因果関係がマサキの心に染み付いてしまっているのだ。
「こっちで飲食店とかに入ったことないから分からないけど動物の入店禁止とかってない感じ? もしかして動物とか普通に出入りできる感じなの?」
マサキはこの時、八百屋で買い物をしている時のことを思い出した。
それは八百屋の店内で空の色と同化した鳥がブドウを食べにきていた時のことだ。
その時は単純に八百屋のおばあちゃん店主が動物に優しいだけだと思っていた。けれどそれは違かったのだ。
動物と共存している兎人族は動物も平等に扱っている。平和な世界だからこそ自然や動物にも優しいのである。
「動物禁止のところなんて聞いたことないッスよ。人間族の常識なんッスか?」
「い、いや……マ、マジか……」
マサキは美少女たちの顔をもう一度見渡した。
全員の耳には可愛らしいウサ耳がついている。それもウサギのようにもふもふな毛が生えている愛くるしいウサ耳だ。
ネージュには白銀色の垂れたウサ耳、クレールには右半分の顔を覆い隠すほど大きな薄桃色のウサ耳、ダールにはオレンジ色の小さなウサ耳。
マサキがウサ耳に視線を送ると美少女たちのウサ耳はピクピクと動く。まるで見られたことを恥ずかしがるかのように。
「そうだよな……兎人族だもんな。動物の入店禁止とかとんでもない問題だよな……」
「そうッスよ! 人間族の常識はわからないものッスね」
「あはは……久しぶりのカルチャーショックだわ」
マサキは異世界転移してから百二十五日が経っている。つまり百二十五間この世界で暮らしているのだ。
マサキは世界の文字が着実書けるようになってきている。魔道具だって説明されなくてもある程度の使い方をわかるようにもなってきていた。つまりマサキはこの世界に慣れたのだ。
しかしそれは慣れたつもりだったのだと、錯覚だったのだと、勘違いだったのだと思い知らされるほどのカルチャーショックを受けた。
マサキは久しぶりに感じるカルチャーショックにため息が溢れた。
「で、でもネージュはどうなの? ウサギちゃんを飼いたいって思う? 部屋で飼っても大丈夫なの?」
マサキの質問は意味のない無駄な質問だった。
なぜならネージュの青く澄んだ瞳がキラキラと輝いているからだ。そして輝いている瞳は他にもあった。それは紅色の瞳と黄色の瞳だ。
三人の兎人族の美少女はペットショップで犬や猫を見ている子供のようにキラキラと瞳を輝かしているのだ。
「マ、マジか……」
マサキは美少女三人のキラキラ輝く瞳を見て驚きを隠せないでいた。マサキ以外の三人もウサギを飼いたかったのである。これはマサキも予想ができなかったことだ。
「私一人ぼっちの時はペットとか飼ってみたいと思ってたんですよ! でもお金がなくて飼えなかったのです。ですが……今なら無人販売所も順調ですし飼えると思います! いいえ飼えます! お世話は私がやりますから飼いましょう! ウサギさん!」
「クーもクーも! 毎日ウサギをもふもふしたいぞー! クーだってお世話もするぞー! ブラッシングとかクーがやるぞー!」
「アタシも兄さんの家にウサギがいるなら嬉しいッス! 妹たちも喜ぶッスよ!」
ネージュとクレールそしてダールがそれぞれウサギを飼いたい意思を表明した。
ここまできたらもう飼うしかない。マサキの心は先ほどのウサギに引き寄せられていく。
「でも家族のところに戻れたのに……大丈夫かな?」
「ふふっ。こんなにたくさんウサギさんがいるのにマサキさんはあの子に釘付けなんですね!」
「あ、当たり前だろ。あのウサギちゃんが一番可愛いからな。他のウサギももちろん可愛いんだけど……でも飼うんだったらウサギちゃんがいい!」
マサキはウサギが飼えるかもしれないという喜びに落ち込んでいた感情を忘れていた。
どの世界に行ってもペットを飼える喜びは絶大な物なのである。
「でもさ、ここってふれあいの動物園みたいな場所だろ? ペットショップじゃないじゃん。飼えるの?」
「それは問題ないッスよ。兎園は里親の募集もやってるッスからね!」
「それは嬉しい情報! そ、それじゃ早速さっきのところに戻るぞ!」
はやる気持ちを抑えきれないマサキ。ウサギの元へと戻りたい気持ちでいっぱいだ。
その気持ちでイングリッシュロップイヤーたちがいるところへと向かおうと体が勝手に動き出した。
しかし一歩前に踏み出した瞬間マサキは信じられないほど震え出してしまった。
「ガガガッガガガガッガガガガッガガガガッガガガガガッガ……」
「マ、マサキさん。ど、どうしたんですか!?」
突然震え出したマサキに驚くネージュ。
マサキと繋いでいる手からネージュにも震えが伝染してしまう。そしてマサキが震える理由もわからずネージュも震え出してしまった。
「ガガガッガガガガッガガガガッガガガガッガガガガガッガ……」
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……」
「おにーちゃんおねーちゃんどうしたの!?」
「兄さん姉さんどうしたんッスか!?」
当然だがクレールとダールも突然震え出した二人に驚いている。震えている理由が二人には全くわからないのである。
マサキの震えが伝染してしまったネージュはともかく、人間不信のマサキが震える理由として考えられるのは一つ。
「兄さんが震える理由……」
「誰かが来た?」
この空間に別の誰かが来たのではないかと考察するクレールとダール。
二人は辺りを見渡すがそれらしき人物は見当たらない。
受付の方を見ても園長のマグーレンは来ていない。それなら一体何に怯え震えているのだろうか。
この時ダールはあることを思い出した。
「前にもこんなことがあったッスよ。聖騎士団の団長さんが来たのを察知して震えてたことが……それもとても遠い距離でッス」
「じゃあ誰か今から来るんじゃないかなー? 聖騎士団の団長ぐらいすごい兎人が!」
「そうかもしれないッスね!」
人間不信のマサキは聖騎士団の団長のようにオーラが溢れ出ているすごい人物が近付いていることを距離が離れたところでも察知することができるのである。
これは魔法でもスキルでもない。人間不信のマサキが人間不信だからこそ習得した察知能力だ。もはや危険察知能力に近いものである。
「ガガガッガガガガッガガガガッガガガガッガガガガガッガ……」
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……」
「ど、どうするッスか?」
「どうしよーう」
震えるマサキとネージュをどのように対応するかを考えていたクレールとダール。
その時、マサキが怯えて震えてしまうほどのオーラを放つ人物が姿を見せた。
その人物は十メートルほどある石の壁のさらに上空から乗り物に乗って現れたのである。
「……ぇ?」
その人物に気付いたダールは呆気に取られたような声が自然と溢れた。
ダールの隣にいたクレールは透明スキルの効果ですぐに透明になり姿を消した。
謎の人物が乗っている乗り物は以前盗賊団たちが逃走する際に使用していたスクーターに似ているこの世界の乗り物『マクーター』だ。
人間族の技術と妖精の魔法を屈指して作られたこの世界の乗り物。
謎の人物が乗っているマクーターは飛行用のマクーターである。
「あ、あれ……? さっきのウサギのところに向かって行ってるッスよ……」
ダールの黄色い瞳には空から降りてきた謎の男がイングリッシュロップイヤーの群れへ向かっているのをその瞳に映していた。
無料で入園できる兎園だが入口から入園しないことは異常なこと。
そんな異常なことをする人物は兎園のルールを知らない無知な人物か悪さを企んでいる人物しか考えられない。
前者なら仕方のないことなのだが、もしも後者だった場合は緊急事態なのである。
マサキが突然震え出したことを考慮すると後者の可能性をひしひしと感じざるを得ないのである。
「まずいッスね……」
ダールは気付いてしまった。
謎の人物が黒いフードに身を包み姿を隠し顔を見せていないことを。
「もしかして……」
ダールは気付いてしまった。
謎の人物が大きな黒い袋を持っていることを。
「……あれは……ウサギ泥棒ッスよ……」
ダールは気付いてしまった。
謎の人物はウサギを盗もうとしていることに。
「おにーちゃんおにーちゃん」
「ん? どうした?」
「あの子はもういいの?」
「もういいのって……ウサギちゃんを家族のもとに返すのが目的だったからもう目的は果たされたじゃんか。あと他に何かすることあるの?」
「そうじゃなくて……おにーちゃんはあの子を飼いたくないの?」
クレールから出た言葉は、とても純粋な言葉だった。
マサキの左腕の中にいたウサギを飼いたくないのかという質問だ。
「いやいやいや、そもそもうちで飼えないだろ。一応部屋の隣が無人販売所だぞ。食べ物を扱ってるのに動物とか飼ちゃダメだろ……」
「え? なんで?」
純粋無垢な表情で紅色の瞳を向けるクレールから再び純粋な質問が飛びかかる。それはあまりにも純粋な質問でクレールにとっては純粋な疑問なのだ。
「いや、なんでって……」
マサキはこの時、クレール以外の二人の顔を見渡した。青く澄んだ瞳と黄色の瞳を持った美少女たちと交互に瞳が交差する。
その美少女たちは小首を傾げて不思議そうにマサキを見つめていた。
「あ、あれ? も、もしかして……そんな常識ここにはない感じ?」
ここはマサキが住んでいた日本とは別の異世界だ。日本の常識が通用しないことがある。
今マサキが思考している常識は、飲食店や食べ物を取り扱う店舗でペットなどの動物を店内に入れてはいけないと言う常識だ。これは来店する客のみならず店員側も適用される常識。
同時に飲食店や食品の販売店と家が繋がっている場合もこの常識は適用されると思っていた。
だからこそマサキは家の一角に無人販売所がある理由でペットを飼ってはいけないと思っていたのである。
居酒屋で働いていたからこそ、動物と飲食店の常識の因果関係がマサキの心に染み付いてしまっているのだ。
「こっちで飲食店とかに入ったことないから分からないけど動物の入店禁止とかってない感じ? もしかして動物とか普通に出入りできる感じなの?」
マサキはこの時、八百屋で買い物をしている時のことを思い出した。
それは八百屋の店内で空の色と同化した鳥がブドウを食べにきていた時のことだ。
その時は単純に八百屋のおばあちゃん店主が動物に優しいだけだと思っていた。けれどそれは違かったのだ。
動物と共存している兎人族は動物も平等に扱っている。平和な世界だからこそ自然や動物にも優しいのである。
「動物禁止のところなんて聞いたことないッスよ。人間族の常識なんッスか?」
「い、いや……マ、マジか……」
マサキは美少女たちの顔をもう一度見渡した。
全員の耳には可愛らしいウサ耳がついている。それもウサギのようにもふもふな毛が生えている愛くるしいウサ耳だ。
ネージュには白銀色の垂れたウサ耳、クレールには右半分の顔を覆い隠すほど大きな薄桃色のウサ耳、ダールにはオレンジ色の小さなウサ耳。
マサキがウサ耳に視線を送ると美少女たちのウサ耳はピクピクと動く。まるで見られたことを恥ずかしがるかのように。
「そうだよな……兎人族だもんな。動物の入店禁止とかとんでもない問題だよな……」
「そうッスよ! 人間族の常識はわからないものッスね」
「あはは……久しぶりのカルチャーショックだわ」
マサキは異世界転移してから百二十五日が経っている。つまり百二十五間この世界で暮らしているのだ。
マサキは世界の文字が着実書けるようになってきている。魔道具だって説明されなくてもある程度の使い方をわかるようにもなってきていた。つまりマサキはこの世界に慣れたのだ。
しかしそれは慣れたつもりだったのだと、錯覚だったのだと、勘違いだったのだと思い知らされるほどのカルチャーショックを受けた。
マサキは久しぶりに感じるカルチャーショックにため息が溢れた。
「で、でもネージュはどうなの? ウサギちゃんを飼いたいって思う? 部屋で飼っても大丈夫なの?」
マサキの質問は意味のない無駄な質問だった。
なぜならネージュの青く澄んだ瞳がキラキラと輝いているからだ。そして輝いている瞳は他にもあった。それは紅色の瞳と黄色の瞳だ。
三人の兎人族の美少女はペットショップで犬や猫を見ている子供のようにキラキラと瞳を輝かしているのだ。
「マ、マジか……」
マサキは美少女三人のキラキラ輝く瞳を見て驚きを隠せないでいた。マサキ以外の三人もウサギを飼いたかったのである。これはマサキも予想ができなかったことだ。
「私一人ぼっちの時はペットとか飼ってみたいと思ってたんですよ! でもお金がなくて飼えなかったのです。ですが……今なら無人販売所も順調ですし飼えると思います! いいえ飼えます! お世話は私がやりますから飼いましょう! ウサギさん!」
「クーもクーも! 毎日ウサギをもふもふしたいぞー! クーだってお世話もするぞー! ブラッシングとかクーがやるぞー!」
「アタシも兄さんの家にウサギがいるなら嬉しいッス! 妹たちも喜ぶッスよ!」
ネージュとクレールそしてダールがそれぞれウサギを飼いたい意思を表明した。
ここまできたらもう飼うしかない。マサキの心は先ほどのウサギに引き寄せられていく。
「でも家族のところに戻れたのに……大丈夫かな?」
「ふふっ。こんなにたくさんウサギさんがいるのにマサキさんはあの子に釘付けなんですね!」
「あ、当たり前だろ。あのウサギちゃんが一番可愛いからな。他のウサギももちろん可愛いんだけど……でも飼うんだったらウサギちゃんがいい!」
マサキはウサギが飼えるかもしれないという喜びに落ち込んでいた感情を忘れていた。
どの世界に行ってもペットを飼える喜びは絶大な物なのである。
「でもさ、ここってふれあいの動物園みたいな場所だろ? ペットショップじゃないじゃん。飼えるの?」
「それは問題ないッスよ。兎園は里親の募集もやってるッスからね!」
「それは嬉しい情報! そ、それじゃ早速さっきのところに戻るぞ!」
はやる気持ちを抑えきれないマサキ。ウサギの元へと戻りたい気持ちでいっぱいだ。
その気持ちでイングリッシュロップイヤーたちがいるところへと向かおうと体が勝手に動き出した。
しかし一歩前に踏み出した瞬間マサキは信じられないほど震え出してしまった。
「ガガガッガガガガッガガガガッガガガガッガガガガガッガ……」
「マ、マサキさん。ど、どうしたんですか!?」
突然震え出したマサキに驚くネージュ。
マサキと繋いでいる手からネージュにも震えが伝染してしまう。そしてマサキが震える理由もわからずネージュも震え出してしまった。
「ガガガッガガガガッガガガガッガガガガッガガガガガッガ……」
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……」
「おにーちゃんおねーちゃんどうしたの!?」
「兄さん姉さんどうしたんッスか!?」
当然だがクレールとダールも突然震え出した二人に驚いている。震えている理由が二人には全くわからないのである。
マサキの震えが伝染してしまったネージュはともかく、人間不信のマサキが震える理由として考えられるのは一つ。
「兄さんが震える理由……」
「誰かが来た?」
この空間に別の誰かが来たのではないかと考察するクレールとダール。
二人は辺りを見渡すがそれらしき人物は見当たらない。
受付の方を見ても園長のマグーレンは来ていない。それなら一体何に怯え震えているのだろうか。
この時ダールはあることを思い出した。
「前にもこんなことがあったッスよ。聖騎士団の団長さんが来たのを察知して震えてたことが……それもとても遠い距離でッス」
「じゃあ誰か今から来るんじゃないかなー? 聖騎士団の団長ぐらいすごい兎人が!」
「そうかもしれないッスね!」
人間不信のマサキは聖騎士団の団長のようにオーラが溢れ出ているすごい人物が近付いていることを距離が離れたところでも察知することができるのである。
これは魔法でもスキルでもない。人間不信のマサキが人間不信だからこそ習得した察知能力だ。もはや危険察知能力に近いものである。
「ガガガッガガガガッガガガガッガガガガッガガガガガッガ……」
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……」
「ど、どうするッスか?」
「どうしよーう」
震えるマサキとネージュをどのように対応するかを考えていたクレールとダール。
その時、マサキが怯えて震えてしまうほどのオーラを放つ人物が姿を見せた。
その人物は十メートルほどある石の壁のさらに上空から乗り物に乗って現れたのである。
「……ぇ?」
その人物に気付いたダールは呆気に取られたような声が自然と溢れた。
ダールの隣にいたクレールは透明スキルの効果ですぐに透明になり姿を消した。
謎の人物が乗っている乗り物は以前盗賊団たちが逃走する際に使用していたスクーターに似ているこの世界の乗り物『マクーター』だ。
人間族の技術と妖精の魔法を屈指して作られたこの世界の乗り物。
謎の人物が乗っているマクーターは飛行用のマクーターである。
「あ、あれ……? さっきのウサギのところに向かって行ってるッスよ……」
ダールの黄色い瞳には空から降りてきた謎の男がイングリッシュロップイヤーの群れへ向かっているのをその瞳に映していた。
無料で入園できる兎園だが入口から入園しないことは異常なこと。
そんな異常なことをする人物は兎園のルールを知らない無知な人物か悪さを企んでいる人物しか考えられない。
前者なら仕方のないことなのだが、もしも後者だった場合は緊急事態なのである。
マサキが突然震え出したことを考慮すると後者の可能性をひしひしと感じざるを得ないのである。
「まずいッスね……」
ダールは気付いてしまった。
謎の人物が黒いフードに身を包み姿を隠し顔を見せていないことを。
「もしかして……」
ダールは気付いてしまった。
謎の人物が大きな黒い袋を持っていることを。
「……あれは……ウサギ泥棒ッスよ……」
ダールは気付いてしまった。
謎の人物はウサギを盗もうとしていることに。
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