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第七節
第49 第一END 進む日々
しおりを挟む「おい、最近奥さんどうしたんだ? 夫婦喧嘩か? 一緒に帰ってないみたいだけど」
ユウカの周りをまとわりつく桂川。 これほどうざったいものはない。
「だから違うっての」
ユウカは飛び回る桂川を追い払いたい。 いっそスキンガードでもあればいいのだが、そんなもの学校に持ってくる者はそうはいないだろう。
「星! 居る? 生徒会室いこーぜ」
元気よ扉を開けて入ってくる音。 ユウカはまた黎が勢いよく来たのだろうと思ったが、声は低い、男の声だ。
「え、彬良君?! ちょっと、なんでここに」
星はどうも、恥ずかしいのかあたふたしていた。
「速く行こうよ」
「う、うん……」
星は顔を下げたまま、もじもじとして、彬良と出て行った。
「あ~ぁ、星ちゃんもとうとう彼氏持ちか。 あんなイケメンじゃ俺たち勝ち目無いよな」
ユウカはただじっと出ていった方向を見ていた。
「あれ? ユウカどうした。 何、マジで落ち込んでんだよ。 男は顔じゃねぇって」
バシバシとユウカの肩を叩いて来るが、ユウカには何の痛みもなかった。
「あれ、誰だよ……」
「え? 知らねぇ。 けど、よく星ちゃんと一緒に居るんだってさ。 生徒会の人じゃねぇの? 結構前から一緒みたいだぜ。 そういや、生徒会のなんか手伝ってくれて助かってるとかなんか、言ってたけな」
ユウカは半分聞いていない。前から一緒に居る。 それを聞いた瞬間、終わった。と言う言葉がすべてを包み込んだ。
あれ以来、舞とユウカは話していない。 勿論家も違う訳で、一緒に帰る日も無くなった。
家に帰っても一人のユウカはとりあえず、公園で更ける事にした。 何故だかそうしたかった。
「あれ? ユウカ君? 何してるのかしら」
「零錠こそ、何してんだよこんなところで?」
零錠が公園に居るなんてあり得ない。 と思うほど珍しい。 現にユウカの前にはその零錠がいるので、ありえない事が起こってしまっているのだが。
手には紅茶の缶ジュースを手にしていた。
「え? お前がこんなところに来るのか? もしかしてさぼりか」
「はぁ、まそんなところね。 ちょっと失敗しちゃってね。 行き詰っちゃったとこ。
そっちは?」
「俺は……。 同じだな。 ちょっと考え事だ」
その会話後、唯は去ってしまった。 忙しい人なので、当然こんなところで油を売っている訳にはいかない。息抜き程度に立ち寄ったのだろう。 しかし、彼女はいつ勉強しているのだろうか? と思うユウカであった。
ユウカのほっぺが冷たくなる。
「冷たっ!」
「はい、これ。 あなたの分」
唯はユウカの飲み物を買いに行っていたようだ。
「まさか、これ買いに行ってくれたのか?」
「私だけ飲む訳にはいかないでしょ」
「わりぃ、ありがとう」
その嬉しそうに笑う、ユウカの無邪気な顔に唯は照れた。 思っていもいなかったので、不意打ちを食らってしまった。 唯はまさか、120円ほどの飲み物を渡しただけで、あそこまで嬉しそうにお礼を言われる事になるなど予想の遥か上だった。
「そこ良いかしら?」
唯はユウカの座るベンチの横を指さす。
「あぁ、座ってくれ」
「お邪魔します」
………………………………………………。
「いい天気だな……」
「そうね」
……………………………………。
話がつづかない。 二人とも落ち込んでいるからなおさらだった。 ジュースの缶を開ける音だけが聞こえる。
「いただきます」
「どうぞ」
「……………」
二人は缶ジュースを飲むと同じ空を見上げて、一言。
「あぁ~」
二人は顔を見合わせた。 まさか同じ行動、同じ仕草をするなんて。そんな事を考えたら、笑ってしまった。
「あぁ~って何よ」
「そっちこそ、何があったんだよ」
二人は仲良くベンチで笑う。
「ちょっとね。仕事でトラブルがあって。 私重要な仕事任されたから、その内に小さな一旦なんだけどね。 任せてた会社が大きなミスをやってくれちゃって、信用問題に今なりかけててね。 せっかく私に任せてくれたのに、 この失敗は私の責任だから、どうしたものかってね」
彼女は一粒の涙をぬぐいながら、話した。
「零錠でも悩むことがあるんだな」
「失礼ね。 何ならいつでも悩みっぱなしよ。 悩み地獄なんだから」
唯い行っている仕事のの数々を察するに、日々学生だけしてるユウカよりも何倍も大変な生活を送っているのだろうとユウカは唯の言葉に同情した。 悩みっぱなしの生活など、逆にストレスがたまり過ぎて死んでしまいそうだ。 なのに彼女は日々文句も言わず全うして偉いものだとユウカの目には映っている。
「そっちは?何があったの?」
「暫く一緒に居た友達が離れちまってさ、別の奴とつるんでるんだよ。 なんかそれ見たら、気持ちが落ち込んじまってさ。 家にもしょっちゅう来てくれてたやつも、いなくなっちまったし。 なんか、変な気持ちになっちまって」
「そう、それは大変ね」
「そっちこそ大変そうじゃんか」
ユウカは唯の悩みと比べればこれっぽちも大変だとは感じなくなった。 むしろ、話してみると自分の悩み事の方が小さく感じて仕方がない。
「でも別に嫌われた訳じゃないんでしょ? だったら幾らでも立て直せるんじゃないかしら」
「そうだな。 零錠の悩み事聞いてたら、なんか吹き飛んできたわ」
え?そうかしら? と唯は驚いた。
「悩んでても仕方がない。 立て直せるんだから、まだ悩む必要なんてないよな」
ユウカは笑って見みせる。 唯も確かにと自分の悩みと重ねてみた。
「私も、十分悩んだわね。後は立て直すだけ。 あなたと私の悩み事って案外似てるのね」
「えぇ!? そうか? お前のが数億倍大変そうじゃん。 今の判断ミスったらプロジェクトすら失うんだろ?」
唯はユウカを睨んだ。
「もう、今せっかく立ち直ろうとしているのにそんな事言う?」
「お前のは考えないと、選択ミスったらやばいだろ」
「考えても仕方がないのよ。 もう答えが出ていてるのだから。 それに対して、その答えに不安な気持ちになっていただけ」
唯の頭の中で巡った発想をユウカには理解できなかった。 ただ、よくわからない事で立ち直れるのだなと関心を覚えた。 唯の立ち位置からしたら、後ろに何百人と抱えているだろう。その人たちの生活もゆだねられているのだから、相当な重圧なはずだ。 そんな難題に速く立ち直れる事が少しうらやましと思った反面、 だからこそ零錠としてやっていけるんだろうとも思いさせられた一瞬だった。
「な?この後って勿論仕事だよな? 良かったらちょっと歩かないかなって、これのお礼もしたいし」
ユウカは唯が買ってきた缶ジュースをちらつかせた。
「えぇ、そうね」
唯は時計を見る。 この後も急がしい。 なんせここに居る事自体が不思議なほどなのだから。
「少しだけならいいわ」
思ってもいない返事が返ってきた。
「そうだよな……? え? いいのか?」
「少しだけなら大丈夫よ。 そんなに長居はできないけど」
二人はショッピングを楽しんだ。 流石に大型ショッピングモールは行けないが、若者の集まる、草部へと向かった。
お洒落なレストランに入って少し休憩したらそこでお開きと言う予定だった。
「こんなに買っちゃって大丈夫なのか?」
「平気よ。お金なら、有り余るほどあるは。 どうやって減らそうか考えてたところなんだから」
とは言っているが、唯の買い物はストレス発散の為にした衝動買いだ。
「ほんと、そういう所はうらやましいわ。お嬢様」
「そんなことないわよ。今の今まで使えなかったお金が余ってるだけよ。 そこはあなた達と同じよ」
そう。 唯には遊ぶ時間等無い。 だから、溜まっていく。 溜まれば出ていく所がないのだ。
「それはい零錠が頑張っているからだよな。悪い」
「いいのよ別に。 気にしていないから」
零錠は淡々と紅茶を啜った。
「そう言えば好きだよな。 紅茶」
ん? と唯は顔を歪ませる。
「好きじゃないわ。 むしろ苦手ね」
「は? 今日飲み物って言ったら、紅茶ばかり飲んでたじゃないか」
「そうね。 それは、苦手を克服するために飲んでいたのよ」
唯はいつも頑張り屋さんだ。 周りにはそれを感じさせないでいつもやってのける。 だから周りの人は彼女の事を、最初から何でもできる天才だと言ってのけるのだが、その所以には、こうした見えていても見られない努力の積み重ねがあった。
「何で嫌なものを無理して飲むんだ?」
「どうして? それは必要だからよ。 勿論必要のない人もいるわ。 でも私には飲めた方がいいの。 色んな人と会合とかもあるでしょ。 そうしたらどうしてもね。 それに話の幅も増やせるわ。 これほど得な事はないわね」
「やっぱり、零錠ってすごいんだな」
「そうかしら? 誰でもできる事よ?」
「それが、できないからすごいって言ってんだけど」
「それは、優しい人なのよ。 きっと」
彼女はまた苦手な紅茶を何気ない顔で啜った。
「そう言えば、紅茶繋がりで思い出したんだけど、 ゴールデンチップスって知ってる?」
唯は飲んでいてた紅茶を吹き出しそうになっていた。
「あなた、なんでそんなマニアックな茶葉を知っているの?」
「何でって、出されたから。 でもあんま旨いと思わなくてさ。 まずいって訳でもなかったんだけど。薄いと言うか、さわやか?と言うか、青臭い感じもしたし」
唯はハンカチで口を拭う。
「あなたの交友関係はいったいどうなってるの? いい、ゴールデンチップスって言ったら相当値が張るものよ。 普通の人が手を付けて飲もうなんてあまり思わないほどね。 それにゴールデンチップスって言ったってグレードを落としたやつだってあるだろうけど、あなたの話しからすると、それ相当グレードの高いものじゃないかしら」
「そ、そうなのか。 す、すげぇな」
ユウカはやっぱり唯と居るのは楽しいと思った。 話しているのがすごく楽なのだ。 いちいち事細かく説明しなくても、正しい解釈でほとんどの意志を組みとってくれるのか、理解が速い。
「すごいのはあなたよ。 そんな知り合いがいるなら、相当のものよ」
「知り合いと言うか、不可抗力だったと言うか、とにかく、知り合いではないんだ。 全く関係のない人なんだけど、たまたまな」
「ふ~ん、そうなの」
唯はチョコチップクッキーに手を伸ばす。
「所で、ユウカ君はヴァンパイアとか知っているかしら?」
本当に唐突である。こういったぶっこんで来るところは慣れないとついて行けない者も多い。
「ヴァンパイア? あの、架空のドラキュラとか言うやつだろ? 血を吸う」
「ドラキュラは話の登場人物がそう言う名前だから言ってるだけで、そのものの総称じゃないけれど、そうね。 それの事よ。 いると思う? この世界に」
ユウカの答えは一つ。
「居ないだろ」
「まぁ、そうよね。 あなたらならそう言ってくれると思っていたわ。 ありがとう」
「何だよありがとうって? 何でいきなりそんな話なんだ」
「ちょっと、面白い話がちらついてるのを聞いてね」
「面白い話って?」
「別にいいわよ。 こんなの馬鹿馬鹿しいお話は。 私だってそんな架空の人物が現実してるなんて思ってもいないし。 たわけた話よ。 忘れて頂戴」
ユウカはまた唯のよくわからなら話に首をかしげるしかなかった。 唯は頭が切れるから、自分たちよりも一歩違う目線でこの世界を見ていんだろうと、ユウカは想いッていたので、それ以上ユウカも追及はしない。
「さて、そろそろ時間だし私は行くわ。 ありがとう、楽しかったわ」
「こっちこそ、悩み聞いてくれてありがとな」
「それはお互い様よ」
去り際はいつもクールだ。 彼女は颯爽と一人店を出ていった。 かっこいい姿だ。しっかりと紅茶を飲み切って。
ユウカはまだ1人黄昏る。 本当に話したい話事は誰にも話せない。 話せるとしたら、舞のみだ。
舞ともどう接したらいいかわからないでいた。 普通に話しかけても、距離を置かれてしまうからだ。 本当に出会う前の関係と何も変わらない。 エリィ-っぽい奴も、今無事なのか、一人出て行った切りで心配だった。
しかし結局思い詰めたところで、それは意味をなさない。 ユウカは、唯に感謝して、店を出た。
レジに行くと、すでにお支払いは終わっていると言う。 どこまで優しい人なのか。 人は彼女を見た目で判断するが、彼女は本当に人想いのいい人なのだ。
ユウカが家に着くと部屋は真っ暗だった。 これが本来の一人暮らし。ただいまもお帰りもない。電気をつけても……
誰もいない。
これで、集中して勉強に励める! ユウカは机に向かって一生懸命学のだった。
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