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第七節
第34 エリィーの正体!?
しおりを挟むてっきり、伯爵令嬢の時のように裏で動くって思っていたのに、今回は正攻法で動いたみたい。とはいえ、素直に正攻法とは思えないのはなんでだろう。
「難しい顔してますわね」
スノア王女殿下がクッキーを優雅に食べながら言った。
「その話を聞いて、普通笑えませんよ。完全に脅していますよね、国王陛下を」
以前、何度も抗議文を送っていた過去があるから、国王陛下に直訴したのはわかるけどね。一応、筋は通るから。それに、ラメール侯爵令嬢のお母様は国王陛下の実の妹だから。だけどね……
「脅してますね」
「脅してる上に、期日を設けていたよな」
スノア王女殿下とアベル殿下が愉快そうに言った。
「二人とも楽しそうですね」
私が少しジト目で見ながらそう言うと、同時に返事が返ってきた。
「「楽しいよ」」
「楽しいですか……?」
断言する両殿下に、呆れながら尋ねる。私的にはちょっと国王陛下が気の毒に思うんだけど、二人は違うのね。
「そもそも、叔母上はシルクに甘いのです。どうして、この時期に留学先から戻ってきたのです。もし戻ってきたとしても、普通なら、登校させませんわ」
それ、私も思った。起こした問題が問題なんだから、私が親なら登校させないで、自室に謹慎の上、さっさと留学先に送り返すわ。さすがに、今日は休んでるみたいだけど。
「シルクが叔母上にねだったんだろ。ほんと、超過保護で困るよ。似た者親子だから溺愛が凄くてね……娘の恋を応援しているんだよな。そもそも、シルクを無理矢理留学させたのは、ラメール侯爵だから。そこでも、かなり揉めたよ。今回も揉めるよね」
そのもの言いでわかったよ。スノア王女殿下もアベル殿下も、なにかしらの被害を受けたんだね。
でもさ……亜人族が決めた番を他人が否定することを、母親が容認しているって……降嫁される前もかなり問題があったんじゃない? 無理矢理、ラメール侯爵に降嫁させたように思うのは私だけかな。少なくとも、他国に嫁がせることはできないわね。お花畑すぎて。絶対問題起こしそう。
「似た者親子って?」
「シルクと同じだよ。相手は現コンディー公爵。親子二代でやっちゃったんだよ。それプラス、本当の運命の番から逃げられた」
アベル殿下が苦笑しながら教えてくれた。
「あ~~この場合、どう返答したらいいの」
あまりのアホさ加減にね。運命の番相手が逃げ出すことってあるんだ……
それにしても、親子二代でターゲットにされるのって可哀想。まぁでもわかるわ。義お父様、今も格好いいから。カイナル様にどことなく似てるんだよね。そう考えると、親子で好みが一緒!?
「はっきり言っても言いわよ。お花畑だって」
いや、言えないよ。私平民。
「そのせいで、公の社交場でコンディー公爵夫妻とラメール侯爵夫妻がかち合わないように裏で働かされて、ほんと迷惑もいいところだよ」
心底ウザそうに言うアジル殿下を見て苦笑い。
「……ラメール侯爵令嬢様と同じなら、他国の招待客がいる公の場で問題を起こしそうですね。ラメール侯爵様が可哀想ですね」
胃と髪の毛にきそう、ストレスで。
「その分、降嫁する時に、通常の三倍のお金を渡したそうだよ」
お金で、家臣に押し付けたか……王族怖っ。その王族を脅すカイナル様って……
「……とりあえず、四日後までにどうするかですね」
カイナル様は国王陛下立ち会いの元、ラメール侯爵夫妻にシルク嬢の処分を五日以内に下すよう嘆願した。それを国王陛下は受理したのが昨日。
すんなり、片が付くとは思わないのは私だけかな。
「しないといけないのですけど、たぶん、すんなりとはいかないでしょうね」
やっぱり、スノア王女殿下も同じように思っていたみたい。
「なのに、なぜ、ユリシア嬢は学園に登校してるのかな?」
アジル殿下の台詞に言葉が詰まる。だって、カイナル様と揉めたからね。その時は、そんな経緯があったなんて知らなかったけどね。知ってても、登校したけど。
「もうすぐ、中間試験がありますから」
今は登校する選択をしてよかったと思う。両殿下からなにがあったのか聞けたし。それに――
「本当にそれだけですの?」
スノア王女殿下が確かめてくる。
「はい」
にっこりと微笑みなが答えた。なのに、スノア王女殿下もアジル殿下も不審げだ。
まぁそれは当たってるけどね。
「そろそろ、終わったか? できれば、ここでする話じゃないと思うが、っていうか、しないでほしい」
生徒会長が困惑した顔で会話に入ってきた。
「場所を考えろ」
副会長はもろ迷惑そうに言った。
「ここが一番安全だからです」
「失礼な。場所はわきまえていますわ」
「ついでに、時間もわきまえてますよ」
私たちは次々に反論した。
生意気な一年生に、生徒会長と副会長は心底うんざり表情をした。
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