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第五節
第14話 判断
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たどり着いた先に目を丸くした。
着いた先があの高級マンション。
もしこのドローンが犯人のものだとしたら、零錠唯の推理は的確だったと言える。
ユウカはドローンについて行くように、回転式自動ドアをくぐる。
中は受付嬢が何人か立てる造りになっていて、まずその受付嬢を通さなければ、
住居につながる部屋には行けない様になっていた。
ユウカはドローンについて、そこを素通りした。
エレベータ―に乗ると、ドローンは赤外通信か何かをしたのか、勝手にエレベータが動き出した。
着いたのは45階。
エレベーターを降りたドローンは一室の扉の前で止まると、ドアが開いた。
ユウカは空いたドアから、こっそりと顔を覗かせ室内を観察した。
物静かで音も聞こえてこない。
ドローンは入っていたのに、人の気配がないみたいだ。
誰もいないのだろうか?
ユウカは恐る恐る入ってみる事にした。
人の部屋に忍び込むのは初めての事だった。
その時、後ろから鈍器のようなもので殴られる。
ユウカはそのまま倒れてしまった。
目を覚ますと、前にはメイドの姿をした、女性が立っていた。
誰なんだろう。
鋭い目に、人を軽蔑したようなう顔。
ユウカは殴られたショックで頭がふわついていた。
女が目覚めたユウカに気づき、近づいて来た。
「おはよう。 お目覚めかしら? 」
「あなたはいったい? 」
「それはこちらのセリフね?
勝手に人の部屋に入り込んでどこの泥棒さんかしら」
とても余裕のある話し方だ。 それもそのはず。 こんな高級マンションに住んでいるんだから、相当の賜物の人だろう。
ユウカは立ち上がろとしたが、椅子に手足を縛られていて、身動きが取れなかった。
「いや、そんなつもりは。
ただ、ここに黒いドローンが入っていったから」
「警察でも呼ぼうかしら」
「ま、待ってくれださい。
別に、泥棒に来たわけじゃなくて、大切なものを探してるんです。
本当に大事なんだ」
警察に通報などされれば一貫の終わり。
探すことすら不可能になる。
この状況で通報されれば、真っ先に疑いがかかり、弁解の余地はない。
たとえ、疑いが晴れたにしても、その時間のロスは大きすぎる。
「冗談よ」
「えっ? 」
ユウカは安心と同時に、疑問を覚えた。
「探し物って、この箱の事でしょ? 」
女はスーツケースを持ち出してきた。
間違いなくエリィーの為に買ったスーツケース。
ここにあるという事はやはり。
「あら、違ったかしら。
厳密には、このスーツケースの中身。 かしらね」
エリィーの事を知っているのは間違いない。
「どう言う事だ? なぜ、お前がそのスーツケースを持っているんだ。
エリィーは? エリィーはどこなんだ! 」
「うるさいわね。 急に騒ぎ立てて。
ちょっとお話しましょ。 私、あなたとお話がしたいの。 あなたの質問はその後から」
「エリィーは、エリィーは無事なのか? 」
「あの女ん子の事かしら?
それだったら、今頃」
今頃とはどういう事なのか?
「もしかして、何かしたのか? 」
「さぁね、それはこれから答えるあなた次第かしら。
でも、あまりここでゆっくりしている時間は無いわよ。
彼女の事を助けたいなら、早く話を終わらせることね」
「俺たちを殺す気はないという事か? 」
「無い事は無いわ。
別にあなたの命なんて、どうでもいいし、死にたきゃ勝手に死ねばいいわ。
私たちの目的にアナタは無い。
だけど、あの女は違うかしら。 こうしている間にも、誰かに殺されているかもね。
彼女の命に関しては一刻を争うんじゃないかしら」
何故エリィーが殺されなきゃならないのか?
疑問には残ったが、ユウカは質問を一度抑えた。
「そろそろ、質問をやめる気になった?
やっと理解したのかしら。
今の会話だと、あなた。
彼女のことを何も知らないみたいになるけど。
それで良く一緒に居れるわね。
てっきり自殺志願者なのかと思ったわ」
自殺志願者?こいつの言っていることが、全く理解できない。
何故ユウカが自殺志願者になるのか?
「どう言う事だ?
俺が自殺志願者?
なぜあいつと暮らすことが自殺志願者になるんだ?」
「別にいいわ。 知らなきゃそれで。
で、質問なんだけど、どうして、あんたはあの子を必死になって探している訳? 」
思っていたよりも簡単な質問だった。
「当たり前だろ。 大切な家族なんだ。
誘拐されたら、誰だって必死で探すに決まってる。
それにあいつはまだ、あんなに幼い子なんだぞ」
突然女は大笑いをかましてきた。
「あれが幼い子?
あなた、本気で言っているの。
あれが幼い子だなんて初めて聞いたわ。
ごめんなさい。 あんた中々ユーモアがある人だったのね」
人が真剣に話してるのに笑うなんて失礼な女である。
「わ、わかったわ。
お腹が痛い。
で、どうして、血もつながっていないあの子が家族なの? 」
そう言われてしまえばそうだ。 エリィーとは血縁関係がある訳ではない。
ただ、弱っていたところを助けただけで、この世界の言う、『家族』と言うものではない。
ユウカ自身も思い返してみると、なぜここまで必死になっているのかは分からない。
ただ一つ言える事は、エリィーと居た日々はとても楽しかったという事。
そして、ユウカにとってはその生活こそが当たり前で、充実している毎日であったという事。
何より、お互いが助け合って生き、一緒に問題を解決してきた。
時に同じご飯を食べ、同じ時間を過ごし。いがみ合い、受け入れてきた。
ユウカにはそれだけで、もう立派な家族だった。
「俺たちは共に生活してきたんだ。 あいつはもう俺の家族だ。
それに殺されようとしているのに放っては置けないだろ」
「ふ~ん。それは、アナタを殺してくれる人が死にそうだから命を懸けて助けようとしているって事? 」
「違う、俺は死ぬ気なんてない! 」
「そう。
じゃあ、家族だから、あなたは命を懸けてまで守ろうとしているという事? 」
「そうだ」
「それが人間で無かったとしても」
「あぁ、関係ない。
エリィーはエリィーだ」
やはりエリィーは人ではないのだろ。
だが何故この人がエリィーの事を知っているのか、謎は深まるばかりであった。
「本当かしら?
貴方みたいな人間がいるなんて、正直ちょっと驚いたわ。
人間なんて、みんな自分の事しか考えない生き物だと思っていたから。
こういう人間も生まれてくるものなのね。
なんていうのかしら、貴方みたいなのを、際物と言うんだったかしら? 」
ユウカは何を言われているのか、全く理解できない
そもそも何故エリィーがユウカを殺す必要があるのか?
理解に苦しむ。
と言うか、この女は、ユウカの部屋に男が入ってきた時の事を知っているという事なのだろうか?
女性が一緒にいたような覚えは無かったが。
しかし、少なくとも、彼女はエリィーの事を知っているとう事だけは分かった。
「質問は終わったか?
だったら早く解放してくれ」
「んー、あらかた聞きたいことは終わったんだけど、まだね。
そもそも、どうして素性も知らな女と一緒に居れるの?
疑いとか、探ろうとか無いわけ?
まぁ、あの女が嘘をついて居座ってるって言う事もあり得るけれど」
エリィーが?
そんな事をするような子には見えない。
ただ、確かにユウカはエリィーの素性を全くもって知らない。
知っていることで言えば、あほで、無知な所があれば、何故そんなことまで知っているのかと思うほどの有り余る知識を引き出してきたり。 難しい言葉も難なく使う所があったりもした。
後は、体から生えた、しっぽや、羽、に角。 人のような見た目なのに、人とは違うものがあるところ。
そして、なぜか飛べる。 そして日に弱い。 昼間は遊びに行けない生き物だ。 そして夜は寝る。
思い出せば思い出すほど、知らない事ばかりである。 そして、あの生き物は何なのか? 思い返せば思い返すほどわからない。 ほとんど寝てないか? あいつ 昼間は何をしているのか、あまりユウカは知らない。
「あいつは、何も言わないんだ。
俺だった不思議で仕方がない。
あいつはいったい何なんだ?
あんたは知っているのか?」
「はぁ、家族なのに、知らないの?
それって彼女から、信頼されていないって事なんじゃないのかしら? 」
「……それは、そうかもしれない。 俺はあいつの親でもないし、兄弟でもない。
だけど、あいつが言いたくないと言うのであれば、無理に聞くつもりもない。
話したいと思ってくれた時に話してくれればいいんだ。
そんな事で、家族の絆が切れるほど家族は安っぽいものじゃない」
「そう。でもそれは、アナタだけの意見でしょ?
実際彼女は、あなたの事をそう思ってないかもしれなわよ」
「そ、それは、」
ユウカの迷ったような表情。
「そうかもな。
だけど、俺にとっては家族の様に大事な存在ってなだけだ。
あいつがどう思うと、俺の中では変わらない」
女はナイフを投げつけてきた。
「そう、なら彼女の為にそれで腕を切り落としなさい。
って言ったら切り落とせる? 」
「何を言ってるのかわからない。 いい加減にしろよ」
「そうしないと、彼女、殺すわよ?
大事な家族なんでしょ? 」
女の目は真剣だった。
「そうしたくても、縛られているなら、切り落とせない。
これを解放してくれるんなら、幾らでもやってやる。
それでエリィーを返してくれんならな」
「えぇ、構わないわ。 そう言う事ならお安い御用よ」
女はゆっくりとユウカに近づいて、縄を外しだした。
「足は外してくれないのか? 」
「そうね、面倒くさい事は避けたいの。
だから、腕だけかしら」
十分だった。 ユウカはこの時を狙っていた。
たとえ足を外してもらえなくても、この至近距離なら。
女の首を取ることが出来る。
ほどけた隙に、彼女を抑え込むことは容易にできる。
彼女の見た目は、華奢もいい所だ。
こんな細い体では、男に太刀打ちできないであろう。
きっと、お付きのモノに守られ続けてきた事が伺える。
戦う体では無い。
周りを見たが、彼女以外に、人もいない。
あの男が仲間だとして、帰ってさえ来なければ、この状況をひっくり返せるのが今だ。
ユウカは両腕の縄がほどけたタイミングで彼女に倒れ掛かった。
勢いで倒された彼女の首元をがっちりと抑え込み、万力のごとく締め付けていく。
「形成逆転だ。
死にたくなかったら、エリィーの居場所を言え」
女への圧はどんどんと掛かっていく。
人間は20.9%の酸素濃度の下で生きている。
この酸素濃度を18%以下まで下げると、人は意識を喪失したり、筋力が弱まる。
大抵3分も息が吸えなければ、人は窒息するか、気を失う。
ユウカは、殺さない様に抑えながら、気絶させようと酸素の通り道を力いっぱい塞いだ。
「いきなり、抱き着いてくるなんて、そんなに女の子が好きなのかしら。 変態さんね」
何処かで聞き覚えのあることば。
今日は色んな人からそういう扱いをされる気がした。
だが、そんなことはどうでもいい。
「そんなにくっつきたいのかしら? 」
よく喋る女だった。 首を絞めらているのによく余裕そうに話している。
「あ、…な、…たは、何も……わか…って、な、い」
「早くエリィーの場所を言え。
でないと、本当に死ぬぞ」
「貴方は、……」
女はしゃべらなくなった。
体が微妙に震えている。
痙攣でも始まったか、と思った瞬間。
女はこらえていたのか、噴き出す。
「あっははははは、もうだめ。
もういい、十分堪能したかしら?
貴方に人を殺すことなんてできないわ。
こんなに優しく首を絞められたのは初めてよ。
本当に優しいのね。
本気で殺そうと思っていないでしょ?
あなたには無理よ」
おかしい、ユウカは確かに力いっぱい首を絞めていた。
確かに、殺す気は無かったにしても、普通なら息が据えなくなってもがいているはずだ。
もう3分は絞めている。
女は肘討ちをユウカに食らわせた。
それは嘘のように椅子に縛られたユウカがそのまま壁まで弾き飛ばされた。
この威力は凄まじかった。
すごい衝撃と共に、目元がぼやける。
あんな華奢な体の女性が出せる技ではない
普通なら、向こうの骨が折れていそうだと言うのに。
「わたし、そんなに弱そうに見えるかしら。
これでも、結構強いのよ」
女の目を見た時、ユウカの全身は震えあがった。
さっきとは違う目。 殺される。
これは、弱者が本能的に感じる、危険信号。
どうあがいたって、目の前の強者には勝てないと言う、指令。
これが出た時の行動は二つに一つ。
死ぬか、逃げるかだ。
「もういいでしょ。 私に抱き着けて、いい思いもしたし。
そろそろあなたの覚悟とやらを見せてくれるかしら」
女は殺そうとはしなかった。 その殺気は瞬時に消した。
ユウカの座っていた椅子を軽々と起こすと、元居た位置に置きなおした。
「さぁ、どうぞ」
渡されたものはナイフ。
ユウカは、自分が生きるか死ぬかではなく、
エリィーを生かすか殺すかを問われていた。
「私言ったわよね。
あなたの命なんてどうでもいいの」
着いた先があの高級マンション。
もしこのドローンが犯人のものだとしたら、零錠唯の推理は的確だったと言える。
ユウカはドローンについて行くように、回転式自動ドアをくぐる。
中は受付嬢が何人か立てる造りになっていて、まずその受付嬢を通さなければ、
住居につながる部屋には行けない様になっていた。
ユウカはドローンについて、そこを素通りした。
エレベータ―に乗ると、ドローンは赤外通信か何かをしたのか、勝手にエレベータが動き出した。
着いたのは45階。
エレベーターを降りたドローンは一室の扉の前で止まると、ドアが開いた。
ユウカは空いたドアから、こっそりと顔を覗かせ室内を観察した。
物静かで音も聞こえてこない。
ドローンは入っていたのに、人の気配がないみたいだ。
誰もいないのだろうか?
ユウカは恐る恐る入ってみる事にした。
人の部屋に忍び込むのは初めての事だった。
その時、後ろから鈍器のようなもので殴られる。
ユウカはそのまま倒れてしまった。
目を覚ますと、前にはメイドの姿をした、女性が立っていた。
誰なんだろう。
鋭い目に、人を軽蔑したようなう顔。
ユウカは殴られたショックで頭がふわついていた。
女が目覚めたユウカに気づき、近づいて来た。
「おはよう。 お目覚めかしら? 」
「あなたはいったい? 」
「それはこちらのセリフね?
勝手に人の部屋に入り込んでどこの泥棒さんかしら」
とても余裕のある話し方だ。 それもそのはず。 こんな高級マンションに住んでいるんだから、相当の賜物の人だろう。
ユウカは立ち上がろとしたが、椅子に手足を縛られていて、身動きが取れなかった。
「いや、そんなつもりは。
ただ、ここに黒いドローンが入っていったから」
「警察でも呼ぼうかしら」
「ま、待ってくれださい。
別に、泥棒に来たわけじゃなくて、大切なものを探してるんです。
本当に大事なんだ」
警察に通報などされれば一貫の終わり。
探すことすら不可能になる。
この状況で通報されれば、真っ先に疑いがかかり、弁解の余地はない。
たとえ、疑いが晴れたにしても、その時間のロスは大きすぎる。
「冗談よ」
「えっ? 」
ユウカは安心と同時に、疑問を覚えた。
「探し物って、この箱の事でしょ? 」
女はスーツケースを持ち出してきた。
間違いなくエリィーの為に買ったスーツケース。
ここにあるという事はやはり。
「あら、違ったかしら。
厳密には、このスーツケースの中身。 かしらね」
エリィーの事を知っているのは間違いない。
「どう言う事だ? なぜ、お前がそのスーツケースを持っているんだ。
エリィーは? エリィーはどこなんだ! 」
「うるさいわね。 急に騒ぎ立てて。
ちょっとお話しましょ。 私、あなたとお話がしたいの。 あなたの質問はその後から」
「エリィーは、エリィーは無事なのか? 」
「あの女ん子の事かしら?
それだったら、今頃」
今頃とはどういう事なのか?
「もしかして、何かしたのか? 」
「さぁね、それはこれから答えるあなた次第かしら。
でも、あまりここでゆっくりしている時間は無いわよ。
彼女の事を助けたいなら、早く話を終わらせることね」
「俺たちを殺す気はないという事か? 」
「無い事は無いわ。
別にあなたの命なんて、どうでもいいし、死にたきゃ勝手に死ねばいいわ。
私たちの目的にアナタは無い。
だけど、あの女は違うかしら。 こうしている間にも、誰かに殺されているかもね。
彼女の命に関しては一刻を争うんじゃないかしら」
何故エリィーが殺されなきゃならないのか?
疑問には残ったが、ユウカは質問を一度抑えた。
「そろそろ、質問をやめる気になった?
やっと理解したのかしら。
今の会話だと、あなた。
彼女のことを何も知らないみたいになるけど。
それで良く一緒に居れるわね。
てっきり自殺志願者なのかと思ったわ」
自殺志願者?こいつの言っていることが、全く理解できない。
何故ユウカが自殺志願者になるのか?
「どう言う事だ?
俺が自殺志願者?
なぜあいつと暮らすことが自殺志願者になるんだ?」
「別にいいわ。 知らなきゃそれで。
で、質問なんだけど、どうして、あんたはあの子を必死になって探している訳? 」
思っていたよりも簡単な質問だった。
「当たり前だろ。 大切な家族なんだ。
誘拐されたら、誰だって必死で探すに決まってる。
それにあいつはまだ、あんなに幼い子なんだぞ」
突然女は大笑いをかましてきた。
「あれが幼い子?
あなた、本気で言っているの。
あれが幼い子だなんて初めて聞いたわ。
ごめんなさい。 あんた中々ユーモアがある人だったのね」
人が真剣に話してるのに笑うなんて失礼な女である。
「わ、わかったわ。
お腹が痛い。
で、どうして、血もつながっていないあの子が家族なの? 」
そう言われてしまえばそうだ。 エリィーとは血縁関係がある訳ではない。
ただ、弱っていたところを助けただけで、この世界の言う、『家族』と言うものではない。
ユウカ自身も思い返してみると、なぜここまで必死になっているのかは分からない。
ただ一つ言える事は、エリィーと居た日々はとても楽しかったという事。
そして、ユウカにとってはその生活こそが当たり前で、充実している毎日であったという事。
何より、お互いが助け合って生き、一緒に問題を解決してきた。
時に同じご飯を食べ、同じ時間を過ごし。いがみ合い、受け入れてきた。
ユウカにはそれだけで、もう立派な家族だった。
「俺たちは共に生活してきたんだ。 あいつはもう俺の家族だ。
それに殺されようとしているのに放っては置けないだろ」
「ふ~ん。それは、アナタを殺してくれる人が死にそうだから命を懸けて助けようとしているって事? 」
「違う、俺は死ぬ気なんてない! 」
「そう。
じゃあ、家族だから、あなたは命を懸けてまで守ろうとしているという事? 」
「そうだ」
「それが人間で無かったとしても」
「あぁ、関係ない。
エリィーはエリィーだ」
やはりエリィーは人ではないのだろ。
だが何故この人がエリィーの事を知っているのか、謎は深まるばかりであった。
「本当かしら?
貴方みたいな人間がいるなんて、正直ちょっと驚いたわ。
人間なんて、みんな自分の事しか考えない生き物だと思っていたから。
こういう人間も生まれてくるものなのね。
なんていうのかしら、貴方みたいなのを、際物と言うんだったかしら? 」
ユウカは何を言われているのか、全く理解できない
そもそも何故エリィーがユウカを殺す必要があるのか?
理解に苦しむ。
と言うか、この女は、ユウカの部屋に男が入ってきた時の事を知っているという事なのだろうか?
女性が一緒にいたような覚えは無かったが。
しかし、少なくとも、彼女はエリィーの事を知っているとう事だけは分かった。
「質問は終わったか?
だったら早く解放してくれ」
「んー、あらかた聞きたいことは終わったんだけど、まだね。
そもそも、どうして素性も知らな女と一緒に居れるの?
疑いとか、探ろうとか無いわけ?
まぁ、あの女が嘘をついて居座ってるって言う事もあり得るけれど」
エリィーが?
そんな事をするような子には見えない。
ただ、確かにユウカはエリィーの素性を全くもって知らない。
知っていることで言えば、あほで、無知な所があれば、何故そんなことまで知っているのかと思うほどの有り余る知識を引き出してきたり。 難しい言葉も難なく使う所があったりもした。
後は、体から生えた、しっぽや、羽、に角。 人のような見た目なのに、人とは違うものがあるところ。
そして、なぜか飛べる。 そして日に弱い。 昼間は遊びに行けない生き物だ。 そして夜は寝る。
思い出せば思い出すほど、知らない事ばかりである。 そして、あの生き物は何なのか? 思い返せば思い返すほどわからない。 ほとんど寝てないか? あいつ 昼間は何をしているのか、あまりユウカは知らない。
「あいつは、何も言わないんだ。
俺だった不思議で仕方がない。
あいつはいったい何なんだ?
あんたは知っているのか?」
「はぁ、家族なのに、知らないの?
それって彼女から、信頼されていないって事なんじゃないのかしら? 」
「……それは、そうかもしれない。 俺はあいつの親でもないし、兄弟でもない。
だけど、あいつが言いたくないと言うのであれば、無理に聞くつもりもない。
話したいと思ってくれた時に話してくれればいいんだ。
そんな事で、家族の絆が切れるほど家族は安っぽいものじゃない」
「そう。でもそれは、アナタだけの意見でしょ?
実際彼女は、あなたの事をそう思ってないかもしれなわよ」
「そ、それは、」
ユウカの迷ったような表情。
「そうかもな。
だけど、俺にとっては家族の様に大事な存在ってなだけだ。
あいつがどう思うと、俺の中では変わらない」
女はナイフを投げつけてきた。
「そう、なら彼女の為にそれで腕を切り落としなさい。
って言ったら切り落とせる? 」
「何を言ってるのかわからない。 いい加減にしろよ」
「そうしないと、彼女、殺すわよ?
大事な家族なんでしょ? 」
女の目は真剣だった。
「そうしたくても、縛られているなら、切り落とせない。
これを解放してくれるんなら、幾らでもやってやる。
それでエリィーを返してくれんならな」
「えぇ、構わないわ。 そう言う事ならお安い御用よ」
女はゆっくりとユウカに近づいて、縄を外しだした。
「足は外してくれないのか? 」
「そうね、面倒くさい事は避けたいの。
だから、腕だけかしら」
十分だった。 ユウカはこの時を狙っていた。
たとえ足を外してもらえなくても、この至近距離なら。
女の首を取ることが出来る。
ほどけた隙に、彼女を抑え込むことは容易にできる。
彼女の見た目は、華奢もいい所だ。
こんな細い体では、男に太刀打ちできないであろう。
きっと、お付きのモノに守られ続けてきた事が伺える。
戦う体では無い。
周りを見たが、彼女以外に、人もいない。
あの男が仲間だとして、帰ってさえ来なければ、この状況をひっくり返せるのが今だ。
ユウカは両腕の縄がほどけたタイミングで彼女に倒れ掛かった。
勢いで倒された彼女の首元をがっちりと抑え込み、万力のごとく締め付けていく。
「形成逆転だ。
死にたくなかったら、エリィーの居場所を言え」
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人間は20.9%の酸素濃度の下で生きている。
この酸素濃度を18%以下まで下げると、人は意識を喪失したり、筋力が弱まる。
大抵3分も息が吸えなければ、人は窒息するか、気を失う。
ユウカは、殺さない様に抑えながら、気絶させようと酸素の通り道を力いっぱい塞いだ。
「いきなり、抱き着いてくるなんて、そんなに女の子が好きなのかしら。 変態さんね」
何処かで聞き覚えのあることば。
今日は色んな人からそういう扱いをされる気がした。
だが、そんなことはどうでもいい。
「そんなにくっつきたいのかしら? 」
よく喋る女だった。 首を絞めらているのによく余裕そうに話している。
「あ、…な、…たは、何も……わか…って、な、い」
「早くエリィーの場所を言え。
でないと、本当に死ぬぞ」
「貴方は、……」
女はしゃべらなくなった。
体が微妙に震えている。
痙攣でも始まったか、と思った瞬間。
女はこらえていたのか、噴き出す。
「あっははははは、もうだめ。
もういい、十分堪能したかしら?
貴方に人を殺すことなんてできないわ。
こんなに優しく首を絞められたのは初めてよ。
本当に優しいのね。
本気で殺そうと思っていないでしょ?
あなたには無理よ」
おかしい、ユウカは確かに力いっぱい首を絞めていた。
確かに、殺す気は無かったにしても、普通なら息が据えなくなってもがいているはずだ。
もう3分は絞めている。
女は肘討ちをユウカに食らわせた。
それは嘘のように椅子に縛られたユウカがそのまま壁まで弾き飛ばされた。
この威力は凄まじかった。
すごい衝撃と共に、目元がぼやける。
あんな華奢な体の女性が出せる技ではない
普通なら、向こうの骨が折れていそうだと言うのに。
「わたし、そんなに弱そうに見えるかしら。
これでも、結構強いのよ」
女の目を見た時、ユウカの全身は震えあがった。
さっきとは違う目。 殺される。
これは、弱者が本能的に感じる、危険信号。
どうあがいたって、目の前の強者には勝てないと言う、指令。
これが出た時の行動は二つに一つ。
死ぬか、逃げるかだ。
「もういいでしょ。 私に抱き着けて、いい思いもしたし。
そろそろあなたの覚悟とやらを見せてくれるかしら」
女は殺そうとはしなかった。 その殺気は瞬時に消した。
ユウカの座っていた椅子を軽々と起こすと、元居た位置に置きなおした。
「さぁ、どうぞ」
渡されたものはナイフ。
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【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
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