もし、運命の番になれたのなら。

天井つむぎ

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番外編

【彼方誕生日編(完)】僕の生まれた日をお祝いしてくれる家族。(二)(彼方視点)

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 トラブルはあったものの、誕生の日を家族皆から祝福され、幸せなひと時を過ごした。
「彼方、まだ起きてる?」
 夜、夫夫のベッドで。水樹から声を掛けられ、体ごと動かした。
「起きてるよ。眠れない?」
 彼方の心配に水樹は首を振る。安心していると、腕が伸びてきた。
「おいで」
 いきなりどうしたのかとびっくりする。子供達へならわかるが、まさか自分に対して「おいで」をされるとは。もう一度水樹を見ると、大変穏やかな顔だ。彼方は腕の中に失礼した。
 頭上を撫でる手。乾かしたばかりの髪がくちゃっとなっていく。
「水樹さん?」
 今度は呼び掛けに応じてくれなかった。
 息遣いと鼓動、頭を撫でる音が耳を済まさなくても聞こえてくる。心地良かった。
「いつも頑張ってる彼方に、感謝の気持ちだよ」
「なる……ほど?」
「あと、俺がしたかったから」
 水樹がそう言い終えると、頭の方でリップ音がする。ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスだ。
(何これ……。すっげえ気持ち良くて、頭馬鹿になる……)
 脚をもじもじさせてしまう。今にも蕩けそうだ。
「まっ、みず……んあっ、へん……」
 声が漏れる。水樹なら可愛い声なのに、自分が出すと胸焼けするような甘ったるい声が。
 声は出したくない。出さないよう、水樹のパジャマシャツを食む。涎塗れになるのは時間の問題だった。
 頭にずっと大きな手の重みがあり、撫でられた箇所や掌の部分から安心感や体温が伝わってきた。じわっと目の端に涙が溜まった。
「みず……き、やめないで。もっと……もっと、撫でて……」
「止めないよ。彼方は頑張り屋さんだね。いつもありがとう」
「……っん」
 キスと頭を撫でるのを繰り返され、終わる頃には髪はベトベト、脳内は水樹のことしか考えられなかった。
「み、みずき……っ。みず、き……。すき、だいすき……」
 語彙力が低下した彼方を、水樹はしっかり受け止めてくれる。
「俺も彼方が大好きだよ」
「ずっと……、いっしょにいて。らいねんも、そのさきもぼくのたんじょうび……おいわいして?」
 もう、自分が伝えた内容もよくわからなかった。ただただ水樹が好きで、水樹と離れたくない想いが爆発した。
「当たり前だよっ……? これから先も、ずうっと彼方のことお祝いするから。もちろん家族皆でね。愛してる」
 キスする直前、水樹も泣いていた。自分の頬に流れた涙は温かい。水樹も同じ温度の涙だったらいいな、と心底思う。
(このプレゼント、しあわせなあじがする……)

 翌日の朝、彼方が目を覚ますと身体中にキスマークがついていた。自分にも、大好きな番にも。
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